254 / 261
番外編
嬉しい再会 6
しおりを挟む
<sideゴードン辺境伯>
「そろそろ食事にいたしましょう。今宵は王都ではなかなかお目にかかれない我が領地で採れたものを中心にご用意させていただきました」
「ほお、それは楽しみだな。悪いが、料理は全て一つの皿に二人前盛ってもらえるか?」
「一つのお皿に、でございますか?」
公爵さまが仰られた意味がよくわからずに失礼とは思いながら聞き返してしまった。
わざわざ料理を二人分盛るとはどういう意味なのだろう?
「ああ、そうだ。シュウの食事は全て私が食べさせることにしているのでな。皿が別だと食べにくいのだ」
「えっ? 毎食、公爵さまがシュウさまに?」
「さすがに毎食必ずというわけではないが、一緒に食べる時はそうしているのだ。ああ、よければ其方にもやってほしい。シュウには唯一の伴侶は食べさせあって食事をするものだと教えているのでな。ああ、膝に乗せて食べてもらえれば助かる」
なんとっ!!
そんなことをしていらしたのか……。
なんとも羨ましい……。
「それに我々と一緒に食事をすることで、其方もハーヴィーとの食事を楽しめるだろう? ハーヴィーには私から頼まれたといえば良い。それなら素直に従ってくれるだろう」
「おお! なんと素晴らしいお考え! 承知しました!」
ハーヴィーを膝に乗せて食事ができる。
しかも食べさせあってと仰っていたな。
ああ、なんと幸せな時間だろう。
ハーヴィーとご伴侶さまが過ごしている部屋に向かうと、なんとも楽しそうに話をしている。
「どうやらあの二人、緊張も解けて仲良くなったようだな」
「はい。ハーヴィーに素晴らしいご友人ができて大変嬉しゅうございます」
ハーヴィーに近づくと、なんとも興奮気味に話をしてくれた。
どうやら、今度は公爵さまのお屋敷にお泊まりの誘いを受けたようだ。
しかも、王都で四人で出かけたいのだという。
『でーと』なるものの誘いにハーヴィーは頬を高揚させ喜んでいる。
普段この辺境の地で寂しい思いをさせているのだから、たまにはいいだろう。
それにハーヴィーを見せびらかして王都を歩くのもいい。
子爵家の三男だったハーヴィーは同級生にも家族にもみくびられてきたようだからな。
私や公爵さまご夫夫に愛されているとわかれば、皆悔しがるだろう。
ハーヴィーにも少しくらい優越感を感じさせてあげたいのだ。
まぁ、ハーヴィーは心清らかだからそれをあからさまに喜びはしないだろうがな。
全ては私のためだ。
食事が始まると、ご伴侶さまは当然のように公爵さまに抱きかかえられ、膝の上に乗せられていた。
ハーヴィーはそれをみて目を丸くしているが、ご伴侶さまのいうことを否定することもなく、おとなしく私に抱きかかえられてくれた。
ああ、やはりハーヴィーは空気を読むということに長けているようだ。
公爵さまが慣れた様子でご伴侶さまの口に料理を運ぶ。
それに倣うように私もハーヴィーに食事をさせる。
料理を口に運ぶと雛鳥のように口を開けてくれるのが実に可愛らしい。
美味しい! と嬉しそうに笑うハーヴィーの顔を間近でみられるのも楽しくてたまらない。
ああ、本当に公爵さまは素晴らしい食事の仕方をお教えくださったものだ。
いつもよりも楽しい食事の時間を終え、リビングに戻り楽しい食後の時間が始まる。
ハーヴィーとご伴侶さまには新鮮な果物を使ったジュースを用意し、公爵さまには上質なワインで喉を潤していただく。
「先ほどの食事は素晴らしかったな。シュウ、さっきの食事に使われた食材はほとんどがこの領地で採れたものなのだぞ」
「ああ、そうなんだ。だから、王都やサヴァンスタックではみない食材が多かったんだね。あんなに美味しい食材が採れるなんて素晴らしい領地ですね」
「はい。それはもう。ですが、冬には一切の食材が採れなくなります。ここは冬になると雪で全てが覆い尽くされてしまいますので、なかなか難しいですね」
これがこの地に領民が増えない大きな理由だ。
他の時期には有り余るほど採れるから生きてはいけるが、冬の分を保存する必要があるため、領地外に回せる余裕がない。
私の言葉にご伴侶さまは少し考えているような表情をなさっていたが、
「あの……ゴードンさんは、元は研究者さんだと伺ったのですがエネルギーを蓄えておくようなものを作ることはできますか?」
と質問なさった。
私は突然の質問に驚きつつも、なんとか答えた。
「えっ? エネルギーを……? そう、ですね……おそらく可能でしょう」
「それなら、僕ずっと試してみたいものがあるんです! ねぇ、フレッド、話をしてみてもいいかな?」
「ああ。もしかしてシュウが前に話してくれていたことか?」
「うん。これができたら、きっとこの領地もそしてサヴァンスタックも、オランディア全体も今よりも潤うと思うんだよね」
この国が今よりもさらに潤う?
そんなことが可能なのか?
私はご伴侶さまの言葉に驚きを隠せなかった。
「そろそろ食事にいたしましょう。今宵は王都ではなかなかお目にかかれない我が領地で採れたものを中心にご用意させていただきました」
「ほお、それは楽しみだな。悪いが、料理は全て一つの皿に二人前盛ってもらえるか?」
「一つのお皿に、でございますか?」
公爵さまが仰られた意味がよくわからずに失礼とは思いながら聞き返してしまった。
わざわざ料理を二人分盛るとはどういう意味なのだろう?
