イケメンスパダリ店主は愛する人が鈍感で無防備で可愛すぎて困っています

波木真帆

文字の大きさ
上 下
85 / 99

もう離さない!※

しおりを挟む
寝室の扉を開き、友貴也の視線がベッドを捉えた瞬間、彼の身体が震え始めた。
これからここで起きることを想像して怖くなってしまったのかもしれない。

だが、ようやくここまできたんだ。

今更止められない。

「友貴也……大丈夫だよ、君を怖がらせたりしない。優しくするって約束するから……」

なんとかして友貴也の心を落ち着かせようとベッドに腰を下ろした。
友貴也が私を見つめるその目に欲情の色が見えてホッとする。

さっきの身体の震えは恐怖ではなく、きっと未だかつて経験のないことをすることに緊張していたのだ。
それがわかって安堵しながら友貴也をギュッと抱きしめる。

服越しに友貴也の速い鼓動が聞こえるが、私も同じくらい鼓動が速い。
なんせようやく出会った運命の相手との初めての夜だ。
ドキドキしないわけがない。

「八尋さん……」

いつものように私を呼ぶ声が聞こえるが、この島の人全員が呼ぶ私の呼び名で、これからも同じように友貴也に呼ばれたくない。
だって、友貴也は私の特別なのだから。

「そろそろ、崇史って呼んでくれないか?」

「た、崇史、さん……?」

私の望みを叶えるようにすぐに友貴也の可愛い声が私の名前を呼んだ。
それだけで、とてつもなく嬉しい。

友貴也に崇史と呼ばれる日をどれだけ待ち続けたことか……。

あまりの嬉しさに、友貴也のように心の声が漏れてしまった。
友貴也は私がずっと崇史と、特別な呼び名で呼ばれることを待っていたことに驚いていたようだ。
本当に私の気持ちには気づいていなかったのだな。

それについては少し寂しさもあるが、そんなところも可愛いと思えるくらいに余裕ができたのは、思いが通じ合ったからだろう。

「私が友貴也をいつ好きになったか、教えようか?」

ベッドに腰を下ろしたままで、こんな余裕な会話ができるのも、明日友貴也が休みだとわかっているからかもしれない。
こうして会話をすることで少しでも友貴也の緊張が解けるのなら、いくらでも時間をかけていい。
今までずっと待ち続けたのだから。

私がいつ友貴也を好きになったのか、わかっていない友貴也は可愛らしく小首を傾げる。
そんな仕草のひとつひとつに私は心を奪われる。

「私が友貴也を好きになったのは、店で初めて会ったあの日だよ」

あの時、ひと目見たその時から友貴也を自分のものにすることしか考えられなかった。
どうしたら私を好きになってくれるか、どうしたら私のものにできるか、毎日そればかりを考えていた。

「本当だよ。初めて会った瞬間から惹かれていた。あの日から、友貴也をこの腕に抱ける日をずっと待っていたんだ。だから、今日はもう離せそうにない」

私の言葉に友貴也の目にほんの少し戸惑いが見えるが、絶対に受け入れてくれるはずだと信じて、

「友貴也が嫌なら、今、私を拒絶してくれないか?」

と告げた。

頼む、受け入れてくれ!

そんな私の願いを叶えてくれるように、

「そんなっ、拒絶だなんて……するわけないです。俺も……」

という声が聞こえた。
ああ、これでもう離しはしない!

最後まで聞きもせずに友貴也の唇を奪った。

早々に舌を差し入れ舌を絡め、歯列をなぞり友貴也の甘い唾液を味わいながら口内を堪能する。
最初は私にされるがままになっていた友貴也だったが、途中からは自ら舌を絡めてくる。
友貴也とのキスを味わいながら、私の手は友貴也の上半身をはだけさせていた。

このまま友貴也が気づかない間に半裸にしようと思ったが、

「わっ! た、崇史さん……あの、電気……」

驚いた友貴也が唇を外し、電気を消して欲しいと言ってくる。

私としては、一瞬の幸運でも映像でもなくしっかりと実物を見られるチャンスだから、明るいままで愛し合いたいが、友貴也の嫌がることはしたくない。

「じゃあ、少しだけね」

リモコンで明るさを薄暗くすると、友貴也はホッとしたような表情を見せた。
これからたっぷりと裸を堪能できるんだからな。
今はこれでいい。

それに目が慣れてきたら、この明るさでも十分楽しめる。

ホッとして身体の緊張が解けたらしい友貴也をベッドに押し倒し、唇を重ね、そのまま友貴也の首筋に顔を埋めた。

ふわっと甘い香りがして、誘われるようにチュッと吸い付いた。

その瞬間、ピクッと友貴也の身体が跳ねて、痛くさせたかと心配したが、友貴也は今の痛みがなんなのかを理解していないようだった。

こんなにも初々しい友貴也を私のものにできる幸せ……最高だな。

「友貴也が私のものになった証を付けたかったんだ。もう誰にも渡さないよ」

そういうと友貴也が信じられないと言った目で私を見たから、引かれたかと思ったが、

「俺が崇史さんのものだなんて、嬉しいです!」

と嬉しそうに言ってくれる。

ああ、もう本当にこの子は私を煽る天才だな。

「そんなに煽ると激しくしてしまうよ、必死に抑えてるのに」

「いいです! もっと、俺を崇史さんのものにしてください!」

必死に抑えようとしているのを軽々と飛び越えていく友貴也の言葉にもう我慢できなくて、

「わかった。もう、我慢しないよ」

と伝えたと同時に、私の目の前でぷっくりと膨らんだ可愛い乳首に触れた。
しおりを挟む
感想 147

あなたにおすすめの小説

有能官吏、料理人になる。〜有能で、皇帝陛下に寵愛されている自分ですが、このたび料理人になりました〜

𦚰阪 リナ
BL
琳国の有能官吏、李 月英は官吏だが食欲のない皇帝、凛秀のため、何かしなくてはならないが、何をしたらいいかさっぱるわからない。 だがある日、美味しい料理を作くれば、少しは気が紛れるのではないかと考え、厨房を見学するという名目で、厨房に来た。 そこで出逢った簫 完陽という料理人に料理を教えてもらうことに。 そのことがきっかけで月英は、料理の腕に目覚めて…?! 料理×BL×官吏のごちゃまぜ中華風お料理物語、ここに開幕! ※、のところはご注意を。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。 ※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

処理中です...