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名前で呼びたくて
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「んーっ、このプリン。美味しい!!」
「でしょう?」
得意げな顔の真琴くんと目を輝かせている伊月くん。伊月くんが三つも年上には見えないな。本当に可愛い。
「うん。慎一さんからもらったあのプリンがずっと一番だと思ってたけど、これも美味しい」
「河北さんがくれたプリン? どんなの?」
「えっと、少し硬めのプリンに生クリームと果物が乗ってたよ」
「わぁ、それ美味しそう!!」
そうか。伊月くんの中ではあのプリンが一番だったか。
まぁ、あれはこの抹茶プリンとは全く別物だし、まだ俺のプリンが伊月くんの中では一番だってことでいいよな。
「シン」
「なんですか?」
「田淵くんが言っていたプリンの店はどこだ?」
「ああ。砂川くんに買うんですか?」
「まぁな。真琴は自分からねだるようなことはしないからこういうことはチェックしとかないとな」
「なるほど。後でURL送っておきますよ」
砂川くんがたべたいもの、行きたい場所を聞いたらすぐに願いを叶えてあげるつもりなんだろう。まぁ、ユウさんに出来なことはほぼないと言っていいだろうからな。それにしても砂川くんも自分からおねだりはしないタイプか。だから伊月くんとも合うんだろうな。
俺もユウさんも愛しい恋人にはどんなおねだりをされても叶えられるだけの金と人脈を持っているが、伊月くんは俺がタワマンに住んでようが、車をたくさん持っていようが、それを自分のものだとは思ってない。あくまでも俺がいるから使ってくれるだけだ。
豪華な生活をしてもそれに溺れることもないし、いつでも感謝の気持ちを忘れることがない。
きっと砂川くんも同じなんだろうな。と言っても、俺は砂川くんには一切惹かれない。それと同じようにユウさんも伊月くんには興味がないだろう。
いや、興味がないというのは語弊があるな。砂川くんの友人としての存在は認めているだろうし、何かあれば助けてもくれるだろうが、決して好きにはならない。
それがわかっているから、これからも四人で過ごせるんだ。
少しでも俺が砂川くんに興味を持とうものならおそらく近くによることもさせないだろうし、今回の食事会だって、俺に伊月くんという相手がいるからこそ成り立ったと言っても過言じゃない。
それくらい、ユウさんが砂川くんにとてつもなく激重な愛情を持っていることは間違いない。
安慶名先輩と砂川くんのお兄さんも一緒に四人で砂川兄弟の実家に帰省していたとさっき聞いたけれど、安慶名先輩もユウさんに負けず劣らず激重そうだから、お互い自分の相手以外は目もくれないだろう。だからこそ、一緒に旅行なんて行けるんだろうな。
まぁ、俺も伊月くんに関してはそこそこ激重な自覚はあるから大して変わらないかもしれないな。
「ねぇ。砂川くん……」
「どうかした?」
「あのさ、僕……入院先でずっとリハビリしてたんだけど……そこで僕たちと同じ大学三年の実習生が担当になってくれて、すごく仲良くなったんだ」
デザートもほとんど食べ終わりの頃、突然伊月くんが谷垣くんの話を始めた。砂川くんはキョトンとしながらも、伊月くんの話を真剣に聞いているようだ。
「そっか。友達ができると頑張りがいがあるよね」
「うん。それでね、その子から伊月くんって名前で呼ばれてて……あ、その子の学校、みんな名前で呼び合うことが多いらしくて……」
そういうと伊月くんは少し間をとったけれど、意を決した表情で砂川くんを見つめた。
「あの、それで……砂川くんにも名前で呼んでほしいなって……。それで、できたら……僕も砂川くんを名前で呼びたくて……だめ、かな?」
「田淵くん……」
なるほど。それを言いたかったのか。俺もユウさんも二人の成り行きを見守っていると、
「もちろん! ぜひ名前で呼んでよ!! 僕も伊月くんって呼ばせてもらうね!!」
と嬉しそうな声をあげた。
「本当に、いいの?」
「うん。あのね、実はずっと田淵くんのこと名前で呼びたかったんだ」
「えっ? 本当に?」
「うん。地元っていうか、沖縄ではクラスに同じ苗字の子がいっぱいいるから、間違えないように名前で呼び合うのが割と普通でね。でも、こっちだと苗字で呼ぶのが当たり前で、名前は相当仲が良い子しか呼び合わないって聞いてたから、大学ではちゃんと苗字で呼ぶように努力してたんだ」
そんな事情があったのか……知らなかったな。
「そういえば、昔そんなことを安慶名が言ってたな。沖縄ではみんなから伊織って名前で呼ばれていたから、こっちにきて安慶名くんと呼ばれて不思議な気がしたって。今はもうすっかり慣れたみたいだけど」
「こっちから見れば、ただのクラスメイトから下の名前で呼ばれる方が不思議な気がしますけどね」
「そうだな。でもこれで真琴も田淵くんを名前で呼ぶのか。お前も呼び方を変えた方がいいんじゃないか?」
「そうですね。帰ったら早速提案します」
