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第二の人生
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<sideセオドア>
マモルが動けるようになるまで二日程かかったが、その間しっかりと世話を堪能した。
食事を食べさせるのはもちろん、風呂もそしてトイレも。
最初こそ恥ずかしがっていたマモルだったが、メイソンに無理をすると身体に良くないから私に任せるようにと言われたことで私に全ての世話を任せてくれた。
トイレの世話をできることがこんなにも幸せだなんて思わなかったな。
夕方にはマモルを抱きかかえて庭を散歩するのも楽しかった。
マモルの無垢な笑顔を見ていると、興奮してしまって大変だったがマモルとの楽しい時間には変えられない。
仕事も休みつきっきりでの世話は何よりも有意義な時間であった。
『セオドアのおかげですっかりよくなりました』
『それはよかった。マモルが元気になったら連れて行こうと思っていた場所があるのだが、一緒について来てくれるか?』
『はい。もちろんです』
『じゃあ、マモルの大切なあのクマも一緒に行こう』
『えっ? あっ! もしかして……』
『ふふっ』
マモルの言葉に笑顔でかわしたが、きっとマモルは気づいただろう。
でもそれでもいい。
私はマモルの笑顔が見たいのだから。
マモルを連れて向かったのは、わがグランヴィエ家のお宝が眠るギャラリー。
この一番目立つ位置に置かれたのが、私の誕生を記念して作られたテディベア。
職人の手作りで作られ、衣装につけられた宝石などの価値も入れると億はくだらないといわれている。
私にそっくりに作られたこのテディベアの隣にマモルのクマを並べたい。
私たちのようにこのクマたちが幸せになるように。
『これが私のクマだよ』
『わぁ、本当にセオドアに似ていますね』
『そうか? マモルがそう言ってくれるのなら嬉しいよ。このクマの隣にマモルの大事なそのクマを飾っておきたいのだが、どうだ?』
『はい。きっとこのクマも一人で部屋にいるよりはセオドアにそっくりなこのクマさんのそばにいられる方が嬉しいと思います』
『そうか、なら隣に並べるとしよう』
マモルからクマを受け取り、私のクマの隣に並べる。
マモルが抱きかかえていたからかなり大きなクマだと思っていたが、私のクマと比べると一回り以上小さいことに気づく。
だが、返ってそれが私たちにそっくりに見えて嬉しくなってしまう。
私のクマがマモルのクマを後ろから抱きしめるような形になると、
『ふふっ。僕のクマ。なんだかすごく嬉しそうに見えます』
とマモルが笑ってくれる。
『ああ、私たちと同じだ。私もマモルを抱きしめるのは嬉しいよ』
同じように後ろから抱きしめてやると、マモルは嬉しそうに笑った。
『セオドア……僕、セオドアに出会えて幸せです』
『ああ、マモル。私もだよ。私たちは出会うべくして出会ったのだ。このクマもずっと伴侶に会えるのを楽しみにしていたんだよ』
『父に感謝ですね。僕の命を守ってくれた上に、運命の人にまで会わせてくれたんですから……』
『ああ、そうだな。近いうちにマモルのご両親に挨拶がしたい』
『えっ、でも……僕の両親は……』
『亡くなってもマモルを愛してくれていることにかわりない。マモルのご両親のお墓に行って、きちんと挨拶したいんだ。マモルを一生大切にします、とね』
『セオドア……はい。ぜひ、父と母に会ってください』
笑顔を見せながら、大粒の涙を流すマモルを私はいつまでも抱きしめていた。
<sideラミロ>
ーセオドア、私は日本で生活することにした。
ーえっ? それは、また急なことだな。
ーああ、だがもうカズホと離れて暮らすなど考えられないからな。
ーそうか、お前の気持ちはよくわかるよ。だが、家や仕事は大丈夫なのか?
ーああ、それは問題ない。カズホと暮らす家もすでに購入済みで荷物も搬入させているし、仕事場はもう日本に拠点を移した。
ーもう全て準備を整えたのだな。さすがラミロ。仕事が早いな。
ーまあなゆくゆくは私の会社とカズホの会社を統合して、新しい会社を作るつもりだ。
ーラミロと彼ならやっていけるだろう。何かあればいつでも言ってくれ。協力は惜しまないよ。なんせ、カズホはマモルの大事な兄だからな。
ーああ。ありがとう。近々、お前も日本に来るんだろう?
ーああ。マモルの両親に挨拶をしに行くつもりだ。
ーその時は声をかけてくれ。日本で会おう。
ーもちろんだよ。ラミロ、幸せになれよ。
ーああ、セオドアも幸せにな。
あれだけ結婚する気がなかった私たちが最愛を手に入れ、しかもセオドアと義理の兄弟になるとは夢にも思わなかったな。
『ラミロ、電話終わったんですか?』
『ああ、一人にしてすまない。寂しかったか?』
『ふふっ。寂しくさせた責任、とってくれますか?』
『――っ、ああ、もちろん。カズホの気が済むまでどれだけでもとるよ』
『じゃあ、ラミロ……寝室に連れて行って』
『カズホ……』
私はカズホを抱き上げると、カズホの柔らかな唇に自分のそれを重ね合わせてそのまま寝室に連れ込んだ。
イギリスでも日本でも私たちの愛は変わらない。
これからも一生。
私の第二の人生がここから始まる。
* * *
ここまで読んでいただきありがとうございます!
ここで一旦本編完結となります。
ラミロたちの日本での生活、そして、セオドアたちの日本での様子は番外編で書いていく予定です。
どうぞお楽しみに!
