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第四章 (王城 過去編)

フレッド   39−2

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シュウは2人のあられもない姿を見てどう思っただろうか。
私なら……想像したくもないが、父上と母上のそのような姿を見れば、それから先自然に振る舞える気がしない。
シュウはトーマ王妃にどのような対応をするのだろう……。

そんなことを考えながら、ようやく自室に到着した。
バタバタと扉を開け中に入るとシュウの姿が見えない。
どこかに行ったのだろうか?
一瞬そう思って部屋を見渡すと、寝室の扉がほんの少し開いているのが見えた。

ああ、寝室にいるのか。

急いで駆けつけ扉を開けながら『シュウっ!』と叫ぶと、シュウがベッドの真ん中で枕を手に持ちこちらを向いていた。

目にはたくさんの涙が見える。
きっとずっと泣いていたんだろう。

あかりもつけていない薄暗い寝室でも、シュウの目が赤く腫れているのが見える。

シュウはそれほどショックを受けたのだな、可哀想に。

シュウを抱きしめながら『大丈夫だからな』と声をかけると、シュウは少し言いにくそうに
『何があったか知っているのか?』と尋ねてきた。

そのことを聞いたから、急いでシュウの元に来たのだと教えてやると、シュウは胸の内を教えてくれた。

シュウはトーマ王妃にもアンドリュー王にもなんの嫌悪感も持っていなかった。
それどころか、自分がそんな現場を見てしまったことでトーマ王妃とアンドリュー王が怒っているのではと考えたようだ。
もう会いたくないと言われたらどうしようと半ば錯乱した様子で大声を上げながら私の胸元に必死に縋ってくる。

まだ病み上がりで不安定なところもあるのだろう。

シュウの目を見ながら、大丈夫だと声をかけ落ち着かせると、少し興奮が落ち着いたようだったが、今度はトーマ王妃に嫌われてしまったかも……とがっくりと項垂れた。

そうか、シュウの憂いはそこか。

だが、そこの心配は全くいらないのだぞ。
そもそもトーマ王妃の方がその心配をしているのだというのに。

シュウにとんでもないところを見せてしまったからシュウに嫌われてしまったかもしれないってトーマ王妃泣いていたそうだと教えてやると、シュウは目を丸くして驚いていた。

だから、私はもし自分が両親のそういう姿を見てしまったらという話をして見せたのだが、シュウは少し考えた様子を見せた後

「ぼく、別に見ちゃったから嫌だったとかじゃないんだ。
ぼくが2人の邪魔をしちゃったのが申し訳なくて……居た堪れない気分になってあの場から逃げ出したんだ」

と気持ちを教えてくれた。

やはりシュウは心が優しいのだな。
自分が見たことでトーマ王妃とアンドリュー王の邪魔になったかもしれないと思って急いでその場を離れたというわけか。

ならば、それを知らせてやればトーマ王妃も気持ちが落ち着くことだろう。
すぐにでも行って教えてやったほうがいい。

シュウはあんなことがあったばかりで今会いに行くのは憚られると言った様子だったが、私も一緒についていくからというと安堵の表情を見せた。

これなら、きっとすぐに誤解も解け仲直りできることだろう。

時間を空けるよりもこういうものはすぐに誤解を解いておいた方がいいと思った私は、シュウの手をひき、急いでアンドリュー王たちのいる[王と王妃の間]に向かった。

部屋に近づいた途端、急にシュウの歩みが止まった。
緊張しているのだろうか?

