イケメンスパダリ店主は愛する人が鈍感で無防備で可愛すぎて困っています

波木真帆

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楽しい買い物

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「ああ、これもいい」

「あー、こっちもいいな」

「これも、あっ、あれも!」

手に取るもの全てが平松くんのために作られているんじゃないかと思うほど、どれもこれも似合いすぎてあっという間に十枚を突破していたが、まだまだ足りない。

安慶名さんたちから呆れられるかと思ったが、

「西表に来ると決まってから、スーツと普段着と下着を私と名嘉村くんで選んだくらいで、平松くん自身はほとんど着替えを持っていませんでしたから、これからの季節に向けても服はあった方がいいと思いますよ。あちらでは直に選ぶには石垣まで行かないといけないですし」

と砂川さんがいってくれたおかげで山のように買っても止められることはなかった。

大きなクローゼット一つ分は購入したかもしれないが、気に入ったものを買えて大満足だ。

「これを全て配送にしていただけますか?」

「ああ、もちろんだよ」

周平さんはすぐに私の選んだ服を全て配送に回すように指示を出してくれた。
一揃いだけ持ち帰ろうかと思ったが、特別配送便で送れば私が西表に戻った翌日に確実に受け取れるというのでそのままお願いすることにした。

安慶名さんも購入した砂川さんの服を石垣の自分の家に配送してもらうようだ。
きっと泊まりに行った時用の服なのだろう。

それにしても、品物にもよるが東京から沖縄、しかも離島への配送は航空便でも三日以上、船便なら十日近くかかるのが普通だから、まる二日で届くならかなり早いと言えるだろう。
さすがだな。

「これからお茶をすると話していただろう? もしよかったら、敬介のホテルに行かないか? そのほうがのんびり話もできるだろう。たくさん買い物をしてくれたお礼に私がお茶をご馳走するよ」

元々イリゼホテル銀座でお茶をしながら話をしようと思っていたから、問題ない。

安慶名さんに視線を向けるとにっこりと笑顔を向けられる。

彼がいいなら砂川さんもオッケーだろう。
まぁ浅香さんがいるのなら断る理由もない。

「ではお言葉に甘えて」

「ああ、よかった。じゃあ、すぐに行こうか」

店員に見送られながら店を出て、駐車場に向かおうとする周平さんたちに、

「すみません。すぐ近くで寄りたい場所があるので、表参道の駅で待っていていただいてもいいですか?」

「ああ、それは構わないがそこまで車で行かなくてもいいか?」

「少し奥まった場所にある小さな店なので、歩いた方が早いんです」

「そうか、じゃあ駅で待っているからついたら連絡してくれ」

「わかりました」

彼らから離れ、急いであの時計店に向かうと、

「お待ちしておりました」

と笑顔で出迎えられた。

「修理はできていますか?」

「ええ、問題なく動いていますよ」

「ああ、よかった」

「ふふっ。大事なお方が身につけるものですからね。アレ・・には一切触れておりませんのでご安心ください」

そう言われて一瞬何のことだかわからなかったが、

――この時計にアレをつけることもできる

と倉橋くんに言われていたことを思い出した。

さすが時計職人。
見慣れないものがついていればわかるに決まっている。

「ありがとうございます」

詳細には触れずにお礼だけ告げると、店主は笑顔でベルベッド素材の柔らかな巾着袋に腕時計を入れて渡してくれた。

「末長くお幸せに……」

「はい。ありがとうございました」

支払いを済ませ、店を出てから私は急いで表参道の駅に向かった。


<着きました>とメッセージを送る必要もないほど、すぐに周平さんの車を発見した。
誰が見てもわかる超高級車は、世界に数台しかない代物だ。

周りの羨望の的になっている車に急いで近づくと、私の前で車が止まった。
助手席の扉を開け、乗り込むと

「私たちもさっき着いたところでタイミングがよかったよ」

と普通に言われた。

周平さんにとっては人から注目を受けることは珍しいことではないから当然かもしれない。

そのまま車は銀座イリゼホテルに向かって進み始めた。

こんなにものすごく高価な車を駐車場に置くのは心配もあるが、ここイリゼホテルではその心配が全くない。
それだけ万全のセキュリティに守られている。
これもほとんど倉橋くんの開発したものだというのだから、もう異次元の凄さだ。

車を降りてホテルに入ると、すぐに

「周平さん!」

と声がかかり、浅香さんがやってきた。

つい最近付き合いの始まった二人だが、周平さんから報告を受けた時はようやくかと思ったものだ。
ついさっき、周平さんも私にそういっていたが、出会ってからの日数を考えれば、周平さんが一歩を踏み出したことのほうがようやくだと言える。

それでも周平さんの幸せそうな表情を見るだけで、私も嬉しい。
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