マモルが動けるようになるまで二日程かかったが、その間しっかりと世話を堪能した。
食事を食べさせるのはもちろん、風呂もそしてトイレも。
最初こそ恥ずかしがっていたマモルだったが、メイソンに無理をすると身体に良くないから私に任せるようにと言われたことで私に全ての世話を任せてくれた。
トイレの世話をできることがこんなにも幸せだなんて思わなかったな。
夕方にはマモルを抱きかかえて庭を散歩するのも楽しかった。
マモルの無垢な笑顔を見ていると、興奮してしまって大変だったがマモルとの楽しい時間には変えられない。
仕事も休みつきっきりでの世話は何よりも有意義な時間であった。
『セオドアのおかげですっかりよくなりました』
『それはよかった。マモルが元気になったら連れて行こうと思っていた場所があるのだが、一緒について来てくれるか?』
『はい。もちろんです』
『じゃあ、マモルの大切なあのクマも一緒に行こう』
『えっ? あっ! もしかして……』
『ふふっ』
マモルの言葉に笑顔でかわしたが、きっとマモルは気づいただろう。
でもそれでもいい。
私はマモルの笑顔が見たいのだから。
マモルを連れて向かったのは、わがグランヴィエ家のお宝が眠るギャラリー。
この一番目立つ位置に置かれたのが、私の誕生を記念して作られたテディベア。
職人の手作りで作られ、衣装につけられた宝石などの価値も入れると億はくだらないといわれている。
私にそっくりに作られたこのテディベアの隣にマモルのクマを並べたい。
私たちのようにこのクマたちが幸せになるように。
『これが私のクマだよ』
『わぁ、本当にセオドアに似ていますね』
『そうか? マモルがそう言ってくれるのなら嬉しいよ。このクマの隣にマモルの大事なそのクマを飾っておきたいのだが、どうだ?』
『はい。きっとこのクマも一人で部屋にいるよりはセオドアにそっくりなこのクマさんのそばにいられる方が嬉しいと思います』
『そうか、なら隣に並べるとしよう』
マモルからクマを受け取り、私のクマの隣に並べる。
マモルが抱きかかえていたからかなり大きなクマだと思っていたが、私のクマと比べると一回り以上小さいことに気づく。
だが、返ってそれが私たちにそっくりに見えて嬉しくなってしまう。
私のクマがマモルのクマを後ろから抱きしめるような形になると、
『ふふっ。僕のクマ。なんだかすごく嬉しそうに見えます』
とマモルが笑ってくれる。
『ああ、私たちと同じだ。私もマモルを抱きしめるのは嬉しいよ』
同じように後ろから抱きしめてやると、マモルは嬉しそうに笑った。
『セオドア……僕、セオドアに出会えて幸せです』
『ああ、マモル。私もだよ。私たちは出会うべくして出会ったのだ。このクマもずっと伴侶に会えるのを楽しみにしていたんだよ』
『父に感謝ですね。僕の命を守ってくれた上に、運命の人にまで会わせてくれたんですから……』
『ああ、そうだな。近いうちにマモルのご両親に挨拶がしたい』
『えっ、でも……僕の両親は……』
『亡くなってもマモルを愛してくれていることにかわりない。マモルのご両親のお墓に行って、きちんと挨拶したいんだ。マモルを一生大切にします、とね』
『セオドア……はい。ぜひ、父と母に会ってください』
笑顔を見せながら、大粒の涙を流すマモルを私はいつまでも抱きしめていた。
<sideラミロ>
ーセオドア、私は日本で生活することにした。
ーえっ? それは、また急なことだな。
ーああ、だがもうカズホと離れて暮らすなど考えられないからな。
ーそうか、お前の気持ちはよくわかるよ。だが、家や仕事は大丈夫なのか?
ーああ、それは問題ない。カズホと暮らす家もすでに購入済みで荷物も搬入させているし、仕事場はもう日本に拠点を移した。
ーもう全て準備を整えたのだな。さすがラミロ。仕事が早いな。
ーまあなゆくゆくは私の会社とカズホの会社を統合して、新しい会社を作るつもりだ。
ーラミロと彼ならやっていけるだろう。何かあればいつでも言ってくれ。協力は惜しまないよ。なんせ、カズホはマモルの大事な兄だからな。
ーああ。ありがとう。近々、お前も日本に来るんだろう?
ーああ。マモルの両親に挨拶をしに行くつもりだ。
ーその時は声をかけてくれ。日本で会おう。
ーもちろんだよ。ラミロ、幸せになれよ。
ーああ、セオドアも幸せにな。
あれだけ結婚する気がなかった私たちが最愛を手に入れ、しかもセオドアと義理の兄弟になるとは夢にも思わなかったな。
『ラミロ、電話終わったんですか?』
『ああ、一人にしてすまない。寂しかったか?』
『ふふっ。寂しくさせた責任、とってくれますか?』
『――っ、ああ、もちろん。カズホの気が済むまでどれだけでもとるよ』
『じゃあ、ラミロ……寝室に連れて行って』
『カズホ……』
私はカズホを抱き上げると、カズホの柔らかな唇に自分のそれを重ね合わせてそのまま寝室に連れ込んだ。
イギリスでも日本でも私たちの愛は変わらない。
これからも一生。
私の第二の人生がここから始まる。
* * *
ここまで読んでいただきありがとうございます!
ここで一旦本編完結となります。
ラミロたちの日本での生活、そして、セオドアたちの日本での様子は番外編で書いていく予定です。
どうぞお楽しみに!
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