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最終章 (領地での生活編)

フレッド   54−1

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「旦那さま。こちらへお戻りになってから今まで以上に張り切っておいででございますね。てっきりご伴侶さまと離れていたくないと駄々をこねられると思っていましたのに……」

「ははっ。当たり前だろう、デュラン。私にはシュウとの楽しい未来が待っているのだからな」

王都から帰ってきた直後はシュウとの初夜や、レオンとルドガーの痴話喧嘩に巻き込まれたりと仕事以外での慌ただしい日を過ごしていたが、それも1週間ほどで落ち着き、シュウはこの領地で私の伴侶として支えてくれるための勉強を始めた。
以前の世界と同じく、シュウの教師としてスペンサー卿にお願いしたのは、やはり彼ほどシュウの教師に相応しいと思う人材がいなかったからだ。

もちろん、スペンサー卿とシュウを二人っきりにすることは決してない。
それはスペンサー卿を信用していないということではなく、私自身の問題なのだ。
60を過ぎているとはいえ、まだまだ現役の男と二人っきりで何時間も過ごさせるほどまだ寛大になれないのだ。
シュウが勉強を習っている間はレオンとマクベスに同席するように指示をしているが、スペンサー卿も私の気持ちを理解してくれているようでシュウには極力近づかないようにしてくれているらしい。
私の狭量さが故のこととはいえ、本当にありがたい。

私はといえば、シュウが勉強に勤しんでいる間、この数ヶ月行方不明になっていた時からずっと溜まりに溜まっていた仕事に忙殺されていた。
シュウと過ごせるのは食事の時間と夜の時間だけ。
初夜を迎えたばかりにしては辛い日々なのだが、毎日シュウを身体の奥で感じられるのがせめてもの救いか。
寝る時間を確保するために一度、しかも軽くしか愛し合えないのはかなり辛いが、それでもシュウを感じられるだけで幸せだな。

これまでの日々と比べれば圧倒的なシュウ不足だが、それでもデュランに指摘されたように張り切って仕事をこなしている理由はただ一つ。

シュウとの結婚披露パーティーのためだ。

シュウを喜ばせてやろうと全て内密に準備を進めている。
美しい婚礼衣装はジョセフと何度も打ち合わせを重ね、素晴らしく納得できるものを注文できたと思っている。
シュウにパーティーの日時を知らせるのはその婚礼衣装が無事に出来上がってから伝えるつもりだ。

「旦那さま。披露パーティーの招待状をお送りした方の出席リストが出来上がりました」

「ああ、ありがとう」

私に出席リストを手渡してくれたのは、以前の世界の時と同様にここでも私の秘書を務めてくれて居るデュラン。
私が行方不明になったと聞いて、密かに探しに向かってくれていたらしく私が無事に帰ってきたことを知って、誰よりも涙を流してくれた男だ。

私が疎まれ嫌悪されていた世界でも私を慕ってくれていたが、この世界でも私に忠誠を尽くしてくれていたのだととても嬉しく、そして頼もしく感じたものだ。

「おお、ヤツ・・も出席か……」

デュランの作ったリストを見ていると、懐かしい名前が目に留まった。

「えっ? どなた様でございますか? ああ、ゴードン辺境伯さま。それはもちろん出席なさいますよ。旦那さまが今までずっと辺境伯さまのご伴侶さまを見つけて差し上げていたのですから」

「ああ、そうだったな」

どうやらこの世界の私も、ゴードンには嫁を探してやっていたようだな。

「それで今の伴侶はどうなっている?」

「旦那さまが行方不明になっていらっしゃる間にご伴侶さまがお亡くなりになって、今は辺境伯さまがお一人でお過ごしのはずでございます。ですから、披露パーティーにはお一人でご出席だと……ほら、ここに」

見ればゴードン辺境伯家の参加人数は1名となっている。

「ふふっ。ならば、ちょうどいい。デュラン、我々の披露パーティーできっといい出会いがあると思うぞ」

リストの下段にあるワーグナー子爵の参加名を見ながら笑いが抑えられなかった。

「旦那さま、何かよからぬことをお考えでは?」

「ふふっ。そんなことはない。私の幸せを皆に分け与えようと思って居るだけだ」

「ならばよろしいのですが……ああっ、そういえば、先ほどジョセフから婚礼衣装が完成したと連絡がございました。あと1時間ほどでこちらにお持ちすると申しておりましたよ」

