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思わぬ事実
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「絢斗くん、瀬里さんの準備終わったわよ」
貴船さんの声にすぐに反応して、スーッと襖が開くと綺麗なドレス姿の女性が二人現れた。
「――っ!! わっ、綺麗!」
あまりにも綺麗すぎて、この二人が天沢さんと小石川さんだということに気づくのが遅くなってしまったけれど、二人は僕を見て、
「わぁーっ、日南さん綺麗っ!! ねぇ、和泉さん」
「ほんと! とっても綺麗です!!」
と言いながら、笑顔で近づいてきた。
なんと返せば良いのか、茫然としていると二人の隣から絢斗さんと呼ばれていた人が、
「本当! 瀬里さん、とってもよく似合うよ!」
と一緒になって褒めてくれる。
「えっ、あっ、ありがとうございます。あの、天沢さんと小石川さんもすっごく綺麗です」
「ありがとう。実は私も気に入ってます」
みんなから綺麗だと言われる経験なんてないから、焦りながらも必死に気持ちを告げると、天沢さんは笑顔を見せてくれた。
「さぁ、せっかくお着替えも終わったし、見せにいきましょうか」
「見せにって……やっぱり、これで外に出るんですか?」
「ええ。当然よ。せっかく着替えしたのに私たちだけしか見られないなんて勿体無いじゃない。ほら、さっき板前の麻生さんも見てみたいって仰ってたでしょう? きっと今頃瀬里さんが出てくるのを待っているはずよ」
麻生さんは社交辞令で言っただけで、そこまで期待はしていないと思うけれど、
「さぁ、行きましょう!」
とグイグイ誘われると、出ないわけにも行かない。
「ああ、そうだわ。瀬里さんのお草履と、千里さんと和泉さんのハイヒールは飯野さんがお庭への入り口に用意してくださっているから、いつでもお外に行けますからね」
「外? いえ、そこまでは――」
「わぁ、じゃあ皆さんと同じようにお庭で撮影できますね。嬉しいです。日南さん、和泉さんもみんなで一緒に写真撮りましょうね」
「えっ、はい……」
少し見せて終わりにしようと思っていたのに、天沢さんがなんだかすごく乗り気でそれに流されてしまう。
貴船さんの着付け方が上手なのかあまり苦しくもなくてホッとするけれど、やっぱり着物は着慣れないからゆっくりしか歩けない。
転んだりしたら目も当てられないと思って、ゆっくり慎重に着替えていた部屋から出るとすぐに
「日南さんっ!」
と呼ぶ声が聞こえた。
「えっ?」
びっくりしてその声の方に視線を向けるとそこには笑顔の麻生さんがいた。
「日南さん綺麗ですね。着物、すごくお似合いですよ」
「――っ、あ、ありがとうございます」
さっと駆け寄ってきたと思ったら、さっと手を差し出してくれて、それがあまりにも自然すぎて思わず手を取ってしまった。
でも、手を握ってもらえただけで格段に歩きやすくなる。
「麻生さんが隣にいてくださったら歩きやすいです」
「そうですか。じゃあ、ずっと一緒にいますから安心してくださいね」
「――っ!! は、はい」
なんだか告白っぽいと思ってしまったことは、僕の心の中だけに留めておこう。
「あ、そういえば天沢さんたちは……」
「千里さんと和泉さんならあちらですよ」
そう教えられた先に視線を向けると、天沢さんの隣には店主の天沢さんが、小石川さんの隣には何故か社長の姿があった。
しかも何故だろう、その距離感がとてつもなく近く見える。
社長が今までに見たことのない笑顔をしているからだろうか?
