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第五章 (王城〜帰郷編)
花村 柊 51−2
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「はふっ、はふっ。炊き立てで美味しい~!」
「ふふっ。そういえば、米の時はシュウの食欲がいつもより増していたな。いつも食が細くて心配だったが、屋敷で米を食べるようになれば少しは安心だな」
「でも食べすぎて太っちゃうかも……。鍛えても筋肉は付きにくいって言われたし、食事量を減らすか少しは運動しないとね。あんまり太っちゃってフレッドに嫌われたら嫌だし……」
「気にすることはない。シュウが太っても私の気持ちに変化など何もないが、屋敷に帰ればシュウも忙しくなるぞ。私の仕事を手伝ってもらうから、食事量が増えても太りはしないよ」
「そっか! うん、頑張る! じゃあ、いっぱい食べて体力つけとかなくちゃ! お代わりもらっちゃおうかな」
「ああ、いっぱい食べるといい」
炊き立てのご飯に美味しいお刺身。
それに醤油の味なんて以前ここで食べた時以来だ。
ぼく、獲れたての新鮮なお刺身なんてこれまで食べたことなかったからコリコリの食感に感動したんだ。
それにお魚の煮付けに天ぷら。
この料理だけ見ていると本当に以前ぼくがいた世界に戻ったみたい。
このご飯をこれからお屋敷で食べられるのか……。
本当に嬉しいな。
お父さんにもこの感動伝わってるかな。
お代わりを二度も貰って、おかずも全て完食してお腹が一杯になってしまった。
「ふぅ……苦しいっ。もう食べられな~い」
「ふふっ。よく食べていたな。シュウがこんなに満足してくれて私も嬉しいよ」
食後のコーヒーを運んできてくれたアンナさんとリューイさんに
「お料理、どれもすっごく美味しかったです。ご馳走さまでした」
と笑顔でお礼を言うと、
「まぁまぁ、そんなにお褒めいただきまして光栄でございます。もうリューイはずっとご伴侶さまが美味しく召し上がってくださってるか心配で厨房をうろうろと歩き回っていたんですよ」
と笑いながら教えてくれた。
「おい、アンナ。そんなのいちいちバラすな。恥ずかしいだろう」
リューイさん、前はすごくおどおどして本当に自信がなさそうだったのに……。
こんなに変われるものなんだね。
フレッドもリューイさんの様子を見て嬉しそうだ。
「シュウはすっかりリューイの料理を気に入ったようだぞ。いつもはあの半分ほども食べられないのだからな」
「大変嬉しいお言葉をいただき料理人冥利に尽きます。ありがとうございます。あっ、こちらが米の販売業社でございます。先ほど連絡しましたら、喜んでお屋敷にお届けすると申しておりました」
「おお、そうか。わざわざすまないな。シュウ、これで屋敷でも米が食べられるぞ」
「わぁーっ、ありがとうございます! リューイさん! ――あっ!」
あまりの嬉しさにリューイさんに握手しにいこうとして思い出した。
そういえば、一人で行っちゃいけないってフレッドに言われてたんだっけ。
「えっと、フレッド……お礼ってどうしたらいい?」
「ふふっ。シュウ、ちゃんと私との約束を思い出して偉かったな」
フレッドはぼくの頭を優しく撫でてくれる。
よかった、また騒ぎになったりしたら嫌だもんね。
「リューイ、世話になった礼がしたいのだが、なんでも願いを言ってくれ。私の大事なシュウを喜ばせてくれたのだから、私に叶えられることならなんでもしてやるぞ」
フレッドの言葉にリューイさんとアンナさんは顔を見合わせて驚いていたけれど、リューイさんはにっこりと笑顔を浮かべて、
「私どもの願いはただ一つ。またお二人でお店にお越しいただき、私の料理を美味しいと召し上がってくださることが何よりも褒美でございます」
