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番外編
ふたりの未来に
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デュランの話では、この世界のゴードンはそれほどまでに恐れられている存在ではなさそうだった。
隣国との国境に広大な領地を与え、軍事上重要な任務を任せているゴードンは元々は研究者であった。
だが、研究中に誤って不老不死の薬を口にし、長命と同時に一生消えることのない尋常ではない精力を手に入れてしまった。
自分でも抑えきれないその精力を発散するために人を攫い、欲を吐き出し続けていたのだ。
私はサヴァンスタックを開拓中にこのゴードンと出会った。
そして、ゴードンの類い稀な才能を我が国の軍事力向上のために使うためにゴードンに辺境伯の地位を与え、我が国のために働いてもらう代わりに、ゴードンの尋常ではない精力を解き放つための伴侶を送り続けていたのだ。
ゴードンの途轍もない精力に今までの伴侶たちは10年も持たずに息絶えてしまう。
元々金や褒美と引き換えにゴードンの元に嫁ぐことを了承した者たちだ。
おそらく相性の問題もあったのだろう。
だが、ハーヴィーと出会ってからのゴードンは目に見えて変わっていったと聞いていた。
不老不死といえども、唯一を失えば死は避けられない。
だが、ひとりで生き続けるより、唯一と共に死ねる方がどれほど幸せか……。
ゴードンにとってもハーヴィーとの出会いは良きものになることは間違いない。
この世界のゴードンとハーヴィーが幸せになることを私は確信している。
「ゴードン辺境伯、こちらへ」
「はっ」
私の呼びかけにゴードンはさっと現れた。
ゴードンの姿にワーグナー子爵と息子たちは慌てて頭を下げた。
その顔に驚きはあれども、恐怖は感じられない。
あまりこういった華やかな場には出ない辺境伯だから、驚いているだけだろう。
「辺境伯。こちらはワーグナー子爵の次男、ハーヴィーだ。彼を其方の伴侶に推薦したいがどうだろう?」
「「「ええっ!?」」」
思ってもみない言葉だったのだろう。
ワーグナー子爵と息子たちから驚きの声が上がる。
「私は公爵さまのご推薦であれば喜んでお受け致しますが……彼はどうでしょう?」
ゴードンの言葉に皆の視線が一気に注がれるが、当のハーヴィーはまた驚きから覚めていない様子で目を丸くしたまま見つめているだけだ。
「ハーヴィーっ! お返事をしないかっ!!」
ワーグナー子爵が声を荒らげるが、まぁ驚く気持ちもよくわかる。
子爵の次男である自分が、侯爵の地位と同等の辺境伯に嫁ぐとは夢にも思わないだろう。
「どうだ? ハーヴィー、考えてみないか?」
私の声にハーヴィーはようやく我に返り、
「あっ、あの……な、なぜ私、なのでしょうか? へ、辺境伯爵さまの……その、これまでのご伴侶さまは確か、女性であったと思うのですが……私なんぞ……辺境伯爵さまのお慰めになりますかどうか……」
と必死に思いを訴えてきた。
その言葉に拒絶の意思はなさそうに見える。
「そう申しているが、辺境伯はどう思う?」
「恐れながら、公爵さま。私のお相手は常に公爵さまにお選びいただいており、私が女性が良いと申し上げたことは一度もございません。そうでございましょう?」
「ああ、そうだな」
「実のところ、私は公爵さまに彼をご推薦いただいてから、なんと申しますか……胸の奥が騒つくのでございます」
ふふっ。
さすがだな。
やはりゴードン、自分の唯一の匂いを嗅ぎ分けたか?
