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第五章 (王城〜帰郷編)
花村 柊 45−2※
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「ふふっ。もうイッたか。シュウは可愛いな」
そう言いながら、フレッドは手の中にある蜜をぺろっとひと舐めして
「今日のも甘くて最高だ」
とぼくを見つめながらそんなことを言ってくる。
そして、その蜜の残りを自分の指先に纏わせ、そのままぼくのお尻へと手を伸ばした。
「んんっ!」
フレッドの指がぼくの中に挿入ってくる。
もうすっかりフレッドの指も、あの大きなモノの形も全て覚えてしまっているぼくの中は痛みを感じることは一切ない。
しかも、あの蜜は媚薬のような役割もするって知ってるから何も恐怖も感じない。
ぼくはただフレッドの与えてくれる快感を楽しめばいいんだ。
目の前のフレッドに抱きつくと、フレッドはぼくの顎をクイっとあげ、キスをした。
フレッドの肉厚な舌で口内を吸いつかれたり、ぼくの舌に絡みつかれたりしている間に、ぼくの中にいる指はグチュグチュと音を立てて動き回っている。
「んんっ、んっ……んっ」
自分でもフレッドを受け入れる場所が柔らかく解れたのがわかるほどぬちゅぬちゅといやらしい音がお風呂場に響いている。
ぼくはもう我慢ができなくて、唇を離しお願いした。
「ふ、れっどぉ……もっ、はや、くぅ……いれ、てぇ……」
「くっ――! ああ、もうシュウはなんでこんなに可愛いんだろうな」
そういうと、フレッドはぼくの中で蠢いていた指をさっと引き抜き、ぼくをぎゅっと抱きしめると大きく猛ったフレッドのモノをぼくのお尻にあてがった。
「ああ……っ、ふ、れっどのがぁ……はいって、くるぅ……」」
もうすっかり解されていたその場所はフレッドの大きなモノをなんなく受け入れ、スルスルと吸い込んでいく。
あっという間に奥までピッタリと嵌まり込むと、
「動くぞ」
というが早いかフレッドはぼくを抱きかかえたまま、その場に立った。
「わぁーっ!」
びっくりしたぼくはフレッドの首に抱きついたけれど、フレッドは
「大丈夫、落としたりしないよ」
とぼくの耳元でそう囁きながら、ぼくの膝裏から背中に手を回し隙間なくピッタリと抱きしめ腰を大きく動かし始めた。
「ひゃ――あっ! ああっん、ああっ……っあ、ああ……っ」
パチュンパチュンとぼくの身体がフレッドの肌に当たる音と、グチュヌチュとフレッドのがぼくのお尻を出入りする音がなんともいやらしく耳に入ってくる。
けれど、それ以上にフレッドが与えてくれる快感が気持ちよすぎてぼくは何にも考えられなくなっていた。
「ああっ……あっ……きもちいぃ、よぉ……もっ、とぉ……っ」
「シュウッ、シュウッ! ああっ、もう最高だっ!」
フレッドの腰の動きがさらに激しくなって、ぼくはもう我慢できなかった。
「ああっんっ、んっ……も、う……だ、めっ、イッちゃ、うぅ……!!」
ぼくのモノから弾け飛んだ蜜が隙間なくピッタリくっついたぼくとフレッドのお腹を汚しているけれど、フレッドはそれすら嬉しそうに見ながら、
「シュウ……愛してるよ」
とキスをしながら、激しく腰を振りぼくの最奥に蜜を放った。
ぼくの身体の中にフレッドの温かな蜜が広がっていくのを幸せに感じながら、
「ぼくも、あいしてる……んんっ!」
と返すと、ぼくの中にいたフレッドのモノが大きく猛ってくのを感じた。
「えっ? ふ、れっど……?」
「……シュウ、もう一度いいか?」
フレッドは真剣な眼差しでぼくの返事も聞かないまま、また激しく腰を振り始めた。
中に出されたフレッドの蜜がフレッドの動きに合わせてグチュグチュと音を立てる。
「ああっ……ふ、れっどぉ……んんっ、んっ……、きもちいぃ……っ」
「シュウ――っ! これ以上煽らないでくれっ!」
あまりの気持ちよさにもう自分でも何を喋ってるかもわからなかったけれど、フレッドがぼくをぎゅっと抱きしめながら激しく腰を動かして余裕がなさそうにしているのがすごく嬉しくてただただ幸せだった。
「ふれ、っどぉ……だいすきぃ……」
「くぅ――っ! ゔっ――!!」
「あった、かい……」
ぼくの身体の中にまた温かな蜜が広がるのを感じながら、ぼくは幸せのままに意識を失っていた。
目を覚ますとぼくはフレッドの腕に抱かれながら寝室のベッドの中にいた。
「シュウ……起きたのか?」
「ふれ、っどぉ……けほっ」
「ああ、無理しなくていい。ほら、レモン水だ」
そういうとフレッドはレモン水を自分の口に含み、ぼくの口にゆっくりと注いでくれた。
コクコクと飲み干し、
「おいしぃ……」
というと、フレッドは嬉しそうにもう一度飲ませてくれた。
「シュウ……身体は辛くないか?」
「ううん、へいき。だって、きもちよかったから……」
「ああ……シュウっ! 私もだ。シュウ、愛してるよ……」
フレッドはぼくをぎゅっと抱きしめながら、甘い甘いキスをしてくれる。
ああ、やっぱりフレッドと一緒にいると幸せだ。
お父さん……ぼくはここでもフレッドと幸せに暮らしているよ。
お父さん、アンドリューさま。
こんなに幸せを感じられる世の中にしてくれて本当にありがとう。
そう心の中でお父さんとアンドリューさまにお礼を言いながら、ぼくはフレッドとのキスを味わい続けた。
「うーん……いい、におい……」
甘い匂いに鼻腔をくすぐられ、ぼくが目を覚ますとフレッドにぎゅっと抱きしめられていた。
耳の後ろから香ってくる匂いはぼくの好きなフレッドの匂いだ。
この匂いがどうやらぼくの夢にも出てきたみたい。
「シュウ、おはよう」
フレッドの綺麗な瞳にぼくの顔が映っている。
ああ、やっぱりこの瞳……綺麗だな。
「フレッド……おはよう」
フレッドがじっとぼくを見てくるのはアレを待っているからだ。
アレって言うのは……そう、キス!