「ああ、そうだ。シュウの食事は全て私が食べさせることにしているのでな。皿が別だと食べにくいのだ」
「えっ? 毎食、公爵さまがシュウさまに?」
「さすがに毎食必ずというわけではないが、一緒に食べる時はそうしているのだ。ああ、よければ其方にもやってほしい。シュウには唯一の伴侶は食べさせあって食事をするものだと教えているのでな。ああ、膝に乗せて食べてもらえれば助かる」
なんとっ!!
そんなことをしていらしたのか……。
なんとも羨ましい……。
「それに我々と一緒に食事をすることで、其方もハーヴィーとの食事を楽しめるだろう? ハーヴィーには私から頼まれたといえば良い。それなら素直に従ってくれるだろう」
「おお! なんと素晴らしいお考え! 承知しました!」
ハーヴィーを膝に乗せて食事ができる。
しかも食べさせあってと仰っていたな。
ああ、なんと幸せな時間だろう。
ハーヴィーとご伴侶さまが過ごしている部屋に向かうと、なんとも楽しそうに話をしている。
「どうやらあの二人、緊張も解けて仲良くなったようだな」
「はい。ハーヴィーに素晴らしいご友人ができて大変嬉しゅうございます」
ハーヴィーに近づくと、なんとも興奮気味に話をしてくれた。
どうやら、今度は公爵さまのお屋敷にお泊まりの誘いを受けたようだ。
しかも、王都で四人で出かけたいのだという。
『でーと』なるものの誘いにハーヴィーは頬を高揚させ喜んでいる。
普段この辺境の地で寂しい思いをさせているのだから、たまにはいいだろう。
それにハーヴィーを見せびらかして王都を歩くのもいい。
子爵家の三男だったハーヴィーは同級生にも家族にもみくびられてきたようだからな。
私や公爵さまご夫夫に愛されているとわかれば、皆悔しがるだろう。
ハーヴィーにも少しくらい優越感を感じさせてあげたいのだ。
まぁ、ハーヴィーは心清らかだからそれをあからさまに喜びはしないだろうがな。
全ては私のためだ。
食事が始まると、ご伴侶さまは当然のように公爵さまに抱きかかえられ、膝の上に乗せられていた。
ハーヴィーはそれをみて目を丸くしているが、ご伴侶さまのいうことを否定することもなく、おとなしく私に抱きかかえられてくれた。
ああ、やはりハーヴィーは空気を読むということに長けているようだ。
公爵さまが慣れた様子でご伴侶さまの口に料理を運ぶ。
それに倣うように私もハーヴィーに食事をさせる。
料理を口に運ぶと雛鳥のように口を開けてくれるのが実に可愛らしい。
美味しい! と嬉しそうに笑うハーヴィーの顔を間近でみられるのも楽しくてたまらない。
ああ、本当に公爵さまは素晴らしい食事の仕方をお教えくださったものだ。
いつもよりも楽しい食事の時間を終え、リビングに戻り楽しい食後の時間が始まる。
ハーヴィーとご伴侶さまには新鮮な果物を使ったジュースを用意し、公爵さまには上質なワインで喉を潤していただく。
「先ほどの食事は素晴らしかったな。シュウ、さっきの食事に使われた食材はほとんどがこの領地で採れたものなのだぞ」
「ああ、そうなんだ。だから、王都やサヴァンスタックではみない食材が多かったんだね。あんなに美味しい食材が採れるなんて素晴らしい領地ですね」
「はい。それはもう。ですが、冬には一切の食材が採れなくなります。ここは冬になると雪で全てが覆い尽くされてしまいますので、なかなか難しいですね」
これがこの地に領民が増えない大きな理由だ。
他の時期には有り余るほど採れるから生きてはいけるが、冬の分を保存する必要があるため、領地外に回せる余裕がない。
私の言葉にご伴侶さまは少し考えているような表情をなさっていたが、
「あの……ゴードンさんは、元は研究者さんだと伺ったのですがエネルギーを蓄えておくようなものを作ることはできますか?」
と質問なさった。
私は突然の質問に驚きつつも、なんとか答えた。
「えっ? エネルギーを……? そう、ですね……おそらく可能でしょう」
「それなら、僕ずっと試してみたいものがあるんです! ねぇ、フレッド、話をしてみてもいいかな?」
「ああ。もしかしてシュウが前に話してくれていたことか?」
「うん。これができたら、きっとこの領地もそしてサヴァンスタックも、オランディア全体も今よりも潤うと思うんだよね」
この国が今よりもさらに潤う?
そんなことが可能なのか?
私はご伴侶さまの言葉に驚きを隠せなかった。
93
お気に入りに追加
4,062
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!
ありぽん
ファンタジー
[第3回次世代ファンタジーカップエントリー]
特別賞受賞 書籍化決定!!
応援くださった皆様、ありがとうございます!!
望月奏(中学1年生)は、ある日車に撥ねられそうになっていた子犬を庇い、命を落としてしまう。
そして気づけば奏の前には白く輝く玉がふわふわと浮いていて。光り輝く玉は何と神様。
神様によれば、今回奏が死んだのは、神様のせいだったらしく。
そこで奏は神様のお詫びとして、新しい世界で生きることに。
これは自分では規格外ではないと思っている奏が、規格外の力でもふもふ相棒と、
たくさんのもふもふ達と楽しく幸せに暮らす物語。
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる