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番外編

嬉しい再会   7

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「あの、紙とペンを貸していただけますか?」

ご伴侶さまの言葉にハーヴィーがさっと動いて、棚からそれらを取り出し

「どうぞこちらをお使いください」

とご伴侶さまの前に置いた。

「ありがとうございます」

ご伴侶さまはふわりとした優しい笑顔を見せるとすぐにそのペンでサラサラと絵を描き出した。

どんどん描き上がっていく絵を見ながら、いろんな予想を立ててみる。
この部屋の中にエネルギーを蓄えるということか?

初めてみる絵に好奇心をかき立てられるのは、やはり私の研究者としての血が騒いでいるのかもしれない。

それからしばらくして、

「こんなものかな」

と手を止めたご伴侶さまは描き上げた絵を我々に見せてくれた。

「こ、これは……っ」

「ぼくもあまり詳しいわけじゃないので想像で描いたんですが、こんなふうに骨組みした外側をガラスで覆って、外気温から守りながら、さらに蓄えておいたエネルギーでこの室内を一定の温度を保てるようにしたら、夏の野菜を冬に育てることが可能になるはずです。同じように温度設定を変えれば他の季節の野菜や果物も育てることができるようになると思うのですが、ゴードンさんは研究者として可能だと思いますか?」

「――っ!!! ちょっと、お借りします!」

ご伴侶さまの手から描いてくださった紙を借り、それをじっくりと眺める。

簡易的に描かれているから想像の範疇を超えないが、そのアイディアは実に素晴らしい。

「ここから蓄えたエネルギーを……いや、それこそ地中から送り出して、土の温度を上げるようにしてみてはどうだろう… 周りの骨組みはこの通りでいけそうか……うーん……」

紙を持ったままその場から離れ、ぶつぶつと呟く私に誰もなにも話しかけてこない。
だが、その時間が楽でよかった。

ひとしきり頭の中で話を組み立てて、ようやく紙から顔を上げた時にはかなりの時間が経っていたようだった。
慌てて公爵さま方のそばに駆け寄ると、

「ゴードン、かなり集中していたな」

と声をかけられた。

「はい。お客さまを放り出して申し訳ございません」

「いや、こちらから話題を振ったのだから気にする必要はない。それにハーヴィーが其方の伴侶として、しっかりと我々の相手をしてくれていたから何も問題はなかった」

頭を下げる私に公爵さまはそのように言ってくださって、ハーヴィーも嬉しそうだ。

「ありがとうございます。公爵さま」

「それで、どうだ? シュウの考えは実現可能か?」

「はい。これはかなりの発明になりますよ。まず手始めに我が領地で試してみてもよろしゅうございますか? もし、ここでうまくいけば、オランディア全土でこの方法が使えることになりますから」

オランディアの領土の中でも、我が領地が一番気候の変動が激しい。
ここで言っての温度を保てるのならば、他の領地ならさほど難しくはない。

「ああ、かまわぬ。なぁ、シュウ?」

「うん。ぼくはこんなのが作れたらいいなという希望しかなかったから、それが実際に形になるのをみられるのは嬉しい」

ご伴侶さまの笑顔に公爵さまも本当に嬉しそうでいらっしゃる。

「ご伴侶さまの素晴らしいお考えをぜひとも形にいたしますので、完成しました暁にはまたぜひお越しください」

「ああ、必ず二人で伺うよ。その前に我が領地に遊びにくるのを忘れぬようにな」

公爵さまの嬉しいお言葉にハーヴィーは嬉しそうに笑っていた。

「そろそろシュウも眠そうだ。休ませてもらってもいいか?」

「はい。お部屋にご案内いたします」

我々の自室から遠く離れた特別室は、こうして公爵さまや国王さまが視察の際にお泊りいただくために作った部屋だ。
きっと気に入っていただけることだろう。

「ご伴侶さまがお風呂が好きだとお聞きしておりましたので、部屋の奥に大きなお風呂をご用意しております。一日中絶えず新しいお湯が変わるようになっておりますので、安心してお寛ぎください」

「おお、それは助かるな。なぁ、シュウ。ゆっくりと旅の疲れを癒すとするか」

「もう! フレッドったら、恥ずかしいよ」

「なんで恥ずかしいんだ? 私はただ一緒に風呂に入ろうと誘っているだけだぞ。シュウは何か違うことを期待しているのか?」

「えっ? ちが――っ!」

「ふふっ。冗談だよ」

ご伴侶さまは公爵さまのお言葉に恥ずかしそうにさっと部屋の中に入られた。

「少し揶揄いすぎたな」

「公爵さまがそのようにお揶揄いになるなんて思いもしませんでしたよ」

「ははっ。そうだろうな。私にとってシュウはいつだって特別な存在だ。其方もそうだろう?」

「はい。そうですね。私も、唯一ということは抜きにしても、ハーヴィーと離れて生きてはいけませぬ」

「それでいいんだ。やはり其方たちを引き合わせて正解だったな」

「ありがとうございます。お礼というわけではございませんが、お部屋には全て必要なものをご用意しておりますので、ご自由にお使いください。こちらのお部屋の声は一切私どもには聞こえませんのでご安心くださいませ」

「そうか、ありがとう。では、また明日だな」

そういうと、公爵さまは嬉しそうに部屋の中に入って行かれた。
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