イケメンスパダリ店主は愛する人が鈍感で無防備で可愛すぎて困っています

波木真帆

文字の大きさ
上 下
41 / 99

事実が明るみになる

しおりを挟む
素人なのでなんとなくの雰囲気で書いてます(汗)
なのでこの辺はサラーっと流していただけるとありがたいです。


  *   *   *


「お前はあのじいさんに可愛がられたんだから、あの会社を解散させるようなことはしないだろう。お前が継がなければ、社員全員が路頭に迷うことになるのだぞ。そんなことをお前はしないだろう?」

「あれだけ怒鳴っていたくせに、今度は情に訴えるつもりですか?」

「そうじゃない。お前が名前だけでも社長になればみんなが幸せになると言っているんだ。お前は今まで通りあの島で好きに過ごせばいい。会社は俺がやってやるから」

「自分が実権を握りたいだけでしょう? お祖父さんは名前だけでなく、私はトップとなって会社を存続していくことを望んでいるんですよ。それができない以上、受けることはできません」

「お前の勝手なわがままで会社を解散させて、財産まで全て寄付することもなってもいいと思っているのか?」

「それがお祖父さんの意思なのですから、それでいいと思いますよ。私は会社を継ぐつもりはありません」

「まぁまぁ、崇史くん。そこまで頑なにならなくてもいいじゃないか」

私と父の間に祖父の弟である大叔父さんが割り込んできた。

「なぁ、崇史くん。兄さんにとってあの会社は生き甲斐だったんだ。兄さんの意思だというのなら守ってあげるのが遺されたものとしてやるべきことじゃないか? 君が島から離れられないというのなら、私たちが社長代行としてやってあげるから名前だけ貸してくれたらいいんだよ。それだけで、会社は存続できるし、君には兄さんの財産が入ってくる。一石二鳥だろう? 私たちには、社長代行の対価として財産の半分でもくれたらいいよ」

「ははっ。財産の半分。それが狙いですか?」

「いやいや、違うよ。それはあくまでも我々への対価であって、会社は兄さんの生き甲斐だったから残してあげたい。ただそれだけだよ」

「違いますよね、今までお祖父さんの会社を好き勝手していたのが、解散すると全てバレるからでしょう? だからなんとしてでも会社を残して、私にバレる前に片付けたいだけですよね。そして、ついでにお祖父さんの財産も手に入れたいというところですか? 本当に浅はかですね」

「――っ、た、崇史くんは一体何を言っているんだ? 勝手な思い込みでそんな発言をするなんて失礼じゃないか!」

「私がただの思い込みでこんなことを言っていると思いますか?」

「なんだと?」

私は隣にいる成瀬先生に合図を送った。

すると、成瀬先生は笑顔を浮かべながら一歩前に出て、鞄からたくさんの資料を取り出した。
それを集まっていた親族、そして高沢弁護士にも配ると淡々と説明を始めた。

「これは八尋史秀さんが療養に入られてからのエノーマス商事の取引とお金の流れです。ある一社に莫大な金額が流れているのがわかります。これは全て正規の取引ではありません。経理部長だった忠礼さんが知らないわけないですよね? 史秀さんの弟である貴方もグルでやっていたのはわかっているんですよ」

「な――っ、どうしてこれが……こんなの出てくるわけがないだろう!」

「それは自白と捉えてよろしいですか?」

「――っ!! ちがっ、こんなのでっち上げだ! 崇史、お前私を陥れようとして弁護士にこんなものを作らせたのか?」

「そんなわけないでしょう。これは全て事実ですよ。高沢弁護士、これを見てお分かりの通り、エノーマス商事はすでに経営破綻しています。この後を継ぐつもりはありません」

高沢弁護士は初めて見る資料に驚きの色を隠せない様子だが、同じように驚きの表情を見せているのは秘書の久代さんだった。

「まさか……社長がいない間に、こんなことに?」

「今まで必死に取り繕っていた様子でしたけどね。ですから、あなたももうあの会社から手を引いた方がいいですよ。あなたはずっと祖父に寄り添ってくださっていたんですから、それだけで十分です」

「崇史さん……」

久代さんは力なくその場にしゃがみ込んでしまった。
彼には辛い現実だっただろうが、隠し通すわけにはいかなかったからな。

「父さん、それに大叔父さんも、もう言い逃れはできませんよ。これ以上、私に相続のことで口を挟んでくるのなら出るところに出て。訴えてもいいんですよ」

「訴える?」

「ええ。あなた方がやったことは業務上横領罪に問われますから」

「うるさい! もうあのじいさんは死んだんだ。お前に指図される謂れはない」

「もう会社が経営破綻している以上、私は後を継ぎませんし祖父の財産は全て放棄します。高沢弁護士、それでいいですね?」

「え、ええ。わかりました。それでは相続放棄の手続きを取らせていただきます。成瀬先生、私がさせていただいてもよろしいですか?」

「ええ。お願いします」

「は、はい」

祖父に依頼された弁護士だから、もっと祖父の遺言を守るように強く言ってくるかと思ったが、成瀬先生がそばにいるから終始静かなままだったな。
余計ないざこざが減って助かった。

成瀬先生が父と大叔父に横領罪をちらつかせている間に、私は高沢弁護士の協力のもと、相続放棄の手続きを済ませた。

「会社の解散、そして清算の手続きも私の方で進めさせて頂きます。成瀬先生にもご協力をいただくことがあるかもしれませんがよろしいですか?」

「ええ。構いませんよ。ですがこれくらいのことなら高沢先生だけでも問題ないのでは?」

「は、はい。私にお任せください」

「よろしくお願いします」

にこやかな成瀬先生とは対照的に、高沢弁護士の怯え切った表情。

――以前、コテンパンに……

と話していたが、私の想像以上のことがあったのだろうな。

詳しくは聞かないが……成瀬先生が味方であったことを良かったと思うことにしよう。
しおりを挟む
感想 147

あなたにおすすめの小説

有能官吏、料理人になる。〜有能で、皇帝陛下に寵愛されている自分ですが、このたび料理人になりました〜

𦚰阪 リナ
BL
琳国の有能官吏、李 月英は官吏だが食欲のない皇帝、凛秀のため、何かしなくてはならないが、何をしたらいいかさっぱるわからない。 だがある日、美味しい料理を作くれば、少しは気が紛れるのではないかと考え、厨房を見学するという名目で、厨房に来た。 そこで出逢った簫 完陽という料理人に料理を教えてもらうことに。 そのことがきっかけで月英は、料理の腕に目覚めて…?! 料理×BL×官吏のごちゃまぜ中華風お料理物語、ここに開幕! ※、のところはご注意を。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。 ※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

処理中です...