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番外編
幸せな日
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「ああ、空良……可愛いわぁ」
茜音さんはもう空良くんにメロメロだ。
寛人くんの方は目に入ってないんじゃないかしら?
まぁ、それも仕方ないわね。
だってあんなに可愛いんだもの。
――ソラ、あなたの、スナオなコトバは、ヒロトの、ココロを、イやす、チカラが、アリマス。いつまでも、ウソイツワりの、ない、コトバで、ヒロトのイやし、となるヨウニ。そして、ヒロトは、ソラに、アイするキモチを、いつでも、いつまでも、ツタエつづけるヨウニ。おタガイに、コトバをかける、コトをワスれず、アカルい、カテイを、ツクるコト、がダイジ
「この司祭さま。寛人たちのことを本当によく見てくださってるわね」
「ええ、本当に」
「寛人は言葉足らずなところがあるから、きっと司祭さまの言葉は寛人の心に深く刺さったと思うよ。いい夫夫になれるはずだ」
「そうね。ちゃんと伝えないと空良は勘違いしてしまいそうだから。その点凌也くんは理央くんが誤解してしまう前に全てを伝えてあげそうね」
「ふふっ。凌也は理央の思考を読んでいるんじゃないかっていうくらい、先のことまで理解しているみたいよ」
「ふふっ。さすがね」
佳都も少し突っ走ってしまうところがある。
直己も寛人くんも凌也くんも、大切なあの子たちを泣かせないようにしっかりと心の中を読んであげないとね。
寛人くんが選んだ指輪は可愛らしいシンプルな指輪。
けれど空良くんの細くて華奢な指にはとてもよく似合っていた。
「あの指輪、素敵ね」
「本当に。よく似合っているわ。ドレスも指輪もシンプルだけど、空良くんの可愛らしさを引き立ててるわね」
「あれが寛人の好みなんだろう。飾り立てるよりも素材が好きだってことかな」
「ふふっ。あなたと同じね」
寛海さんの言葉に茜音さんが嬉しそうに笑う。
ああ、そういえば茜音さんも確かにシンプルだけど上品で素敵なものを身につけている
あれはきっと寛海さんの好みなのね。
――ソレデハ、ちかいの、キスを
司祭さまの言葉に空良くんの頬がほんのりと赤く染まる。
「ふふっ。空良くん、緊張しているわね」
「ええ、そんなところも可愛いわ」
マリアベールをつけた空良くんにゆっくりと寛人くんが近づいていく。
しばらく微笑ましく見ていたけれど、
「ちょっと長くない?」
「ははっ。やっぱり寛海の息子だな」
「お前も茜音さんとの誓いのキスでなかなか離さなかったな」
「仕方ないだろう。茜音が可愛すぎるんだから」
寛海さんは秋芳さんから揶揄われて少し頬を赤らめている。
ふふっ。幾つになってもこんな関係でいられるって素敵よね。
――ごめん、空良が可愛くて離せなかった
ようやく空良くんから離れた寛人くんから、漏れた言葉もきちんと映像に残っていた。
「ははっ。理由まで一緒なんてやっぱり親子だな」
久嗣さんからも揶揄われていたけれど、それでも寛海さんは嬉しそうに笑っていた。
寛人くんと空良くんの結婚証明書の証人は直己と佳都が務めていた。
あの時とは逆ね。
いつか二人も……なんてあの時は思っていたけれど、こうして実際にみるとあの時の感動が甦る。
本当にみんな一緒に幸せになれてよかった……。
そこで映像は終わり、一旦暗くなる。
けれどさっきのこともあるからみんな少し期待してしまっている。
特に茜音さんはドキドキしているみたい。
すると、期待を裏切ることなく映像がまた明るくなった。
「ああっ! あったわ!」
ホッとしたような、嬉しそうな茜音さんの声に私たちまでホッとする。
静かに見守っていると、寛人くんと空良くんが現れてゆっくりと口を開く。