昨日の夜、散々したのになと思ったけれど、フレッド曰くぼくからのキスは特別らしい。
ぼくはフレッドの唇にちゅっと重ね合わせると、途端に嬉しそうな顔でぼくを見つめた。
「やっぱり朝からシュウに口づけをしてもらうのは最高だな」
「ふふっ。もう何十回もしてるのにそんなに嬉しいの?」
「ああ。もちろんだよ。シュウからの口付けは何ものにも変え難いよ」
ここ最近はお父さんたちと離れる日のことばかりを考えていたから、正直ぼくもフレッドも心ここにあらずと言う感じでこんなにも穏やかな朝を迎えたことはなかった。
フレッドとイチャイチャしながら、ゆったりとベッドで時間を過ごすなんていつぶりだろう……。
だから、今日はこの時間がすごく愛おしい。
「フレッド……だぁ~い好き!」
あまりにも幸せな時間にぼくはフレッドに抱きついてチュッともう一度重ね合わせると、フレッドは一瞬目を見開いて驚いていたけれど、満面の笑みで貪るようにキスをしてきた。
昨夜したよりもずっと濃厚なキスを何度も何度も繰り返されて唇が離れた時にはあまりの激しさにぐったりとしてしまったけれど、でもフレッドとのキスはぼくを幸せな気分にしてくれる。
この時間が永遠に続けばいいとさえ思ってしまうほど、ぼくはフレッドとのキスが好きなんだ。
もっともっとフレッドとイチャイチャしていたかったのに、
『くぅーーっ』
と堪え性のないぼくのお腹が鳴ってしまい、フレッドは
「そろそろ食事をお願いしようか」
と言い出した。
ちょっと残念だったけど、お腹が空いてはどうしようもない。
フレッドに手伝ってもらって、ヘッドボードを背もたれに座らせてもらうと、それを見計らったようにパールが
「キューン」
とぼくの元へ飛び込んできた。
「ああっ、パール。おはようっ」
「キュンキューン」
パールがぼくの口めがけて舌を伸ばそうとした時、さっとフレッドがパールを抱っこしてぼくから引き離した。
「こらっ、パール。何度言ったらわかるんだ? シュウは私の伴侶だぞ。舐めるのはもちろん、口づけはもってのほかだ。わかったか?」
まるで子どもに言い聞かせるような口ぶりに、ぼくは
「ふふっ。フレッド、パールのお父さんみたい」
と笑ってしまった。
ぼくの言葉にキョトンとしているフレッドに、
「パールをぼくたちの子どもだと思って、ちゅーくらいは許してもいいんじゃないかな?」
というと、フレッドは一瞬頷きかけたけれど
「やっぱりだめだ! 口づけは許すわけにはいかない」
と首を縦には振らなかった。
けれど、
「だが、シュウがそう言うなら仕方がない。頬くらいなら許してやろう」
と譲歩してくれた。
パールはその言葉を理解したのか、
「キューン」
と声をあげ、嬉しそうにぼくの頬に長い舌を伸ばした。
ぺろっと舐めてぼくに擦り寄ってくるパールはやっぱり可愛い。
フレッドはそんなぼくとパールを微笑ましそうに見つめていた。
「シュウ、どうする? 寝室に食事を運ぶか?」
「ううん、リビングに行くよ」
「なら、着替えようか――っと、そういえばここには着替えがないな。まさか昨日着ていたのを着せるわけにはいかないが……どうするか」
「ぼくは昨日のでもいいよ」
「いや、私の伴侶が二日も同じ服を着るわけにはいかない。ブライアンに話をしてくるから待っていてくれ」
そういうと、フレッドは足速に寝室を出て行った。
ぼくがパールとベッドで戯れていると、フレッドが急いで戻ってきてバタバタとクローゼットの扉を開けた。
するとそこには真新しい洋服がぎっしりと詰まっていた。
「フレッド……これ??」
「陛下……アンドリュー陛下がこれも予言書に書いておいてくれたようだよ。私たちのためにアレクが毎年新しい服を誂えて用意してくれていたらしい」
「そうなんだ……ありがたいね。本当に」
なんだかアンドリューさまから時空を超えて贈り物をもらったようなそんな気分になる。
実際にはアレクお兄さまからの贈り物だから後でお礼を言わなきゃ!
