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事実が明るみになる
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素人なのでなんとなくの雰囲気で書いてます(汗)
なのでこの辺はサラーっと流していただけるとありがたいです。
* * *
「お前はあのじいさんに可愛がられたんだから、あの会社を解散させるようなことはしないだろう。お前が継がなければ、社員全員が路頭に迷うことになるのだぞ。そんなことをお前はしないだろう?」
「あれだけ怒鳴っていたくせに、今度は情に訴えるつもりですか?」
「そうじゃない。お前が名前だけでも社長になればみんなが幸せになると言っているんだ。お前は今まで通りあの島で好きに過ごせばいい。会社は俺がやってやるから」
「自分が実権を握りたいだけでしょう? お祖父さんは名前だけでなく、私はトップとなって会社を存続していくことを望んでいるんですよ。それができない以上、受けることはできません」
「お前の勝手なわがままで会社を解散させて、財産まで全て寄付することもなってもいいと思っているのか?」
「それがお祖父さんの意思なのですから、それでいいと思いますよ。私は会社を継ぐつもりはありません」
「まぁまぁ、崇史くん。そこまで頑なにならなくてもいいじゃないか」
私と父の間に祖父の弟である大叔父さんが割り込んできた。
「なぁ、崇史くん。兄さんにとってあの会社は生き甲斐だったんだ。兄さんの意思だというのなら守ってあげるのが遺されたものとしてやるべきことじゃないか? 君が島から離れられないというのなら、私たちが社長代行としてやってあげるから名前だけ貸してくれたらいいんだよ。それだけで、会社は存続できるし、君には兄さんの財産が入ってくる。一石二鳥だろう? 私たちには、社長代行の対価として財産の半分でもくれたらいいよ」
「ははっ。財産の半分。それが狙いですか?」
「いやいや、違うよ。それはあくまでも我々への対価であって、会社は兄さんの生き甲斐だったから残してあげたい。ただそれだけだよ」
「違いますよね、今までお祖父さんの会社を好き勝手していたのが、解散すると全てバレるからでしょう? だからなんとしてでも会社を残して、私にバレる前に片付けたいだけですよね。そして、ついでにお祖父さんの財産も手に入れたいというところですか? 本当に浅はかですね」
「――っ、た、崇史くんは一体何を言っているんだ? 勝手な思い込みでそんな発言をするなんて失礼じゃないか!」
「私がただの思い込みでこんなことを言っていると思いますか?」
「なんだと?」
私は隣にいる成瀬先生に合図を送った。
すると、成瀬先生は笑顔を浮かべながら一歩前に出て、鞄からたくさんの資料を取り出した。
それを集まっていた親族、そして高沢弁護士にも配ると淡々と説明を始めた。
「これは八尋史秀さんが療養に入られてからのエノーマス商事の取引とお金の流れです。ある一社に莫大な金額が流れているのがわかります。これは全て正規の取引ではありません。経理部長だった忠礼さんが知らないわけないですよね? 史秀さんの弟である貴方もグルでやっていたのはわかっているんですよ」
「な――っ、どうしてこれが……こんなの出てくるわけがないだろう!」
「それは自白と捉えてよろしいですか?」
「――っ!! ちがっ、こんなのでっち上げだ! 崇史、お前私を陥れようとして弁護士にこんなものを作らせたのか?」
「そんなわけないでしょう。これは全て事実ですよ。高沢弁護士、これを見てお分かりの通り、エノーマス商事はすでに経営破綻しています。この後を継ぐつもりはありません」
高沢弁護士は初めて見る資料に驚きの色を隠せない様子だが、同じように驚きの表情を見せているのは秘書の久代さんだった。
「まさか……社長がいない間に、こんなことに?」
「今まで必死に取り繕っていた様子でしたけどね。ですから、あなたももうあの会社から手を引いた方がいいですよ。あなたはずっと祖父に寄り添ってくださっていたんですから、それだけで十分です」
「崇史さん……」
久代さんは力なくその場にしゃがみ込んでしまった。
彼には辛い現実だっただろうが、隠し通すわけにはいかなかったからな。
「父さん、それに大叔父さんも、もう言い逃れはできませんよ。これ以上、私に相続のことで口を挟んでくるのなら出るところに出て。訴えてもいいんですよ」
「訴える?」
「ええ。あなた方がやったことは業務上横領罪に問われますから」
「うるさい! もうあのじいさんは死んだんだ。お前に指図される謂れはない」
「もう会社が経営破綻している以上、私は後を継ぎませんし祖父の財産は全て放棄します。高沢弁護士、それでいいですね?」
「え、ええ。わかりました。それでは相続放棄の手続きを取らせていただきます。成瀬先生、私がさせていただいてもよろしいですか?」
「ええ。お願いします」
「は、はい」
祖父に依頼された弁護士だから、もっと祖父の遺言を守るように強く言ってくるかと思ったが、成瀬先生がそばにいるから終始静かなままだったな。
余計ないざこざが減って助かった。
成瀬先生が父と大叔父に横領罪をちらつかせている間に、私は高沢弁護士の協力のもと、相続放棄の手続きを済ませた。
「会社の解散、そして清算の手続きも私の方で進めさせて頂きます。成瀬先生にもご協力をいただくことがあるかもしれませんがよろしいですか?」
「ええ。構いませんよ。ですがこれくらいのことなら高沢先生だけでも問題ないのでは?」
「は、はい。私にお任せください」
「よろしくお願いします」
にこやかな成瀬先生とは対照的に、高沢弁護士の怯え切った表情。
――以前、コテンパンに……
と話していたが、私の想像以上のことがあったのだろうな。