「父さん、母さん。空良と付き合い始めたことを知っていたのに、俺が報告するまでずっと待っていてくれてありがとう。そして、空良を家族として受け入れてくれてありがとう。父さんと母さんにはたくさんのお礼の気持ちでいっぱいだ。これからは家族四人で仲良く暮らしていこう。もう結婚もしたことだし、月に一度くらいなら母さんと空良を一緒に過ごす時間を作るよ。その時はたっぷり空良を甘やかしてあげてくれ。父さん。母さん。これからもよろしく」
あの独占欲の塊のような寛人くんが、茜音さんに空良くんと過ごす時間を作ると宣言するなんて……。
ふふっ。結婚式を挙げて、少しは気持ちに余裕ができたのかしらね。
茜音さんは本当に嬉しそうだわ。
「お、お父さん。お母さん。僕……今、とっても幸せです。日本に帰ったら、お母さんがプレゼントしてくれたコートを着て初詣に行きたいです。そして、お父さんとお母さんと手を繋ぎたいです……寛人さん……いいですか?」
空良くんが隣にいる寛人くんに声をかけると、少し悩みながらも
「ああ、わかった」
と答えていたのが印象的だった。
ふふっ。本当は嫌だけど空良くんのおねだりには弱いみたいね。
まぁ、それは直己も一緒だけど。
「映像に残っているからバッチリね! ああ、今から初詣が楽しみだわ!!」
嬉しそうにはしゃいでいる茜音さんの目には涙が溢れている。
息子夫夫の幸せな姿に感動したみたい。
私も日常の二人が見られたようで楽しかったわ。
映像が終わり、心に温かいものが広がっていくのがわかる。
ああ、今日は幸せな日になった。
「せっかくだから、今日は泊まって行かないか? この後、代行で帰るのも面倒だろう?」
「急なのにいいのか?」
「ああ、せっかく息子たちの晴れ姿を見た日だ。今日は息子たちの帰宅後のことでも話し合おう。正月にみんなで旅行に行くのはどうだ? 予約なら私に任せてくれ」
久嗣さんからの提案に賛同の声が上がる。
もう年末で普通ならどこの宿も予約でいっぱいなのに、久嗣さんならどんなにすごいホテルでも旅館でも予約できるのだから驚いてしまう。
今更ながら久嗣さんの凄さに驚きながら、その日は夜遅くまで話が尽きなかった。
茜音さんはもう空良くんにメロメロだ。
寛人くんの方は目に入ってないんじゃないかしら?
まぁ、それも仕方ないわね。
だってあんなに可愛いんだもの。
――ソラ、あなたの、スナオなコトバは、ヒロトの、ココロを、イやす、チカラが、アリマス。いつまでも、ウソイツワりの、ない、コトバで、ヒロトのイやし、となるヨウニ。そして、ヒロトは、ソラに、アイするキモチを、いつでも、いつまでも、ツタエつづけるヨウニ。おタガイに、コトバをかける、コトをワスれず、アカルい、カテイを、ツクるコト、がダイジ
「この司祭さま。寛人たちのことを本当によく見てくださってるわね」
「ええ、本当に」
「寛人は言葉足らずなところがあるから、きっと司祭さまの言葉は寛人の心に深く刺さったと思うよ。いい夫夫になれるはずだ」
「そうね。ちゃんと伝えないと空良は勘違いしてしまいそうだから。その点凌也くんは理央くんが誤解してしまう前に全てを伝えてあげそうね」
「ふふっ。凌也は理央の思考を読んでいるんじゃないかっていうくらい、先のことまで理解しているみたいよ」
「ふふっ。さすがね」
佳都も少し突っ走ってしまうところがある。
直己も寛人くんも凌也くんも、大切なあの子たちを泣かせないようにしっかりと心の中を読んであげないとね。
寛人くんが選んだ指輪は可愛らしいシンプルな指輪。
けれど空良くんの細くて華奢な指にはとてもよく似合っていた。
「あの指輪、素敵ね」
「本当に。よく似合っているわ。ドレスも指輪もシンプルだけど、空良くんの可愛らしさを引き立ててるわね」
「あれが寛人の好みなんだろう。飾り立てるよりも素材が好きだってことかな」
「ふふっ。あなたと同じね」
寛海さんの言葉に茜音さんが嬉しそうに笑う。
ああ、そういえば茜音さんも確かにシンプルだけど上品で素敵なものを身につけている
あれはきっと寛海さんの好みなのね。
