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第五章 (王城〜帰郷編)

フレッド   50−3※

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「ある日、シュウがサヴァンスタックの町にあった古書店で一冊の古ぼけた本を見つけた。シュウしか読めない不思議な文字で書かれたその本は、トーマ王妃が書かれた本だとわかったんだ」

「えっ?」

思いもかけない言葉にレオンの口から驚きの声が漏れた。
まぁここでトーマ王妃の名が出るとは思わなかっただろうしな。

「シュウはそれを読みトーマ王妃にいたく心酔したようで、王城にまだ残っているトーマ王妃の書かれたもう一冊の本を読みたいと言い出し、私はその願いを叶えるためにサヴァンスタックを出て王城へ向かったんだ。そして、私とシュウは、王城に飾られたアンドリュー王とトーマ王妃の肖像画に触れ、気づいたら過去の世界に……アンドリュー王とトーマ王妃のいる世界に移動していたのだ。アンドリュー王は子孫である私が、数百年後の未来で皆から嫌悪され、蔑まれていることを知って、我々が元のこの時代に戻ってきた時には、間違った未来を修正すべく動いてくれたのだ。おかげで、私は人々から蔑まれる人生を終えることができた」

「……では、私……ルイがお二人と出会ったのは、その時だったのですね」

「ああ、あれからしばらくしてこの世界に戻ってきたから、ルイと再び会うことは叶わなかったな。ヒューバートには帰る前に未来から来ていたことを話していたから、きっとルイにも話をしたとばかり思っていた」

「団長は私の気持ちを慮って、二度と会えないとは仰らなかったんでしょう。私が最期の日までいつか出会えるとほのかな期待を持っていましたから……」

「マクベス……大人しいな。私のこの荒唐無稽な話はやはり信じられぬか?」

ただ黙ってじっと私を見つめていたマクベスにそう問いかけたが、マクベスは

「いいえ。旦那さまがお話しなさることを疑うことなど有り得ません。私は……見た目の色だけで旦那さまを嫌悪し、蔑んだ者たちが許せないのです」

と声を震わせた。

「マクベス……」

「旦那さま、さぞやお辛かったことでしょう。ああ、その世界での私は一体何をしていたのです! もっと旦那さまをお守りすることができたでしょうに!! 私はなんと不甲斐ない!!」

「落ち着け、マクベス!」

「いいえ、落ち着くなどできません。私の大事な旦那さまが見た目だけで蔑まれるなど! あってはならないことです。しかも領民たちまでもが、旦那さまを蔑むとは……。私がもっとしっかりしていれば……悔やんでも悔やみきれませぬ」

今はない、あの忌々しい世界のことをこんなにも怒ってくれるとは……思ってもいなかった。

マクベス……お前は本当に私のことを思ってくれていたのだな。
あの時は卑屈になり過ぎて、お前が優しくしてくれるのさえそれがマクベスの仕事だからと思っていた。

私の方こそ、お前に謝らなければならぬ。

「マクベス……ありがとう。そして、悪かった……」

「えっ? それはどういう……?」

「あの世界にいた頃の私はそんなにも私のことを想ってくれているマクベスのことさえ、卑屈に思ってしまっていた。変わらずに接してくれるのはそれがマクベスの仕事だからだと。お前が変わらずに接してくれることに感謝していたのに、心の中を全て曝け出すことまではできなかった。許してくれ」

「旦那さまがそうお思いになったのもよほど辛い世界だったからでございましょう。私とて、出会う人全てから嫌悪され蔑まれる世界になったら卑屈にもなりましょう。生きていることさえやめてしまうかもしれません。ですから、旦那さまが生きてシュウさまとお会いになったことは本当に奇跡なのでしょう。そして、その出会いが世界をも変えられた。シュウさまとは本当に素晴らしいお方なのですね」

「ああ、本当にシュウは私の運命を大きく変えてくれた。シュウなくしては今の私はいない。だからこそ、これから皆でシュウを大切に護って欲しいのだ」

そういうと二人はもちろんとでもいうように大きく頷いた。

「レオンも、マクベスもシュウといくらか同じ時を刻んで、シュウのことは多少なりともわかってくれただろうが、シュウは神の力によって生まれた存在だからか、人を疑うということを知らない。シュウの中では全てが性善説なのだ。それゆえに今までいくつもの危険な目に遭ってきた。今回シュウの専属護衛にレオンを頼んだのも、レオンならば命を懸けてでもシュウを護ってくれると思ったからだ。領地に戻り、私がシュウのそばから離れるときもあるだろう。レオンとマクベスにはシュウを全力で護ってほしい。そのためにお前たち二人には真実を話したのだ。レオン、マクベス……やってくれるか?」