まぁ私もシュウをひと目見ただけで特別な存在だと確信していたのだからな。
ゴードンがわかるのもおかしいことではない。
「せっかくこうして出会ったのだから、2人で話をして過ごしたらいいんじゃないかな?」
ずっと私の膝の上で静観していたシュウが急に会話に加わってきた。
だが、シュウの意見はもっともだ。
急に嫁げと言われてもなかなか了承はしにくいだろうし、とはいえ、ここでは断るのも難しい。
きっとふたりで時間を過ごせば、ゴードンが必死にハーヴィーを口説くだろう。
「そうだな。せっかくだからゆっくり話でもするといい」
「ハーヴィー、公爵さまとご伴侶さまがそう仰ってくださっているのだからそうさせていただきなさい」
「は、はい。父上。あの、辺境伯爵さま……」
真っ赤な顔でゴードンを見上げるハーヴィーもまた、ゴードンに何かしら感じているのかもしれない。
きっとこの2人は上手くいく。
シュウが口添えしてくれたのだから当然だな。
次はこの2人の結婚披露パーティーに招待されるかもしれない。
そんなことを思いながら、2人がテラスへと向かうのを見送った。
「あの、公爵さま……なぜ、ハーヴィーをご推薦くださったのですか?」
「特別な意味はない。ただ、お似合いだと思っただけだ」
「そうでございますか。もしご縁を頂けましたらこれほど嬉しいことはございません」
「まぁ2人の意思に任せるとしよう」
「はい。ありがとうございます」
ワーグナー子爵は頭を下げ、ライリーと共に広間へと戻っていった。
「ねぇ、フレッド……さっきの人。どこかで見覚えがあるなと思っていたんだけど……ぼく、前に会ったことある?」
「んっ? そうだな……どうだったかな」
シュウが忘れているならそれでいい。
わざわざ思い出さなければならない記憶でもないからな。
「フレッドがあの2人を引き合わせたのってもしかして……?」
「ああ、わかったか? あの2人はきっと上手くいく。シュウの口添えがよかったよ」
「そっか。なんかそんな気がしたんだ。あの辺境伯さまの目が、フレッドがぼくを見る時みたいだったし……」
「そうか? シュウも色恋がわかるようになったのだな」
「もう! 子ども扱いして! 子どもじゃないよ、ぼく」
可愛く拗ねるシュウの耳元で、
「ふふっ。そうだな、シュウは子どもじゃないな。私の下であんなにも可愛らしい声をあげるのだからな」
と言ってやると、一気に顔を赤らめる。
その瞬間、広間がざわっと空気が変わった。
ああっ、しまった!
シュウの可愛らしい顔を皆に見せてしまった。
私は急いで自分の胸にシュウの顔を隠し、広間中に威圧を放った。
その威圧に気づかなかったのは、テラスにいたあの2人だけだろう。
隣国との国境に広大な領地を与え、軍事上重要な任務を任せているゴードンは元々は研究者であった。
だが、研究中に誤って不老不死の薬を口にし、長命と同時に一生消えることのない尋常ではない精力を手に入れてしまった。
自分でも抑えきれないその精力を発散するために人を攫い、欲を吐き出し続けていたのだ。
私はサヴァンスタックを開拓中にこのゴードンと出会った。
そして、ゴードンの類い稀な才能を我が国の軍事力向上のために使うためにゴードンに辺境伯の地位を与え、我が国のために働いてもらう代わりに、ゴードンの尋常ではない精力を解き放つための伴侶を送り続けていたのだ。
ゴードンの途轍もない精力に今までの伴侶たちは10年も持たずに息絶えてしまう。
元々金や褒美と引き換えにゴードンの元に嫁ぐことを了承した者たちだ。
おそらく相性の問題もあったのだろう。
だが、ハーヴィーと出会ってからのゴードンは目に見えて変わっていったと聞いていた。
不老不死といえども、唯一を失えば死は避けられない。
だが、ひとりで生き続けるより、唯一と共に死ねる方がどれほど幸せか……。
ゴードンにとってもハーヴィーとの出会いは良きものになることは間違いない。
この世界のゴードンとハーヴィーが幸せになることを私は確信している。
「ゴードン辺境伯、こちらへ」
「はっ」
私の呼びかけにゴードンはさっと現れた。
ゴードンの姿にワーグナー子爵と息子たちは慌てて頭を下げた。
その顔に驚きはあれども、恐怖は感じられない。
あまりこういった華やかな場には出ない辺境伯だから、驚いているだけだろう。
