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番外編
安心安全のために……
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前話のおまけのような小話です。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
愛玩動物看護師、か……。
私との将来のために、資格まで取ろうとしてくれるなんて思ってもみなかった。
伊月が本気で私の、いや、二人の夢だと思ってくれている証拠だ。
伊月が探してくれた通り、桜城大学の獣医学部には愛玩動物看護師になるための専門コースがある。
それに通えば優秀な伊月のことだ。確実に資格を取得できる力を身につけられるだろう。
だが一つ問題がある。
伊月が在籍している経済学部や、医学部、法学部といった桜城大学でも花形と言われる学部は、志良堂教授をはじめとする教授たちや、その学部の卒業生たちの手によって、かなりセキュリティを強化してある。
しかし、私が在籍していた獣医学部は飼育している動物たちとの関係上、キャンパスの中でも少し離れた場所にあり、セキュリティは桜城大学の中でもかなり低いと言えるだろう。しかも実習なども多く、学生たちとの交流も必須だ。そんな中に伊月を入れたら、確実に邪な気持ちを持つものが現れる。そんな心配をしなければいけないくらい伊月は可愛い。
伊月は専門コースに通う学費だけをみて決めたようだから、桜城大学でなくてもいいはずだ。
伊月の目的はあくまでも愛玩動物看護師になることなのだからな。
とすれば、伊月を安心して通わせるならここしかない。
私立桜守大学。
ここは獣医学部もあるし、もちろん愛玩動物看護師になるための専門コースもある。
学費は桜城大学の五倍はするが、そんな金額は私からすれば微々たるものだし、どれだけかかろうとも伊月の安全を求めるなら安いものだ。
なんせ入学を認められる判断は学力だけではない。
しっかりと調査され、安心安全な良家の子女のみが認められるのだから。
伊月の場合は学力は申し分ない。
そして、桜守の卒業生で現桜城大学教授の鳴宮教授と緑川教授の推薦があれば心配はない。
「伊月、桜城大学の専門コースも悪いとは言わない。だが、総合的に判断してせっかくならばここに行って欲しい」
俺は桜守大学の資料を取り寄せて伊月に見せた。
「えっ、でも……」
「学費のことを心配しているならそれは気にしないでいい。俺は伊月が安心して学べる環境にしたい。どうだろう?」
「僕が…‥桜守……」
「嫌か?」
気持ちを込めて問いかけると、伊月は何度も首を横に振った。
「僕……本当は、桜守大学に行きたかったんです。でも両親に国立じゃないとダメだって言われて、急に進路変えたんです。今は、真琴くんとも知り合えたし、鳴宮教授のゼミで最高の勉強をさせてもらって桜城大学に来てよかったって思ってたんですけど、やっぱり桜守大学で学びたかった気持ちも消えなくて……」
「そうか、ならやっぱり桜守大学にしよう。そして、思う存分勉強したらいい。どちらの大学のいいものを吸収したらいいんだ」
「はい。ありがとうございます」
伊月は涙を潤ませながら俺に抱きついてきた。
ああ、よかった。
これで安心して専門コースに通わせることができる。
伊月が桜守大学生になるのか……。ああ、想像するだけで可愛いな。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
愛玩動物看護師、か……。
私との将来のために、資格まで取ろうとしてくれるなんて思ってもみなかった。
伊月が本気で私の、いや、二人の夢だと思ってくれている証拠だ。
伊月が探してくれた通り、桜城大学の獣医学部には愛玩動物看護師になるための専門コースがある。
それに通えば優秀な伊月のことだ。確実に資格を取得できる力を身につけられるだろう。
だが一つ問題がある。
伊月が在籍している経済学部や、医学部、法学部といった桜城大学でも花形と言われる学部は、志良堂教授をはじめとする教授たちや、その学部の卒業生たちの手によって、かなりセキュリティを強化してある。
しかし、私が在籍していた獣医学部は飼育している動物たちとの関係上、キャンパスの中でも少し離れた場所にあり、セキュリティは桜城大学の中でもかなり低いと言えるだろう。しかも実習なども多く、学生たちとの交流も必須だ。そんな中に伊月を入れたら、確実に邪な気持ちを持つものが現れる。そんな心配をしなければいけないくらい伊月は可愛い。
伊月は専門コースに通う学費だけをみて決めたようだから、桜城大学でなくてもいいはずだ。
伊月の目的はあくまでも愛玩動物看護師になることなのだからな。
とすれば、伊月を安心して通わせるならここしかない。
私立桜守大学。
ここは獣医学部もあるし、もちろん愛玩動物看護師になるための専門コースもある。
学費は桜城大学の五倍はするが、そんな金額は私からすれば微々たるものだし、どれだけかかろうとも伊月の安全を求めるなら安いものだ。
なんせ入学を認められる判断は学力だけではない。
しっかりと調査され、安心安全な良家の子女のみが認められるのだから。
伊月の場合は学力は申し分ない。
そして、桜守の卒業生で現桜城大学教授の鳴宮教授と緑川教授の推薦があれば心配はない。
「伊月、桜城大学の専門コースも悪いとは言わない。だが、総合的に判断してせっかくならばここに行って欲しい」
俺は桜守大学の資料を取り寄せて伊月に見せた。
「えっ、でも……」
「学費のことを心配しているならそれは気にしないでいい。俺は伊月が安心して学べる環境にしたい。どうだろう?」
「僕が…‥桜守……」
「嫌か?」
気持ちを込めて問いかけると、伊月は何度も首を横に振った。
「僕……本当は、桜守大学に行きたかったんです。でも両親に国立じゃないとダメだって言われて、急に進路変えたんです。今は、真琴くんとも知り合えたし、鳴宮教授のゼミで最高の勉強をさせてもらって桜城大学に来てよかったって思ってたんですけど、やっぱり桜守大学で学びたかった気持ちも消えなくて……」
「そうか、ならやっぱり桜守大学にしよう。そして、思う存分勉強したらいい。どちらの大学のいいものを吸収したらいいんだ」
「はい。ありがとうございます」
伊月は涙を潤ませながら俺に抱きついてきた。
ああ、よかった。
これで安心して専門コースに通わせることができる。
伊月が桜守大学生になるのか……。ああ、想像するだけで可愛いな。
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