たくさんの洋服の中からフレッドが選んでくれたのは、やっぱりというか当然というか、自分の髪色と瞳の色が入った服。
爽やかな水色のジャケットに金色の縁取りが入っている。
仕立てて注文してくれたのはアレクお兄さまのはずだけど、やっぱり兄弟だからなのか、フレッドの好みを知っているみたい。
まぁぼくもこの淡い水色は爽やかで好きな色だけど、かなり目立つんだよね。
フレッドが嬉しそうだから気にしないけど。
服を着替えると、フレッドは目を細めて喜んでいた。
けれど、
「アレクが仕立ててくれた服もシュウによく似合っているが、やはり私がシュウの服を選びたい。
どうせ以前サヴァンスタックの屋敷でシュウのために仕立てたものはおそらく存在しないだろうから、もう一度注文しなければな。食事が済んだら、仕立て屋を呼んでもらおうか」
と言い出した。
ここにある服を貰って帰ればいいんだろうけど、きっとそれじゃあ嫌なんだろうな。
せっかくのフレッドの気持ちだし、ここは受け入れたほうがいいんだろう。
だけど、出来上がるまではここにいないんだし、あっちに帰ってからでも良さそうだよね。
「あの、フレッド……ここで注文しても完成まではいないだろうし、サヴァンスタック領に戻ってから注文したらどうかな?」
「そうだな……じゃあ、ここで頼むのは少しにするか。それなら、すぐにできるだろう。
残りはシュウの言う通り領地に帰ってから頼むことにしよう」
フレッドはもうすっかりその気になっているけれど、きっとここの仕立て屋さんも大急ぎでぼくの服を作ってくれることになるんだろうな。
はぁ、申し訳ない。
ぼくが着替えている間に食事を頼んでくれていたおかげで寝室を出ると、いい匂いが漂っていた。
その匂いに誘われてまたお腹が『ぐー』と鳴ってしまった。
でもそれもそのはず。
もうお昼近いんだもん。
当然だよね。
「うーん、美味しそうな匂いがする」
「ふふっ。シュウ、こっちにおいで」
広いテーブルなのになぜかピッタリと隣同士に料理が並べてある。
フレッドの嬉しそうな顔を見ていると、フレッドのしたいことが手に取るようにわかった。
そんなフレッドを可愛いなと思いながら、ぼくはフレッドの隣に座った。
「シュウ、どれから食べる?」
「ふふっ。じゃあ、美味しそうな匂いのするパン。食べたい」
そういうと、フレッドはまだ湯気の立っているパンを取り一口サイズにちぎってぼくの口へと入れてくれた。
「――っ! うわっ、美味しいっ!!」
お父さんたちのいた時代の食事だって美味しかった。
でも、やっぱり数百年の間に食事も進化するんだと改めて感じた。
たった一口でもわかるほど、パンが比べられないくらいふっわふわでもちもちして甘くて美味しい。
逆にいえば、ここの食事をそう思ってしまうくらい、ぼくの舌はあちらの食事に馴染んでいたんだろう。
そして、これから食事をするたびにきっとロイドさんたちが作ってくれた食事を、お父さんたちと一緒に食べた食事を思い出すんだろう。
心の中にじんわりと何かが広がっていくのを感じながら、
「フレッドも食べさせてあげる」
とフレッドの手からパンを取り、ちぎってフレッドの口に入れた。
「ああ、これは美味しいな」
きっとフレッドも同じことを感じているんだろう。
ぼくたちは全部一緒だ。
美味しい食事を終えると、ブライアンさんが食器を下げにきた。
「ブライアンさん。とても美味しい食事でした。ありがとうございます」
と声をかけると、一瞬驚いた表情を見せたものの空になったお皿を嬉しそうに見つめながら、
「お口に合いましたようで何よりでございます」
と笑顔を見せてくれた。
「夕食も楽しみにしていると料理人たちに伝えておいてくれ」
「フレデリックさまのお言葉、必ず申し伝えておきます」
「ああ、頼むよ。それから、ブライアン。悪いが、すぐに仕立て屋を呼んでもらえないか?」
「仕立て屋……でございますか? 何かご衣装に不備でもございましたか?」
「いや、違う。アレクの用意してくれた服は何の問題もない。私がシュウのために服を仕立てたいのだ」
「ふふっ。畏まりました」
フレッドの言葉にブライアンさんが笑顔になった。
なんだかとっても嬉しそうだ。
「なんだ? ニヤニヤと」
「いえ、フレデリックさまがそのような嫉妬をされるのを嬉しく思いまして……」
「ああ、なるほどな。そうだ、嫉妬だ。アレクが頼んだ服をシュウが着ているのが妬けるのだ」
「フレデリックさまの心中お察しいたします。すぐに仕立て屋をお呼びいたします」
