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番外編
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突然の番外編。
また『Tesoro mio ~運命の再会はイタリアで~』とのコラボになります。
楽しんでいただけると嬉しいです。
* * *
<side真守>
「んっ……」
『ふふっ。私の眠り姫。そろそろその綺麗な瞳で私を見つめてくれないか?』
瞼と頬に柔らかな感触を感じる。
ああ、これは僕の大好きなセオドアの唇だ。
目を開けると、セオドアの優しい笑顔が見える。
『おはようございます、セオドア』
『ああ、おはよう。マモル。愛してるよ』
チュッと唇が重なり合うだけの優しいキス。
それが、朝の挨拶だとわかっていても、セオドアとキスをするだけで身体の奥が疼いてしまう。
だって、毎日毎日愛されているのだからそれも当然なのかもしれない。
『マモル、私が欲しくなったか?』
『ずるいです、わかってるくせに……!』
『ふふっ。悪い、意地悪を言った。マモル……今日はのんびりと昼までベッドで過ごそうか』
『は――』
『旦那さまっ! 旦那さまっ!』
休日の朝、いつものようにとびきりの甘い時間を過ごしていると、何かあったときに外からの声が聞こえるように寝室に設置してある室内連絡用の機械から突然ローマンさんの焦った声が聞こえた。
いつもは冷静なローマンさんなだけに、この尋常ではない様子に心配になってしまう。
『セオドア……』
『大丈夫、直接聞いてくるからここで待っていてくれ』
『わかりました』
何があったんだろう……。
もしかして明さんやアロン、一帆さんたちに何かあったとか?
そんなことを考えていたら前に襲われかけた時のこを思い出して、少し身体が震えてしまう。
みんなに何もなければいいんだけど……。
父さんたちにみたいに突然の事故だったら……。
怖いっ!
『セオドア……っ!』
いろんなことを考えてしまって、つい心の声が漏れた瞬間
『マモルっ!!』
心配そうな声をあげて、セオドアが寝室に戻ってきてベッドに横たわる僕を抱きしめてくれた。
『どうした? 不安にさせたか? ああ、顔色が悪いな。大丈夫、私がついているよ』
優しい言葉をかけて必死に僕を落ち着かせようとしてくれる。
ああ、セオドアはいつも僕を守ってくれる。
『ごめんなさい……ひとりでいたら、何かあったのかと不安になって……父さんたちみたいに事故に遭って急にいなくなったらどうしようって……怖い想像ばかりしちゃって……』
『ああ、そうだったか。ひとりにしてしまった私のせいだな。でも、大丈夫だ。命の危険を伴うようなことではないから安心してくれ』
『何があったんですか?』
『それがローマンの話だとまだ少し要領を得ないんだが……とにかく、朝早くにルカから連絡があったようだ』
『ルカさん? えっ、じゃあもしかして柚月くんに何か?』
『ああ、風邪を引いたらしい』
『えっ? 風邪?』
『ああ。ランドルフィ家の専属医師が診察したから間違いはない。ただ熱のせいで食欲がないらしくてね。ランドルフィ家では風邪を引いた時は、お米を入れたミネストローネを食べるそうなんだが、ユヅキはそれすらも食べられなくて、ここ二日ほど水分以外は取れない状況なんだそうだ。それで点滴を入れて様子を見ているそうなんだが、あまりにも食欲がないからルカが心配になって、ユヅキに何か食べたいものはないか? と尋ねたら、熱にうかされながら何かを言ったそうなんだよ。だが、それがなんなのかわからなくて、困り果ててマモルに助けを求めてきたそうなんだ』
そうか。
イタリア人のルカさんにはわからないものだったのかな?
僕は、風邪のときは母さんがすりおろしたリンゴとか、プリンとか食べさせてくれていたな……。
懐かしい。
『なるほど。そういうことなんですね。それで、ルカさんはなんと言っていたんですか?』
『それが、ローマンがよく聞いていなかったのか、ルカがうまく伝えられなかったのか……よくわからないんだ。とにかく、ユヅキはアケとかマケとか言っていたそうだ。マモル、わかるか?』
『アケ? マケ? うーん、なんだろう……』
『マモルにもわからないなら、お手上げだな』
『あっ、ちょっと待ってください! 僕、わかるかも!!』
『えっ? 本当か?』
『はい。もしかしたら、ですけど……それが合っているとしたらイタリアじゃなかなか探すのは難しいと思うので、僕、明さんに連絡してみます』
『アキラに?』
『はい。多分、明さんならすぐに用意できると思います。そうしたらランドルフィ家にもすぐに送ってもらえるかもしれません!』
『じゃあ、すぐにアキラに連絡しよう。今の時間なら起きているだろう』
そういうとセオドアはすぐに明さんに電話をかけてくれた。
まずセオドアが話した後で僕に代わってくれた。
ーおおよその話は聞いたが、それで何を用意したらいいんだ?