と言ってくれた。
リューイさんの笑顔が眩しい。
以前の時には見られなかったリューイさんの心からの笑顔。
ああ、本当に今の世界はリューイさんにとって幸せになったんだな。
「リューイ……わかった。これから、月に一度はシュウを連れて食事に来よう」
「――っ! まことでございますか! ああ、本当に嬉しゅうございます。公爵さま、ありがとうございます」
「いや、私もシュウを連れて遠出する目的ができた。毎月其方たちに会って、食事ができるのを楽しみにしておこう」
「はい。その時は腕によりをかけてつくらせていただきます」
「ああ、頼むよ。なぁ、シュウ」
「はい。美味しい食事、また食べに来ますね」
嬉しそうなアンナさんとリューイさんに見送られながら、ぼくたちは店を出た。
入った時と違って、大勢の人たちの姿はない。
きっと騎士さんたちが上手くお話をしてくれたのかもしれない。
「シュウ……馬車に戻ろうか?」
「うん……あの、今日は海には行っちゃダメかな?」
「海? 行きたいのか?」
「うん。あの時、フレッドが一生をぼくと一緒にいてくれるって誓ってくれて嬉しかったから。またあの海を一緒に見たいなって」
「そうか……。レオン、少しだけ海に行くのは可能か?」
「はい。この店の裏の海でしたら、誰も入れませんので問題ありません。どうぞご案内いたします」
レオンさんに連れられて店の裏側から外に出ると、ザァーっ、ザァーっと波の音が聞こえてきて、懐かしい気持ちでいっぱいになった。
気づけばぼくの目から涙がこぼれてしまっていた。
「シュウ? どうした? 泣いてるのか? 何かあったか?」
心配そうな表情でさっとぼくを抱きしめてくれるフレッドに必死に顔を横に振って答えた。
「ち、ちが――っ、ま、えに……ふれっど、と……きたときの、こと、おもいだして…」
「ああ。そうだったか。そうだな。懐かしいな」
スッとぼくを抱きかかえてあの時と同じ場所に立つと、あの時のルドガーさんのようにマクベスさんがさっと敷物を敷いてくれた。
フレッドはフッと笑みを浮かべながら、腰を下ろしあぐらをかくフレッドの足の間にぼくを座らせてぎゅっと抱きしめた。
「シュウ……私がここでシュウに誓ったのを覚えていてくれたのだろう?」
「うん。ねぇ、フレッド……あの時の誓いをもう一度言ってくれる?」
「ああ。もちろんだ。何度でも誓うよ」
そういうと、フレッドはぼくをそっと膝から下ろすと、あの時と同じように片膝をついて右手を胸に当て、左手をぼくに向けた。
これはオランディア王国の誓いのポーズだ。
フレッドはぼくをじっと見つめながらふぅと大きく深呼吸してゆっくりと口を開いた。
「シュウ……このオランディア王国、唯一神 フォルティアーナの名において、私、フレデリック・ルイス・サヴァンスタックは今、ここに誓う。
私は、ハナムラ・シュウを心から愛し、命が尽きるまで、いや、この命が尽きようともハナムラ・シュウと共に在り続ける」
あの時、ぼくの心に刻み込まれた誓いの言葉と一言一句同じ。
それは、フレッドの心からの言葉だっていう証だ。
「ぼくも……ぼくも誓うよ。ぼくの全てはフレッドと共にあることを……」
差し出されたフレッドの左手をとり、涙を流しながらそう返すと、フレッドは嬉しそうにぼくをぎゅっと抱きしめた。
涙に濡れた目にスッと唇が当てられて、チュッと涙が吸われる。
「ふふっ。シュウは、涙も甘く美味しいのだな」
にっこりと微笑むフレッドの目にも涙が滲んでいた。
僕は同じようにフレッドの目にキスをして涙に吸い付いた。
本当だ。
唯一って涙さえも甘く感じるんだな……。
不思議だな。
「ねぇ、フレッド…‥ぼく、死ぬ時もフレッドと一緒がいいな。一人で残されるのは嫌だし、フレッドを置いていくのも嫌だ」