「えっ? 社長?」
「んっ? ああ、日南。お前は着物にしたのか?」
驚く僕をよそに普通に言葉が返ってきて、それに戸惑ってしまう。
「は、はい。そうですけど……あの……」
いろいろ聞きたいけれど、聞きたいことが多すぎてどこから聞けば良いのかわからない。
チラチラと社長と小石川さんの顔を交互に見ていると、その視線に気付いたのか社長が小石川さんをそっと抱き寄せながら笑顔で教えてくれた。
「ああ、日南にも紹介しておこう。彼は私の恋人だ」
社長の言葉に隣にいる小石川さんがパッと顔を赤らめる。
「――っ、こ、こいびと? ええーっ、本当ですか? いつからですか? もしかして最初から付き合っててここに? なんで何も――」
「ちょっと落ち着け!」
社長の声にハッと我に返ると同時に、
「大丈夫ですか?」
と麻生さんに優しい声をかけられて、スッと気持ちが落ち着いていく。
「は、はい。すみません。思っても見なかったので驚いてしまって……」
「それって、佐久川さんに好意があったからとかそういうことですか?」
「ええっ? それはないですっ! 社長のことをそんなふうに見たことは一度もないです!! 本当です!!」
どうしてだか、絶対に麻生さんには勘違いされたくないと思ってしまって、つい強めに言ってしまった。
「そうですか、それならよかった」
僕の言葉に安心したように笑顔を見せてくれてなんだか不思議な感情が込み上げる。
「えっ? それってどういう……」
「それは後で二人になった時にゆっくりと説明しますね」
「えっ? ええ……」
パチンとウィンクされて、穏やかに言われたらもう頷くことしかできなかった。
「さぁさぁ、立ち話はこの辺にしてせっかくだからみんなが集まっているところに行きましょう」
「そうですね。貴船にも千里の可愛い姿を見せつけてやらないと、一花さんの惚気ばかり聞かされるのは損ですからね」
そう言って、店主の天沢さんがドレス姿の天沢さん……千里さんを連れて歩き出すと、当然のように社長も小石川さんを連れて歩き出し、
「日南さんも行きましょうか」
と麻生さんに手を取られたまま言われて、もうそれに従うしかなかった。
「みなさん、今日の結婚式に尽力してくださったこの方たちにもお着替えしていただいたわ。どうかしら?」
貴船さんが僕たちを紹介すると、部屋にいた招待客の皆さんの視線が一気に注がれる。
「わぁー! とっても綺麗です!!」
いつの間にかドレス姿にお着替えなさっていた新夫さまが一番先に声をかけてくださって、それに続くようにあちらこちらから綺麗! 可愛い! と声が飛んでくる。
あっという間に美人集団に囲まれてドキドキしてしまうけれど、麻生さんは僕の隣で笑顔のままずっと一緒にいてくれた。
* * *
楽しくなってきちゃったのでちょっと10話は超えるかもです。
もう少しお付き合いいただけると嬉しいです♡
貴船さんの声にすぐに反応して、スーッと襖が開くと綺麗なドレス姿の女性が二人現れた。
「――っ!! わっ、綺麗!」
あまりにも綺麗すぎて、この二人が天沢さんと小石川さんだということに気づくのが遅くなってしまったけれど、二人は僕を見て、
「わぁーっ、日南さん綺麗っ!! ねぇ、和泉さん」
「ほんと! とっても綺麗です!!」
と言いながら、笑顔で近づいてきた。
なんと返せば良いのか、茫然としていると二人の隣から絢斗さんと呼ばれていた人が、
「本当! 瀬里さん、とってもよく似合うよ!」
と一緒になって褒めてくれる。
「えっ、あっ、ありがとうございます。あの、天沢さんと小石川さんもすっごく綺麗です」
「ありがとう。実は私も気に入ってます」
みんなから綺麗だと言われる経験なんてないから、焦りながらも必死に気持ちを告げると、天沢さんは笑顔を見せてくれた。
「さぁ、せっかくお着替えも終わったし、見せにいきましょうか」
「見せにって……やっぱり、これで外に出るんですか?」
「ええ。当然よ。せっかく着替えしたのに私たちだけしか見られないなんて勿体無いじゃない。ほら、さっき板前の麻生さんも見てみたいって仰ってたでしょう? きっと今頃瀬里さんが出てくるのを待っているはずよ」
麻生さんは社交辞令で言っただけで、そこまで期待はしていないと思うけれど、
「さぁ、行きましょう!」
とグイグイ誘われると、出ないわけにも行かない。
「ああ、そうだわ。瀬里さんのお草履と、千里さんと和泉さんのハイヒールは飯野さんがお庭への入り口に用意してくださっているから、いつでもお外に行けますからね」
「外? いえ、そこまでは――」