そういうと、ブライアンさんは急いで部屋を出て行った。
「シュウ、仕立て屋が来るまでの間、王城散策にでも行かないか?」
「わぁっ、行きたいっ!」
フレッドの嬉しい誘いにぼくが飛び上がって喜ぶと、
「ふふっ。じゃあ、騎士たちに声をかけてくるから」
とフレッドは扉の外へ向かうと、声をかけてくると言っただけの割には何やら少し長めに話をして戻ってきた。
「フレッド、どうしたの?」
「シュウ、騎士団長のレオンが挨拶にくると言っているから、それが終わってから出かけようか」
「レオンさん? そういえば、騎士団長さんを見かけてなかったね」
「ああ、アレクの遣いで地方に行っていたようだ。昨夜帰ってきて、今日我々に挨拶がしたいと言っていたらしい」
「そうなんだ。ヒューバートさんみたいな感じの人なのかなー。ふふっ。楽しみ」
「シュウ、浮気はダメだぞ」
「ふふっ、フレッドってば。何言ってるの」
そんなことを2人で話していると、扉が叩かれ
「オランディア王国騎士団団長のレオン・ガーランドと申します。
サヴァンスタック公爵さま、並びに奥方さまにご挨拶に参りました」
と声が聞こえた。
「入れ」
フレッドが声をかけると、
「失礼致します」
と頭を下げ、中に入ってきた。
「この度はご挨拶が遅れましたことを心よりお詫びいたします」
深々と頭を下げ、謝罪の言葉を口にするレオンさんに、
「国王直々の命により王都を離れていたのだから其方が気にすることはない。
其方にはここでの警護と我々が領地へ戻るときの警護を頼むことになるがよろしく頼む」
とフレッドは優しく返していた。
「はっ。畏まりました」
「それから、其方にも私の伴侶を紹介しておこう。私の伴侶で唯一のシュウだ。私の命よりも大切な存在だからしっかりと守ってくれ」
「はっ。畏まりました。シュウさま、レオンと申します。どうぞ宜しくお――っ!! ああ……っ、なんてことだ! まさか、こんなことが起こるとは……」
レオンさんはぼくと視線を合わせた瞬間、目を大きく見開いて驚いたと思ったら、突然身体を震わせ目にいっぱい涙を浮かべていた。
ぼくはレオンさんの突然の行動にただただ驚くしかできずフレッドを見たけれど、フレッドもレオンさんの突然の行動にどうしていいかわからないみたいだ。
「あの……レオン、さん? 大丈夫ですか?」
「も、申し訳ございません、シュウさま。突然のことに自分でも混乱して取り乱してしまいまして大変失礼を致しました」
「いえ、何か……あったんですか? ぼくが何かしてしましたか?」
「いえ……その、なんと申し上げたら良いのか……」
レオンさんは何か言いたげにしているけれど、どうやらフレッドが気になっていえないみたい。
すると、フレッドがレオンさんに
「レオン、言いたいことがあるなら気にせずにいえ。シュウに何かあるのか?
もし、不埒なことを考えたのならば容赦はしないが、其方の様子を見る限りそのようなことではないのだろう?」
と少し強めにい言い放つと、レオンさんはフレッドに力強い目を向けながら
「はい。恐れながら申し上げます。私、レオン・ガーランドはシュウさまとお会いする日を心待ちにしておりました」
と言い放った。
「な――っ、それは、どういうことだ?!」
レオンさんの言葉に怒りの声をあげるフレッドとは対照的に、レオンさんはぼくを見ながら
「やっとお会いできました……」
と笑顔でいい、嬉しそうに涙を流した。
「シュウさま――っつ!!」
ぼくに近づき手を握ろうとしたレオンさんの手をパシっと払い除けたフレッドは、
「レオン、お前は一体どういうつもりだ?」
とぼくとレオンさんの間に入り込み、睨みつけている。
いや、睨み合っていると言った方が正しいかもしれない。
突然の不穏な空気にぼくはどうしたらいいのか、わからなくなっていた。
「フレッド、どうしちゃったの? レオンさんもやめてっ!」
ぼくが必死にフレッドの手を握ると、
「シュウ……怖がらせて悪かった」
とやっとぼくを見てくれた。
それにぼくはホッとして、今度はレオンさんに声をかけた。
「あの、ぼくに会いたかったってどういうことですか? ぼくはレオンさんに会うのは初めてだと思うのですが……」
「はい。その通りでございます。ですが、さっきシュウさまにお目にかかった瞬間、私の頭の奥底で眠っていた記憶が一気に甦ったのです」
「眠っていた記憶、ですか……?」
「はい。私は全て思い出しました。自分がルイ・ハワードだった時の記憶を……」
ルイ・ハワード??