「大丈夫だ」
「えっ? 大丈夫ってどういうこと?」
「唯一は同じ時に息を引き取ると言われている。だから、病気でも事故でも、そして寿命でも私たちはいつまでも一緒だ」
「そうなんだ……。じゃあ、いっぱい長生きしなきゃね。フレッドといっぱいいろんな思い出作りたい」
「ああ、そうだな。これからずっと元気でいないとな」
フレッドはぼくを抱きかかえるとあぐらをかき、ぼくを足の間に座らせてぎゅっと抱きしめてくれた。
「ねぇ、じゃあ……お父さんとアンドリューさまも同じなんだね。一緒に亡くなるならきっと寂しくないだろうな」
「そうだな……。きっと最期の時まで幸せだったろう。私たちも同じだよ」
「うん。そうだね」
ぼくが左手をそっと太陽にかざすと、フレッドも同じように左手をかざした。
すると、
「わぁーっ! 何、この光っ!」
太陽の光に指輪の宝石がキラキラと水平線の向こうに届くかと思うほどの強い光を放って、フッと消えた。
「……なんだったんだろう? 今の光……」
「きっと……アンドリュー王とトーマ王妃に伝えてくれたのではないか。私たちが元気に暮らしていると」
「そうか……そうかもね」
お父さん……ぼく、幸せに暮らしてるよ。
離れていてもずっと忘れないから。
だから、安心していてね。
そう心の中で呟いた時、
――柊……ずっと見守ってるからね。
お父さんの声が聞こえた気がした。
「さぁ、シュウ。そろそろ馬車に戻ろう。屋敷のみんなが私たちの到着を待っているぞ」
「うん。そうだね。またここに来たいな」
「ああ、これから毎月連れてくると約束したろう?」
「ふふっ。そうだった」
フレッドに抱きかかえられながら、その場を離れるとさっとレオンさんとマクベスさんが来てくれた。
「待たせたな。それでは屋敷に帰ろうか」
「はい。屋敷の者たちも皆、首を長くしてお待ちしておりますよ」
にこやかな笑顔にホッとする。
馬車はお屋敷に向けてゆっくりと動き出した。
ぼくたちの帰る場所はもうすぐだ。
「ふふっ。そういえば、米の時はシュウの食欲がいつもより増していたな。いつも食が細くて心配だったが、屋敷で米を食べるようになれば少しは安心だな」
「でも食べすぎて太っちゃうかも……。鍛えても筋肉は付きにくいって言われたし、食事量を減らすか少しは運動しないとね。あんまり太っちゃってフレッドに嫌われたら嫌だし……」
「気にすることはない。シュウが太っても私の気持ちに変化など何もないが、屋敷に帰ればシュウも忙しくなるぞ。私の仕事を手伝ってもらうから、食事量が増えても太りはしないよ」
「そっか! うん、頑張る! じゃあ、いっぱい食べて体力つけとかなくちゃ! お代わりもらっちゃおうかな」
「ああ、いっぱい食べるといい」
炊き立てのご飯に美味しいお刺身。
それに醤油の味なんて以前ここで食べた時以来だ。
ぼく、獲れたての新鮮なお刺身なんてこれまで食べたことなかったからコリコリの食感に感動したんだ。
それにお魚の煮付けに天ぷら。
この料理だけ見ていると本当に以前ぼくがいた世界に戻ったみたい。
このご飯をこれからお屋敷で食べられるのか……。
本当に嬉しいな。
お父さんにもこの感動伝わってるかな。
お代わりを二度も貰って、おかずも全て完食してお腹が一杯になってしまった。
「ふぅ……苦しいっ。もう食べられな~い」
「ふふっ。よく食べていたな。シュウがこんなに満足してくれて私も嬉しいよ」
食後のコーヒーを運んできてくれたアンナさんとリューイさんに
「お料理、どれもすっごく美味しかったです。ご馳走さまでした」
と笑顔でお礼を言うと、
「まぁまぁ、そんなにお褒めいただきまして光栄でございます。もうリューイはずっとご伴侶さまが美味しく召し上がってくださってるか心配で厨房をうろうろと歩き回っていたんですよ」
