イケメンスパダリ店主は愛する人が鈍感で無防備で可愛すぎて困っています

波木真帆

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番外編

友貴也を迎えに

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ダンボール五箱ほどで全ての荷物を詰めることができ、一度車を取りに行き、一度で荷物を運び終えた。

部屋に置いてあった布団について、倉橋くんに確認の連絡をしたところ、新しい社員が入った時には、マットレスも含めて新しいものに替えるからそのまま置いていても処分しても構わないという返答だったから、今日使ってから処分するとしようか。

一度家に戻った時に着替えはもちろん、タオルやローションなど必要なものを持って友貴也の家に戻った。もちろん夕食の材料も忘れない。

倉橋くんの所有の家だから、引越しといっても普通に電気やガス、水道が自由に使えるのはありがたい。
夕食の下拵えをしている間に、布団用の乾燥機でマットレスからシーツ、布団までをダニ退治をしておいた。友貴也は肌が弱いからしっかりと予防しておかないとな。

友貴也が美味しいと言ってくれたハンバーグを準備して、ご飯もセットし、スープとサラダを作るとちょうど友貴也の仕事が終わる時間になっていた。

「さて、迎えに行こうか」

忘れないように部屋中にカメラをセットして、友貴也を迎えに出かけた。

「友貴也」

K.Yリゾートの会社の扉を開け、声をかけると名嘉村くんが

「平松くん、お迎えが来たよ」

とみんなに聞こえるような大きな声で友貴也を呼び出してくれた。
これもみんなに知らしめるための名嘉村くんの作戦なんだろう。もうこの会社には私たちを応援してくれている人しかいないが、私がどれだけ友貴也に惚れ込んでいるかを見せつけるにはちょうどいい。

「崇史さんっ!!」

友貴也が嬉しそうに私の名を呼びながら、駆け寄ってきた瞬間、会社中がシーンと静まり返った。

「今、聞いた?」
「うんうん。名前で呼んでたね」
「きゃーっ!! ラブラブ」

小声で女性社員たちが私と友貴也を見て笑顔を見せているが、友貴也には聞こえていないようだ。

「お迎えありがとうございます」

「いや、今日もお疲れさま。頑張ったご褒美に今日は友貴也の好きなハンバーグだよ」

「わぁー!! 嬉しい!! 崇史さんのハンバーグ、早く食べたいです!!」

無邪気に喜び、笑顔を見せる友貴也はここが会社ということは忘れてしまっているのだろう。まぁそんなところも可愛いんだが。

「あ、八尋さん。平松くんのお迎えですか?」

「ええ。仕事も終わったようなので連れて帰りますね」

「平松くん、ご苦労さまでした。また明日お願いしますね」

「あ、はい。お、お疲れさまでした」

友貴也は砂川さんの声にここが会社だと思い出したようで、一気に顔を赤らめながら頭を下げた。
私はそんな可愛い友貴也を誰にも見せたくなくてすぐに会社を出た。

「すみません、俺……崇史さんの顔見たら嬉しくなっちゃって……ここが会社だって忘れちゃってました」

「いいよ。私は友貴也が素直に喜んでくれて嬉しいよ。さぁ、帰ろう」

友貴也の手を取って歩き始めると、

「あれ? あっちじゃないんですか?」

と友貴也が不思議そうに声をあげる。

「ああ、友貴也の部屋を片付けたんだけど、最後にあの部屋で二人で過ごしたくなってしまってね。今日は友貴也の部屋で泊まらないか?」

「えっ、そんなの、いいんですか?」

「ああ。倉橋くんには許可をもらってるし、問題ないよ」

私の言葉に友貴也は嬉しそうな笑顔を見せて、

「あの家で崇史さんと二人で過ごせるなんて嬉しいです」

と言ってくれた。

ああ。やっぱり私の友貴也は可愛い。


「久しぶりに鍵を開けてみる?」

「は、はい。なんだか不思議な気分です」

そう言いながらも嬉しそうに鍵を開ける友貴也を見ていると、初めてこの家に迎え入れられた日を思い出す。
あの時の可愛い格好。あれは最高の思い出だ。

「あっ、いい匂いがします」

「ああ。ご飯を炊いてきたからね。すぐにご飯が食べられるよ。手を洗っておいで」

「はい」

「あっ、その前に……」

「えっ? あっ、んんっ……」

玄関の扉を閉めてから、友貴也の唇を奪う。
ここでずっとしたかったけれどできなかったことだ。ようやく夢が叶ったな。

軽くキスをするだけ……と思っていたのに、いざキスをすると止められない。
そのままたっぷりと口内を堪能して唇を離すと、友貴也は私の胸にもたれかかってきた。

「苦しかったか?」

「いえ。すごく嬉しかったです……」

ほんのりと頬を染めて見上げてくれるその姿に興奮する。
ああ、もう本当に友貴也が可愛すぎて困るな。
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