詳しくは聞かないが……成瀬先生が味方であったことを良かったと思うことにしよう。
なのでこの辺はサラーっと流していただけるとありがたいです。
* * *
「お前はあのじいさんに可愛がられたんだから、あの会社を解散させるようなことはしないだろう。お前が継がなければ、社員全員が路頭に迷うことになるのだぞ。そんなことをお前はしないだろう?」
「あれだけ怒鳴っていたくせに、今度は情に訴えるつもりですか?」
「そうじゃない。お前が名前だけでも社長になればみんなが幸せになると言っているんだ。お前は今まで通りあの島で好きに過ごせばいい。会社は俺がやってやるから」
「自分が実権を握りたいだけでしょう? お祖父さんは名前だけでなく、私はトップとなって会社を存続していくことを望んでいるんですよ。それができない以上、受けることはできません」
「お前の勝手なわがままで会社を解散させて、財産まで全て寄付することもなってもいいと思っているのか?」
「それがお祖父さんの意思なのですから、それでいいと思いますよ。私は会社を継ぐつもりはありません」
「まぁまぁ、崇史くん。そこまで頑なにならなくてもいいじゃないか」
私と父の間に祖父の弟である大叔父さんが割り込んできた。
「なぁ、崇史くん。兄さんにとってあの会社は生き甲斐だったんだ。兄さんの意思だというのなら守ってあげるのが遺されたものとしてやるべきことじゃないか? 君が島から離れられないというのなら、私たちが社長代行としてやってあげるから名前だけ貸してくれたらいいんだよ。それだけで、会社は存続できるし、君には兄さんの財産が入ってくる。一石二鳥だろう? 私たちには、社長代行の対価として財産の半分でもくれたらいいよ」
「ははっ。財産の半分。それが狙いですか?」
「いやいや、違うよ。それはあくまでも我々への対価であって、会社は兄さんの生き甲斐だったから残してあげたい。ただそれだけだよ」
「違いますよね、今までお祖父さんの会社を好き勝手していたのが、解散すると全てバレるからでしょう? だからなんとしてでも会社を残して、私にバレる前に片付けたいだけですよね。そして、ついでにお祖父さんの財産も手に入れたいというところですか? 本当に浅はかですね」
「――っ、た、崇史くんは一体何を言っているんだ? 勝手な思い込みでそんな発言をするなんて失礼じゃないか!」
「私がただの思い込みでこんなことを言っていると思いますか?」
「なんだと?」
私は隣にいる成瀬先生に合図を送った。
すると、成瀬先生は笑顔を浮かべながら一歩前に出て、鞄からたくさんの資料を取り出した。
それを集まっていた親族、そして高沢弁護士にも配ると淡々と説明を始めた。
「これは八尋史秀さんが療養に入られてからのエノーマス商事の取引とお金の流れです。ある一社に莫大な金額が流れているのがわかります。これは全て正規の取引ではありません。経理部長だった忠礼さんが知らないわけないですよね? 史秀さんの弟である貴方もグルでやっていたのはわかっているんですよ」
「な――っ、どうしてこれが……こんなの出てくるわけがないだろう!」
「それは自白と捉えてよろしいですか?」
「――っ!! ちがっ、こんなのでっち上げだ! 崇史、お前私を陥れようとして弁護士にこんなものを作らせたのか?」
「そんなわけないでしょう。これは全て事実ですよ。高沢弁護士、これを見てお分かりの通り、エノーマス商事はすでに経営破綻しています。この後を継ぐつもりはありません」
高沢弁護士は初めて見る資料に驚きの色を隠せない様子だが、同じように驚きの表情を見せているのは秘書の久代さんだった。
「まさか……社長がいない間に、こんなことに?」
「今まで必死に取り繕っていた様子でしたけどね。ですから、あなたももうあの会社から手を引いた方がいいですよ。あなたはずっと祖父に寄り添ってくださっていたんですから、それだけで十分です」
「崇史さん……」
久代さんは力なくその場にしゃがみ込んでしまった。
彼には辛い現実だっただろうが、隠し通すわけにはいかなかったからな。
「父さん、それに大叔父さんも、もう言い逃れはできませんよ。これ以上、私に相続のことで口を挟んでくるのなら出るところに出て。訴えてもいいんですよ」
「訴える?」
「ええ。あなた方がやったことは業務上横領罪に問われますから」
「うるさい! もうあのじいさんは死んだんだ。お前に指図される謂れはない」
「もう会社が経営破綻している以上、私は後を継ぎませんし祖父の財産は全て放棄します。高沢弁護士、それでいいですね?」
「え、ええ。わかりました。それでは相続放棄の手続きを取らせていただきます。成瀬先生、私がさせていただいてもよろしいですか?」
「ええ。お願いします」
「は、はい」
祖父に依頼された弁護士だから、もっと祖父の遺言を守るように強く言ってくるかと思ったが、成瀬先生がそばにいるから終始静かなままだったな。
余計ないざこざが減って助かった。
成瀬先生が父と大叔父に横領罪をちらつかせている間に、私は高沢弁護士の協力のもと、相続放棄の手続きを済ませた。
「会社の解散、そして清算の手続きも私の方で進めさせて頂きます。成瀬先生にもご協力をいただくことがあるかもしれませんがよろしいですか?」
「ええ。構いませんよ。ですがこれくらいのことなら高沢先生だけでも問題ないのでは?」
「は、はい。私にお任せください」
「よろしくお願いします」
にこやかな成瀬先生とは対照的に、高沢弁護士の怯え切った表情。
――以前、コテンパンに……
と話していたが、私の想像以上のことがあったのだろうな。
詳しくは聞かないが……成瀬先生が味方であったことを良かったと思うことにしよう。
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