――ソレデハ、ちかいの、キスを
司祭さまの言葉に空良くんの頬がほんのりと赤く染まる。
「ふふっ。空良くん、緊張しているわね」
「ええ、そんなところも可愛いわ」
マリアベールをつけた空良くんにゆっくりと寛人くんが近づいていく。
しばらく微笑ましく見ていたけれど、
「ちょっと長くない?」
「ははっ。やっぱり寛海の息子だな」
「お前も茜音さんとの誓いのキスでなかなか離さなかったな」
「仕方ないだろう。茜音が可愛すぎるんだから」
寛海さんは秋芳さんから揶揄われて少し頬を赤らめている。
ふふっ。幾つになってもこんな関係でいられるって素敵よね。
――ごめん、空良が可愛くて離せなかった
ようやく空良くんから離れた寛人くんから、漏れた言葉もきちんと映像に残っていた。
「ははっ。理由まで一緒なんてやっぱり親子だな」
久嗣さんからも揶揄われていたけれど、それでも寛海さんは嬉しそうに笑っていた。
寛人くんと空良くんの結婚証明書の証人は直己と佳都が務めていた。
あの時とは逆ね。
いつか二人も……なんてあの時は思っていたけれど、こうして実際にみるとあの時の感動が甦る。
本当にみんな一緒に幸せになれてよかった……。
そこで映像は終わり、一旦暗くなる。
けれどさっきのこともあるからみんな少し期待してしまっている。
特に茜音さんはドキドキしているみたい。
すると、期待を裏切ることなく映像がまた明るくなった。
「ああっ! あったわ!」
ホッとしたような、嬉しそうな茜音さんの声に私たちまでホッとする。
静かに見守っていると、寛人くんと空良くんが現れてゆっくりと口を開く。
「父さん、母さん。空良と付き合い始めたことを知っていたのに、俺が報告するまでずっと待っていてくれてありがとう。そして、空良を家族として受け入れてくれてありがとう。父さんと母さんにはたくさんのお礼の気持ちでいっぱいだ。これからは家族四人で仲良く暮らしていこう。もう結婚もしたことだし、月に一度くらいなら母さんと空良を一緒に過ごす時間を作るよ。その時はたっぷり空良を甘やかしてあげてくれ。父さん。母さん。これからもよろしく」
あの独占欲の塊のような寛人くんが、茜音さんに空良くんと過ごす時間を作ると宣言するなんて……。
ふふっ。結婚式を挙げて、少しは気持ちに余裕ができたのかしらね。
茜音さんは本当に嬉しそうだわ。
「お、お父さん。お母さん。僕……今、とっても幸せです。日本に帰ったら、お母さんがプレゼントしてくれたコートを着て初詣に行きたいです。そして、お父さんとお母さんと手を繋ぎたいです……寛人さん……いいですか?」
空良くんが隣にいる寛人くんに声をかけると、少し悩みながらも
「ああ、わかった」
と答えていたのが印象的だった。
ふふっ。本当は嫌だけど空良くんのおねだりには弱いみたいね。
まぁ、それは直己も一緒だけど。
「映像に残っているからバッチリね! ああ、今から初詣が楽しみだわ!!」
嬉しそうにはしゃいでいる茜音さんの目には涙が溢れている。
息子夫夫の幸せな姿に感動したみたい。
私も日常の二人が見られたようで楽しかったわ。
映像が終わり、心に温かいものが広がっていくのがわかる。
ああ、今日は幸せな日になった。
「せっかくだから、今日は泊まって行かないか? この後、代行で帰るのも面倒だろう?」
「急なのにいいのか?」
「ああ、せっかく息子たちの晴れ姿を見た日だ。今日は息子たちの帰宅後のことでも話し合おう。正月にみんなで旅行に行くのはどうだ? 予約なら私に任せてくれ」
久嗣さんからの提案に賛同の声が上がる。
もう年末で普通ならどこの宿も予約でいっぱいなのに、久嗣さんならどんなにすごいホテルでも旅館でも予約できるのだから驚いてしまう。
今更ながら久嗣さんの凄さに驚きながら、その日は夜遅くまで話が尽きなかった。
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