と笑いながら教えてくれた。
「おい、アンナ。そんなのいちいちバラすな。恥ずかしいだろう」
リューイさん、前はすごくおどおどして本当に自信がなさそうだったのに……。
こんなに変われるものなんだね。
フレッドもリューイさんの様子を見て嬉しそうだ。
「シュウはすっかりリューイの料理を気に入ったようだぞ。いつもはあの半分ほども食べられないのだからな」
「大変嬉しいお言葉をいただき料理人冥利に尽きます。ありがとうございます。あっ、こちらが米の販売業社でございます。先ほど連絡しましたら、喜んでお屋敷にお届けすると申しておりました」
「おお、そうか。わざわざすまないな。シュウ、これで屋敷でも米が食べられるぞ」
「わぁーっ、ありがとうございます! リューイさん! ――あっ!」
あまりの嬉しさにリューイさんに握手しにいこうとして思い出した。
そういえば、一人で行っちゃいけないってフレッドに言われてたんだっけ。
「えっと、フレッド……お礼ってどうしたらいい?」
「ふふっ。シュウ、ちゃんと私との約束を思い出して偉かったな」
フレッドはぼくの頭を優しく撫でてくれる。
よかった、また騒ぎになったりしたら嫌だもんね。
「リューイ、世話になった礼がしたいのだが、なんでも願いを言ってくれ。私の大事なシュウを喜ばせてくれたのだから、私に叶えられることならなんでもしてやるぞ」
フレッドの言葉にリューイさんとアンナさんは顔を見合わせて驚いていたけれど、リューイさんはにっこりと笑顔を浮かべて、
「私どもの願いはただ一つ。またお二人でお店にお越しいただき、私の料理を美味しいと召し上がってくださることが何よりも褒美でございます」
と言ってくれた。
リューイさんの笑顔が眩しい。
以前の時には見られなかったリューイさんの心からの笑顔。
ああ、本当に今の世界はリューイさんにとって幸せになったんだな。
「リューイ……わかった。これから、月に一度はシュウを連れて食事に来よう」
「――っ! まことでございますか! ああ、本当に嬉しゅうございます。公爵さま、ありがとうございます」
「いや、私もシュウを連れて遠出する目的ができた。毎月其方たちに会って、食事ができるのを楽しみにしておこう」
「はい。その時は腕によりをかけてつくらせていただきます」
「ああ、頼むよ。なぁ、シュウ」
「はい。美味しい食事、また食べに来ますね」
嬉しそうなアンナさんとリューイさんに見送られながら、ぼくたちは店を出た。
入った時と違って、大勢の人たちの姿はない。
きっと騎士さんたちが上手くお話をしてくれたのかもしれない。
「シュウ……馬車に戻ろうか?」
「うん……あの、今日は海には行っちゃダメかな?」
「海? 行きたいのか?」
「うん。あの時、フレッドが一生をぼくと一緒にいてくれるって誓ってくれて嬉しかったから。またあの海を一緒に見たいなって」
「そうか……。レオン、少しだけ海に行くのは可能か?」
「はい。この店の裏の海でしたら、誰も入れませんので問題ありません。どうぞご案内いたします」
レオンさんに連れられて店の裏側から外に出ると、ザァーっ、ザァーっと波の音が聞こえてきて、懐かしい気持ちでいっぱいになった。
気づけばぼくの目から涙がこぼれてしまっていた。
「シュウ? どうした? 泣いてるのか? 何かあったか?」
心配そうな表情でさっとぼくを抱きしめてくれるフレッドに必死に顔を横に振って答えた。
「ち、ちが――っ、ま、えに……ふれっど、と……きたときの、こと、おもいだして…」
「ああ。そうだったか。そうだな。懐かしいな」
スッとぼくを抱きかかえてあの時と同じ場所に立つと、あの時のルドガーさんのようにマクベスさんがさっと敷物を敷いてくれた。
