14 / 40
四人で会おうか
しおりを挟む
久しぶりに外に出て疲れているだろうから、少し休んだほうがいいと声をかけて俺たちのベッドに寝かせていると、内ポケットに入れていたスマホが振動を伝えてきた。そっと画面表示を見るとユウさんの名前が見えた。
ユウさんとは砂川くんのあの事件が解決してから、一件砂川くんがらみの仕事で動いて、その報告をしにカフェで話をした以来だ。そういえば、あの時俺とユウさんが一緒にいるのを砂川くんがみて、裏の話を話すことになったと報告が来ていた。
それでユウさんが調査員をしていることも、俺がその手伝いをしていることも全て話すことになったそうだが、砂川くんはちゃんとそれを自分の胸にだけ留めていたんだな。
俺が伊月くんと一緒にいることも伊月くんからのメッセージで知っているだろうに、俺がユウさんの裏の仕事を請け負っている調査員だとはバラさなかった。それは今日、伊月くんに包み隠さず話した時の反応からも、伊月くんが今日初めて聞いた話だとわかったからだ。
砂川くんは信頼のおける子だな。そして、伊月くんも自分からは砂川くんには言わないだろう。そのことも含めて一度ユウさんとは話をしておいたほうがいいと思っていたから、この電話はいいタイミングと言えるだろう。
可愛い寝顔を見せてくれている伊月くんから離れるのは少し寂しかったが、気持ちよさそうに眠っている伊月くんの頬にそっとキスを落として、ベッドから下りて寝室を出てから電話をとった。
ーシン。今大丈夫か?
ーええ。少しなら大丈夫ですよ。何か仕事の話ですか?
ーいや、今のところは差し迫っている案件はないから心配しないでいい。田淵くんのことで連絡したんだ。退院したそうだな。おめでとう。
ーありがとうございます。砂川くんから聞いたんですか?
ーああ。お祝いに行きたがってたんだが、都合が合わなくて残念がってたよ。
ーははっ。そうだったんですね。てっきりユウさんが行かせないようにしたんだと思ってましたよ。
ー私が? なんで、そんなこと。
ーユウさん、砂川くんのことに関しては狭量じゃないですか。
ー狭量って……まぁ、そのことについては反論できないが。それはお前もだろう? 退院したあと、一緒に暮らすことになったと真琴から聞いたぞ。
ーああ、やっぱりそこまで聞いてましたか。セキュリティの甘すぎるアパートに住んでましたからね。二ヶ月も入院してましたし、家賃を払い続けるのも勿体無いでしょう? だから、一緒に暮らすように提案したんですよ。
ーそれでよく了承してくれたな。
ーええ。住み込みで家事をして欲しいと頼みました。
ーははっ。なんでもできるお前の家で、住み込みで家事か。それはいい手だったな。それで、今日から落としにかかるわけか? お前も田淵くんを気に入っているんだろう?
ーええ。それならもう大丈夫です。
ーえっ?
ーもう思いを伝え合いましたから。晴れて恋人になりました。
ーもう? それは早いな。あ、それじゃあもしかして邪魔したか?
ーいえ。そんな気遣いは大丈夫です。ゆっくり進めていくことにしたので。
ーそうか、それは……すごいな。
顔が見えなくても驚きの表情を浮かべているのが手に取るようにわかって笑ってしまった。
この反応から察するに、きっとユウさんは砂川くんを家に入れてすぐに手を出したんだろう。
一回り以上も下の相手に惹かれて声もかけられないと言っていたくらいだ。そばに来たら我慢できなかったんだろうな。ユウさんがそんな思いを抱くこと自体、今までのユウさんからは想像できないんだ。そんな相手ができたのならすぐにでも繋がりたいと思うのは当然だろう。
俺も同じようなものだが、今はまだゆっくりでいい。伊月くんが自分から甘えてくれるようになるまで俺はいつまでだって待てる。
ーまぁそのことはともかくお互い恋人になったことですし、これからも調査の仕事を続けていくなら隠し事はないほうが楽でしょう? 砂川くんも伊月くんもお互いにどこまで知っているのか、悩みながら話をしあうのも大変でしょうし。
ーそうだな。一度四人で会うとしよう。真琴も田淵くんの退院祝いがしたいと話していたからな。明日でも構わないか?
