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楽しい食事のマナー
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<sideセオドア>
私の隣にマモルがいる。
これからずっとこの屋敷で、そして私の部屋で一緒に生活をする。
そんな夢のようなことが現実に起きて、私は興奮が止められなかった。
けれど、マモルはキスが初めてだったばかりか、夫夫として過ごす甘い愛の時間さえも何も知らないようだ。
もう成人を過ぎたというのに、こんなにも初心で清らかな人間がいようとは夢にも思わなかった。
そんなマモルに己の興奮のままに襲いかかって怯えられでもしたら目も当てられない。
逸る気持ちを抑えながら、夜のその時間まで心を落ち着けさせることにした。
屋敷の中を案内しながらマモルの様子を見つめるが、純粋に感動している姿に嬉しくなる。
これまで幾度か客人を案内したことはあるが、羨望や妬みに満ちた表情をみせるものの方が多かった。
ラミロだけは
――我が家にも同じようなものがある。我々はやはり似ているな。
と笑っていたが。
だからこそ、ラミロとは親友になれたのだ。
話をしていないとマモルの可愛さにすぐに手を出しそうになってしまう。
それを抑えるために次々に屋敷の中を案内したが、書庫を案内した後でそろそろ食事をと声をかけるとマモルのお腹から可愛らしい音が聞こえた。
マモルは自分のお腹からの音に恥じらっていたが、それすらも愛おしく感じるのはやはりマモルが私の運命の相手だからだろう。
大切なマモルがお腹を空かせていることにも気づかなかったこと自分に腹を立てつつも、マモルの可愛らしい音も恥じらう表情も見られたことは純粋に嬉しい。
すぐに食事を用意させようと思い、マモルに何が食べたいのかを尋ねる。
例え日本食だと言われてもすぐに作れるほどの技量を我が家のシェフは持っているのだから、きっと満足させられるだろう。
そう思っていたのに、マモルの口から出た言葉は
『あの、じゃあ僕……セオドアさまの好きなものが食べたいです。セオドアさまがどんな料理をお好みなのか知りたいんです』
と可愛らしい笑顔を浮かべながら、そう言ってくれた。
自分が食べたいものではなく、私が好きなものを食べたい。
しかも私の好みが知りたいだなんて……。
マモルが私の好みの料理を覚えて、いつか私に手料理をご馳走してくれるつもりなのだと思うと、そこにはもう喜びしかない。
私は今までに感じたことのない幸せを感じながらマモルを抱きしめ続けた。
『ローマン、今日の夕食は私の好物にしてくれ』
『えっ? 旦那さまのお好きなものをご用意してよろしいのですか?』
いつもなら聞き返すことなど絶対にないローマンが私にもう一度尋ねてくるとは……かなり驚いたに違いない。
やはりマモルの好きなものを作るようにと命じられると思っていたのだろう。
ふふっ。マモルの答えはいつも私たちの考えを上回るな。
『ああ、それがいいんだ。マモルがお腹を空かせているから、できるだけ早く頼むぞ』
『そんな……っ。あの、急がなくても大丈夫ですから……』
さっきお腹の音を私に聞かれたのを恥じらっていたからな。
お腹が空いたと知られるのが恥ずかしかったようだ。
本当にマモルは可愛らしい。
『すぐにご用意いたします』
そんなマモルの言葉にハッと我に返ったローマンは、急いで頭をさげ部屋を出て行った。
それからしばらくも経たないうちに、
『お食事のご用意ができました』
と声がかけられ、マモルは目を丸くして驚いていた。
シェフたちも相当頑張ってくれたようだ。
客人たちと一緒に食事をするための豪華絢爛なダイニングルームではなく、私が食事を取るための個人的なダイニングルームにマモルを案内する。
それはマモルが客人ではなく、私と家族になったことを表すためのものだ。
マモルはそれに気づく様子もなかったが、
『このお部屋、セオドアのイメージにピッタリで落ち着きますね』
と言ってくれる。
確かに私の好みのもので揃えているが、その場所を落ち着くと言ってくれるのは嬉しい。
やはり私たちは一緒にいるのが自然なのだろう。
向かい合わせではなく、私のすぐ隣にマモルを座らせる。
食事の間のほんの少しの時間さえも離れていたくない。
食事の時間くらいはのびのびと食事をしたいとマモルに嫌がられないかそれだけが心配だったけれど、広いテーブルで隣同士に座らせてもマモルは全く嫌がるそぶりをしないどころか、隣にいるのが当然だと言わんばかりに寄り添ってくれる。
『マモル、この席で大丈夫か?』
気になって声をかけてみると、
『えっ? はい。大丈夫です。イギリスではプライベートの食事は恋人や夫夫は隣同士に座って食事をとるものなんですよね? いつも明さんとアロンも並んで座って楽しそうに食事をしていたので理解していますよ』
と当然のように言われて驚いてしまう。
なるほど。アキラはそのように伝えていたのだな。
そのおかげでマモルが何も気にせずに座ってくれるのだからありがたい。
それにしてもアキラもか。
やはり私たちはよく似ているようだな。
ならばきっとラミロも……カズホをうまく乗せて隣で食事をしているのだろうな。
ふふっ。次にラミロにあった時にでも話を聞いてみるか。
きっと楽しい答えが返ってきそうだ。
私の隣にマモルがいる。
これからずっとこの屋敷で、そして私の部屋で一緒に生活をする。
そんな夢のようなことが現実に起きて、私は興奮が止められなかった。
けれど、マモルはキスが初めてだったばかりか、夫夫として過ごす甘い愛の時間さえも何も知らないようだ。
もう成人を過ぎたというのに、こんなにも初心で清らかな人間がいようとは夢にも思わなかった。
そんなマモルに己の興奮のままに襲いかかって怯えられでもしたら目も当てられない。
逸る気持ちを抑えながら、夜のその時間まで心を落ち着けさせることにした。
屋敷の中を案内しながらマモルの様子を見つめるが、純粋に感動している姿に嬉しくなる。
これまで幾度か客人を案内したことはあるが、羨望や妬みに満ちた表情をみせるものの方が多かった。
ラミロだけは
――我が家にも同じようなものがある。我々はやはり似ているな。
と笑っていたが。
だからこそ、ラミロとは親友になれたのだ。
話をしていないとマモルの可愛さにすぐに手を出しそうになってしまう。
それを抑えるために次々に屋敷の中を案内したが、書庫を案内した後でそろそろ食事をと声をかけるとマモルのお腹から可愛らしい音が聞こえた。
マモルは自分のお腹からの音に恥じらっていたが、それすらも愛おしく感じるのはやはりマモルが私の運命の相手だからだろう。
大切なマモルがお腹を空かせていることにも気づかなかったこと自分に腹を立てつつも、マモルの可愛らしい音も恥じらう表情も見られたことは純粋に嬉しい。
すぐに食事を用意させようと思い、マモルに何が食べたいのかを尋ねる。
例え日本食だと言われてもすぐに作れるほどの技量を我が家のシェフは持っているのだから、きっと満足させられるだろう。
そう思っていたのに、マモルの口から出た言葉は
『あの、じゃあ僕……セオドアさまの好きなものが食べたいです。セオドアさまがどんな料理をお好みなのか知りたいんです』
と可愛らしい笑顔を浮かべながら、そう言ってくれた。
自分が食べたいものではなく、私が好きなものを食べたい。
しかも私の好みが知りたいだなんて……。
マモルが私の好みの料理を覚えて、いつか私に手料理をご馳走してくれるつもりなのだと思うと、そこにはもう喜びしかない。
私は今までに感じたことのない幸せを感じながらマモルを抱きしめ続けた。
『ローマン、今日の夕食は私の好物にしてくれ』
『えっ? 旦那さまのお好きなものをご用意してよろしいのですか?』
いつもなら聞き返すことなど絶対にないローマンが私にもう一度尋ねてくるとは……かなり驚いたに違いない。
やはりマモルの好きなものを作るようにと命じられると思っていたのだろう。
ふふっ。マモルの答えはいつも私たちの考えを上回るな。
『ああ、それがいいんだ。マモルがお腹を空かせているから、できるだけ早く頼むぞ』
『そんな……っ。あの、急がなくても大丈夫ですから……』
さっきお腹の音を私に聞かれたのを恥じらっていたからな。
お腹が空いたと知られるのが恥ずかしかったようだ。
本当にマモルは可愛らしい。
『すぐにご用意いたします』
そんなマモルの言葉にハッと我に返ったローマンは、急いで頭をさげ部屋を出て行った。
それからしばらくも経たないうちに、
『お食事のご用意ができました』
と声がかけられ、マモルは目を丸くして驚いていた。
シェフたちも相当頑張ってくれたようだ。
客人たちと一緒に食事をするための豪華絢爛なダイニングルームではなく、私が食事を取るための個人的なダイニングルームにマモルを案内する。
それはマモルが客人ではなく、私と家族になったことを表すためのものだ。
マモルはそれに気づく様子もなかったが、
『このお部屋、セオドアのイメージにピッタリで落ち着きますね』
と言ってくれる。
確かに私の好みのもので揃えているが、その場所を落ち着くと言ってくれるのは嬉しい。
やはり私たちは一緒にいるのが自然なのだろう。
向かい合わせではなく、私のすぐ隣にマモルを座らせる。
食事の間のほんの少しの時間さえも離れていたくない。
食事の時間くらいはのびのびと食事をしたいとマモルに嫌がられないかそれだけが心配だったけれど、広いテーブルで隣同士に座らせてもマモルは全く嫌がるそぶりをしないどころか、隣にいるのが当然だと言わんばかりに寄り添ってくれる。
『マモル、この席で大丈夫か?』
気になって声をかけてみると、
『えっ? はい。大丈夫です。イギリスではプライベートの食事は恋人や夫夫は隣同士に座って食事をとるものなんですよね? いつも明さんとアロンも並んで座って楽しそうに食事をしていたので理解していますよ』
と当然のように言われて驚いてしまう。
なるほど。アキラはそのように伝えていたのだな。
そのおかげでマモルが何も気にせずに座ってくれるのだからありがたい。
それにしてもアキラもか。
やはり私たちはよく似ているようだな。
ならばきっとラミロも……カズホをうまく乗せて隣で食事をしているのだろうな。
ふふっ。次にラミロにあった時にでも話を聞いてみるか。
きっと楽しい答えが返ってきそうだ。
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