ひとりぼっちのぼくが異世界で公爵さまに溺愛されています

波木真帆

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第四章 (王城 過去編)

フレッド   18−1

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「フレデリック、顔が緩んでおるぞ」

いけない、いけない。
シュウにピアスを付けて貰えたことが嬉しくてどうにも顔がにやけてしまう。

「まぁ、其方の気持ちもわからんではないが」

そう言いつつ、アンドリュー王の視線は私の耳元へ注がれている。
その羨ましそうな視線が伝わってくる。

アンドリュー王は初めてトーマ王妃に出会った瞬間からその美しい耳に自分の選んだピアスを付けて欲しいと思ったそうだ。
それほどまでにその一瞬で手放したくないと思ったらしい。
私が初めてシュウに出会ったときに抱いた感情とよく似ている。

来て早々に一緒に城下に出かけた際にレイモンドの店に立ち寄り、ピアスを付けてみないかと持ちかけたこともあったらしい。

最初は『いいよ』と了承の返事を貰ったそうだが、いざピアスを付けるために必要な道具を揃えていたら、突然顔を歪め泣き出したそうだ。

身体を震わせて大泣きするトーマ王妃の様子に心を痛め、無理強いをしてはいけないと決め、それからピアスの話題を出すことはやめたという。

それから3年、ようやくトーマ王妃の了承を得られたのだ、すぐにでも付けたいのだろうな。

「其方の伴侶がピアスを付けているのを見て、トーマもだいぶ気持ちが動かされたようだ。
休みが出来たら、レイモンドの店に行こうと誘われたぞ」

「それはようございました。トーマ王妃の耳に陛下からの贈り物はそれはお似合いになることでしょう」

「それなんだが……フレデリック。
5日後出発予定のレナゼリシア領への長期視察の日程を変更して、神の泉に足を運びたいと考えている」

レナゼリシア領はここ王都から7日ほどの場所にあり、神の泉のある湖に隣接している。
とはいえ、訪問するレナゼリシア中心地から神の泉までは丸一日はかかるだろう。
そこを往復するとなれば、少なくとも3日は日程を増やす必要がある。

アンドリュー王の公務予定はその後もびっしり詰まっているため、日程の変更はなかなか難しいところがある。

しかし、アンドリュー王が神の泉に行きたい理由もわかっている。

ピアスは一度付けたら外すことはできない。
もし、付けた後に神の泉に行って私たちのように神の祝福の宝石をいただいたとしてもトーマ王妃の小さな耳に2つのピアスを付けることは難しいだろう。
だからこそ、祝福を得られるか分からないがまず神の泉に足を運んでから、ピアスをどうするか考えたいのだろう。
たとえ、祝福を得られずとも神の泉にお互いの深い愛を誓うことに意義があるのだから。

それに、シュウとトーマ王妃の思い出を作ってあげたいという気持ちもあるのだろう。
いつ離れ離れになるかわからない2人のために、やれる事を出来るだけ早くしてあげたい、その気持ちはよく分かる。

我々の時代の馬車であれば、片道2日ほど移動の時間短縮も出来るだろうが……うーん。

いや、休憩時間減らせれば今のままの馬車よりは早く着けるかもしれないな。
そのためにはあれが必要か……。よし!

「陛下。ご相談……と申しますか、ご提案がございます」

「なんだ?」

「馬車に手を入れれば、移動時間短縮は可能かと思われます」

「なに? 詳しく話せ」

私はアンドリュー王に馬車の振動を座席に与えない工夫を施す改良を加えること、それにより乗っている者の負担が減り休憩時間が取る間隔が広められることを説明した。

「なるほどな……よし。それはすぐに実践してみるとしよう」

アンドリュー王はすぐに王室の馬車を任せている車大工を呼ぶようブルーノに指示を出した。

これが上手くいけばこの国の馬車は飛躍的に良くなるだろう。
あまり未来の技術を伝えることは歴史の改竄かいざんになりかねないが、これくらいの改良なら目を瞑ってもらえるだろうか。