ーええ。こういうのは早いほうがいいですからね。じゃあ、連絡待っています。
ーああ、すぐに連絡するから。
そう言って電話が切られて数分後には店のURLがメッセージに送られてきていた。
店を確認すると、ユウさんが気に入っている完全個室の店。
完全防音になっている個室部屋ならのんびりと話ができるし、四人で会うにはもってこいの場所だ。
さて、伊月くんにはどうやって話を持ちかけようか。反応が楽しみだな。
ユウさんとは砂川くんのあの事件が解決してから、一件砂川くんがらみの仕事で動いて、その報告をしにカフェで話をした以来だ。そういえば、あの時俺とユウさんが一緒にいるのを砂川くんがみて、裏の話を話すことになったと報告が来ていた。
それでユウさんが調査員をしていることも、俺がその手伝いをしていることも全て話すことになったそうだが、砂川くんはちゃんとそれを自分の胸にだけ留めていたんだな。
俺が伊月くんと一緒にいることも伊月くんからのメッセージで知っているだろうに、俺がユウさんの裏の仕事を請け負っている調査員だとはバラさなかった。それは今日、伊月くんに包み隠さず話した時の反応からも、伊月くんが今日初めて聞いた話だとわかったからだ。
砂川くんは信頼のおける子だな。そして、伊月くんも自分からは砂川くんには言わないだろう。そのことも含めて一度ユウさんとは話をしておいたほうがいいと思っていたから、この電話はいいタイミングと言えるだろう。
可愛い寝顔を見せてくれている伊月くんから離れるのは少し寂しかったが、気持ちよさそうに眠っている伊月くんの頬にそっとキスを落として、ベッドから下りて寝室を出てから電話をとった。
ーシン。今大丈夫か?
ーええ。少しなら大丈夫ですよ。何か仕事の話ですか?
ーいや、今のところは差し迫っている案件はないから心配しないでいい。田淵くんのことで連絡したんだ。退院したそうだな。おめでとう。
ーありがとうございます。砂川くんから聞いたんですか?
ーああ。お祝いに行きたがってたんだが、都合が合わなくて残念がってたよ。
ーははっ。そうだったんですね。てっきりユウさんが行かせないようにしたんだと思ってましたよ。
ー私が? なんで、そんなこと。
ーユウさん、砂川くんのことに関しては狭量じゃないですか。
ー狭量って……まぁ、そのことについては反論できないが。それはお前もだろう? 退院したあと、一緒に暮らすことになったと真琴から聞いたぞ。
ーああ、やっぱりそこまで聞いてましたか。セキュリティの甘すぎるアパートに住んでましたからね。二ヶ月も入院してましたし、家賃を払い続けるのも勿体無いでしょう? だから、一緒に暮らすように提案したんですよ。
ーそれでよく了承してくれたな。
ーええ。住み込みで家事をして欲しいと頼みました。
ーははっ。なんでもできるお前の家で、住み込みで家事か。それはいい手だったな。それで、今日から落としにかかるわけか? お前も田淵くんを気に入っているんだろう?
ーええ。それならもう大丈夫です。
ーえっ?
ーもう思いを伝え合いましたから。晴れて恋人になりました。
ーもう? それは早いな。あ、それじゃあもしかして邪魔したか?
ーいえ。そんな気遣いは大丈夫です。ゆっくり進めていくことにしたので。
ーそうか、それは……すごいな。
顔が見えなくても驚きの表情を浮かべているのが手に取るようにわかって笑ってしまった。
この反応から察するに、きっとユウさんは砂川くんを家に入れてすぐに手を出したんだろう。
一回り以上も下の相手に惹かれて声もかけられないと言っていたくらいだ。そばに来たら我慢できなかったんだろうな。ユウさんがそんな思いを抱くこと自体、今までのユウさんからは想像できないんだ。そんな相手ができたのならすぐにでも繋がりたいと思うのは当然だろう。
俺も同じようなものだが、今はまだゆっくりでいい。伊月くんが自分から甘えてくれるようになるまで俺はいつまでだって待てる。
ーまぁそのことはともかくお互い恋人になったことですし、これからも調査の仕事を続けていくなら隠し事はないほうが楽でしょう? 砂川くんも伊月くんもお互いにどこまで知っているのか、悩みながら話をしあうのも大変でしょうし。
ーそうだな。一度四人で会うとしよう。真琴も田淵くんの退院祝いがしたいと話していたからな。明日でも構わないか?
ーええ。こういうのは早いほうがいいですからね。じゃあ、連絡待っています。
ーああ、すぐに連絡するから。
そう言って電話が切られて数分後には店のURLがメッセージに送られてきていた。
店を確認すると、ユウさんが気に入っている完全個室の店。
完全防音になっている個室部屋ならのんびりと話ができるし、四人で会うにはもってこいの場所だ。
さて、伊月くんにはどうやって話を持ちかけようか。反応が楽しみだな。
727
お気に入りに追加
793
あなたにおすすめの小説
貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話
タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。
叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……?
エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので)
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる