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やっと終わった……
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「だ、誰よ! あんたたち!」
やっと我に返ったらしい野々花が大声で叫ぶと、
「警察です」
と一言告げられる。
「はっ? 嘘でしょ。私を騙そうったってそうはいかないんだから!」
「本当ですよ、ほら」
野々花の一番近くにいたスーツ姿の男性が、胸ポケットから警察手帳を取り出して見せた。
「えっ……警視庁、真壁警視正? これって、めっちゃ偉い人?」
「ふふっ。どうでしょうか。まぁ、少なくとも犯罪行為を犯したあなたよりは偉いと思いますよ」
「な、何よ! 犯罪って」
「まだわかっていないのですか? 崇史さんが寝ている部屋に忍び込む、これだけで住居侵入罪に問われます。それに、猥褻行為を目的とした侵入ですから、いくら未遂とはいえ厳罰に処せられますよ」
「えっ……厳罰、ってうそ……っ、そんなの、私、知らない! だって、伯父さんが睡眠薬飲ませるから寝ている間にえっちしたら100万くれるって言ったから、私、部屋に入っただけで……」
「薬を飲ませて強姦するつもりだったんですね。その他の詳しい話は警察署で伺います」
「ちょっと、待ってよ! 私まだ高校生よ! そんな逮捕されるなんて!」
「ご存知ないのですか? 高校生でももうあなたは18になっていますよね? もう成人ですから関係ないですよ」」
「そんな……っ、私は伯父さんに無理やりやらされただけなの!! そう、伯父さんが悪いんだから! 私、関係ない!!」
往生際悪く、その場から逃げようとした野々花は真壁警視正と一緒に突入した女性警官に身柄を拘束された。
「ちょっと、離して!! 痛い! やめて!」
「これ以上騒ぐと公務執行妨害も追加されますよ!」
「ひぇっ!!」
女性警官にそう一喝されて、ようやく野々花は静かになった。
「真壁警視正! こちらも身柄を拘束しました」
そう言って私たちがいる部屋に連れてこられたのは、後ろ手に結束バンドで拘束された父。
「俺は何もしていない! さっさとこれを外せ!」
「あーっ! 伯父さんのせいで私も捕まっちゃったじゃん! どうしてくれるの!」
と野々花がくってかかると父も父で大声で騒ぎ始めた。
「うるさい! お前がちゃんとしないからだろうが! この役立たずめが!!」
「何よ!」
「いい加減にしろ!!」
父と野々花の馬鹿げた口論に聞く気も失せて怒鳴りつけてやると、途端に父は私に擦り寄ってきた。
「おい! 父親を警察に売るなんてそんなことしないだろう! 早くこの拘束を解くように言ってくれ!」
「いいえ。そのつもりはありません。しっかりと自分の罪を償ってください。ああ、ついでですから業務上横領の件も被害届を出しておきますから一緒に罪を償ってくださいね」
「なんだと! ふざけるな!」
「ふざけているのはあなたでしょう? 警察から出てきても、私と母には一歩も手出しができないようにしてやりますから覚悟しておいてください。もう二度とあなたの顔を見なくて済むと思うとせいせいしますよ」
「な――っ!! 崇史っ! 本気か?」
「ええ。私は冗談は嫌いですから」
「わ、悪かった。許してくれ! これからはちゃんとするから、頼む! この通りだ」
私が本気だと理解したのか、突然土下座を始めたが、許す気などさらさらない。
「あなたの土下座に何の価値もありません。さっさと出ていって下さい!」
私のその言葉に、父と野々花が警察官に引っ張られるように外に連れて行かれた。
「はぁーっ」
「八尋さん、お疲れさまでした」
「あっ! 成瀬先生! 部屋に突入してきた中に成瀬先生の姿が見えなかったので、気になっていたんですよ」
「ああ、それは――」
「あの父親を結束バンドで拘束してたんだよな」
「えっ?」
「ちょ――っ、そこまでバラすな」
「ははっ」
仲良さそうに話をする成瀬先生と真壁警視正の姿に驚いてしまう。
「あの、お知り合いですか?」
「ええ。高校の同級生なんですよ。だから無理言って今日はここにきてもらったんです。何かあった時に階級が高い人間がいると便利ですからね」
「そうは言っても、結構こいつにこき使われるんでどっちが偉いかわかりませんよ」
「余計なこと言うな」
笑い合う二人を見ると、私も笑みが溢れる。
「お二人のおかげで助かりました。ありがとうございます」
「いえ。仕事ですから。それでは失礼します」
そういうと真壁警視正は部屋を出て行った。
「八尋さん、全ての証拠は私がしっかりと保存して対処しますから、後のことは全てお任せくださいね」
「はい。よろしくお願いします」
「ああ、そうだ。忠礼さんは計画を遂行するために今日、この家に泊まっていた秘書の久代さんと野々花さんのご両親、それから史秀さんの弟さんにも睡眠薬を飲ませていましたよ」
「えっ? そうなんですか?」
「ええ。忠礼さんの持っていた睡眠薬を確認しましたが、中毒性のあるものは入ってませんでしたので、朝には目が覚めると思います。野々花さんのご両親には明日警察署から事情聴取のためにお迎えが来ますので、目が覚めたらその旨お伝えください」
「わかりました。それにしても睡眠薬を見ただけでわかるなんて成瀬先生、すごいですね」
「いえ、私……医師免許も持っているので、当然のことですよ」
「えっ……」
「それでは今夜はゆっくり休んでください」
笑顔の成瀬先生を見送りながらも、さらっと知らされた医師と弁護士のダブルライセンスに驚きが隠せなかった。