すぐに車大工が飛んできて、打ち合わせが始まった。
私もそこまで未来の馬車の仕様に詳しいわけではないが、専門家がいると話が早い。

車大工のバーナードは根っからの職人なのだろう。私の改良話に『なるほど!』と声を上げ、目を輝かせていた。
これなら改良は上手くいきそうだ。

大まかな想像を伝えて、今日のところは帰っていった。明日の午後にも試作品を持ってくるとの気合の入れように感心しながら、バーナードのおかげで視察の日に間に合いそうだと安堵した。

「フレデリックの提案のおかげで日程を大幅に変えずとも神の泉まで行けそうだな」

「これが上手く行くと、陛下やトーマ王妃のこれからの長期視察も楽になりましょう」

「あとはバーナードがどれだけ其方の要望に応えたものを作り上げてくれるかだな」

「それはこの時代の車大工の腕を信じましょう」

「ああ、そうだな」

私たちが顔を見合わせて笑っていると、突然執務室の扉が叩かれた。

「ブルーノでございます。お話したいことがございます」

急いだ様子の扉の叩き方と焦ったブルーノの声にまたシュウたちに何かが? と心配になり、急いで扉を開けるとブルーノは大きな箱を抱えて立っていた。

「どうした? やけに大きな荷物だな」

とりあえず中に入れと指示すると、ゆっくりと中に入ったブルーノは青褪めた表情をして持っていた箱を机の上にそっと置いた。

「なんだこれは?」

「これはブランシェット侯爵さまからフレデリックさまとシュウさまへの贈り物でございます」

箱の宛名をみると、たしかに
『アルフレッドさま、シュウさま』と記載がある。

「なんだ、何事かと思ったではないか」

アンドリュー王は中身を知っているのか、先程までの緊張した面持ちから、ホッとした表情を見せた。

「それが違うのでございます……。
例の……あちらの物でございました」

「なに? まさか……」

「申し訳ございません。アンドリューさまとトーマさまにも同じお箱でブランシェット侯爵さまより贈り物が来ておりまして……まさかこのような物だとは思いもしませんでしたもので確認もせず……」

「陛下、なんなのです? この箱には何が入っているのですか?」

「自分の目で確かめた方が良かろう。ブルーノ、開けるんだ」

ブルーノは軽く閉じてはいたが、すでに開封済みの箱をゆっくりと開けてみせた。

「こ、これは……」

なるほど……。
ブルーノが驚いたのも分かるな。

そう、中には閨で使う道具が山ほど入っていた。

風呂に入れれば湯がトロトロになる入浴剤
処女でも快感を何倍にも与えてくれる媚薬
どんなに狭い場所も柔らかく解してくれる張り形
が大小いろんな大きさでたくさん入っていた。

ほぉ、面白いものが入っている。
この時代からこういうものはあったのだな。
あの事件で私に伴侶シュウがいることを知って、気を利かせて送ってくれたのだろう。
シュウは媚薬など使わなくとも十分に快感を拾えているようだがな……と心の中で1人ほくそ笑んでいると、アンドリュー王は懐かしいものを見るように箱の中の物を見つめていた。

