有能な調査員は健気で不憫なかわい子ちゃんを甘やかしたい!

波木真帆

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番外編

愛が溢れる

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初の番外編はここから。
楽しんでいただけると嬉しいです♡


  *   *   *


朝、伊月を腕に抱きながら目覚めて、まだ眠ったままの伊月にキスをする。
俺のキスで目覚める伊月は俺だけの眠り姫だ。
ほんのり頬を染め、蕩けるような笑顔で「おはよう」の挨拶をしてくれる伊月に、もう一度キスをしながら「おはよう」と返し、一日が始まる。

栄養バランスが整った朝食をのんびりと食べ、俺は仕事場である動物病院に向かう。
これは週に二日、多くても三日ほどだから楽なものだ。

自宅からも近い場所にあり、昼食は戻ってきてから伊月と一緒に食べられる。戻ってこられない日は昼食を作ってから向かうことにしている。
伊月は自炊もしていたし、料理は得意な部類に入るだろう。だが、一緒にいる時はともかく一人でいる時間に料理をさせたくなくて俺が用意しているんだ。怪我の心配ももちろんあるが、何よりずっと節約料理を作ってきたから、一人の昼食だとできるだけ食材を使わないように手軽に済ませてしまうのが怖いんだ。
せっかく栄養バランスを整えて健康的な身体になっているのに、ここで戻ってしまうわけにはいかない。
というわけで、料理の全ては俺が担っている。俺が作ったものが伊月の身体を作ると思ったら、料理が楽しくて仕方がない。

その代わりに伊月は掃除も洗濯もしてくれる。基本的に床は掃除ロボットをいくつも入れているから床掃除はいらない。それでも伊月は細かい場所まで綺麗にしてくれる。洗濯もほぼ乾燥機を回しているが、必要なものはランドリールームで干してくれるし、畳むのもとても上手だ。棚にきっちりと綺麗なタオルが並んでいるのを見るのは実に気持ちがいい。

夕食は伊月のリクエストと、俺が伊月に食べさせたいものを作っていく。
最初こそリクエストはあまり言えなかったが、それはあまり料理自体を知らなかったかららしい。
聞けば伊月の両親はほとんど自炊をすることがなく、お金を渡されて一人で食事をするようになってからはほとんど同じものばかり食べていたようだ。そんな生活をしていたら料理名を知らないのも無理はない。

毎日日替わりでいろんな料理を作ったり、たまに外食に行ったりして伊月の知識を増やしてやるとリクエストを言えるようになってきた。こうして今日も伊月のリクエストの食事を作り、一緒に片付けを済ませ、風呂に入る。
伊月の髪と身体を洗ってやり、そのまま風呂場で愛し合うこともあるし、寝室に移動して愛し合うこともある。
挿入回数に差はあれど、毎日一度は愛し合っている。たまには休ませてあげたいと思うがどうしても伊月の裸を前にすると我慢できない。一度ユウさんに聞いてみたが、あちらも挿入回数に差はあれど毎日愛し合っていると教えてくれた。
やっぱりこの年でようやく出会えた最愛には欲が尽きることがないようだ。今までが淡白すぎた分、欲望が爆発しているのかもしれないが、それも仕方がないか。

そんな幸せな生活を送っているが、最近少し気になっていることがある。

少し前に伊月あてに真琴くんから荷物が送られてきた。気になって聞けば、少し動揺しつつも本だと教えてくれた。テスト対策やレポートのために本を貸し借りしたいという話は聞いていたから多分それだろうが、それにしては送られてきた本の量が多かった。しかもそれは部屋の本棚に並べていないようで何かを隠している様子なのが気になる。

まぁ、そんなところまで束縛する気もないが、何かあるなら話をしてほしいと思ってしまう俺はやっぱり少し重いのかもしれない。年下の可愛い恋人に、いや生涯をともにする相手に嫌われたくないが、どうしても気になることは調査しないと気が済まない。これも職業病なのかもしれないと思いつつ、俺はそっとその時を待った。

いつもなら仕事に行っている時間に静かに自宅に戻った。

伊月は今日はオンライン講義がない日だが、何をしているんだろう。

静かにリビングに向かうがしんと静まり返っている。そっと部屋に行くと、脇目も振らずに必死に勉強しているのが見える。机の横には真琴くんから送られてきた箱があり、本がいくつも見える。

よほど集中しているのが俺がのぞいていることに全く気が付かない。伊月はどうやら集中すると寝食を忘れるタイプのようだ。静かに伊月のもとに近づき、箱の本に目をやって驚いた。

「愛玩動物看護師……」

「えっ? わぁっ! しん、い――わぁーっ!!」

あれだけ集中していても俺の呟きは耳に入ったようで、一瞬で振り返ると俺の姿を見て椅子から転げ落ちそうになった。
床に落ちる前にさっと伊月を抱きかかえて腕の中に閉じ込める。

「驚かせてごめん」

「あ、いえ。あの……」

「伊月が何か俺に隠し事をしている気がして、気になって……。ごめん、素直に聞けばよかったのに、もしかしたら心変わりされたんじゃないかって不安で聞けなかったんだ……」

「心変わりなんてそんな……僕は慎一さん以外に心が動いたりしませんよ」

「うん、わかってる。わかってるんだ。でも不安で……」

十も年上なのに恥ずかしい。何やっているんだろう。これこそ呆れられたかもしれない。
そう思ったけれど、伊月は俺にぎゅっと抱きついて、

「ちゃんと話しますね。そろそろ話をしようと思ってたんです」

と笑顔で言ってくれた。

伊月を抱きかかえて、部屋にある二人掛けのソファーに座ると、伊月が俺を見つめて教えてくれた。

「僕……慎一さんと一緒に夢を叶えたいと思って、僕ができることはないかって考えて、愛玩動物看護師っていう資格があることを知ったんです」

「えっ、それって……」

「獣医さんである慎一さんの補助もできるようになりますし、動物のお世話もできます。まずはその国家資格を取れるように頑張りたいなって思ったんです。でも、今まで自分が勉強してきたことと違うから、ついていけるかまずは本を読んで内容を理解できるかやってみようと思って、真琴くんに相談したら本を送ってくれたんです」

そうか、だからあんなにたくさん……。

「本を読み出したらわかりやすくて楽しくて……だから、僕頑張れると思います。そのためには、大学を卒業した後、専門の学校に通わないといけないんですけど、調べたら桜城大学の獣医学部でこの資格の専門コースがあるみたいで、それに通いたいんですけど、いいですか? 僕、ちゃんと学費は働いて貯めますから」

「伊月、ありがとう。伊月がその資格をとってくれたら本当に助かるよ。俺からお願いしたいくらいだ。だから、学費のことは気にしないでくれ」

「いいんですか?」

「ああ。伊月、ありがとう。俺の夢のためにありがとう」

「慎一さんのためだけじゃないですよ、もう僕たちの夢、ですから……」

「伊月っ!!」

俺はこんなに伊月に愛されているんだな。ああ、本当に幸せだ。

「伊月、今どうしても愛し合いたい……いいか?」

「慎一さん……いいですよ。僕は慎一さんのものですから……」

「――っ!!」

俺はそのまま寝室に飛び込んだ。そしてたっぷりと愛し合った。
もう本当に離れられないな。大好きだよ、伊月……。
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