有能な調査員は健気で不憫なかわい子ちゃんを甘やかしたい!

波木真帆

文字の大きさ
上 下
17 / 40

お風呂上がりの天使

しおりを挟む
「はい。これ、着替えね」

下着とパジャマを渡して、お風呂に誘導する。

「この下着……」

「サイズ合わなかった?」

入院中も同じものを着させていたし、そんなことはないはずだけど……と思いながら尋ねると、伊月くんはほんのり頬を染めて、口を開いた。

「いえ、これ……すごく着心地良くてびっくりしました。下着ってどれも同じだと思っていたけど違うんですね」

「ははっ。気に入ってくれたなら嬉しいよ。伊月くん、肌が弱いみたいだったから優しい素材のものにしておいたんだ。強いゴムだと肌が赤くなるだろう?」

「えっ? あ、はい。そうです。それですぐに痒くなってしまって……でも、入院中は一度もそういうことはなかったです。慎一さんが僕のことを守ってくれていたってことなんですね」

「ああ。伊月くんのことはちゃんとわかってるから、安心していいよ」

「慎一さん……」

部屋を片付けに行ったからよくわかる。掃除は行き届いていてとても綺麗だったけれど、服も下着も靴下もかなりの期間使っているのがわかった。下着はゴムを付け替えたり靴下や洋服は穴が開いたのを縫って使っていた。

本当ならもっと手をかけないといけないくらい繊細な肌をしているのに、そういうものにお金をかけられないくらい貧しい生活をしていたということだ。

俺の家に来たからにはそんな心配などさせない。

「シャンプーもボディーソープも安心して使っていいよ」

俺の言葉にホッとしたように笑ったのは、きっとそれらにも苦労していたんだろう。お風呂場には安いものがいくつか置かれていたからな。

「何かあったらお風呂場の中のボタンを押してくれたらすぐにいくから」

「はい。わかりました」

本当は一緒に入りたかった。
でも入ったら我慢ができなくなるとわかっているから。そんななし崩しには始めたくない。やっぱり初めてはベッドの上で……不安にさせたくないんだ。

お風呂場に案内し、よからぬ妄想をしてしまう前に寝室を整えておく。

今日は絶対にないとわかっていても一応、念のために手に届く位置にこっそりとローションを忍ばせて準備しておいた。

伊月くんを一人で待たせたくないから、伊月くんがお風呂から出てくる前に俺もシャワーを浴びておく。俺はシャワーで十分だ。たっぷりと欲を洗い流し、伊月くんとお揃いのパジャマに着替えてキッチンに向かった。

冷蔵庫からレモン水を取り出し、グラスに注いで飲んでいると

「あっ、お風呂……いただきました」

と可愛い声が聞こえた。

「伊月くんもレモン――っ!!!」

振り返って伊月くんをみた俺の目に飛び込んできたのは、お風呂であったまってピンク色のほっぺたになって、少し大きめのお揃いのパジャマを着た伊月くんの姿。

あまりにも可愛い姿に目が離せない。だが見続けていると、可愛すぎて鼻血が出そうだ。

「あ、あの……しん、いちさん……どうか、したんですか?」

心配そうに駆け寄ってきてくれる伊月くんをみてハッと我に返った。

「いや、違うんだ。伊月くんが可愛すぎて見惚れてた」

「えっ、可愛すぎてって……そんなこと……」

「本当だよ。伊月くんには嘘なんて吐かない。俺とお揃いのパジャマ着てくれてるだけでも可愛いのに、お風呂であったまってピンク色のほっぺたをしているのもすっごく可愛いよ」

「そんなっ、恥ずかしいです」

「ごめん、でも本当の気持ちなんだ」

どうしても抑えられない。それくらい伊月くんが可愛くて愛おしい。

「髪、まだ濡れてるね。乾かそうか。おいで」

移動させる前にさっとレモン水を飲ませて、リビングのソファーに連れていく。ふわふわのラグに座らせて、俺の足の間に入れ髪を乾かしていくと、綺麗なうなじが見えて興奮する。
女性が髪をまとめた時のうなじにそそられるなんて話を聞くたびにそんなことないだろうと否定的だったが、好きな相手だとこんなにも興奮するものなのだと初めて知った。
これからもずっと伊月くんから俺はいろんなことを学ぶのだろう。

「誰かに髪を乾かしてもらうなんて初めてです」

「よかった。俺も人の髪を乾かすのは初めてだよ」

シャンプーも伊月くんに合っていたみたいだな。柔らかくなって髪本来の質が戻ってきたみたいだ。

「さぁ、これでいい」

「わぁ、いつもと全然違います」

「そうだろう? これからは毎日俺がやるから。さぁ、ベッドに行こうか」

ベッドという言葉を聞いて少し恥ずかしそうにしていた伊月くんを連れて、俺は寝室の扉を開けた。

広いベッドに先に伊月くんを寝かせて、俺は隣に身体を滑り込ませた。

「どう? 狭くない?」

「だ、大丈夫です」

「緊張してる?」

「誰かと寝るのは初めてだから……」

「大丈夫、俺もだから。くっついたら恥ずかしく無くなるよ。おいで」

断られるかと思ったけれど、伊月くんはスッと俺が伸ばした腕の中に入ってきてくれた。

「やっぱりいい匂いがしますね」

嬉しそうに匂いを嗅ぐ伊月くんを見て、俺は興奮を抑えられなかった。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました

ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。 愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。 ***************** 「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。 ※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。 ※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。  評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。 ※小説家になろう様でも公開中です。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

動物アレルギーのSS級治療師は、竜神と恋をする

拍羅
BL
SS級治療師、ルカ。それが今世の俺だ。 前世では、野犬に噛まれたことで狂犬病に感染し、死んでしまった。次に目が覚めると、異世界に転生していた。しかも、森に住んでるのは獣人で人間は俺1人?!しかも、俺は動物アレルギー持ち… でも、彼らの怪我を治療出来る力を持つのは治癒魔法が使える自分だけ… 優しい彼が、唯一触れられる竜神に溺愛されて生活するお話。

運命の息吹

梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。 美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。 兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。 ルシアの運命のアルファとは……。 西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。

処理中です...