「私たちが婚姻を発表したときにもこうやってブランシェット侯爵から届いたものだ。
トーマは何も知らないから上手く言い含めて全部使ってやったな」

「アンドリューさま、そのようなことをお話になったらトーマさまに嫌われてしまいますよ」

その時の淫らに乱れたトーマ王妃の姿を思い出したのか、ニヤリと笑うアンドリュー王をブルーノが諌めると、

「トーマには内緒にしておいてくれ!」

と慌てていたのがアンドリュー王の意外な一面を見たようでなんだか面白かった。

「それにしてもブルーノ、これが届いたからあんなに焦っていたのか?」

ブルーノにしてはなんとも初心うぶなことで驚いてしまうな。

「い、いいえ……それが……、このお荷物をシュウさまのお部屋でシュウさまとトーマさまの目の前で開けてしまいまして……」

「「はぁっ?」」

ブルーノの言葉に驚きすぎて頭の中で理解するのに時間がかかってしまった。

「なんだと? どういうことだ?」

「申し訳ございません。まさか、このような物だとは露ほどにも思いませんでしたので……」

「で、シュウの反応はどうだったのだ?」

「どれひとつお分かりにはなっていないご様子でしたが、トーマさまはご存知でしたので、顔を真っ赤にされてどう説明されようか悩んでいるご様子でした」

そうか、シュウらしいな。
トーマ王妃は焦られた事だろう。
もしかしたら、自分がされた時のことを思い出していたのかもしれないな。

「それでどうしたんだ?」

「はい。他の……お子さまがいらっしゃる方への贈り物と中身を間違われたのだと申し上げて、すぐに退散いたしました」

「そうか……。フレデリック、この荷物どうする?」

「そうですね……せっかくの侯爵からの贈り物ですし、喜んでいただくことにしましょうか」

「其方、これを使う気か?」

ニヤリと笑うアンドリュー王に微笑みで返すと、

「はぁーーっ」

とブルーノが大きなため息をついた。

「なんだ、その溜め息は?」

「いえ、フレデリックさまもアンドリューさまのようにシュウさまにイタズラしすぎて嫌われないようにお気をつけくださいませ」

「ブルーノ、そんな言い方をしたら私がトーマに嫌われたように思われるではないか!」

「あまりにもしつこくお使いになって、ベッドを分けたいと仰られたことがございましたでしょう?」

ぐぬぬっ……。

ブルーノの言葉にアンドリュー王は何も言えなくなってしまったようだ。

まぁ、アンドリュー王の気持ちも分からんではない。
何も知らない無垢な身体に道具を使って教え込ませるというのは楽しいからな。
私はシュウが私のモノ以外に溺れてしまうのを見たくないから張り形は使わないが……。

結局、その荷物はシュウに見られないようこの執務室の奥の部屋に保管してもらうことにして、私はとりあえず入浴剤をひとつだけいただくことにした。

今日の夜、シュウと早速使ってみるとするか。
シュウがどんな様子になるか楽しみだな。


5日後に迫った長期視察前に今ある仕事を片付けておきたいということで、昼食も仕事の合間に軽く取ることにした。
以前、領地でのこういう政務の合間にこうやってよく軽食をとっていたのを思い出す。
あの時は仕事しか相手にすることもなく、そのあとに楽しい日程が控えているようなこともなかったから、今日は忙しいながらも心は晴れやかだ。

明日からはトーマ王妃が公務に戻るので、ゆっくりと仕事や時間を気にすることなくシュウと過ごせるのも今日で最後だ。
あまり邪魔はしたくないと思っていたので、昼食を簡単にとるというのは願ってもない提案だった。

シュウは今頃トーマ王妃と昼食を共にしながら楽しい時間を過ごしているのだろうな。
父上と2人、どんな話題で盛り上がっているんだろうか。すこし見てみたい気もする。

そんなことを思いながら、仕事を進めていると突然廊下を走ってくる音が響いた。

なんだ? さっきのブルーノといい、今日はやけに騒がしい日だな。

すると、執務室の扉が大きく叩かれた。

「アンディー、アンディー!」

トーマ王妃の声だ!