って…………誰?
そう言いながら、フレッドは手の中にある蜜をぺろっとひと舐めして
「今日のも甘くて最高だ」
とぼくを見つめながらそんなことを言ってくる。
そして、その蜜の残りを自分の指先に纏わせ、そのままぼくのお尻へと手を伸ばした。
「んんっ!」
フレッドの指がぼくの中に挿入ってくる。
もうすっかりフレッドの指も、あの大きなモノの形も全て覚えてしまっているぼくの中は痛みを感じることは一切ない。
しかも、あの蜜は媚薬のような役割もするって知ってるから何も恐怖も感じない。
ぼくはただフレッドの与えてくれる快感を楽しめばいいんだ。
目の前のフレッドに抱きつくと、フレッドはぼくの顎をクイっとあげ、キスをした。
フレッドの肉厚な舌で口内を吸いつかれたり、ぼくの舌に絡みつかれたりしている間に、ぼくの中にいる指はグチュグチュと音を立てて動き回っている。
「んんっ、んっ……んっ」
自分でもフレッドを受け入れる場所が柔らかく解れたのがわかるほどぬちゅぬちゅといやらしい音がお風呂場に響いている。
ぼくはもう我慢ができなくて、唇を離しお願いした。
「ふ、れっどぉ……もっ、はや、くぅ……いれ、てぇ……」
「くっ――! ああ、もうシュウはなんでこんなに可愛いんだろうな」
そういうと、フレッドはぼくの中で蠢いていた指をさっと引き抜き、ぼくをぎゅっと抱きしめると大きく猛ったフレッドのモノをぼくのお尻にあてがった。
「ああ……っ、ふ、れっどのがぁ……はいって、くるぅ……」」
もうすっかり解されていたその場所はフレッドの大きなモノをなんなく受け入れ、スルスルと吸い込んでいく。
あっという間に奥までピッタリと嵌まり込むと、
「動くぞ」
というが早いかフレッドはぼくを抱きかかえたまま、その場に立った。
「わぁーっ!」
びっくりしたぼくはフレッドの首に抱きついたけれど、フレッドは
「大丈夫、落としたりしないよ」
とぼくの耳元でそう囁きながら、ぼくの膝裏から背中に手を回し隙間なくピッタリと抱きしめ腰を大きく動かし始めた。
「ひゃ――あっ! ああっん、ああっ……っあ、ああ……っ」
パチュンパチュンとぼくの身体がフレッドの肌に当たる音と、グチュヌチュとフレッドのがぼくのお尻を出入りする音がなんともいやらしく耳に入ってくる。
けれど、それ以上にフレッドが与えてくれる快感が気持ちよすぎてぼくは何にも考えられなくなっていた。
「ああっ……あっ……きもちいぃ、よぉ……もっ、とぉ……っ」
「シュウッ、シュウッ! ああっ、もう最高だっ!」
フレッドの腰の動きがさらに激しくなって、ぼくはもう我慢できなかった。
「ああっんっ、んっ……も、う……だ、めっ、イッちゃ、うぅ……!!」
ぼくのモノから弾け飛んだ蜜が隙間なくピッタリくっついたぼくとフレッドのお腹を汚しているけれど、フレッドはそれすら嬉しそうに見ながら、
「シュウ……愛してるよ」
とキスをしながら、激しく腰を振りぼくの最奥に蜜を放った。
ぼくの身体の中にフレッドの温かな蜜が広がっていくのを幸せに感じながら、
「ぼくも、あいしてる……んんっ!」
と返すと、ぼくの中にいたフレッドのモノが大きく猛ってくのを感じた。
「えっ? ふ、れっど……?」
「……シュウ、もう一度いいか?」
フレッドは真剣な眼差しでぼくの返事も聞かないまま、また激しく腰を振り始めた。
中に出されたフレッドの蜜がフレッドの動きに合わせてグチュグチュと音を立てる。
「ああっ……ふ、れっどぉ……んんっ、んっ……、きもちいぃ……っ」
「シュウ――っ! これ以上煽らないでくれっ!」
あまりの気持ちよさにもう自分でも何を喋ってるかもわからなかったけれど、フレッドがぼくをぎゅっと抱きしめながら激しく腰を動かして余裕がなさそうにしているのがすごく嬉しくてただただ幸せだった。
「ふれ、っどぉ……だいすきぃ……」
「くぅ――っ! ゔっ――!!」
「あった、かい……」
ぼくの身体の中にまた温かな蜜が広がるのを感じながら、ぼくは幸せのままに意識を失っていた。
目を覚ますとぼくはフレッドの腕に抱かれながら寝室のベッドの中にいた。
「シュウ……起きたのか?」
「ふれ、っどぉ……けほっ」
「ああ、無理しなくていい。ほら、レモン水だ」
そういうとフレッドはレモン水を自分の口に含み、ぼくの口にゆっくりと注いでくれた。
コクコクと飲み干し、
「おいしぃ……」
というと、フレッドは嬉しそうにもう一度飲ませてくれた。
「シュウ……身体は辛くないか?」
「ううん、へいき。だって、きもちよかったから……」
「ああ……シュウっ! 私もだ。シュウ、愛してるよ……」
フレッドはぼくをぎゅっと抱きしめながら、甘い甘いキスをしてくれる。
ああ、やっぱりフレッドと一緒にいると幸せだ。
お父さん……ぼくはここでもフレッドと幸せに暮らしているよ。
お父さん、アンドリューさま。
こんなに幸せを感じられる世の中にしてくれて本当にありがとう。
そう心の中でお父さんとアンドリューさまにお礼を言いながら、ぼくはフレッドとのキスを味わい続けた。
「うーん……いい、におい……」
甘い匂いに鼻腔をくすぐられ、ぼくが目を覚ますとフレッドにぎゅっと抱きしめられていた。
耳の後ろから香ってくる匂いはぼくの好きなフレッドの匂いだ。
この匂いがどうやらぼくの夢にも出てきたみたい。
「シュウ、おはよう」
フレッドの綺麗な瞳にぼくの顔が映っている。
ああ、やっぱりこの瞳……綺麗だな。
「フレッド……おはよう」
フレッドがじっとぼくを見てくるのはアレを待っているからだ。
アレって言うのは……そう、キス!