「わぁ、じゃあ皆さんと同じようにお庭で撮影できますね。嬉しいです。日南さん、和泉さんもみんなで一緒に写真撮りましょうね」
「えっ、はい……」
少し見せて終わりにしようと思っていたのに、天沢さんがなんだかすごく乗り気でそれに流されてしまう。
貴船さんの着付け方が上手なのかあまり苦しくもなくてホッとするけれど、やっぱり着物は着慣れないからゆっくりしか歩けない。
転んだりしたら目も当てられないと思って、ゆっくり慎重に着替えていた部屋から出るとすぐに
「日南さんっ!」
と呼ぶ声が聞こえた。
「えっ?」
びっくりしてその声の方に視線を向けるとそこには笑顔の麻生さんがいた。
「日南さん綺麗ですね。着物、すごくお似合いですよ」
「――っ、あ、ありがとうございます」
さっと駆け寄ってきたと思ったら、さっと手を差し出してくれて、それがあまりにも自然すぎて思わず手を取ってしまった。
でも、手を握ってもらえただけで格段に歩きやすくなる。
「麻生さんが隣にいてくださったら歩きやすいです」
「そうですか。じゃあ、ずっと一緒にいますから安心してくださいね」
「――っ!! は、はい」
なんだか告白っぽいと思ってしまったことは、僕の心の中だけに留めておこう。
「あ、そういえば天沢さんたちは……」
「千里さんと和泉さんならあちらですよ」
そう教えられた先に視線を向けると、天沢さんの隣には店主の天沢さんが、小石川さんの隣には何故か社長の姿があった。
しかも何故だろう、その距離感がとてつもなく近く見える。
社長が今までに見たことのない笑顔をしているからだろうか?
「えっ? 社長?」
「んっ? ああ、日南。お前は着物にしたのか?」
驚く僕をよそに普通に言葉が返ってきて、それに戸惑ってしまう。
「は、はい。そうですけど……あの……」
いろいろ聞きたいけれど、聞きたいことが多すぎてどこから聞けば良いのかわからない。
チラチラと社長と小石川さんの顔を交互に見ていると、その視線に気付いたのか社長が小石川さんをそっと抱き寄せながら笑顔で教えてくれた。
「ああ、日南にも紹介しておこう。彼は私の恋人だ」
社長の言葉に隣にいる小石川さんがパッと顔を赤らめる。
「――っ、こ、こいびと? ええーっ、本当ですか? いつからですか? もしかして最初から付き合っててここに? なんで何も――」
「ちょっと落ち着け!」
社長の声にハッと我に返ると同時に、
「大丈夫ですか?」
と麻生さんに優しい声をかけられて、スッと気持ちが落ち着いていく。
「は、はい。すみません。思っても見なかったので驚いてしまって……」
「それって、佐久川さんに好意があったからとかそういうことですか?」
「ええっ? それはないですっ! 社長のことをそんなふうに見たことは一度もないです!! 本当です!!」
どうしてだか、絶対に麻生さんには勘違いされたくないと思ってしまって、つい強めに言ってしまった。
「そうですか、それならよかった」
僕の言葉に安心したように笑顔を見せてくれてなんだか不思議な感情が込み上げる。
「えっ? それってどういう……」
「それは後で二人になった時にゆっくりと説明しますね」
「えっ? ええ……」
パチンとウィンクされて、穏やかに言われたらもう頷くことしかできなかった。
「さぁさぁ、立ち話はこの辺にしてせっかくだからみんなが集まっているところに行きましょう」
「そうですね。貴船にも千里の可愛い姿を見せつけてやらないと、一花さんの惚気ばかり聞かされるのは損ですからね」
そう言って、店主の天沢さんがドレス姿の天沢さん……千里さんを連れて歩き出すと、当然のように社長も小石川さんを連れて歩き出し、
「日南さんも行きましょうか」
と麻生さんに手を取られたまま言われて、もうそれに従うしかなかった。
「みなさん、今日の結婚式に尽力してくださったこの方たちにもお着替えしていただいたわ。どうかしら?」
貴船さんが僕たちを紹介すると、部屋にいた招待客の皆さんの視線が一気に注がれる。
「わぁー! とっても綺麗です!!」
いつの間にかドレス姿にお着替えなさっていた新夫さまが一番先に声をかけてくださって、それに続くようにあちらこちらから綺麗! 可愛い! と声が飛んでくる。
あっという間に美人集団に囲まれてドキドキしてしまうけれど、麻生さんは僕の隣で笑顔のままずっと一緒にいてくれた。
* * *
楽しくなってきちゃったのでちょっと10話は超えるかもです。
もう少しお付き合いいただけると嬉しいです♡
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