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最終章 (領地での生活編)
花村 柊 53−2
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な、なんだかドキドキしてきました」
「ふふっ。でも、ルドガーさんの嘘偽りのない気持ちでしょう?」
「ええ。それはそうなんですが……」
「大丈夫。心配しないで」
「はい。シュウさまにそう仰っていただけると大丈夫な気がしてきました」
「ふふっ。その調子」
ルドガーさんはさっきまでの涙が嘘のように笑顔を向けてくれている。
それでもまだ腫れた目が、心が傷ついたことを表してるんだ。
レオンさんにそんなつもりがなかったとしても、ルドガーさんのことを傷つけてしまったことだけはしっかりと反省してもらわないとね!
「シュウっ! レオンを呼んできたぞ」
「シュウさま、レオンでございます。お呼びいただきありがとうございます。あの、ルドガーは……ルドガーの様子をお教えいただけないでしょうか?」
「……レオンさま……」
扉の向こうから聞こえるレオンさんの悲痛な声にルドガーさんが反応するけれど、まだだめだ。
レオンさんを可哀想に思ったのか扉に近づこうとするルドガーさんを止めて、ぼくはレオンさんに向かって声をかけた。
「心配しなくても、ルドガーさんは大丈夫ですよ。マクベスさんの代わりにフレッドの世話役にすると約束したら機嫌を直してくれましたから」
「えっ? フレデリックさまの……お世話役、ですか?」
「ええ。ルドガーさん、王都にいた頃からずっとフレッドのことを憧れてたんですって。いつか、マクベスさんみたいに一番の側近としてフレッドのお世話ができるようになりたいって、このサヴァンスタックの領地までついてきてくれたんです。レオンさん、ご存知でしたか?」
「い、いいえ。まだそこまでは話もできておりませんでした」
「ああ、そうなんですね。今回マクベスさんが不在の間、ルドガーさんが頑張ってこのお屋敷を切り盛りしてくださったでしょう? こんなに優秀なルドガーさんだから、レオンさんがぼくの護衛をしてくださるように、ルドガーさんにも着替えや入浴の手伝いをお願いすることにしたんです。これからはお二人でぼくたちのことを守ってくださいますよね?」
「ちょ――っ、ちょっとお待ちください。あの……ルドガーがフレデリックさまのお世話を? 着替えも入浴も……ってそれは本当に?」
「はい。もちろんです。マクベスさんと同じことをやっていただくんですから。ねぇ、フレッド。ルドガーさんならいいでしょう?」
「ああ、ルドガーならきめ細やかな世話をしてくれそうだ。異論は何もないな」
ふふっ。フレッドったら、ちゃんと同意してくれてる。
すぐにぼくの考えがわかったみたいだ。
やっぱ流石だな……。
「あの、それは本当にルドガーの希望でしょうか?」
「ふふっ。もちろんです。ねぇ、ルドガーさん」
ぼくはルドガーさんに目配せすると、ルドガーさんは扉の向こうにいるレオンさんに目掛けて大声で話し始めた。
「レオンさま……私、ずっと旦那さまに憧れていたのです。だからこそ、こうしてサヴァンスタックまで連れてきていただいたのです。15年以上、おそばで働かせていただいていて……今回一人でこのお屋敷を切り盛りできたら、旦那さま付きのお世話役にしていただこうと密かに思っていたのです。ですが、シュウさまと戻ってこられて……これからは旦那さまのお世話はシュウさまがなさると思って諦めようと思ったのですけど、シュウさまが私の思いを汲んでくださって……旦那さま付きにしていただけることになったのです。ですから、レオンさまがシュウさまをお護りになって、私が旦那さまをお世話をするなら、とても素敵なことだと思うんです。レオンさま、認めていただけますか? それなら、私……この扉を開けます」
「ルドガー……そんなに、フレデリックさまをお慕いしていたのか?」
「はい。もちろんです」
「私よりもか?」
「えっ?」
