29 / 40
世の中狭いな
しおりを挟む
「あっ、田淵くん、これ前に来た時食べたけど美味しかったよ」
「えー、そうなんだ。美味しそう!」
「あ、こっちのも美味しかったよ」
「美味しいのばっかりだから悩むよ」
「ねぇ、抹茶プリンとは別に、気になるのを二個選んで半分こしようよ。そうしたらプリンも合わせて三種類も食べられるよ」
「あ、それいい!」
二人の可愛い会話と伊月くんの嬉しそうな表情に顔が緩む。
「優一さん、抹茶プリンと、あと、これとこれも頼んでもいいですか?」
「ああ。ここから頼めるから好きなだけ頼むといい」
ユウさんがタブレットを渡すと、砂川くんは伊月くんと嬉しそうにタブレットを操作し始めた。
ああ、本当に可愛いな。
「シン。顔」
「ユウさんだってずっとニヤけてますよ」
「そうか?」
「でも本当、砂川くんの話聞いた時からいつものユウさんらしくないって思ってましたけど、一緒にいるのを見たら余計に思いましたよ」
「お前も人のことは言えないけどな」
「それは自覚してますよ。絶対に手放したくないって思ってますから」
「それはわかるよ。俺も同じだから」
俺と話しながらも意識は砂川くんに向けているんだろう。表情全てが愛しいと訴えているのがわかる。
俺もユウさんもこの歳でようやく見つけた最愛の相手だからな。
「それで、あの話はしたのか?」
「もちろんです。俺が伊月くんに隠し事はしないって決めてますから。ユウさんもでしょう?」
「ああ。だから今日は仕事仲間のお前に会わせると言って連れてきたんだ。まさか恋人連れで、その恋人が自分の友人だとは思ってなかったからものすごく驚いていたけどな。真琴が驚く可愛い顔が見られて楽しかったよ」
「ユウさんも人が悪い。でも俺も伊月くんの可愛い顔を見られてよかったですよ」
「だろう? まぁ、これからしょっちゅう四人で会うことになるよ。真琴も田淵くんのことはずっと気にしていたし」
「そうですね。ああ、そう言えばこれから仕事の時はどうします? もし必要ならうちのマンションで砂川くんを預かってもいいですよ。砂川くんが一緒なら伊月くんを一人にしても安心だし」
俺たちのプライベートな部屋は伊月くんも二人だけがいいと言ってくれたからそこに入れることはしないが、マンションの中にある俺専用のゲストルームでなら、セキュリティーも万全だし、食事などについても心配はいらない。
「そうそう。それについても今日話そうと思っていたんだ。どうしてもの時はシンのところのゲストルームを使わせてもらうが、それ以外は真琴は志良堂教授の家に預けるつもりなんだ。田淵くんも一緒に預けるといい」
「えっ? 志良堂教授に? 安慶名先輩のお父さんですよね? もしかして、そのつながりで頼んだんですか? でもそれだと伊月くんは緊張してしまうんじゃ……」
経済学部に通っている伊月くんが経済学部の教授である志良堂教授の家で過ごすなんて……。しかもその家には鳴宮教授までいらっしゃるのに。伊月くんにとっては憧れの存在である二人の家でなんて寛げるはずが無い。
「まぁ、田淵くんが最初は緊張するのも仕方がないだろうが、何度か行けば慣れるだろう。鳴宮教授は真琴や田淵くんのようなタイプは大歓迎してくれるからな」
「それはそうですけど……志良堂教授に預ける何か特別な理由でもあるんですか?」
「ああ。大声出すなよ。実はな……」
ユウさんからの話は俺でさえ、想像もしていなかった話すぎて、ええーーっ!! と叫びたくなるのを必死に抑えた。
「それ、本当なんですか?」
「ああ。俺は真琴からお兄さんの話を聞いて、もしかしたら安慶名かもしれないってアタリをつけていたけど、安慶名の方は本当に寝耳に水だったみたいで俺と真琴を見て混乱しまくっていたよ」
あの安慶名先輩が混乱してしまうのも無理はない。安慶名先輩の恋人が偶然にも砂川くんのお兄さんだったと言うのだから。今聞いた俺でさえ大声で叫んでしまいそうになったんだ。当事者ならパニックになるのも当然だ。
「あ、だから志良堂教授の家に?」
「そう。真琴はお二人にとっては、息子の伴侶の弟だからね。安慶名たちと四人で教授たちに挨拶に行ったら、大喜びしてたよ。田淵くんはその真琴の親友だから、いつだって引き受けるから連れておいでって言われてるんだ」
「そうなんですね。あのお二人が見ていてくださるなら安心ですね」
「だろう?」
得意げな表情を見せるユウさんに思わず笑ってしまう。だけど、本当に世の中って狭いものだな。
「えー、そうなんだ。美味しそう!」
「あ、こっちのも美味しかったよ」
「美味しいのばっかりだから悩むよ」
「ねぇ、抹茶プリンとは別に、気になるのを二個選んで半分こしようよ。そうしたらプリンも合わせて三種類も食べられるよ」
「あ、それいい!」