昨日の夜、散々したのになと思ったけれど、フレッド曰くぼくからのキスは特別らしい。
ぼくはフレッドの唇にちゅっと重ね合わせると、途端に嬉しそうな顔でぼくを見つめた。
「やっぱり朝からシュウに口づけをしてもらうのは最高だな」
「ふふっ。もう何十回もしてるのにそんなに嬉しいの?」
「ああ。もちろんだよ。シュウからの口付けは何ものにも変え難いよ」
ここ最近はお父さんたちと離れる日のことばかりを考えていたから、正直ぼくもフレッドも心ここにあらずと言う感じでこんなにも穏やかな朝を迎えたことはなかった。
フレッドとイチャイチャしながら、ゆったりとベッドで時間を過ごすなんていつぶりだろう……。
だから、今日はこの時間がすごく愛おしい。
「フレッド……だぁ~い好き!」
あまりにも幸せな時間にぼくはフレッドに抱きついてチュッともう一度重ね合わせると、フレッドは一瞬目を見開いて驚いていたけれど、満面の笑みで貪るようにキスをしてきた。
昨夜したよりもずっと濃厚なキスを何度も何度も繰り返されて唇が離れた時にはあまりの激しさにぐったりとしてしまったけれど、でもフレッドとのキスはぼくを幸せな気分にしてくれる。
この時間が永遠に続けばいいとさえ思ってしまうほど、ぼくはフレッドとのキスが好きなんだ。
もっともっとフレッドとイチャイチャしていたかったのに、
『くぅーーっ』
と堪え性のないぼくのお腹が鳴ってしまい、フレッドは
「そろそろ食事をお願いしようか」
と言い出した。
ちょっと残念だったけど、お腹が空いてはどうしようもない。
フレッドに手伝ってもらって、ヘッドボードを背もたれに座らせてもらうと、それを見計らったようにパールが
「キューン」
とぼくの元へ飛び込んできた。
「ああっ、パール。おはようっ」
「キュンキューン」
パールがぼくの口めがけて舌を伸ばそうとした時、さっとフレッドがパールを抱っこしてぼくから引き離した。
「こらっ、パール。何度言ったらわかるんだ? シュウは私の伴侶だぞ。舐めるのはもちろん、口づけはもってのほかだ。わかったか?」
まるで子どもに言い聞かせるような口ぶりに、ぼくは
「ふふっ。フレッド、パールのお父さんみたい」
と笑ってしまった。
ぼくの言葉にキョトンとしているフレッドに、
「パールをぼくたちの子どもだと思って、ちゅーくらいは許してもいいんじゃないかな?」
というと、フレッドは一瞬頷きかけたけれど
「やっぱりだめだ! 口づけは許すわけにはいかない」
と首を縦には振らなかった。
けれど、
「だが、シュウがそう言うなら仕方がない。頬くらいなら許してやろう」
と譲歩してくれた。
パールはその言葉を理解したのか、
「キューン」
と声をあげ、嬉しそうにぼくの頬に長い舌を伸ばした。
ぺろっと舐めてぼくに擦り寄ってくるパールはやっぱり可愛い。
フレッドはそんなぼくとパールを微笑ましそうに見つめていた。
「シュウ、どうする? 寝室に食事を運ぶか?」
「ううん、リビングに行くよ」
「なら、着替えようか――っと、そういえばここには着替えがないな。まさか昨日着ていたのを着せるわけにはいかないが……どうするか」
「ぼくは昨日のでもいいよ」
「いや、私の伴侶が二日も同じ服を着るわけにはいかない。ブライアンに話をしてくるから待っていてくれ」
そういうと、フレッドは足速に寝室を出て行った。
ぼくがパールとベッドで戯れていると、フレッドが急いで戻ってきてバタバタとクローゼットの扉を開けた。
するとそこには真新しい洋服がぎっしりと詰まっていた。
「フレッド……これ??」
「陛下……アンドリュー陛下がこれも予言書に書いておいてくれたようだよ。私たちのためにアレクが毎年新しい服を誂えて用意してくれていたらしい」
「そうなんだ……ありがたいね。本当に」
なんだかアンドリューさまから時空を超えて贈り物をもらったようなそんな気分になる。
実際にはアレクお兄さまからの贈り物だから後でお礼を言わなきゃ!