『どうした?』と声をかけると、シュウが

「いや、騎士さんたちがいるなって……」

と当たり前のことを言い出した。

アンドリュー王とトーマ王妃の私室前に見張りの騎士がいるのは今に始まった事ではない。
現に我々の部屋の前にもいるだろう。

それはシュウも知っているはずだというのに、どうして今更そんなことを言い出したのかと思っていると、

「でも、あの時・・・はいなかったんだよ。騎士さんたちが止めてくれたらぼくだって勝手に部屋には入ったりしなかったんだけど……」

とあの時のことを教えてくれたのだ。

ああ、そういうことだったのだ。

アンドリュー王がトーマ王妃を連れ自室へ戻った時、トーマ王妃のあの声・・・を騎士たちに聞かれるのを危惧して、人払いをしておいたのだろう。
騎士たちはそのことをよくわかっているからこそ、部屋の前からいなかったのだ。

私もシュウと楽しんでいる時は騎士たちを部屋の前から遠ざけている。
それが愛しい伴侶を持つものとしての責務だからだ。

だが、そこに運悪くシュウが来てしまった。
そして、シュウは部屋から聞こえるトーマ王妃の声が何者かに襲われていると思って、慌てて部屋に入ってしまったというわけだ。

結局のところ時機が悪かったということなのだろう。


部屋の扉を叩き、アンドリュー王の声が聞こえたのを確認して中に入った。
いつもなら、我々……特にシュウが訪ねた時などはトーマ王妃の方から扉を開いて嬉しそうに招き入れてくれるのだが、さすがに今日はないか。

シュウの手を引き、中へと進むと大きなソファーの隅の方でトーマ王妃が小さくなって座っているのが見えた。
俯いてシュウの顔を見ようともしない。

「陛下。トーマ王妃。シュウを連れてきました」

そう声をかけると、トーマ王妃は一瞬肩を震わせた。
あのような姿を見せてしまった自分達をシュウがどう思っているのかをよほど心配しているのだろう。

トーマ王妃があんなにも怯えているとは……。

それほどシュウが大事なのだろうな。

早く誤解を解いてあげたほうがいい。

そう思って私はシュウにトーマ王妃の近くへと行くように促した。

シュウは重い足を数歩前へと進ませ、

「あ、あの……ごめんなさいっ!」

と大きな声で必死に謝りながら頭を下げると、トーマ王妃はさっと立ち上がりシュウの元へと駆け寄った。

あんなところを見せた自分達が悪いのだからシュウは悪くないと言うトーマ王妃に、シュウは勝手に寝室に入った自分が悪いのだと譲らない。

トーマ王妃の声に驚いてシュウが助けに入ったということをあげ、ごめんともう一度謝るトーマ王妃にシュウもまた自分が悪いのだと言いかけて、これでは埒が明かないと思ったのだろう。

アンドリュー王が間に入って言い合いをやめさせようと動いたのが見えた。
だが、そこには入ってはいけない。
それは火に油を注ぐだけだ。
今回の原因の一端がアンドリュー王にあるのであれば尚更だ。

それに気づいて私は急いでアンドリュー王を止めようとしたのだが、それよりも先に

「2人とももういいだろう」

と声をかけてしまったのだ。

いつものトーマ王妃なら素直に従っただろう。
だが、今はシュウのことで頭に血が昇っているのだ。

最悪の時機に声をかけてしまったアンドリュー王にトーマ王妃から鋭い声が上がった。

「アンディー、そもそもアンディーが!」

今まで聞いたこともないようなトーマ王妃の大声が部屋中に響いた。
アンドリュー王は必死にトーマ王妃を落ち着かせるように声をかけているが、トーマ王妃の耳にはまるで入っていない。
全てが逆効果になってしまっている。

怒りが頂点に達したトーマ王妃は

「もう知らないからっ!」

と言い捨て、シュウを連れて部屋を飛び出して行った。

『もう知らない!』と拒絶するような言葉を言われてしまったアンドリュー王はもう立ち直れないとばかりにその場に茫然と立ち尽くしていた。

私はトーマ王妃に連れられていくシュウに一緒についていくべきか、傷心のアンドリュー王についているべきか悩んだのだが、シュウが切羽詰まったような声で私の名を呼ぶのを聞いて一瞬で道は決まった。

「陛下。申し訳ありません。トーマ王妃がシュウを連れてどこへ行かれるのかわかりませんので、ついて行きます。
所在が決まりましたらご報告いたしますので失礼いたします」