ー多分ですけど、柚月くんが欲しいと言ったのは、<甘酒>です。
ー甘酒? ああ、なるほど。だから、アケ、マケか……熱に浮かされてうまく話せなかったんだろうな。わかった。それならすぐに手配しよう。送り先の住所はわかるか?
ーはい、セオドアに代わりますね。
そう言って、僕はセオドアに代わり、あとは任せた。
セオドアはすぐに明さんにランドルフィ家の住所を伝えて電話を切ったあと、すぐにルカさんに電話をかけて柚月くんが欲しいと言っていたものをすぐに送る手配をしたと伝えていた。
ーああ、ありがとう!! 恩にきるよ!! マモルにお礼を言っておいてくれ!!
嬉しそうなルカさんの声が電話口から漏れ聞こえていて、柚月くんのことをものすごく心配していたんだなとわかり微笑ましく思えた。
『それにしても甘酒とはなんだ? ユヅキは未成年なのに酒を飲むのか?』
『甘酒はお酒じゃないんです。お米に米麹を加えて発酵させて作るもので栄養があるので飲む点滴とも言われてるんですよ。だから、風邪を引いた時に飲むと元気になるんです』
『そうなのか! じゃあ、もしマモルが風邪を引いた時にはすぐにそれを用意しよう』
『ふふっ。ありがとうございます。でも、僕は風邪のときはプリンがいいです。少し硬めのプリン』
「そうか、じゃあ覚えておこう』
『セオドアは何がいいですか?』
『私はマモルが食べさせてくれたらすぐに元気になるよ』
『ふふっ。セオドアったら……』
『中断してしまっていたが、まだ休日はこれからだよ。マモル……』
チュッとキスをされたら、甘い時間が始まる合図。
今日もまたセオドアと幸せな時間が始まる。
* * *
次は『Tesoro mio ~運命の再会はイタリアで~』のルカ視点で書かせていただきます♡
どうぞお楽しみに♡
また『Tesoro mio ~運命の再会はイタリアで~』とのコラボになります。
楽しんでいただけると嬉しいです。
* * *
<side真守>
「んっ……」
『ふふっ。私の眠り姫。そろそろその綺麗な瞳で私を見つめてくれないか?』
瞼と頬に柔らかな感触を感じる。
ああ、これは僕の大好きなセオドアの唇だ。
目を開けると、セオドアの優しい笑顔が見える。
『おはようございます、セオドア』
『ああ、おはよう。マモル。愛してるよ』
チュッと唇が重なり合うだけの優しいキス。
それが、朝の挨拶だとわかっていても、セオドアとキスをするだけで身体の奥が疼いてしまう。
だって、毎日毎日愛されているのだからそれも当然なのかもしれない。
『マモル、私が欲しくなったか?』
『ずるいです、わかってるくせに……!』
『ふふっ。悪い、意地悪を言った。マモル……今日はのんびりと昼までベッドで過ごそうか』
『は――』
『旦那さまっ! 旦那さまっ!』
休日の朝、いつものようにとびきりの甘い時間を過ごしていると、何かあったときに外からの声が聞こえるように寝室に設置してある室内連絡用の機械から突然ローマンさんの焦った声が聞こえた。
いつもは冷静なローマンさんなだけに、この尋常ではない様子に心配になってしまう。
『セオドア……』
『大丈夫、直接聞いてくるからここで待っていてくれ』
『わかりました』
何があったんだろう……。
もしかして明さんやアロン、一帆さんたちに何かあったとか?
そんなことを考えていたら前に襲われかけた時のこを思い出して、少し身体が震えてしまう。
みんなに何もなければいいんだけど……。
父さんたちにみたいに突然の事故だったら……。
怖いっ!