「唯一の私よりもフレデリックさまの方が好きだというのか? 私はそれを聞いてこれからフレデリックさまとルドガーの姿を見るたびに嫉妬するのだぞ。それでもルドガーはフレデリックさま付きのお世話役になるというのか?」
「フレデリックさまへの思いはレオンさまとは違います。フレデリックさまは尊敬と憧れで、レオンさまのことは心から愛しています。それではだめなのですか?」
「ルドガー、私はすべての思いを独占したい。愛だけでなく、憧れも尊敬も……私以外に向くことなど耐えられないんだ。何も知らずにいられたら、まだ我慢もできただろうが……知ってしまった今は嫉妬しかない」
そう。
そのことをわかって欲しかったんだ。
ルドガーさんが抱いた気持ちを……。
「ルドガーさん、あとは直接話した方がいいんじゃないですか?」
小声でルドガーさんに告げるとルドガーさんは安心したように頷き、ゆっくりと扉の前に立った。
そして、静かに扉を開けると目の前にはレオンさん、すぐ後ろにフレッドの姿が見えた。
フレッドが僕をみて嬉しそうに微笑んでいるのは、作戦がうまくいったと思ったからか……それとも、ぼくの顔が見えて嬉しかったか……。
ふふっ。きっと、両方だって言いそうだ。
レオンさんは扉越しではかなり強気の口調だったけれど、目の前に急にルドガーさんが現れて緊張しているみたいだ。
「ル、ルドガー……あの……」
そんなレオンさんに、ルドガーさんはまだ目の腫れも引かないままにっこりと微笑んだ。
「レオンさま……何も知らない方が良かったですか? 私はレオンさまが唯一だから、全てを知ってもらいたいと思ったのですよ」
「――っ!! そ、それは……」
ルドガーさんの言葉にレオンさんはようやく自分の失言に気付いたようで、膝から崩れ落ちた。
「あ、あの……ルドガー。私が……私が悪かった。だから、頼む。許してくれ……」
「レオンさま……顔を上げてください。私は、もう怒ってないですよ」
「ルドガー……」
顔を上げたレオンさんの目からはいっぱい涙が溢れていた。
きっとどんなに辛い訓練でも涙なんて流したことはなかっただろう。
けれど、ルドガーさんのことに関することだけはレオンさんの感情も制御することなんてできないんだな。
レオンさんは、優しい笑顔で自分を迎え入れてくれたルドガーさんをもう離さないとでも言わんばかりに強く抱きしめながら謝罪の言葉を述べ続けた。
「本当に悪かった……。私はルドガーに誠実であろうと思いすぎて、判断を見誤っていた。全てを知らせることが正しいことではないのだな……」
「レオンさま……そのお気持ちはとても嬉しいのです。私も……レオンさまのことは誰よりもなんでも知っていたいと思いますから。ただ……レオンさまのお気持ちがどなたかに向いていらっしゃったかは正直知りたくないのです……。たとえそれが恋愛感情でなかったとしても……」
「ああ、私もルドガーの気持ちは今、よくわかった。ルドガーがフレデリックさまに憧れてここについてきたのだと聞いて嫉妬してしまったのだからな」
「レオンさま……そんなに嫉妬してくださったのですか?」
「ああ。フレデリックさまと比べられたら私など……足元にも及ばないのだからな」
「レオンさま。私はレオンさまのことをお慕いしております。この感情はレオンさまだけです」
「ルドガー! 私もだ。この世で愛するのはルドガーだけだ。信じてくれるか?」
「はい。もちろんです。泣いてしまって……部屋から追い出してしまって、ごめんなさい……」
「いや、私が軽率すぎたのだ。悪かったのは私だから謝らないでくれ」
「レオンさま、私が悪かったのです。私がもっとレオンさまを信じていれば……」
「いいや、私が……」
「あーっ、もういいか? 私もいいかげんシュウを連れて部屋に戻りたいのだが……」
痺れを切らしたフレッドの言葉にレオンさんとルドガーさんはようやくぼくたちの存在を思い出したようで、ぼくたちの方に顔を向けてくれた。
すっかり仲直りして二人の世界になっていたもんね。
「申し訳ございません、フレデリックさま。シュウさま。」