早口でそう伝えると、アンドリュー王の返事も聞かずに私は急いでシュウのあとを追いかけた。

シュウの手を引き、早足で歩き進めるトーマ王妃にどこに向かっているのかを尋ねると、我々の部屋だという。
てっきり城の外にでも出ていくのではと思っていただけに驚いたが、それでトーマ王妃の気持ちがよくわかった。

トーマ王妃は心からアンドリュー王に怒っているわけではないと言うことが。

きっと今は少し興奮しているだけなのだ。
アンドリュー王にああ言ったのもきっと本心からではない。

ならば、少し話せばきっと落ち着かれることだろう。

シュウが部屋の扉を開けると、スタスタと中に入りソファーに腰を下ろすと、我々に謝罪の言葉を述べた。
私はトーマ王妃の気持ちを確かめてみようと、

「陛下とあんなふうに言い争われて大丈夫なのですか?」

と問いかけたものの、トーマ王妃からの返事はなくただ何度も謝罪の言葉を繰り返すだけだった。

そんなトーマ王妃を見て、シュウが紅茶を淹れると言ってキッチンへと向かった。
その様子を眺めていると、シュウが私にこっちにくるようにと合図を送ってくる。
そんな仕草もかわいいなと思いながら、私はトーマ王妃に気づかれないようにゆっくりとシュウの元へと向かった。

『どうした?』と尋ねた私に、シュウはアンドリュー王に話を聞いてきてと頼んできた。
まぁ確かにここでトーマ王妃の話を聞こうとしても私がいれば話したくないこともあるのかもしれない。
そして何より、あんなふうに拒絶の言葉を言われてしまったアンドリュー王の心中を考えれば、誰かがそばにいてやるのは大事かもしれない。

シュウの気遣いがよくわかったから、私は絶対に部屋から出ないようにと言い含めて、トーマ王妃に気づかれないようにそっと部屋を出てアンドリュー王のいる[王と王妃の間]へと急いだ。


部屋の前にいる警護の騎士に声をかけたが、アンドリュー王は部屋からは出ていないという。
やはりトーマ王妃に『もう知らない!』と言われたのが相当ショックだったに違いない。
普段のアンドリュー王ならば、トーマ王妃が出ていったのを引き止めもせずにそのままにしておくわけがないからな。

私はトントントンと扉を叩いたが、叩き方でトーマ王妃とは違うと感じたのだろう。
中からは小さく『入れ!』という声が聞こえただけだった。

これはかなり落ち込んでいるな。
とりあえず話を聞いてみなければ解決の糸口も見つからない。

私は意を決して、部屋へと入った。

アンドリュー王は先ほどまでトーマ王妃が座っていた場所に座り俯いている。
私はゆっくりとアンドリュー王に近づき、

「少しは落ち着かれましたか?」

と声をかけた。

「フレデリック……私はもうどうして良いのかがわからぬ。
トーマが私の元から去っていってしまったのだぞ。落ち着けるわけがなかろう」

この世の終わりとでもいうような憔悴しきった表情に私はもはや他人事ではいられなくなった。

私がもしアンドリュー王と同じようにシュウにあのようなことを言われて部屋から出ていかれたら……ああ、もう
想像するのも恐ろしい。

「陛下。お気を確かにお持ちください。トーマ王妃はどこにもいかれてはおりませぬ。シュウと共に我々のお部屋に居られます。シュウがトーマ王妃のお話を伺っておりますので、トーマ王妃も少しはお気持ちも休まるはずでございます」