そう思ったときには、アンドリュー王は部屋の扉を開けていた。

「トーマ、どうした?」

「あの、柊くんが……」

俯きながら申し訳なさそうに私の顔を見つめる。
その不安げな表情と声が余計に私の不安を募らせる。
シュウに何があったのだろうか……。

「トーマ王妃、何があったのです?」

トーマ王妃はバッと頭を下げ、

「ごめんなさい。
2人でワインを飲んでたら、僕も気づかない間にいっぱい呑んじゃってたみたいで……。
柊くんがあんなに弱いとは思わなくて……。
それで、酔っ払って今ソファーで眠り込んでるの」

本当にごめんなさいと謝ってくる。

「あのフルーツワインで? そんなに弱いのか?」

「うん。そうみたい」

ああ、なんだ。
酔っ払って寝ているだけか。
酔うと、人前で服を脱ぎ出したり、口付けをしまくったり暴れたりする癖がでるやつもいると聞くからな。
シュウが眠くなるだけの癖で良かった。

シュウがワインを呑むと知っていたなら、チーズを一緒に食べるように勧めたんだがな。
この時代ならワインとチーズの組み合わせがどんな効果をもたらすかなどまだわかってはいないんだろう。

「トーマ王妃、頭を下げていただく必要はございません。逆にご心配をおかけして申し訳ない限りでございます。シュウはトーマ王妃のお部屋で眠っているのですか? すぐに私が部屋まで連れて帰ります」