たくさんの洋服の中からフレッドが選んでくれたのは、やっぱりというか当然というか、自分の髪色と瞳の色が入った服。
爽やかな水色のジャケットに金色の縁取りが入っている。
仕立てて注文してくれたのはアレクお兄さまのはずだけど、やっぱり兄弟だからなのか、フレッドの好みを知っているみたい。
まぁぼくもこの淡い水色は爽やかで好きな色だけど、かなり目立つんだよね。
フレッドが嬉しそうだから気にしないけど。
服を着替えると、フレッドは目を細めて喜んでいた。
けれど、
「アレクが仕立ててくれた服もシュウによく似合っているが、やはり私がシュウの服を選びたい。
どうせ以前サヴァンスタックの屋敷でシュウのために仕立てたものはおそらく存在しないだろうから、もう一度注文しなければな。食事が済んだら、仕立て屋を呼んでもらおうか」
と言い出した。
ここにある服を貰って帰ればいいんだろうけど、きっとそれじゃあ嫌なんだろうな。
せっかくのフレッドの気持ちだし、ここは受け入れたほうがいいんだろう。
だけど、出来上がるまではここにいないんだし、あっちに帰ってからでも良さそうだよね。
「あの、フレッド……ここで注文しても完成まではいないだろうし、サヴァンスタック領に戻ってから注文したらどうかな?」
「そうだな……じゃあ、ここで頼むのは少しにするか。それなら、すぐにできるだろう。
残りはシュウの言う通り領地に帰ってから頼むことにしよう」
フレッドはもうすっかりその気になっているけれど、きっとここの仕立て屋さんも大急ぎでぼくの服を作ってくれることになるんだろうな。
はぁ、申し訳ない。
ぼくが着替えている間に食事を頼んでくれていたおかげで寝室を出ると、いい匂いが漂っていた。
その匂いに誘われてまたお腹が『ぐー』と鳴ってしまった。
でもそれもそのはず。
もうお昼近いんだもん。
当然だよね。
「うーん、美味しそうな匂いがする」
「ふふっ。シュウ、こっちにおいで」
広いテーブルなのになぜかピッタリと隣同士に料理が並べてある。
フレッドの嬉しそうな顔を見ていると、フレッドのしたいことが手に取るようにわかった。
そんなフレッドを可愛いなと思いながら、ぼくはフレッドの隣に座った。
「シュウ、どれから食べる?」
「ふふっ。じゃあ、美味しそうな匂いのするパン。食べたい」
そういうと、フレッドはまだ湯気の立っているパンを取り一口サイズにちぎってぼくの口へと入れてくれた。
「――っ! うわっ、美味しいっ!!」
お父さんたちのいた時代の食事だって美味しかった。
でも、やっぱり数百年の間に食事も進化するんだと改めて感じた。
たった一口でもわかるほど、パンが比べられないくらいふっわふわでもちもちして甘くて美味しい。
逆にいえば、ここの食事をそう思ってしまうくらい、ぼくの舌はあちらの食事に馴染んでいたんだろう。
そして、これから食事をするたびにきっとロイドさんたちが作ってくれた食事を、お父さんたちと一緒に食べた食事を思い出すんだろう。
心の中にじんわりと何かが広がっていくのを感じながら、
「フレッドも食べさせてあげる」
とフレッドの手からパンを取り、ちぎってフレッドの口に入れた。
「ああ、これは美味しいな」
きっとフレッドも同じことを感じているんだろう。
ぼくたちは全部一緒だ。
美味しい食事を終えると、ブライアンさんが食器を下げにきた。
「ブライアンさん。とても美味しい食事でした。ありがとうございます」
と声をかけると、一瞬驚いた表情を見せたものの空になったお皿を嬉しそうに見つめながら、
「お口に合いましたようで何よりでございます」
と笑顔を見せてくれた。
「夕食も楽しみにしていると料理人たちに伝えておいてくれ」
「フレデリックさまのお言葉、必ず申し伝えておきます」
「ああ、頼むよ。それから、ブライアン。悪いが、すぐに仕立て屋を呼んでもらえないか?」
「仕立て屋……でございますか? 何かご衣装に不備でもございましたか?」
「いや、違う。アレクの用意してくれた服は何の問題もない。私がシュウのために服を仕立てたいのだ」
「ふふっ。畏まりました」
フレッドの言葉にブライアンさんが笑顔になった。
なんだかとっても嬉しそうだ。
「なんだ? ニヤニヤと」
「いえ、フレデリックさまがそのような嫉妬をされるのを嬉しく思いまして……」
「ああ、なるほどな。そうだ、嫉妬だ。アレクが頼んだ服をシュウが着ているのが妬けるのだ」
「フレデリックさまの心中お察しいたします。すぐに仕立て屋をお呼びいたします」
そういうと、ブライアンさんは急いで部屋を出て行った。