フレッドはフッと笑みを浮かべながら、腰を下ろしあぐらをかくフレッドの足の間にぼくを座らせてぎゅっと抱きしめた。
「シュウ……私がここでシュウに誓ったのを覚えていてくれたのだろう?」
「うん。ねぇ、フレッド……あの時の誓いをもう一度言ってくれる?」
「ああ。もちろんだ。何度でも誓うよ」
そういうと、フレッドはぼくをそっと膝から下ろすと、あの時と同じように片膝をついて右手を胸に当て、左手をぼくに向けた。
これはオランディア王国の誓いのポーズだ。
フレッドはぼくをじっと見つめながらふぅと大きく深呼吸してゆっくりと口を開いた。
「シュウ……このオランディア王国、唯一神 フォルティアーナの名において、私、フレデリック・ルイス・サヴァンスタックは今、ここに誓う。
私は、ハナムラ・シュウを心から愛し、命が尽きるまで、いや、この命が尽きようともハナムラ・シュウと共に在り続ける」
あの時、ぼくの心に刻み込まれた誓いの言葉と一言一句同じ。
それは、フレッドの心からの言葉だっていう証だ。
「ぼくも……ぼくも誓うよ。ぼくの全てはフレッドと共にあることを……」
差し出されたフレッドの左手をとり、涙を流しながらそう返すと、フレッドは嬉しそうにぼくをぎゅっと抱きしめた。
涙に濡れた目にスッと唇が当てられて、チュッと涙が吸われる。
「ふふっ。シュウは、涙も甘く美味しいのだな」
にっこりと微笑むフレッドの目にも涙が滲んでいた。
僕は同じようにフレッドの目にキスをして涙に吸い付いた。
本当だ。
唯一って涙さえも甘く感じるんだな……。
不思議だな。
「ねぇ、フレッド…‥ぼく、死ぬ時もフレッドと一緒がいいな。一人で残されるのは嫌だし、フレッドを置いていくのも嫌だ」
「大丈夫だ」
「えっ? 大丈夫ってどういうこと?」
「唯一は同じ時に息を引き取ると言われている。だから、病気でも事故でも、そして寿命でも私たちはいつまでも一緒だ」
「そうなんだ……。じゃあ、いっぱい長生きしなきゃね。フレッドといっぱいいろんな思い出作りたい」
「ああ、そうだな。これからずっと元気でいないとな」
フレッドはぼくを抱きかかえるとあぐらをかき、ぼくを足の間に座らせてぎゅっと抱きしめてくれた。
「ねぇ、じゃあ……お父さんとアンドリューさまも同じなんだね。一緒に亡くなるならきっと寂しくないだろうな」
「そうだな……。きっと最期の時まで幸せだったろう。私たちも同じだよ」
「うん。そうだね」
ぼくが左手をそっと太陽にかざすと、フレッドも同じように左手をかざした。
すると、
「わぁーっ! 何、この光っ!」
太陽の光に指輪の宝石がキラキラと水平線の向こうに届くかと思うほどの強い光を放って、フッと消えた。
「……なんだったんだろう? 今の光……」
「きっと……アンドリュー王とトーマ王妃に伝えてくれたのではないか。私たちが元気に暮らしていると」
「そうか……そうかもね」
お父さん……ぼく、幸せに暮らしてるよ。
離れていてもずっと忘れないから。
だから、安心していてね。
そう心の中で呟いた時、
――柊……ずっと見守ってるからね。
お父さんの声が聞こえた気がした。
「さぁ、シュウ。そろそろ馬車に戻ろう。屋敷のみんなが私たちの到着を待っているぞ」
「うん。そうだね。またここに来たいな」
「ああ、これから毎月連れてくると約束したろう?」
「ふふっ。そうだった」
フレッドに抱きかかえられながら、その場を離れるとさっとレオンさんとマクベスさんが来てくれた。
「待たせたな。それでは屋敷に帰ろうか」
「はい。屋敷の者たちも皆、首を長くしてお待ちしておりますよ」
にこやかな笑顔にホッとする。
馬車はお屋敷に向けてゆっくりと動き出した。
ぼくたちの帰る場所はもうすぐだ。
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