「そうか、できたか! ああ、楽しみだな。ようやく今日、シュウに披露パーティーのことが伝えられる。ああ、楽しみだな」

順調に準備が進んでいることに心を弾ませながら、私は婚礼衣装が届くまでの間、必死で仕事を進めていた。


「旦那さま。婚礼衣装が届きましたのでジョセフを応接室で待たせております」

私は待ってましたとばかりにジョセフの待つ部屋へと向かった。

「ジョセフ、待ちかねていたぞ」

「はい。期日までになんとか完成いたしまして安堵しております。ご確認をお願いいたします」

差し出された箱を開け中を見ると、目の前には素晴らしい婚礼衣装が現れた。

「ジョセフ、よくやった。褒美を取らすぞ」

「お褒めにあずかり恐悦至極に存じます」

思っていた以上の働きに私は喜んでいた。
これをシュウが着て私の隣を歩くのか……。

ああ、最高だな。

手間賃以上の金を渡し、ホクホク顔で帰っていくジョセフを見送りながら

「ディラン、今日の仕事は終わりだ。いいな?」

と声をかけると、

「明日の分までのお仕事も終わらせていらっしゃる以上、私に異論はございません。どうぞご夫夫で仲睦まじいお時間をお過ごしください」

と笑顔で応えてくれた。

よし、頑張っていた甲斐があったな。
シュウの喜ぶ顔を見るのが楽しみだ。

マクベスに声をかけたら婚礼衣装を持ってくるように声をかけ、私はシュウの待つ部屋へと急いだ。

「あっ、フレッド。お帰りなさい! 今日は早かったね」

いつものように笑顔で迎えてくれるシュウを抱きしめ、頬に口づけを送る。
仕事の疲れなどこの一瞬で吹き飛んでしまうのだからげんきんなものだ。


「シュウ、3日後にこの屋敷の大広間でパーティーをするぞ」

この数週間、ずっとシュウに言いたくてたまらなかったこの言葉。
ようやく口に出すことができた。

さて、シュウはどんな反応を見せてくれるだろうか?

シュウは大きな目をさらに丸くして驚いていた。
ふふっ。
本当に可愛らしい。

山のように溜まっていた仕事も、シュウとの披露パーティーと並行に準備を進めると驚くほど早く進んだ。
だからこんなにも早く披露パーティーの予定を入れることができたのだ。

ここに帰宅した時にシュウを驚かせないようにするために、シュウを見せることなくひっそりと屋敷に帰ってきた。
この屋敷の周辺の者はそれに理解を示してくれていたものの、流石にそろそろシュウが私の伴侶だと正式にお披露目しないと暴動でも起こりそうな状況になってしまっているのだ。

それは、私の伴侶がとてつもなく美しい人だったとあの港町でシュウを実際に見た者たちが吹聴して回ったせいもあるだろう。

そんなに美しい人をこの目で見たい!
そういう声が高まってきたからだ。

だからこそ、私は念入りな計画をたて婚礼衣装を用意し、今回の披露パーティー開催にこぎつけたのだ。

シュウは私が突然3日後と言い出したせいで驚いていたが、私にしてみれば突然でもなんでもない。
十分な計画をした上でシュウには内緒にしていたのは、シュウの驚く顔が見たかったからだ。

そういうと、シュウは

「パーティーは嬉しいけど、でも……できれば、先に教えておいて欲しかったな」

と少し怒っているように見える。

ああ、もしかして私は失敗してしまったのか?
この念入りな計画が仇となってしまったのだろうか?