「もちろんでございます! 誤ってしまったこのオランディアを正しい道に直してくださったシュウさまを必ずお護りいたします」

「旦那さま、屋敷ではこのマクベスも必ずやシュウさまをお護りいたします。どうぞ安心して公務にお励みください」

「ああ、お前たちに打ち明けてよかった。私は嬉しいぞ」

これが、シュウを護る男たちの団結が強まった瞬間だった。


王都を出発して明日で5日。
私たちはようやくサヴァンスタック領に入る。

昼前にアンナとリューイの店で早めの食事を摂り、そこから数時間で屋敷へと到着する予定になっている。

旅の最後の夜だから今日はシュウと愛しあおうとも考えたが、明日は屋敷の夫夫の部屋で初夜なのだ。
その時までシュウの体力を温存させておいた方がいいかと、風呂場で愛し合いたい気持ちを必死に抑えて、二人でベッドに横たわっている。

だが、風呂から出たシュウはほんのり頬を赤くしてそそられる。
一生懸命気を紛らわせようとシュウに明日の話をしておいた。

「あっという間だったね。順調すぎて怖いくらい」

そう言うシュウは、今まで出来事を思い出しているのだろうか。
我々にとっては数ヶ月ぶりとなるサヴァンスタックに緊張しているようだ。

サヴァンスタックを出発した日には、数ヶ月後の我々がこんなにも変わっているとは想像もつかなかった。

「ぼくはサヴァンスタックは初めてだってことになってるから怪しまれないようにしないとね!」

頑張らないと! と気合を入れるシュウには悪いが、怪しまれないようになんてことはシュウにはできないだろう。
シュウは素直で正直だから、隠し事などできるはずがない。

シュウがあの屋敷で気を張って疲れる姿など見たくないのだ。
だから、私はレオンとマクベスに全てのことを打ち明けたのだ。
あの二人が真実を知っていてくれたら、うまく立ち回ってくれることだろう。
それだけでシュウも気楽に過ごせるようになるはずだ。

二人に話をしておいたと言うと、シュウは驚きを隠せない様子だったが、一番気になるのは二人の反応だったようだ。

マクベスは驚きながらもしっかりと理解し、そして、私が嫌悪され蔑まれていたと言うことに怒ってくれていたと話すと、

「そうやって一緒に怒ってくれる人ってありがたいよね」

と嬉しそうに笑っていた。

私がこうやって過去の辛い思い出も話せるようになれたのも、シュウがいてくれるからこそだ。
シュウがそばにいてくれるから私は幸せになれたのだ。

シュウにその想いをぶつけると、

「じゃあ……フレッドから、ご褒美……欲しいな」

と言い出した。

物欲のないシュウがご褒美をねだるとは珍しい。
領地に着くことだし、服でも宝石でもなんでも買ってやろう。
シュウは一体何をご褒美にねだるのだろうか。

少し緊張しながら、何の褒美が欲しいのだ? と尋ねると、

「ぼくはフレッドが欲しい……」

と恍惚とした表情で私を誘うように口付けをしてきた。

疲れさせてはいけないと必死に我慢していたというのに。
こんなふうに誘われたら一気に興奮してしまう。

すぐにシュウをベッドに押し倒そうとした瞬間、

「今日はぼくが動くからフレッドは動いちゃダメだからね」

と釘を刺されてしまった。

動いてはいけない?
シュウが目の前にいると言うのに、触れることもできないということか……?

それは流石に酷というものだ。

しかし、ご褒美なのだからと言われれば手も足も出せない。

シュウは横たわる私の足の間に可愛らしく座り込んで、私の夜着の紐を見せつけるように解き放った。
ふふっと微笑むシュウの艶っぽい顔にたまらず息を呑んだ。

シュウの指先がただの布になってしまった夜着をスッと開くと、愚息はシュウに見つめられただけで硬く首をもたげていた。

少し反応をしている愚息を見て嬉しそうな声をあげ、顔を近づけるとフーッと息を吹きかけた。
それだけで、愚息はギュンと一気に昂り天を向いて聳り立った。

すでに自分でも引くほどに猛っている愚息を見て、可愛いと言ってくれるのはシュウだけだろう。
まぁ、シュウ以外には昂ることもないのだけれど。

先ほどの刺激にシュウの小さな顔ほど昂り大きくなった愚息の先端から蜜が溜まってしまっている。
シュウは小さな舌を出すと、子猫のようにぺろっとその蜜を舐めとった。

昨夜はシュウが疲れていたから、風呂場で寝てしまいそのまま蜜を出さずにいたからか、こんなふうに可愛らしく舐められると、視覚の威力も相まって、あっという間に蜜を噴き出してしまった。