「申し訳ございません、旦那さま、シュウさま」
ふふっ。二人揃って謝罪するのも仲が良い証拠かな。
「今日のところは許してやるが、次からは痴話喧嘩は二人で解決してくれ。シュウ、部屋に戻るぞ」
そう言ってフレッドはぼくの手を取り、部屋に戻ろうとしたけれどその背後から、レオンさんの慌てたような声が聞こえてきた。
「あ、あの……フレデリックさま」
「なんだ? まだ何か気になることでもあるのか?」
「いえ、あの……ルドガーがフレデリックさまのお世話付きになるというのは、まことの話でございますか?」
「ああ、あれか。だとしたらどうする?」
フレッドはニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、レオンさんを見ている。
「お決めになられたことでしたら私が文句など言えた義理ではございませんが……できることならばルドガーにはしてほしくないと思っております」
「ははっ。はっきり言ったな」
「はい。申し訳ございません」
「心配するな。あれは其方にルドガーの気持ちをわからせるための嘘だ。ルドガーには今まで通り、屋敷の取り仕切りを任せる。そもそも私に世話付きなど必要ないのだからな」
「そ、そうなのでございますか?」
「ああ、着替えも料理も自分でやる。シュウが嫌だというのでな。もちろん、シュウの世話も私がやるのだぞ」
「ああ……確かに」
レオンさんは納得したようにぼくを見た。
「あれほどまでにシュウさまを溺愛していらっしゃるフレデリックさまが、自分のお世話もシュウさまのお世話も任せるはずがございませんね」
「ああ、普段の其方ならすぐに気付いただろうが、今日はよほどルドガーのことで頭に血が昇っていたと見えるな」
「はい。私にとってルドガーはそれほど大切な存在ですから……」
「それは私ではなく本人にしっかりと伝えておけ。レオンもルドガーも明日からはしっかりと頼むぞ」
「はっ」
レオンさんとルドガーさんが深々とぼくたちに頭を下げるのを見ながら、ぼくはフレッドに抱き抱えられ部屋へと戻った。
どうなることかと思ったけれど、二人が仲直りできて本当に良かったよ。
「ふふっ。でも、ルドガーさんの嘘偽りのない気持ちでしょう?」
「ええ。それはそうなんですが……」
「大丈夫。心配しないで」
「はい。シュウさまにそう仰っていただけると大丈夫な気がしてきました」
「ふふっ。その調子」
ルドガーさんはさっきまでの涙が嘘のように笑顔を向けてくれている。
それでもまだ腫れた目が、心が傷ついたことを表してるんだ。
レオンさんにそんなつもりがなかったとしても、ルドガーさんのことを傷つけてしまったことだけはしっかりと反省してもらわないとね!
「シュウっ! レオンを呼んできたぞ」
「シュウさま、レオンでございます。お呼びいただきありがとうございます。あの、ルドガーは……ルドガーの様子をお教えいただけないでしょうか?」
「……レオンさま……」
扉の向こうから聞こえるレオンさんの悲痛な声にルドガーさんが反応するけれど、まだだめだ。
レオンさんを可哀想に思ったのか扉に近づこうとするルドガーさんを止めて、ぼくはレオンさんに向かって声をかけた。
「心配しなくても、ルドガーさんは大丈夫ですよ。マクベスさんの代わりにフレッドの世話役にすると約束したら機嫌を直してくれましたから」
「えっ? フレデリックさまの……お世話役、ですか?」
「ええ。ルドガーさん、王都にいた頃からずっとフレッドのことを憧れてたんですって。いつか、マクベスさんみたいに一番の側近としてフレッドのお世話ができるようになりたいって、このサヴァンスタックの領地までついてきてくれたんです。レオンさん、ご存知でしたか?」
「い、いいえ。まだそこまでは話もできておりませんでした」
「ああ、そうなんですね。今回マクベスさんが不在の間、ルドガーさんが頑張ってこのお屋敷を切り盛りしてくださったでしょう? こんなに優秀なルドガーさんだから、レオンさんがぼくの護衛をしてくださるように、ルドガーさんにも着替えや入浴の手伝いをお願いすることにしたんです。これからはお二人でぼくたちのことを守ってくださいますよね?」