* * *
真壁の肩書を警視長から警視正に変更しました。
やっと我に返ったらしい野々花が大声で叫ぶと、
「警察です」
と一言告げられる。
「はっ? 嘘でしょ。私を騙そうったってそうはいかないんだから!」
「本当ですよ、ほら」
野々花の一番近くにいたスーツ姿の男性が、胸ポケットから警察手帳を取り出して見せた。
「えっ……警視庁、真壁警視正? これって、めっちゃ偉い人?」
「ふふっ。どうでしょうか。まぁ、少なくとも犯罪行為を犯したあなたよりは偉いと思いますよ」
「な、何よ! 犯罪って」
「まだわかっていないのですか? 崇史さんが寝ている部屋に忍び込む、これだけで住居侵入罪に問われます。それに、猥褻行為を目的とした侵入ですから、いくら未遂とはいえ厳罰に処せられますよ」
「えっ……厳罰、ってうそ……っ、そんなの、私、知らない! だって、伯父さんが睡眠薬飲ませるから寝ている間にえっちしたら100万くれるって言ったから、私、部屋に入っただけで……」
「薬を飲ませて強姦するつもりだったんですね。その他の詳しい話は警察署で伺います」
「ちょっと、待ってよ! 私まだ高校生よ! そんな逮捕されるなんて!」
「ご存知ないのですか? 高校生でももうあなたは18になっていますよね? もう成人ですから関係ないですよ」」
「そんな……っ、私は伯父さんに無理やりやらされただけなの!! そう、伯父さんが悪いんだから! 私、関係ない!!」
往生際悪く、その場から逃げようとした野々花は真壁警視正と一緒に突入した女性警官に身柄を拘束された。
「ちょっと、離して!! 痛い! やめて!」
「これ以上騒ぐと公務執行妨害も追加されますよ!」
「ひぇっ!!」
女性警官にそう一喝されて、ようやく野々花は静かになった。
「真壁警視正! こちらも身柄を拘束しました」
そう言って私たちがいる部屋に連れてこられたのは、後ろ手に結束バンドで拘束された父。
「俺は何もしていない! さっさとこれを外せ!」
「あーっ! 伯父さんのせいで私も捕まっちゃったじゃん! どうしてくれるの!」
と野々花がくってかかると父も父で大声で騒ぎ始めた。
「うるさい! お前がちゃんとしないからだろうが! この役立たずめが!!」
「何よ!」
「いい加減にしろ!!」
父と野々花の馬鹿げた口論に聞く気も失せて怒鳴りつけてやると、途端に父は私に擦り寄ってきた。
「おい! 父親を警察に売るなんてそんなことしないだろう! 早くこの拘束を解くように言ってくれ!」
「いいえ。そのつもりはありません。しっかりと自分の罪を償ってください。ああ、ついでですから業務上横領の件も被害届を出しておきますから一緒に罪を償ってくださいね」
「なんだと! ふざけるな!」
「ふざけているのはあなたでしょう? 警察から出てきても、私と母には一歩も手出しができないようにしてやりますから覚悟しておいてください。もう二度とあなたの顔を見なくて済むと思うとせいせいしますよ」
「な――っ!! 崇史っ! 本気か?」
「ええ。私は冗談は嫌いですから」
「わ、悪かった。許してくれ! これからはちゃんとするから、頼む! この通りだ」
私が本気だと理解したのか、突然土下座を始めたが、許す気などさらさらない。
「あなたの土下座に何の価値もありません。さっさと出ていって下さい!」
私のその言葉に、父と野々花が警察官に引っ張られるように外に連れて行かれた。
「はぁーっ」
「八尋さん、お疲れさまでした」
「あっ! 成瀬先生! 部屋に突入してきた中に成瀬先生の姿が見えなかったので、気になっていたんですよ」
「ああ、それは――」
「あの父親を結束バンドで拘束してたんだよな」
「えっ?」
「ちょ――っ、そこまでバラすな」
「ははっ」
仲良さそうに話をする成瀬先生と真壁警視正の姿に驚いてしまう。
「あの、お知り合いですか?」
「ええ。高校の同級生なんですよ。だから無理言って今日はここにきてもらったんです。何かあった時に階級が高い人間がいると便利ですからね」
「そうは言っても、結構こいつにこき使われるんでどっちが偉いかわかりませんよ」
「余計なこと言うな」
笑い合う二人を見ると、私も笑みが溢れる。
「お二人のおかげで助かりました。ありがとうございます」
「いえ。仕事ですから。それでは失礼します」
そういうと真壁警視正は部屋を出て行った。
「八尋さん、全ての証拠は私がしっかりと保存して対処しますから、後のことは全てお任せくださいね」
「はい。よろしくお願いします」
「ああ、そうだ。忠礼さんは計画を遂行するために今日、この家に泊まっていた秘書の久代さんと野々花さんのご両親、それから史秀さんの弟さんにも睡眠薬を飲ませていましたよ」
「えっ? そうなんですか?」
「ええ。忠礼さんの持っていた睡眠薬を確認しましたが、中毒性のあるものは入ってませんでしたので、朝には目が覚めると思います。野々花さんのご両親には明日警察署から事情聴取のためにお迎えが来ますので、目が覚めたらその旨お伝えください」
「わかりました。それにしても睡眠薬を見ただけでわかるなんて成瀬先生、すごいですね」
「いえ、私……医師免許も持っているので、当然のことですよ」
「えっ……」
「それでは今夜はゆっくり休んでください」
笑顔の成瀬先生を見送りながらも、さらっと知らされた医師と弁護士のダブルライセンスに驚きが隠せなかった。
* * *
真壁の肩書を警視長から警視正に変更しました。
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