「シュウ、仕立て屋が来るまでの間、王城散策にでも行かないか?」
「わぁっ、行きたいっ!」
フレッドの嬉しい誘いにぼくが飛び上がって喜ぶと、
「ふふっ。じゃあ、騎士たちに声をかけてくるから」
とフレッドは扉の外へ向かうと、声をかけてくると言っただけの割には何やら少し長めに話をして戻ってきた。
「フレッド、どうしたの?」
「シュウ、騎士団長のレオンが挨拶にくると言っているから、それが終わってから出かけようか」
「レオンさん? そういえば、騎士団長さんを見かけてなかったね」
「ああ、アレクの遣いで地方に行っていたようだ。昨夜帰ってきて、今日我々に挨拶がしたいと言っていたらしい」
「そうなんだ。ヒューバートさんみたいな感じの人なのかなー。ふふっ。楽しみ」
「シュウ、浮気はダメだぞ」
「ふふっ、フレッドってば。何言ってるの」
そんなことを2人で話していると、扉が叩かれ
「オランディア王国騎士団団長のレオン・ガーランドと申します。
サヴァンスタック公爵さま、並びに奥方さまにご挨拶に参りました」
と声が聞こえた。
「入れ」
フレッドが声をかけると、
「失礼致します」
と頭を下げ、中に入ってきた。
「この度はご挨拶が遅れましたことを心よりお詫びいたします」
深々と頭を下げ、謝罪の言葉を口にするレオンさんに、
「国王直々の命により王都を離れていたのだから其方が気にすることはない。
其方にはここでの警護と我々が領地へ戻るときの警護を頼むことになるがよろしく頼む」
とフレッドは優しく返していた。
「はっ。畏まりました」
「それから、其方にも私の伴侶を紹介しておこう。私の伴侶で唯一のシュウだ。私の命よりも大切な存在だからしっかりと守ってくれ」
「はっ。畏まりました。シュウさま、レオンと申します。どうぞ宜しくお――っ!! ああ……っ、なんてことだ! まさか、こんなことが起こるとは……」
レオンさんはぼくと視線を合わせた瞬間、目を大きく見開いて驚いたと思ったら、突然身体を震わせ目にいっぱい涙を浮かべていた。
ぼくはレオンさんの突然の行動にただただ驚くしかできずフレッドを見たけれど、フレッドもレオンさんの突然の行動にどうしていいかわからないみたいだ。
「あの……レオン、さん? 大丈夫ですか?」
「も、申し訳ございません、シュウさま。突然のことに自分でも混乱して取り乱してしまいまして大変失礼を致しました」
「いえ、何か……あったんですか? ぼくが何かしてしましたか?」
「いえ……その、なんと申し上げたら良いのか……」
レオンさんは何か言いたげにしているけれど、どうやらフレッドが気になっていえないみたい。
すると、フレッドがレオンさんに
「レオン、言いたいことがあるなら気にせずにいえ。シュウに何かあるのか?
もし、不埒なことを考えたのならば容赦はしないが、其方の様子を見る限りそのようなことではないのだろう?」
と少し強めにい言い放つと、レオンさんはフレッドに力強い目を向けながら
「はい。恐れながら申し上げます。私、レオン・ガーランドはシュウさまとお会いする日を心待ちにしておりました」
と言い放った。
「な――っ、それは、どういうことだ?!」
レオンさんの言葉に怒りの声をあげるフレッドとは対照的に、レオンさんはぼくを見ながら
「やっとお会いできました……」
と笑顔でいい、嬉しそうに涙を流した。
「シュウさま――っつ!!」
ぼくに近づき手を握ろうとしたレオンさんの手をパシっと払い除けたフレッドは、
「レオン、お前は一体どういうつもりだ?」
とぼくとレオンさんの間に入り込み、睨みつけている。
いや、睨み合っていると言った方が正しいかもしれない。
突然の不穏な空気にぼくはどうしたらいいのか、わからなくなっていた。
「フレッド、どうしちゃったの? レオンさんもやめてっ!」
ぼくが必死にフレッドの手を握ると、
「シュウ……怖がらせて悪かった」
とやっとぼくを見てくれた。
それにぼくはホッとして、今度はレオンさんに声をかけた。
「あの、ぼくに会いたかったってどういうことですか? ぼくはレオンさんに会うのは初めてだと思うのですが……」
「はい。その通りでございます。ですが、さっきシュウさまにお目にかかった瞬間、私の頭の奥底で眠っていた記憶が一気に甦ったのです」
「眠っていた記憶、ですか……?」
「はい。私は全て思い出しました。自分がルイ・ハワードだった時の記憶を……」
ルイ・ハワード??
って…………誰?
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