ああ、こんなにも早くイくなんてシュウに早漏だと思われたかもしれないと内心落ち込んでいると、シュウは自分の口に入りきらなかった私の蜜を愚息に擦り付け始めた。

一体何をし始めたのだろうと見ていると、シュウが私の身体に跨り、小さな尻の割れ目に愚息を擦り付け始めた。
蜜に塗れた愚息がシュウの割れ目を滑るだけで、

「ああ……っ、あっ……きもちいぃ……んっ」

といやらしい声をあげる。
自分で腰を動かし嬌声を上げるなんてそんな痴態見せられながら、私が動いていけないなどとは拷問ではないか。

必死に我慢していたのに、シュウは自分で愚息を後孔にあてがい挿入いれ始めた。

愚息の先端がシュウの蕾の中にぐぽっと挿入はいると、そのままスルスルとシュウの奥まで挿入りこんでいく。
さすがシュウの中。
もうすっかり愚息の形を覚えてくれているようだ。
シュウの中はトロトロで柔らかいのに、キューッと締め付けてくる。
本当に最高だ。

シュウはあまりの気持ちよさに足がプルプルと震え始め力の抜けた身体が私の上に座り込んだ瞬間、グッチュンと音を立てて、シュウの最奥に嵌まっていった。

「ああ――っん!」

一際大きな嬌声が上がったと同時に、シュウの果実から蜜が弾け飛びそのままピクピクと痙攣し始めた。
よほど気持ちよかったのだろう、蜜が私の顔にまで飛んできた。

グッポリと奥に嵌まり込んでいる愚息が早く動けと指令を出してくるが、シュウはすっかり力が抜けて動けそうにない。
動くなと言われたが、このままでは私も、そしてシュウもどうしようもない。

私はシュウを上に乗せたまま、腰をグイッと動かした。

「やぁ――っん!!」

そう言いながらもシュウの奥が気持ちよさそうにグポグポと音を立てている。

「シュウへのご褒美だろう? もっと気持ち良くしてあげるよ」

そう言って激しく腰を動かすと、力の抜けたシュウはバランスを失い、愚息を中に挿入いれたまま、後ろに手をついた。

「ぐぅ――っ! シュウっ!」

愚息がシュウの後孔にグボっと挿入っているのを目の当たりにして、途轍もない興奮が高まっていく。
なんてエロい姿なんだ。

「やぁーっん、はずか、しい……っ」

そう言いつつも気持ちよさそうな姿により激しく腰を動かし愚息が出入りする様子を食い入るように見つめていると、シュウは恍惚とした表情を見せながらまた蜜を飛ばした。

シュウは、今度は自分の蜜で自分の顔を汚す。
そのなんともいやらしい光景に私の我慢は限界を超え、そのままシュウの最奥に蜜を放った。

さっき一度蜜を放ったというのにその量の多さに自分でも呆れてしまう。
全ての蜜を出し切って、シュウの身体を持ち上げると愚息が引き抜かれポッカリと愚息の形に開いた後孔から私の蜜がこぼれ落ちてくる。

あまりにもエロすぎる光景に愚息の興奮が治まるはずもなく、シュウをベッドに押し倒し、二度目の交わりに入った。
私もシュウも何度蜜を放ったのかわからないほど愛を確かめ続け、気づいた時にはシュウは意識を失ってしまっていた。

マクベスに寝室の片付けを頼み、風呂場で清めて出てきた時には綺麗なシーツに変わっていた。

マクベスには無言の圧力を感じた気がしたが、今日はシュウから誘われたのだ。
興奮したとて仕方がないだろう。

ベッドの中でシュウを抱きしめていると、しばらく経ってシュウが目を覚ました。
目覚めたシュウにレモン水を口移しで飲ませると、シュウの顔にようやく赤みが戻った。

無理させたことを謝って、どうして急に誘ってきたのかと尋ねてみると、

「明日から……明日からフレッドは、サヴァンスタックの公爵さまに戻っちゃうでしょ? ぼくだけのフレッドは今日だけなんだと思ったら、フレッドといつもよりもっといっぱい愛し合いたくなったんだ」

と可愛いことを言ってくる。

公爵でない私と最後の夜に思い出が作りたかったのだと言われて、嬉しくないわけがない。
だが、心配なと何もしなくていい。

私はいつだってシュウだけのものだ。

だが、今日見せてくれたシュウのあのいやらしい姿は決して私の記憶から消えることはないだろう。


「明日から僕も頑張るよ。フレッドと領地にいるみなさんのために」

そう言ってくれるシュウに愛の言葉を囁いて、私もシュウも明日からのことを思いながら眠りについた。
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