「フレデリックさん、お仕事中にごめんね。
おしゃべりに夢中になってたから、柊くんがいっぱい呑んでることに気づかなくて……」

「いえ、シュウも父上と話せるのが楽しかったからでしょうし、トーマ王妃のせいではございませんから」

そういうと、トーマ王妃は少し照れたように笑った。
私の口から父上という言葉がでたのが嬉しかったみたいだ。

「フレデリック、部屋まで戻るなら私も行こう。
少し休憩もしたかったしな」

シュウを迎えに行きがてら、部屋で休憩したいというアンドリュー王とトーマ王妃と共に部屋へと向かった。

このときには、まさかあんな事態になるなど思いもしていなかった。


シュウが寝ていると思い、トーマ王妃が音を立てないようにゆっくりと扉を開けた。

すると、この音で目が覚めたのかシュウがフラフラと立ち上がるのが見えた。

「おとーしゃぁん、どこいってたのぉ?」

トーマ王妃に近づこうとするシュウに私はトーマ王妃の後ろから声をかけた。

「シュウ、酔って歩くと危ないから座っていろ」

「あぁーーっ! ふれっどがいるぅー! なんでぇー? おちごとはぁー?」

うわっ、なんだ。あの可愛らしい口調は。
シュウは酔うと幼くなるのか?
また新しいシュウを知ったな。

酔って舌足らずな口調をしながらヨタヨタと私の方へと近づいてくるシュウを抱きしめて受け止める……

はずだったが、

シュウが手を伸ばした先にはアンドリュー王がいた。

えっ? そっちは私ではないぞと思ったときには、

「ふれっどぉー、だっこぉ」

と言いながら、アンドリュー王に自分から抱きつきに行っていた。


シュウの思わぬ行動に驚きながらもアンドリュー王は抱きついてきたシュウが落ちぬよう背中に手を回して受け止めている。

それはアンドリュー王の優しさだろう。
だが、周りから見れば、愛し合っている者たちの抱擁に見えてしまう。

私も隣にいたトーマ王妃も驚きすぎてその場から動くことが出来ず、ただ茫然とその光景を眺めていた。

優しい手が背中に回ったことに気を良くしたのか、シュウは尚も目の前のアンドリュー王を私と間違えて、

「ねぇー、どうちたの? ちゅーしよ、ちゅーー」

と唇をツンと突き出し、アンドリュー王の唇に重ね合わせようとしている。

その瞬間、私はたまらず固まっていた足を必死に動かし、シュウとアンドリュー王の間に身体を滑り込ませシュウを腕の中に閉じ込めた。

「――っ!」

アンドリュー王の身体を突き飛ばしてしまった気がするが、そんなことどうでもない。
罰などあとで受けてやるさ。

「あれぇー? なんでぇー? ふれっどがぁ……ふちゃりもいるぅ。ぼくのふれっどはぁ、どっちぃ?」

キョロキョロと私とアンドリュー王を見比べて、

「ああーっ! こっちがぼくのふれっどだぁーー!」

と嬉しそうににっこり笑いながら私の背中に手を回して胸に顔を埋めたまま、スヤスヤと眠りについた。

これ以上間違われなくてよかったという気持ちもありつつ、さっき見た衝撃的な場面がなかなか頭から離れていかない。

もし、もう少し遅れてシュウがアンドリュー王と唇を重ね合わせていたら……私はもう二度と笑顔など見せられなかったかもしれない。

あまりに恐怖にシュウを抱きしめている指が震えるのを感じた。


「フレデリック……あの……」

シュウを抱きしめたまま、微動だにしない私になんと言って声をかけていいのかわからないのだろう。
後ろからアンドリュー王のとまどいの声が聞こえた。

「陛下。先ほどは失礼致しました。陛下を突き飛ばすなど恐れ多いことで……罰は甘んじて受け入れます」

「そんなことはいいのだ! それよりも其方は大丈夫か?」

アンドリュー王の優しい言葉に感謝しつつも、シュウの身体を受け止めたことへの何とも言えぬ腹立たしさが込み上げてくる。
どういう感情を表せばいいのか、なにか正解なのかも分からずただ口をきゅっと噤んで必死に堪えるしかなかった。

「フレデリックさん、ごめんなさい。僕が柊くんにお酒を呑ませたりしたから……嫌な思いさせてごめんなさい」

少し涙を浮かべながら頭を下げるトーマ王妃の姿に、私は強い人だと思った。

トーマ王妃も私と同じ辛い場面を目撃したのに……。
いや、辛さはトーマ王妃の方が上かもしれない。
自分の息子とは言え、自分に姿形のよく似た人が自分の愛する人と抱き合って口付けまでしようとしている姿を見るのは実に忍びない。

それでも自分の息子のしでかしたことを自分のせいだと謝るのはやはり父だからだろうか。

「いいえ、トーマ王妃に謝られることなど何もございません。トーマ王妃もお辛いでしょう。申し訳ございません。どこまで覚えているやらわかりませんが、シュウが起きましたら改めて謝罪に参ります」

そう言って頭を下げると、

「謝罪なんて気にしなくていい。それよりも起きた時、お願いだから柊くんを強く責めないであげて。
こんなことフレデリックさんに頼むことじゃないけど、あれは事故だったと思って欲しい」

トーマ王妃は必死にそう言ってきた。

ああ、この人は自分の思いよりここでもシュウを守ろうとするのか。
本当に父なんだな。

トーマ王妃の想いに思慮しながらも

「わかりました。善処します」

今の私にはこう答えることしか出来なかった。

私たちのやりとりを黙ってみていたアンドリュー王に、
『申し訳ありませんが、今日のところはこれで失礼致します』と言ってシュウを抱き抱えたまま部屋を出た。

そして、自分たちの部屋に戻りシュウを寝室に寝かせると、私たちの気配を察知したのか、パールが寝床から出てきた。

「お前がいてくれて助かった。私は少し自分の気持ちを整理したい。シュウの傍にいてあげて欲しいんだ」

そう言うと、パールはなぜかシュウの元を素通りし、タッと私の胸元へと飛び込んできた。

「パール、どうしたんだ?」

パールから私に近づいてきてくれるとは珍しいこともある。
そう思っていると、パールは突然私の頬を舐め始めた。

なんだ? と頬を触って気が付いた。
いつからだろう、私は涙を流していたようだ。

それにいち早く気づいたパールが私を慰めようと涙を拭ってくれていたのだと気づいて、私はさらに涙を流した。

少し落ち着きを取り戻して、パールの前で泣いてしまったことに些か恥ずかしさを感じた私は、シュウをパールに任せて寝室を出た。

ソファーの、シュウのお気に入りの場所に腰を下ろし、『ふぅーーっ』とため息を吐きながら目を瞑るとすぐにあの場面を思い出してしまう。

はぁ……っ、どうしたらいい?
私はシュウを許せるだろうか……。
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