「そうか……シュウが。シュウには迷惑をかけてしまったというのに、トーマのことも任せてしまって……本当にすまない」

「いいえ、我々は家族でございます。ですから、陛下がすまないなどと思われることなど一切ございません」

「……フレデリック……ありがとう」

アンドリュー王はようやく安心したのか、ホッと安堵の息を漏らした。

「紅茶でもお淹れいたしましょう」

「ああ、ありがとう」

いつもはトーマ王妃が淹れているのだろう。
綺麗に整えられたキッチンはまるでシュウのそれと同じだ。

こういうところも2人は似ているのだな。

そんなことを思いながら、紅茶を淹れアンドリュー王の前に置くと、それをコクリと一口だけ口にすると、

「私はずっと我慢していたのだ……」

と辛そうな声をあげながら語り始めた。

「我慢、でございますか?」

「ああ。トーマがシュウと共に怪我をしたあの日からずっと一緒に寝てはいたが、トーマの身体が心配で触れることが憚られて必死に我慢をしていたのだ」

「な、なんと……」

まさか、信じられない!
愛しい伴侶と寝室を共にして、一切手を出さないなど……。
なんという精神力の持ち主なのだろう、アンドリュー王は。

私もシュウの身体が心配で挿入までは流石にしなかったが、早々に我慢もできずに薬を塗るのにかこつけてシュウの身体には触れ、蜜も舐めていた。

そうでもなければ、シュウと四六時中一緒にいて何も触れないなど我慢できるわけがないのだ。

それなのに、アンドリュー王はトーマ王妃に一度も触れずに怪我が完治するまでを乗り切ったのか……。

それを聞けば、私なら自信持って言えるだろう。箍が外れても仕方のないことだと。

マルセル医師から大丈夫だとの診断が下される日をどれほど待ち侘びていたことだろう。
それほどまでに待っていた知らせを愛しい伴侶が報告に来てくれたのだとしたら、それは寝室に連れ込みたくなるのも当然なのだ。

計算外だったのはシュウが部屋に訪ねてきてしまったことだけ。

シュウの話ではブルーノと一緒に部屋に向かっている最中に、カーティスに呼ばれこの部屋に向かったと言っていた。

もし、ブルーノがカーティスに呼ばれることなく一緒に部屋の前まで来ていたら、騎士がいないことを察して、シュウを部屋から遠ざけていたに違いない。

もう本当に全ての時機が悪かっただけなのだ。

「陛下のお気持ちは痛いほどわかります。私には今回はただの事故だと思うのですが……」

「いや、違う。私がトーマを連れ、この部屋に戻ってきた時トーマは言ったのだ。
もうすぐシュウとお茶の時間だから、もう少しだけ我慢してほしいのだと。
夜には必ずと……そう言ってくれたのだが、私の抑えが聞かずに無理やりするようなことになってしまった……。
私の我慢が足りないせいで……」

そうか、そういう事情もあったのだな。
だが、私がアンドリュー王だとしても我慢できるかどうか……いや、全く自信はない。

きっとトーマ王妃はアンドリュー王のそんな気持ちは重々わかっているだろう。
シュウに見られさえしなければ、きっとそのまま受け入れていたことだろう。
無理やりがどうこうというよりはきっと、シュウに見られたことが恥ずかしかっただけなのではないか。