シュウを怒らせてしまったのだろうかと恐る恐る尋ねてみると、シュウは一緒にパーティーの準備がしたかったのだと言ってくれた。

「フレッドが着る服とか僕が選びたかったよ。フレッドが僕のだって見せつけたかったし……」

そんな可愛いことを言われて嬉しくないわけがない。
私がシュウのものだと見せつけたかったなんて……そんなことを言ってくれるとは思っても見なかった。
シュウへの溢れる思いが堪えきれず、シュウを思いっきり抱きしめ謝罪の言葉を述べると

「本当に悪かったと思ってる? なんだかフレッドの顔が、嬉しそうに見えるんだけど……」

と言われてしまった。
ははっ。やはりシュウに隠し事などできないな。
隠していて申し訳なかったという思いを感じつつも、シュウが私に独占欲のようなものを抱いてくれたことが嬉しくてたまらないのだ。

私が正直に思いを告げると、シュウは笑って許してくれた。
シュウは私のことなどなんでもお見通しのようで、婚礼衣装が出来上がっていることも見抜いていた。

さっき届いたばかりの衣装を見てみるか? と問いかけると、シュウは嬉しそうにはしゃいで見せた。

すぐにマクベスに視線を送ると、すぐに先ほどジョセフが運んできた衣装の入った箱を二つ、部屋に持ってきた。

「シュウが開けて見てくれ。こちらはがシュウの衣装、あちらが私のだ」

シュウは少し緊張しているのか、手を震わせながら自分の衣装の入った箱を開けると、

「――っ!!! これ……っ!!!」

と驚いたまま微動だにしなかった。

もしかして気に入らなかったのだろうか……。


「シュウ……気に入らないか?」

一生に一度のことだ。
シュウが気に入らないものは着せたくない。
幸いまだあと3日ある。
なんとかシュウの気に入る服をもう一度作らせようと言おうとしたら、シュウが焦ったようにすごく気に入っていると言ってくれた。

優しいシュウのことだからもしかして、無理しているのではないかと思ったが、

「フレッドの髪の色と同じ色のドレスなんて嬉しいっ!! それにこのレースも宝石もすごく綺麗だね」

と笑顔を見せてくれたのだ。

この笑顔は偽りではない。
それは私が断言できる。
それくらいシュウの顔を見ればわかるというものだ。

本当に気に入ってくれたのだと安堵のため息を漏らすと、シュウは嬉しそうにドレスに目を向けた。

しばらくドレスに魅入っている様子だったが、シュウが突然不安げな顔でこれは女性用のドレスじゃないかと言い出した。

まぁ確かに男性と女性、どちらが着る方が多い衣装かと言われれば、女性かもしれない。
それは逞しい身体をした大柄の男には似合わないからだ。

だが、明確に女性用だと決められているわけではない。
とにかく似合えばいいのだ。

おそらくレオンも、もしルドガーに婚礼衣装を着せるなら私がシュウに作ってやったような形を選ぶに違いない。
そういうものだ。

シュウは自分が女性用のドレスを着る云々より、私がパーティーで出席者にどう思われるかを心配しているようだが、そんなこと考える必要などどこにもない。

誰しもがシュウの美しさに魅了されることだろう。

婚礼衣装に男女の決まりはなく、それぞれが似合うものを着ればいい。
そう説明してやると、シュウは納得しつつも、まだ少し不安を拭えないようだった。

「それなら、一度着てみないか? 実際に着てみたら安心するだろう?」

そう声をかけると、シュウの声が弾んで聞こえた。
どうやら気になってはいるようだ。

実際に着てみたら、これを着ないという選択肢は消えて無くなるだろう。

そうとなれば話は早い。
マクベスをその場に残し、私はシュウを抱きかかえ足早に寝室へと連れていった。

当日は髪を結い上げ、可愛らしい装飾を施したティアラもつける予定になっている。
シュウの漆黒の髪がこの装飾品でさらに映えることだろう。

シュウは躊躇うことなく服を脱ぎ始めた。
これはいつみても興奮する。

ドレスを手に取りどう着ればいいかわからないというシュウを手伝うと言って、中に来ているシャツを脱がせ半裸にした。
ドレスに袖を通させながらも、シュウの可愛い胸の飾りに目を奪われる。