「ちょ――っ、ちょっとお待ちください。あの……ルドガーがフレデリックさまのお世話を? 着替えも入浴も……ってそれは本当に?」
「はい。もちろんです。マクベスさんと同じことをやっていただくんですから。ねぇ、フレッド。ルドガーさんならいいでしょう?」
「ああ、ルドガーならきめ細やかな世話をしてくれそうだ。異論は何もないな」
ふふっ。フレッドったら、ちゃんと同意してくれてる。
すぐにぼくの考えがわかったみたいだ。
やっぱ流石だな……。
「あの、それは本当にルドガーの希望でしょうか?」
「ふふっ。もちろんです。ねぇ、ルドガーさん」
ぼくはルドガーさんに目配せすると、ルドガーさんは扉の向こうにいるレオンさんに目掛けて大声で話し始めた。
「レオンさま……私、ずっと旦那さまに憧れていたのです。だからこそ、こうしてサヴァンスタックまで連れてきていただいたのです。15年以上、おそばで働かせていただいていて……今回一人でこのお屋敷を切り盛りできたら、旦那さま付きのお世話役にしていただこうと密かに思っていたのです。ですが、シュウさまと戻ってこられて……これからは旦那さまのお世話はシュウさまがなさると思って諦めようと思ったのですけど、シュウさまが私の思いを汲んでくださって……旦那さま付きにしていただけることになったのです。ですから、レオンさまがシュウさまをお護りになって、私が旦那さまをお世話をするなら、とても素敵なことだと思うんです。レオンさま、認めていただけますか? それなら、私……この扉を開けます」
「ルドガー……そんなに、フレデリックさまをお慕いしていたのか?」
「はい。もちろんです」
「私よりもか?」
「えっ?」
「唯一の私よりもフレデリックさまの方が好きだというのか? 私はそれを聞いてこれからフレデリックさまとルドガーの姿を見るたびに嫉妬するのだぞ。それでもルドガーはフレデリックさま付きのお世話役になるというのか?」
「フレデリックさまへの思いはレオンさまとは違います。フレデリックさまは尊敬と憧れで、レオンさまのことは心から愛しています。それではだめなのですか?」
「ルドガー、私はすべての思いを独占したい。愛だけでなく、憧れも尊敬も……私以外に向くことなど耐えられないんだ。何も知らずにいられたら、まだ我慢もできただろうが……知ってしまった今は嫉妬しかない」
そう。
そのことをわかって欲しかったんだ。
ルドガーさんが抱いた気持ちを……。
「ルドガーさん、あとは直接話した方がいいんじゃないですか?」
小声でルドガーさんに告げるとルドガーさんは安心したように頷き、ゆっくりと扉の前に立った。
そして、静かに扉を開けると目の前にはレオンさん、すぐ後ろにフレッドの姿が見えた。
フレッドが僕をみて嬉しそうに微笑んでいるのは、作戦がうまくいったと思ったからか……それとも、ぼくの顔が見えて嬉しかったか……。
ふふっ。きっと、両方だって言いそうだ。
レオンさんは扉越しではかなり強気の口調だったけれど、目の前に急にルドガーさんが現れて緊張しているみたいだ。
「ル、ルドガー……あの……」
そんなレオンさんに、ルドガーさんはまだ目の腫れも引かないままにっこりと微笑んだ。
「レオンさま……何も知らない方が良かったですか? 私はレオンさまが唯一だから、全てを知ってもらいたいと思ったのですよ」
「――っ!! そ、それは……」
ルドガーさんの言葉にレオンさんはようやく自分の失言に気付いたようで、膝から崩れ落ちた。
「あ、あの……ルドガー。私が……私が悪かった。だから、頼む。許してくれ……」
「レオンさま……顔を上げてください。私は、もう怒ってないですよ」
「ルドガー……」
顔を上げたレオンさんの目からはいっぱい涙が溢れていた。
きっとどんなに辛い訓練でも涙なんて流したことはなかっただろう。
けれど、ルドガーさんのことに関することだけはレオンさんの感情も制御することなんてできないんだな。