シュウがそれを気にしてさえいなければ、トーマ王妃の気も落ち着くに違いないのだ。

「フレデリック……トーマはこの部屋に戻ってきてくれるだろうか……」

「大丈夫でございますよ。きっとすぐに戻って来られると思いますよ」

「なら良いのだが……」

そう言って俯きかけたその時、部屋の扉がトントントンと叩かれた。

「トーマだ!!」

そういうが早いか、アンドリュー王は急いで駆け寄り部屋の扉を勢いよく開いた。


想像していたよりも早かったな。
こんなにも早くトーマ王妃の方からこの部屋に戻ってきたのなら、きっとシュウがうまく話を聞いて誤解を解いてあげられたのだろう。

アンドリュー王はトーマ王妃が戻ってきてくれたのがよほど嬉しかったようだ。
トーマ王妃の姿に感激して部屋の中に案内するのも忘れている。

トーマ王妃から中に入れてと言われて慌てた様子で中へと案内する姿は、いつもの冷静なアンドリュー王からは全く想像もできないほどおどおどしているように見える。

トーマ王妃の方から戻ってきてくれたとはいえ、まだ怒っているということも考えられるからそれが怖くて仕方がないのだろう。

まぁ、あのトーマ王妃の表情を見る限り、そんな心配などしなくてもよさそうだがな。

先ほどまでの表情とは雲泥の差だ。
やはりシュウがうまく話してくれたようだ。

部屋の中央で2人は立ち止まり話をし始めたところで、シュウが私の元へと駆け寄ってきた。

シュウの手を取り2人の邪魔にならないようにそっと部屋の隅に移動すると、シュウがアンドリュー王と何を話ししていたのかと尋ねてきた。

流石にアンドリュー王がトーマ王妃との交わりを必死に我慢していたとは言い難い。

シュウも私の反応で大体のことは察してくれたようでそのことには触れず、そしてシュウもまたトーマ王妃とどのような話をしたのかは具体的には話さなかった。
だが、トーマ王妃がシュウと話をして落ち着いたと話していたので、それはやはりなと思った。

続けてシュウは今回の件が全て自分が原因なのだと話し始めたが、それだけは違うと言っておかなければ。
これは本当に時機が悪かっただけで誰が悪いとはそういうことではないのだ。

だが、シュウは

「騎士さんたちが部屋の外にいない理由もわかったし、これからはいくらいいって言われててもちゃんと確認するようにする。家族といえどもそういう配慮って大事なんだなってわかったから」

と深く理解したような顔つきで理由を話した。

なんだかシュウが急に大人になったようで少し寂しくもあり、嬉しくもあった。
アンドリュー王もトーマ王妃もシュウも皆がお互いにいろんな思いをした出来事であったが、最後にはこのように理解を深めあえて良かったのだろう。

お互いに謝罪し合うアンドリュー王とトーマ王妃は嬉しそうに笑みを浮かべながら深く抱きしめあっていた。

ああ、まずい。
このままここにいれば、すっかり私たちの存在を忘れてしまった2人のあられもない姿を今度こそじっくりと見てしまうことになってしまう。

私は急いでシュウに部屋に戻ろうと声をかけ、2人に気づかれないように足早に部屋を出た。

そして、部屋の前で見張りをしている騎士たちに

「陛下からお声がかかるまで、部屋から離れていろ!」

と指示を出し、騎士たちが部屋の前から立ち去るのを確認して、私はシュウを連れて我々の部屋に戻った。

今回の件はいろんな事情が重なってしまったが、結局のところは痴話喧嘩だったのだな。

相手を思いやって極限まで必死に我慢をしていたアンドリュー王と、自分の怪我が治るのをずっと待ってくれていたアンドリュー王へ早く直ったことを伝えたかったトーマ王妃と早く繋がりたい気持ちは一緒だったんだろうと思う。

そこにシュウの存在があって、トーマ王妃にとってはシュウもアンドリュー王と同じくらい大切な存在でどちらも大切にしようとして少し間違えてしまっただけなのだ。

少し離れて落ち着けば、お互いの存在がどれほど大切かなどすぐにわかるはずだ。

あの時、トーマ王妃が部屋を出て我々の部屋に行ったのは好判断だったのだな。


シュウにその話をすると、

「もしぼくとフレッドが喧嘩してもすぐに仲直りできる?」

と尋ねてきたが、すぐに仲直りできるだろうし、そもそも喧嘩にいはならないだろう。
あの憔悴したアンドリュー王の姿を見れば、シュウと喧嘩などすることが恐ろしくてたまらない。

シュウが私の元から去っていくだけで壊れてしまうかもしれないと思うほどに私はシュウに溺れているのだ。

シュウにいつでも話をしてほしいというと、

「話すって大事なんだね。ぼく、これからちゃんとフレッドには思いを伝えるよ」

と言ってくれて安心した。

私もシュウに隠し事など絶対にしないと誓おう。
私の思いをいつでも伝える代わりにシュウの気持ちもずっと聞かせてほしい。

私たちはお互いに愛の言葉を囁きながらアンドリュー王とトーマ王妃に負けないくらい、深く深く抱き合った。
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