まだぷっくりと膨らむ前の小さな蕾。
これを指で弾き、唇で弄り美味しそうに膨らませるのが私の幸せなのだ。

目の前で私がそんな邪なことを考えているとは思っていないシュウは、美しいドレスにすっかり心を奪われているようだ。
ああ、やはり私の目に狂いはなかった。
こんな美しい花嫁、このオランディアの歴史でもそうそういないだろうな。

ああ、アンドリュー王には今の発言は怒られるかもしれない。
ふふっと笑みを浮かべながら

「どうだ?」

と尋ねると、シュウはさっきまでの不安げな様子が嘘のように目を輝かせていた。

シュウの美しい身体のラインに沿った繊細なレースのドレス。
手の甲からくるぶしまで覆い隠しているが決して重くは見えないだろう。

この数ヶ月をシュウと共に過ごして、シュウの全てを知り得た私だからこそ誂えることができたドレスだ。
ここまで待ち続けた甲斐があったというものだな。

シュウはよほど気に入ってくれたようで、何度も何度も姿見の前で嬉しそうに自分の姿を見つめている。
その美しさに私だけのものにしておきたいという独占欲が湧き上がってくる。

だがそうはいかない。
せっかくシュウを私のものだと見せつける素晴らしい機会なのだから。

独占欲と優越感が交じる気持ちを抑えながら、

「仕方ないから皆の前で着せるが、シュウは決して私のそばから離れるんじゃないぞ」

シュウに注意を促すと、

「大丈夫、フレッドに支えていてもらわないと歩けそうにないし」

と長い裾に目をやりながらそう応えた。

どうやら長い裾はシュウを私のそばに留めておくのに役に立つようだ。
それならシュウが転ばないようにずっと抱きしめていよう。
それこそひとときも離れることなく……。

「それで、フレッドの衣装はどんな感じなの?」

自分の衣装を見て気になったのか尋ねてきたので着て見せてやろうとしたが、シュウは当日の楽しみにしておくと言ってくれた。

きっと驚くことだろう。
3日後が楽しみだな。

「さて、そろそろドレスをしまっておこうか」

声をかけ、シュウのドレスを脱がせようと手をかけると、シュウの綺麗な肩からするりとドレスが落ちた。

愛しい伴侶にドレスを着せるのも楽しいが、やはり脱がせる方はその何倍も楽しい。
私のドレスで隠れていた胸の飾りが再び私の目の前に現れて一気に滾る。

「シュウの裸はいつみても目の毒だな」

シュウの可愛い胸の蕾を見つめながらそういうと、

「もうそろそろ見飽きたりしない?」

と言ってくる。

見飽きるなんてそんなことあろうはずがない。
愚息など寝室に入った時から昂ってしまっているというのに。

私がシュウの裸に見飽きるなんてないということをきちんと教えておくためにシュウの小さな手をとり、昂りまくった愚息に服の上からそっと触れさせた。

服の上からでも熱く昂っているのがわかったのだろう。
シュウは一瞬で顔を真っ赤にして、声も出せずに何度も頷いていた。

「シュウを愛しいと思う気持ちは日々増しているし、シュウに興奮しない日など一日もないよ」

正直に自分の思いを告げながら、シュウを抱きしめると愚息が主張しているのを感じる。
自分だけが興奮してしまっているのを知られてしまって恥ずかしいが、シュウに飽きたと思われるよりはずっとマシだからな。

しばらく抱きしめあって、ゆっくりとシュウを離しリビングへ戻ろうと促すと、

それ・・……そのままで、いいの?」

と可愛らしい声が聞こえ、シュウの手が愚息をそっと撫でていた。
その優しい感触に体が震える。

もう私はシュウに触れられるだけでここまで感じるようになってしまったのだ。

放っておけばそのうち治ると必死に答えたが、

「でも、辛そう……」

とシュウの指が愚息に刺激を与えてくる。

自分だけ気持ちよくしてもらうなど男のするべきことではない。
そう思いつつも身体はどんどん反応してしまう。

結局シュウの手を払いのけることもできずにシュウの手が刺激を辞めるのを見守るしかなかった。
まさか、ボタンを外し、愚息に直に触れようとするとは思っても見なかった。
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