有能な調査員は健気で不憫なかわい子ちゃんを甘やかしたい!

波木真帆

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お風呂上がりの天使

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「はい。これ、着替えね」

下着とパジャマを渡して、お風呂に誘導する。

「この下着……」

「サイズ合わなかった?」

入院中も同じものを着させていたし、そんなことはないはずだけど……と思いながら尋ねると、伊月くんはほんのり頬を染めて、口を開いた。

「いえ、これ……すごく着心地良くてびっくりしました。下着ってどれも同じだと思っていたけど違うんですね」

「ははっ。気に入ってくれたなら嬉しいよ。伊月くん、肌が弱いみたいだったから優しい素材のものにしておいたんだ。強いゴムだと肌が赤くなるだろう?」

「えっ? あ、はい。そうです。それですぐに痒くなってしまって……でも、入院中は一度もそういうことはなかったです。慎一さんが僕のことを守ってくれていたってことなんですね」

「ああ。伊月くんのことはちゃんとわかってるから、安心していいよ」

「慎一さん……」

部屋を片付けに行ったからよくわかる。掃除は行き届いていてとても綺麗だったけれど、服も下着も靴下もかなりの期間使っているのがわかった。下着はゴムを付け替えたり靴下や洋服は穴が開いたのを縫って使っていた。

本当ならもっと手をかけないといけないくらい繊細な肌をしているのに、そういうものにお金をかけられないくらい貧しい生活をしていたということだ。

俺の家に来たからにはそんな心配などさせない。

「シャンプーもボディーソープも安心して使っていいよ」

俺の言葉にホッとしたように笑ったのは、きっとそれらにも苦労していたんだろう。お風呂場には安いものがいくつか置かれていたからな。

「何かあったらお風呂場の中のボタンを押してくれたらすぐにいくから」

「はい。わかりました」

本当は一緒に入りたかった。
でも入ったら我慢ができなくなるとわかっているから。そんななし崩しには始めたくない。やっぱり初めてはベッドの上で……不安にさせたくないんだ。

お風呂場に案内し、よからぬ妄想をしてしまう前に寝室を整えておく。

今日は絶対にないとわかっていても一応、念のために手に届く位置にこっそりとローションを忍ばせて準備しておいた。

伊月くんを一人で待たせたくないから、伊月くんがお風呂から出てくる前に俺もシャワーを浴びておく。俺はシャワーで十分だ。たっぷりと欲を洗い流し、伊月くんとお揃いのパジャマに着替えてキッチンに向かった。

冷蔵庫からレモン水を取り出し、グラスに注いで飲んでいると

「あっ、お風呂……いただきました」

と可愛い声が聞こえた。

「伊月くんもレモン――っ!!!」

振り返って伊月くんをみた俺の目に飛び込んできたのは、お風呂であったまってピンク色のほっぺたになって、少し大きめのお揃いのパジャマを着た伊月くんの姿。

あまりにも可愛い姿に目が離せない。だが見続けていると、可愛すぎて鼻血が出そうだ。

「あ、あの……しん、いちさん……どうか、したんですか?」

心配そうに駆け寄ってきてくれる伊月くんをみてハッと我に返った。

「いや、違うんだ。伊月くんが可愛すぎて見惚れてた」

「えっ、可愛すぎてって……そんなこと……」

「本当だよ。伊月くんには嘘なんて吐かない。俺とお揃いのパジャマ着てくれてるだけでも可愛いのに、お風呂であったまってピンク色のほっぺたをしているのもすっごく可愛いよ」

「そんなっ、恥ずかしいです」

「ごめん、でも本当の気持ちなんだ」

どうしても抑えられない。それくらい伊月くんが可愛くて愛おしい。

「髪、まだ濡れてるね。乾かそうか。おいで」

移動させる前にさっとレモン水を飲ませて、リビングのソファーに連れていく。ふわふわのラグに座らせて、俺の足の間に入れ髪を乾かしていくと、綺麗なうなじが見えて興奮する。
女性が髪をまとめた時のうなじにそそられるなんて話を聞くたびにそんなことないだろうと否定的だったが、好きな相手だとこんなにも興奮するものなのだと初めて知った。
これからもずっと伊月くんから俺はいろんなことを学ぶのだろう。

「誰かに髪を乾かしてもらうなんて初めてです」

「よかった。俺も人の髪を乾かすのは初めてだよ」

シャンプーも伊月くんに合っていたみたいだな。柔らかくなって髪本来の質が戻ってきたみたいだ。

「さぁ、これでいい」

「わぁ、いつもと全然違います」

「そうだろう? これからは毎日俺がやるから。さぁ、ベッドに行こうか」

ベッドという言葉を聞いて少し恥ずかしそうにしていた伊月くんを連れて、俺は寝室の扉を開けた。

広いベッドに先に伊月くんを寝かせて、俺は隣に身体を滑り込ませた。

「どう? 狭くない?」

「だ、大丈夫です」

「緊張してる?」

「誰かと寝るのは初めてだから……」

「大丈夫、俺もだから。くっついたら恥ずかしく無くなるよ。おいで」

断られるかと思ったけれど、伊月くんはスッと俺が伸ばした腕の中に入ってきてくれた。

「やっぱりいい匂いがしますね」

嬉しそうに匂いを嗅ぐ伊月くんを見て、俺は興奮を抑えられなかった。
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