『セオドア……っ!』
いろんなことを考えてしまって、つい心の声が漏れた瞬間
『マモルっ!!』
心配そうな声をあげて、セオドアが寝室に戻ってきてベッドに横たわる僕を抱きしめてくれた。
『どうした? 不安にさせたか? ああ、顔色が悪いな。大丈夫、私がついているよ』
優しい言葉をかけて必死に僕を落ち着かせようとしてくれる。
ああ、セオドアはいつも僕を守ってくれる。
『ごめんなさい……ひとりでいたら、何かあったのかと不安になって……父さんたちみたいに事故に遭って急にいなくなったらどうしようって……怖い想像ばかりしちゃって……』
『ああ、そうだったか。ひとりにしてしまった私のせいだな。でも、大丈夫だ。命の危険を伴うようなことではないから安心してくれ』
『何があったんですか?』
『それがローマンの話だとまだ少し要領を得ないんだが……とにかく、朝早くにルカから連絡があったようだ』
『ルカさん? えっ、じゃあもしかして柚月くんに何か?』
『ああ、風邪を引いたらしい』
『えっ? 風邪?』
『ああ。ランドルフィ家の専属医師が診察したから間違いはない。ただ熱のせいで食欲がないらしくてね。ランドルフィ家では風邪を引いた時は、お米を入れたミネストローネを食べるそうなんだが、ユヅキはそれすらも食べられなくて、ここ二日ほど水分以外は取れない状況なんだそうだ。それで点滴を入れて様子を見ているそうなんだが、あまりにも食欲がないからルカが心配になって、ユヅキに何か食べたいものはないか? と尋ねたら、熱にうかされながら何かを言ったそうなんだよ。だが、それがなんなのかわからなくて、困り果ててマモルに助けを求めてきたそうなんだ』
そうか。
イタリア人のルカさんにはわからないものだったのかな?
僕は、風邪のときは母さんがすりおろしたリンゴとか、プリンとか食べさせてくれていたな……。
懐かしい。
『なるほど。そういうことなんですね。それで、ルカさんはなんと言っていたんですか?』
『それが、ローマンがよく聞いていなかったのか、ルカがうまく伝えられなかったのか……よくわからないんだ。とにかく、ユヅキはアケとかマケとか言っていたそうだ。マモル、わかるか?』
『アケ? マケ? うーん、なんだろう……』
『マモルにもわからないなら、お手上げだな』
『あっ、ちょっと待ってください! 僕、わかるかも!!』
『えっ? 本当か?』
『はい。もしかしたら、ですけど……それが合っているとしたらイタリアじゃなかなか探すのは難しいと思うので、僕、明さんに連絡してみます』
『アキラに?』
『はい。多分、明さんならすぐに用意できると思います。そうしたらランドルフィ家にもすぐに送ってもらえるかもしれません!』
『じゃあ、すぐにアキラに連絡しよう。今の時間なら起きているだろう』
そういうとセオドアはすぐに明さんに電話をかけてくれた。
まずセオドアが話した後で僕に代わってくれた。
ーおおよその話は聞いたが、それで何を用意したらいいんだ?
ー多分ですけど、柚月くんが欲しいと言ったのは、<甘酒>です。
ー甘酒? ああ、なるほど。だから、アケ、マケか……熱に浮かされてうまく話せなかったんだろうな。わかった。それならすぐに手配しよう。送り先の住所はわかるか?
ーはい、セオドアに代わりますね。
そう言って、僕はセオドアに代わり、あとは任せた。
セオドアはすぐに明さんにランドルフィ家の住所を伝えて電話を切ったあと、すぐにルカさんに電話をかけて柚月くんが欲しいと言っていたものをすぐに送る手配をしたと伝えていた。
ーああ、ありがとう!! 恩にきるよ!! マモルにお礼を言っておいてくれ!!
嬉しそうなルカさんの声が電話口から漏れ聞こえていて、柚月くんのことをものすごく心配していたんだなとわかり微笑ましく思えた。
『それにしても甘酒とはなんだ? ユヅキは未成年なのに酒を飲むのか?』
『甘酒はお酒じゃないんです。お米に米麹を加えて発酵させて作るもので栄養があるので飲む点滴とも言われてるんですよ。だから、風邪を引いた時に飲むと元気になるんです』
『そうなのか! じゃあ、もしマモルが風邪を引いた時にはすぐにそれを用意しよう』
『ふふっ。ありがとうございます。でも、僕は風邪のときはプリンがいいです。少し硬めのプリン』
「そうか、じゃあ覚えておこう』
『セオドアは何がいいですか?』
『私はマモルが食べさせてくれたらすぐに元気になるよ』
『ふふっ。セオドアったら……』
『中断してしまっていたが、まだ休日はこれからだよ。マモル……』
チュッとキスをされたら、甘い時間が始まる合図。
今日もまたセオドアと幸せな時間が始まる。
* * *
次は『Tesoro mio ~運命の再会はイタリアで~』のルカ視点で書かせていただきます♡
どうぞお楽しみに♡
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