有能な調査員は健気で不憫なかわい子ちゃんを甘やかしたい!

波木真帆

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待ち受け写真

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帰り際にユウさんから渡されたマンゴーと伊月が砂川くんからもらった黒糖饅頭を持って車を降り、伊月と手を繋いでマンションに入ると、大園くんが声をかけてきた。

「おかえりなさいませ。お荷物が届いておりましたが、大きなものでしたのでこちらでお預かりしております」

「ああ、あれか。そうだな。大きくてさすがに宅配ボックスには入らなかったか」

「エレベーターまでお運びいたしましょうか?」

「ああ、頼むよ。あとは私がやるから」

「承知しました」

エレベーターホールを開け、待っていたエレベーターに伊月を乗せると、大園くんが大きな箱を乗せた。

「ありがとう、助かったよ」

お礼を言って俺たちは自宅に戻った。

「これ、あのぬいぐるみですか?」

「ああ。帰ったら届いてるって言ってただろう?」

「はい。すごく可愛かったのですごく嬉しいです」

くそっ、本当に可愛い!
このまま寝室に連れ込もうかと思っていたけど、きっとぬいぐるみを早く見たいと言うだろうな。
ずっと箱の中だと可哀想だと言いそうだし。

いや、ここまで待ったんだ。ここで焦るなよ、俺。しっかりしろ。

心の中で大きく深呼吸をしている間に、エレベーターが俺たちの階に泊まった。

伊月を先に降ろし箱を持って降りると、伊月が玄関の鍵を開け、扉も開けて待ってくれていた。
指紋を登録しておいたおかげで助かったな。

「ありがとう」

「いえ、慎一さんの役に立てて嬉しいです」

こういうことをサラッと言ってくれるのが嬉しいんだよな。

部屋の中に入り、箱を床に置いてからお土産が入った紙袋をテーブルにおいた。

「すぐに箱を開けよう」

「わぁ、嬉しいです」

やっぱり早く見たかったんだろうな。でも自分からは言わないんだ。

中を傷つけたりしないように箱を開けると、丁寧に梱包されたぬいぐるみが出てきた。

「ほら、伊月」

小さい方のぬいぐるみから渡すとそれを嬉しそうに胸に抱き、満面の笑みを見せてくれる。

ああ、可愛い。本当に可愛い。
ほんの少しぬいぐるみに嫉妬しそうになるが、伊月の気持ちは俺だけのものだからぬいぐるみに見せる笑顔くらいは許してやろう。俺がいない間、伊月を守ってくれるものだからな。

「こっちの子も抱っこする?」

「はい!」

嬉しそうな伊月にもう一つのぬいぐるみを渡すと、小さいのと一緒に抱っこしてくれる姿がとんでもなく可愛い!

「可愛い!」

伊月はぬいぐるみに夢中だが、いやいや、可愛いのは伊月の方だ。

「伊月、こっち向いて」

「えっ? わっ!」

構えたスマホで、こっちを向いた伊月を撮るととてつもなく可愛い写真が撮れた。
過去最高の写真かもしれないと思えるほどの出来に思わず顔がニヤける。

「慎一さん、急に写真なんか恥ずかしいですよ」

「いいんだよ、伊月が可愛いから。ほら、見て」

大きな犬と小さな犬を抱っこした伊月が笑顔のまま俺を見ているところがしっかり撮れてて最高に可愛い。

「これ、待ち受けにしよう。そうしたらいつでも見られる」

「今までは待ち受け……どんな写真だったんですか?」

「見たい?」

俺の問いかけに伊月は小さく頷いた。

「いいよ。俺は伊月には隠し事しないって決めてるから」

俺はスマホの待ち受け画面を伊月に見えるように向けた。

「えっ? これ……」

「伊月の寝顔。病室で撮ったやつだよ」

「いつの間に?」

「前に夜中行った時があっただろう? お菓子を持って行った時」

「あっ! あの時……」

「そう。寝顔が可愛くて、我慢できなくて頭を撫でたら伊月が嬉しそうな顔をして俺の名前を呼んでくれて……それが可愛くてこっそり写真撮っちゃったんだ。それからずっとこれ。いっつも夜寝る前に見て、早く会いたいなって思ってた」

「慎一さん……」

重いと思われてもよかった。
俺がどれだけ伊月を好きかを知って欲しかったから。

ちょっと引かれるかもと思ったけど、伊月はぬいぐるみを抱いたまま俺に抱きついてきた。

「伊月……」

「僕も毎日、慎一さんが送ってくれた写真見て寝てたので同じだって思って嬉しかったです。あの、僕……早く慎一さんと、その……イチャイチャしたいです」

「えっ? イチャイチャ?」

「真琴くんがそう言ったら、いっぱい幸せな時間を過ごせるよって教えてくれたんです。だから……」

「――っ!!! ああ、わかった。イチャイチャしよう」

俺はさっと伊月の腕からぬいぐるみをとってソファーに座らせ、そのまま伊月を抱きかかえて急いで寝室に連れんだ。
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