「辺境伯。こちらはワーグナー子爵の次男、ハーヴィーだ。彼を其方の伴侶に推薦したいがどうだろう?」
「「「ええっ!?」」」
思ってもみない言葉だったのだろう。
ワーグナー子爵と息子たちから驚きの声が上がる。
「私は公爵さまのご推薦であれば喜んでお受け致しますが……彼はどうでしょう?」
ゴードンの言葉に皆の視線が一気に注がれるが、当のハーヴィーはまた驚きから覚めていない様子で目を丸くしたまま見つめているだけだ。
「ハーヴィーっ! お返事をしないかっ!!」
ワーグナー子爵が声を荒らげるが、まぁ驚く気持ちもよくわかる。
子爵の次男である自分が、侯爵の地位と同等の辺境伯に嫁ぐとは夢にも思わないだろう。
「どうだ? ハーヴィー、考えてみないか?」
私の声にハーヴィーはようやく我に返り、
「あっ、あの……な、なぜ私、なのでしょうか? へ、辺境伯爵さまの……その、これまでのご伴侶さまは確か、女性であったと思うのですが……私なんぞ……辺境伯爵さまのお慰めになりますかどうか……」
と必死に思いを訴えてきた。
その言葉に拒絶の意思はなさそうに見える。
「そう申しているが、辺境伯はどう思う?」
「恐れながら、公爵さま。私のお相手は常に公爵さまにお選びいただいており、私が女性が良いと申し上げたことは一度もございません。そうでございましょう?」
「ああ、そうだな」
「実のところ、私は公爵さまに彼をご推薦いただいてから、なんと申しますか……胸の奥が騒つくのでございます」
ふふっ。
さすがだな。
やはりゴードン、自分の唯一の匂いを嗅ぎ分けたか?
まぁ私もシュウをひと目見ただけで特別な存在だと確信していたのだからな。
ゴードンがわかるのもおかしいことではない。
「せっかくこうして出会ったのだから、2人で話をして過ごしたらいいんじゃないかな?」
ずっと私の膝の上で静観していたシュウが急に会話に加わってきた。
だが、シュウの意見はもっともだ。
急に嫁げと言われてもなかなか了承はしにくいだろうし、とはいえ、ここでは断るのも難しい。
きっとふたりで時間を過ごせば、ゴードンが必死にハーヴィーを口説くだろう。
「そうだな。せっかくだからゆっくり話でもするといい」
「ハーヴィー、公爵さまとご伴侶さまがそう仰ってくださっているのだからそうさせていただきなさい」
「は、はい。父上。あの、辺境伯爵さま……」
真っ赤な顔でゴードンを見上げるハーヴィーもまた、ゴードンに何かしら感じているのかもしれない。
きっとこの2人は上手くいく。
シュウが口添えしてくれたのだから当然だな。
次はこの2人の結婚披露パーティーに招待されるかもしれない。
そんなことを思いながら、2人がテラスへと向かうのを見送った。
「あの、公爵さま……なぜ、ハーヴィーをご推薦くださったのですか?」
「特別な意味はない。ただ、お似合いだと思っただけだ」
「そうでございますか。もしご縁を頂けましたらこれほど嬉しいことはございません」
「まぁ2人の意思に任せるとしよう」
「はい。ありがとうございます」
ワーグナー子爵は頭を下げ、ライリーと共に広間へと戻っていった。
「ねぇ、フレッド……さっきの人。どこかで見覚えがあるなと思っていたんだけど……ぼく、前に会ったことある?」
「んっ? そうだな……どうだったかな」
シュウが忘れているならそれでいい。
わざわざ思い出さなければならない記憶でもないからな。
「フレッドがあの2人を引き合わせたのってもしかして……?」
「ああ、わかったか? あの2人はきっと上手くいく。シュウの口添えがよかったよ」
「そっか。なんかそんな気がしたんだ。あの辺境伯さまの目が、フレッドがぼくを見る時みたいだったし……」
「そうか? シュウも色恋がわかるようになったのだな」
「もう! 子ども扱いして! 子どもじゃないよ、ぼく」
可愛く拗ねるシュウの耳元で、
「ふふっ。そうだな、シュウは子どもじゃないな。私の下であんなにも可愛らしい声をあげるのだからな」
と言ってやると、一気に顔を赤らめる。
その瞬間、広間がざわっと空気が変わった。
ああっ、しまった!
シュウの可愛らしい顔を皆に見せてしまった。
私は急いで自分の胸にシュウの顔を隠し、広間中に威圧を放った。
その威圧に気づかなかったのは、テラスにいたあの2人だけだろう。
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