イケメンスパダリ店主は愛する人が鈍感で無防備で可愛すぎて困っています

波木真帆

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意識して欲しい

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欲望の蜜をたっぷりと出し、今度こそと気合を入れて寝室に戻り、ベッドに身体を滑り込ませるとぐっすりと寝入っていたはずの平松くんがすぐに動き出す。

そして、そのまま私の胸元まで擦り寄ってきて

「ふふっ……」

と、嬉しそうに笑いながら深い眠りに落ちていく。

酔っている時といい、眠っている時といい、意識がない時は本当に素直なんだな。

それだけ普段は自分で自分の気持ちを抑えつけているということなのだろう。
早くそれを解き放ってやりたいな。

愛しい彼を腕に抱きながら、私もようやく眠りについた。

平松くんの温もりと甘い匂いのおかげでぐっすりと熟睡した私は、腕の中の彼が身動ぐのを感じて目を覚ました。

さて、この状態を目の当たりにして彼がどんなふうに感じるか、平松くんの様子をこっそり寝たふりをして覗いてみようか。

平松くんは目を覚まして私と抱き合っていることを知るや否や、慌てて布団を捲った。
ホッとしているところを見ると、自分が裸じゃないことを確認していたみたいだな。

もしかして、寝ている間に私が手を出したと思ったのか?
そんなケダモノに思われているとわかっていささかショックを受けたが、平松くんくらい可愛ければそれくらい心配しても無理はない。

だが、大丈夫。
私は意識のない状態では抱いたりはしないよ。
キスはしてしまったが、それはおねだりされたものだから許してもらおう。

平松くんは襲われてないことにホッとしたのか、それからも私から離れる様子はなかった。
それが嬉しくてぎゅっと抱きしめていると、平松くんが笑顔になったり、焦ったり、困っていたり……表情をくるくると変える。

ふふっ。本当に可愛らしい。

昨夜のことを必死に思い出そうとしているようだが、あの表情を見る限りキスのことはもちろん、告白してきたことも覚えていないようだ。

それなら今、私とこうなっている状況が掴めなくても仕方がない。

平松くんは私の腕をそっと離し、ベッドの上で私から少し距離をとった。

ベッドから下りていかないところを見ると、逃げ帰るつもりはないようだな。

「ああーっ! もうっ、何やってんだよ、俺!!」

突然頭を抱え大きな声で叫び出したのをみて、もう我慢ができなかった。
本当に可愛すぎだろう、この子は。

必死に堪えようとしたが我慢できずに笑い声を漏らすと、驚いた様子で私に顔を向ける。

「おはよう。平松くん」

「――っ、わっ、な――っ、えっ、うそっ、起きてた……っ」

私が寝たふりをしていたことに気づかないほど、混乱していたようだ。
可愛いという言葉以外出てこないな。

驚かせたことを謝り、深呼吸させるとようやく落ち着いたようで平松くんの方から昨夜のことを尋ねてきた。

あの……それで、俺……どうしちゃったんでしょうか? なんで、八尋さんと、だ、抱き合って……」

「ああ、そのことか。大したことじゃないよ。昨日平松くんはね、ワインの二杯目を半分くらいまで呑んだところでそのまま眠ってしまったんだ。声をかけたり、肩を軽く叩いたりしたんだけど全く起きる気配がなくて……それで、ベッドに運んだんだ」

流石に私が好きだと言ってキスを強請ってきたなんて言えないからな。
それでも、少しだけは私を意識してもらおうか。

そう思って、話を作ってみた。

「それで片付けを済ませて、寝る支度をして、私はソファーで寝ようと思ってね。寝る前に平松くんの様子を見に行ったんだ。そうしたら……ちょっと魘されていたみたいだったから、そばに寄って手を握って大丈夫だよって声をかけたんだ。そうしたら落ち着いたんだけど、手を握ったまま眠ってしまってね。起こすのが忍びなくて申し訳ないと思ったけど一緒に寝かせてもらったんだ」


そのおかげで久しぶりに・・・・・熟睡できたと告げると、平松くんは安心しながらもちょっと引っ掛かりを覚えたようだ。

ふふっ。きっと私が以前誰かと一緒に寝ていたと勘違いしただろう。
それで少しは私を意識して嫉妬してくれたらいい。

朝食の前に風呂に入るように勧めて湯を張りに寝室を出て、そっと中を窺うとベッドの上で何やら考えているようだ。

私と一緒に寝るのは自分だけだと独占欲を持ってくれたらいいんだがな……。

そんな期待を胸に風呂の用意をして、平松くんを風呂場に案内する。
もちろん私の着替えを持たせて。

「脱いだ服は洗濯機に入れてくれていいからね」

優しさのふりをして、そんな言葉をかけるがただ単純に彼の匂いのする服が欲しいだけだ。
変態だと思われたくなくてそんなことは決して言えないが、以前は我慢できた彼の下着も、キスをしてしまった今では我慢できそうにない。
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