恋人なんだから友達よりは一段上にいないとな。伊月、か……。いいな。
「でしょう?」
得意げな顔の真琴くんと目を輝かせている伊月くん。伊月くんが三つも年上には見えないな。本当に可愛い。
「うん。慎一さんからもらったあのプリンがずっと一番だと思ってたけど、これも美味しい」
「河北さんがくれたプリン? どんなの?」
「えっと、少し硬めのプリンに生クリームと果物が乗ってたよ」
「わぁ、それ美味しそう!!」
そうか。伊月くんの中ではあのプリンが一番だったか。
まぁ、あれはこの抹茶プリンとは全く別物だし、まだ俺のプリンが伊月くんの中では一番だってことでいいよな。
「シン」
「なんですか?」
「田淵くんが言っていたプリンの店はどこだ?」
「ああ。砂川くんに買うんですか?」
「まぁな。真琴は自分からねだるようなことはしないからこういうことはチェックしとかないとな」
「なるほど。後でURL送っておきますよ」
砂川くんがたべたいもの、行きたい場所を聞いたらすぐに願いを叶えてあげるつもりなんだろう。まぁ、ユウさんに出来なことはほぼないと言っていいだろうからな。それにしても砂川くんも自分からおねだりはしないタイプか。だから伊月くんとも合うんだろうな。
俺もユウさんも愛しい恋人にはどんなおねだりをされても叶えられるだけの金と人脈を持っているが、伊月くんは俺がタワマンに住んでようが、車をたくさん持っていようが、それを自分のものだとは思ってない。あくまでも俺がいるから使ってくれるだけだ。
豪華な生活をしてもそれに溺れることもないし、いつでも感謝の気持ちを忘れることがない。
きっと砂川くんも同じなんだろうな。と言っても、俺は砂川くんには一切惹かれない。それと同じようにユウさんも伊月くんには興味がないだろう。
いや、興味がないというのは語弊があるな。砂川くんの友人としての存在は認めているだろうし、何かあれば助けてもくれるだろうが、決して好きにはならない。
それがわかっているから、これからも四人で過ごせるんだ。
少しでも俺が砂川くんに興味を持とうものならおそらく近くによることもさせないだろうし、今回の食事会だって、俺に伊月くんという相手がいるからこそ成り立ったと言っても過言じゃない。
それくらい、ユウさんが砂川くんにとてつもなく激重な愛情を持っていることは間違いない。
安慶名先輩と砂川くんのお兄さんも一緒に四人で砂川兄弟の実家に帰省していたとさっき聞いたけれど、安慶名先輩もユウさんに負けず劣らず激重そうだから、お互い自分の相手以外は目もくれないだろう。だからこそ、一緒に旅行なんて行けるんだろうな。
まぁ、俺も伊月くんに関してはそこそこ激重な自覚はあるから大して変わらないかもしれないな。
「ねぇ。砂川くん……」
「どうかした?」
「あのさ、僕……入院先でずっとリハビリしてたんだけど……そこで僕たちと同じ大学三年の実習生が担当になってくれて、すごく仲良くなったんだ」
デザートもほとんど食べ終わりの頃、突然伊月くんが谷垣くんの話を始めた。砂川くんはキョトンとしながらも、伊月くんの話を真剣に聞いているようだ。
「そっか。友達ができると頑張りがいがあるよね」
「うん。それでね、その子から伊月くんって名前で呼ばれてて……あ、その子の学校、みんな名前で呼び合うことが多いらしくて……」
そういうと伊月くんは少し間をとったけれど、意を決した表情で砂川くんを見つめた。
「あの、それで……砂川くんにも名前で呼んでほしいなって……。それで、できたら……僕も砂川くんを名前で呼びたくて……だめ、かな?」
「田淵くん……」
なるほど。それを言いたかったのか。俺もユウさんも二人の成り行きを見守っていると、
「もちろん! ぜひ名前で呼んでよ!! 僕も伊月くんって呼ばせてもらうね!!」
と嬉しそうな声をあげた。
「本当に、いいの?」
「うん。あのね、実はずっと田淵くんのこと名前で呼びたかったんだ」
「えっ? 本当に?」
「うん。地元っていうか、沖縄ではクラスに同じ苗字の子がいっぱいいるから、間違えないように名前で呼び合うのが割と普通でね。でも、こっちだと苗字で呼ぶのが当たり前で、名前は相当仲が良い子しか呼び合わないって聞いてたから、大学ではちゃんと苗字で呼ぶように努力してたんだ」
そんな事情があったのか……知らなかったな。
「そういえば、昔そんなことを安慶名が言ってたな。沖縄ではみんなから伊織って名前で呼ばれていたから、こっちにきて安慶名くんと呼ばれて不思議な気がしたって。今はもうすっかり慣れたみたいだけど」
「こっちから見れば、ただのクラスメイトから下の名前で呼ばれる方が不思議な気がしますけどね」
「そうだな。でもこれで真琴も田淵くんを名前で呼ぶのか。お前も呼び方を変えた方がいいんじゃないか?」
「そうですね。帰ったら早速提案します」
恋人なんだから友達よりは一段上にいないとな。伊月、か……。いいな。
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