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番外編

披露パーティー

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番外編第一弾は結婚披露パーティーです。
楽しんでいただけると嬉しいです♡


  *   *   *

<sideフレッド>


「あっ、フレッド。準備終わったよ。どうかな?」

「――っ!!」

私の髪色と同じ金色の美しい婚礼衣装に身を包み、肩まで伸びた漆黒の髪を結い上げた頭に豪華なティアラをつけ、さらに耳を彩る私の瞳と同じ色をした藍玉アクアマリンのピアスと、アンドリュー王とトーマ王妃、そして私とシュウとの揃いのダイヤモンドの指輪をつけ、こちらをみて微笑んでいるシュウを見て、私は息を呑んだ。

普通の者なら、あまりにも豪華な衣装と宝石に負けてしまうことだろう。
だが、シュウの前では豪華な衣装も宝石もただの引き立て役にしかならない。

地上に舞い降りた女神のようなシュウの姿に、感嘆のため息しか出なかった。

「フレッド、どうしたの?」

「シュウが美しすぎて言葉が出なかったんだ」

「ふふっ。本当に?」

「本当だとも。ああ、こんなにも麗しいシュウを見せるのがもったいなく思えるな」

「ふふっ。でも、ぼくはフレッドとお揃いの服をみんなに見せつけたいけどな」

そう言って、嬉しそうに私の服を撫でる。

「シュウ……気に入ってくれたか?」

「もちろん! 黒いジャケットに金色の縁取りなんて、ぼくとフレッドそのものって感じの衣装だもん。フレッドがカッコ良すぎてドキドキする」

「シュウ……っ」

嬉しくてシュウを抱きしめると、

「旦那さま。ご準備を終えられたばかりでございますぞ」

とマクベスの声がかかる。

「わかっている。少し抱きしめるくらいなら構わんだろう?」

「少し、でございますよ」

「くっ――!」

マクベスに念を押されて仕方なく離れる。
シュウはそんな私たちの様子を見ながら、嬉しそうに笑っていた。

「マクベス、もう招待客は集まっているか?」

「はい。もう皆さま、お集まりでございます」

「そうか、ならばシュウ。そろそろ行くか」

「わっ! フレッド、ぼく歩けるよ」

「後ろを引きずって歩くから転んだら危ないだろう? 大広間までは抱いて連れて行こう」

そういうと、シュウは嬉しそうに私の首に腕を回した。

もうこのままで入場しても良いのだが、せっかくの婚礼衣装を見せつけられないのは勿体無いか……。

広間の前でそっと下ろし、2人で並んで立つと重く豪奢な大広間の扉がゆっくりと開かれた。
眩い光と共に人々の笑い声や話し声が一気に耳に飛び込んできた。
その笑い声に一瞬、嫌な記憶が甦る。

私の姿を見て嘲笑する声、人々の蔑んだ表情が脳裏に過ぎる。

ゴクリと息を呑んだ瞬間、シュウが私の腕をギュッと掴んだ。
思わずシュウに顔を向ければ、満面の笑みで私を見つめている。

そうだ。
私にはシュウがいる。
何も恐れることなどどこにもない。

私は心からの笑顔をシュウに向けた。

「フレデリック・ルイス・サヴァンスタック公爵さま。並びにシュウ・サヴァンスタック公爵夫人。ご入場」

その声に一歩踏み出せば、大広間は一瞬にして静寂に包まれた。

そして、次の瞬間

「おぉ………っ」

あちらこちらから漏れ聞こえる感嘆のため息。

誰も声を発することができないほど、シュウの美しさに魅了されているようだ。
そして、私に降り注ぐ羨望の眼差し。
しかも、その表情に嫌悪感は一ミリもない。
私がシュウの伴侶であることを皆が認めてくれている顔だ。

ああ、これほどの幸せがあるとは……。

あまりの幸せにシュウに目を向ければ、すぐにシュウも私を見上げてくれる。
私たちは微笑み合いながら、自分たちの席の前に立った。

「皆の者。我々の祝いのために集まってくれたことに感謝する。隣にいるのが私の愛しい伴侶であるシュウだ。これからサヴァンスタック公爵である私のつまとして、私を支え、この領地繁栄のために尽力してくれることだろう。そして、すでに知っている者もいるだろうが、我々は唯一だ。シュウに手を出すものがいれば、それは私への反逆だとみなし、相応の罰を受けてもらうことになる。それだけはしかと心に刻み込んでいてほしい」

大広間にいる者全てとしっかりと目を合わせながら、そう告げると、当然のことだが大広間中に緊張が走った。
それでもこれは言わずに済ませるわけにはいかない。
これが唯一を持つ伴侶としての務めなのだから。

「シュウも皆に挨拶を……」

そう声をかけるとシュウは一瞬緊張した様子だったが、ふぅと深呼吸すると大広間にいる者に向かって、にっこりと微笑みかけた。

その瞬間、さっきまでの緊張感がふっと解けるのを感じた。

「皆さま。今日はぼくたちのために集まってくださってありがとうございます。まだまだ未熟なぼくですが、フレデリックさまの夫として恥ずかしくないよう、頑張っていきます。フレデリックさまと、このサヴァンスタックをどうぞよろしくお願いします」

シュウが頭を下げると、

「うぉーーっ!!!!」

という地響きのような声が響き渡った。

それほどまでにシュウの挨拶は皆の心に刺さったのだろう。
まぁ公爵夫人がこれほど丁寧な言葉を言い、頭を下げるなど到底ありえないことだからな。
しかもシュウのように麗しい者ならなおのこと。

きっとこれでシュウへの崇拝者も増えたことだろう。

先に釘を刺しておいてよかった。
良からぬものがシュウに近づこうとするだろうからな。

これでシュウに手を出してきたものは容赦なく制裁を加えてやろう。

それだけで今回シュウを披露した甲斐はあったな。




  *   *   *

まだ続く予定ですが、不定期なので一応完結表記にしておきます。
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