レオンさんは、優しい笑顔で自分を迎え入れてくれたルドガーさんをもう離さないとでも言わんばかりに強く抱きしめながら謝罪の言葉を述べ続けた。
「本当に悪かった……。私はルドガーに誠実であろうと思いすぎて、判断を見誤っていた。全てを知らせることが正しいことではないのだな……」
「レオンさま……そのお気持ちはとても嬉しいのです。私も……レオンさまのことは誰よりもなんでも知っていたいと思いますから。ただ……レオンさまのお気持ちがどなたかに向いていらっしゃったかは正直知りたくないのです……。たとえそれが恋愛感情でなかったとしても……」
「ああ、私もルドガーの気持ちは今、よくわかった。ルドガーがフレデリックさまに憧れてここについてきたのだと聞いて嫉妬してしまったのだからな」
「レオンさま……そんなに嫉妬してくださったのですか?」
「ああ。フレデリックさまと比べられたら私など……足元にも及ばないのだからな」
「レオンさま。私はレオンさまのことをお慕いしております。この感情はレオンさまだけです」
「ルドガー! 私もだ。この世で愛するのはルドガーだけだ。信じてくれるか?」
「はい。もちろんです。泣いてしまって……部屋から追い出してしまって、ごめんなさい……」
「いや、私が軽率すぎたのだ。悪かったのは私だから謝らないでくれ」
「レオンさま、私が悪かったのです。私がもっとレオンさまを信じていれば……」
「いいや、私が……」
「あーっ、もういいか? 私もいいかげんシュウを連れて部屋に戻りたいのだが……」
痺れを切らしたフレッドの言葉にレオンさんとルドガーさんはようやくぼくたちの存在を思い出したようで、ぼくたちの方に顔を向けてくれた。
すっかり仲直りして二人の世界になっていたもんね。
「申し訳ございません、フレデリックさま。シュウさま。」
「申し訳ございません、旦那さま、シュウさま」
ふふっ。二人揃って謝罪するのも仲が良い証拠かな。
「今日のところは許してやるが、次からは痴話喧嘩は二人で解決してくれ。シュウ、部屋に戻るぞ」
そう言ってフレッドはぼくの手を取り、部屋に戻ろうとしたけれどその背後から、レオンさんの慌てたような声が聞こえてきた。
「あ、あの……フレデリックさま」
「なんだ? まだ何か気になることでもあるのか?」
「いえ、あの……ルドガーがフレデリックさまのお世話付きになるというのは、まことの話でございますか?」
「ああ、あれか。だとしたらどうする?」
フレッドはニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、レオンさんを見ている。
「お決めになられたことでしたら私が文句など言えた義理ではございませんが……できることならばルドガーにはしてほしくないと思っております」
「ははっ。はっきり言ったな」
「はい。申し訳ございません」
「心配するな。あれは其方にルドガーの気持ちをわからせるための嘘だ。ルドガーには今まで通り、屋敷の取り仕切りを任せる。そもそも私に世話付きなど必要ないのだからな」
「そ、そうなのでございますか?」
「ああ、着替えも料理も自分でやる。シュウが嫌だというのでな。もちろん、シュウの世話も私がやるのだぞ」
「ああ……確かに」
レオンさんは納得したようにぼくを見た。
「あれほどまでにシュウさまを溺愛していらっしゃるフレデリックさまが、自分のお世話もシュウさまのお世話も任せるはずがございませんね」
「ああ、普段の其方ならすぐに気付いただろうが、今日はよほどルドガーのことで頭に血が昇っていたと見えるな」
「はい。私にとってルドガーはそれほど大切な存在ですから……」
「それは私ではなく本人にしっかりと伝えておけ。レオンもルドガーも明日からはしっかりと頼むぞ」
「はっ」
レオンさんとルドガーさんが深々とぼくたちに頭を下げるのを見ながら、ぼくはフレッドに抱き抱えられ部屋へと戻った。
どうなることかと思ったけれど、二人が仲直りできて本当に良かったよ。
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