二人の可愛い会話と伊月くんの嬉しそうな表情に顔が緩む。
「優一さん、抹茶プリンと、あと、これとこれも頼んでもいいですか?」
「ああ。ここから頼めるから好きなだけ頼むといい」
ユウさんがタブレットを渡すと、砂川くんは伊月くんと嬉しそうにタブレットを操作し始めた。
ああ、本当に可愛いな。
「シン。顔」
「ユウさんだってずっとニヤけてますよ」
「そうか?」
「でも本当、砂川くんの話聞いた時からいつものユウさんらしくないって思ってましたけど、一緒にいるのを見たら余計に思いましたよ」
「お前も人のことは言えないけどな」
「それは自覚してますよ。絶対に手放したくないって思ってますから」
「それはわかるよ。俺も同じだから」
俺と話しながらも意識は砂川くんに向けているんだろう。表情全てが愛しいと訴えているのがわかる。
俺もユウさんもこの歳でようやく見つけた最愛の相手だからな。
「それで、あの話はしたのか?」
「もちろんです。俺が伊月くんに隠し事はしないって決めてますから。ユウさんもでしょう?」
「ああ。だから今日は仕事仲間のお前に会わせると言って連れてきたんだ。まさか恋人連れで、その恋人が自分の友人だとは思ってなかったからものすごく驚いていたけどな。真琴が驚く可愛い顔が見られて楽しかったよ」
「ユウさんも人が悪い。でも俺も伊月くんの可愛い顔を見られてよかったですよ」
「だろう? まぁ、これからしょっちゅう四人で会うことになるよ。真琴も田淵くんのことはずっと気にしていたし」
「そうですね。ああ、そう言えばこれから仕事の時はどうします? もし必要ならうちのマンションで砂川くんを預かってもいいですよ。砂川くんが一緒なら伊月くんを一人にしても安心だし」
俺たちのプライベートな部屋は伊月くんも二人だけがいいと言ってくれたからそこに入れることはしないが、マンションの中にある俺専用のゲストルームでなら、セキュリティーも万全だし、食事などについても心配はいらない。
「そうそう。それについても今日話そうと思っていたんだ。どうしてもの時はシンのところのゲストルームを使わせてもらうが、それ以外は真琴は志良堂教授の家に預けるつもりなんだ。田淵くんも一緒に預けるといい」
「えっ? 志良堂教授に? 安慶名先輩のお父さんですよね? もしかして、そのつながりで頼んだんですか? でもそれだと伊月くんは緊張してしまうんじゃ……」
経済学部に通っている伊月くんが経済学部の教授である志良堂教授の家で過ごすなんて……。しかもその家には鳴宮教授までいらっしゃるのに。伊月くんにとっては憧れの存在である二人の家でなんて寛げるはずが無い。
「まぁ、田淵くんが最初は緊張するのも仕方がないだろうが、何度か行けば慣れるだろう。鳴宮教授は真琴や田淵くんのようなタイプは大歓迎してくれるからな」
「それはそうですけど……志良堂教授に預ける何か特別な理由でもあるんですか?」
「ああ。大声出すなよ。実はな……」
ユウさんからの話は俺でさえ、想像もしていなかった話すぎて、ええーーっ!! と叫びたくなるのを必死に抑えた。
「それ、本当なんですか?」
「ああ。俺は真琴からお兄さんの話を聞いて、もしかしたら安慶名かもしれないってアタリをつけていたけど、安慶名の方は本当に寝耳に水だったみたいで俺と真琴を見て混乱しまくっていたよ」
あの安慶名先輩が混乱してしまうのも無理はない。安慶名先輩の恋人が偶然にも砂川くんのお兄さんだったと言うのだから。今聞いた俺でさえ大声で叫んでしまいそうになったんだ。当事者ならパニックになるのも当然だ。
「あ、だから志良堂教授の家に?」
「そう。真琴はお二人にとっては、息子の伴侶の弟だからね。安慶名たちと四人で教授たちに挨拶に行ったら、大喜びしてたよ。田淵くんはその真琴の親友だから、いつだって引き受けるから連れておいでって言われてるんだ」
「そうなんですね。あのお二人が見ていてくださるなら安心ですね」
「だろう?」
得意げな表情を見せるユウさんに思わず笑ってしまう。だけど、本当に世の中って狭いものだな。
630
お気に入りに追加
793
あなたにおすすめの小説
貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話
タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。
叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……?
エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。

見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる