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番外編
夢か現実か 2
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早々と数字表記に変えました。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
「あ、ああ。宇佐美くん。おはよう」
やっぱり宇佐美くんか。入社二年目ってところかな。
営業部のエースもまだ初々しいな。
「? どうかなさったんですか?」
「えっ? いや、なんでもないよ」
懐かしさに思わずじっくり見てしまった。
慌てて誤魔化したけれど、変に思われたかもしれないな。
「それより今日は早いな。まだ始業時間にはかなりあるぞ」
「えっ……あの、もしかして社交辞令、でしたか?」
「えっ? 社交辞令?」
なんだ? もしかして宇佐美くんと何か約束していた?
五年前……なんか約束してたっけ?
流石に覚えてないな。
必死に記憶を辿っていると宇佐美くんが残念そうな表情でゆっくりと口を開いた。
「あの、杉山主任が最近お気に入りのパン屋さんでパンを買って仕事前に休憩室で食べたら一日頑張って仕事ができるって……それで、僕もパンが好きだって話をしたら、じゃあ一緒に明日買いに行こうって昨日帰る時に誘ってくださったんですけど……」
「お気に入りのパン屋……ああっ!!」
そうだ! 千鶴に教えてもらったシナモンロールが美味しくてハマって通ってたんだ。
今は仕事が忙しくて朝に時間取れなくなって週に一度くらいしか通えなくなっていたけど、この時はほぼ毎日のように通っていたんだ。
「ごめん、ごめん。うっかりしていた。今から買いに行くところだから一緒に行こう!」
声をかけると、さっきまでの寂しげな表情が一気に明るくなった。
「杉山主任がいつも美味しそうに食べているのをこっそり見ていたんで、誘っていただけて嬉しかったんです」
「そうか、今朝はちょっとぼーっとしていて忘れていてごめん」
「いえ、今から連れて行っていただけるなら嬉しいです」
人懐っこいわんこのように笑顔でついてきてくれる宇佐美くんを見ていると、透也の顔が浮かぶ。
やっぱり従兄弟だけあって笑顔が似ているんだよな。
「ここだよ」
「わぁー、こんな場所にパン屋さんがあったなんて知りませんでした」
「私も妹に教えてもらったんだよ」
「へぇ、主任妹さんがいらっしゃるんですね。おいくつですか?」
「双子なんだ。だから同じ二十五歳だよ」
「へぇ、男女の双子なんて珍しいですね。主任が綺麗だから、きっと妹さんも綺麗なんだろうな」
サラッと俺のことを綺麗だなんて言ってくれるけれど、宇佐美くんの方がよっぽど綺麗だ。
華奢で守ってあげたくなるタイプというんだろうか。
この頃の宇佐美くんは女性が恋愛対象だったんだろうけど、この時から逞しい男性に守られる側のような気がするな。
俺はいつものシナモンロールとベーコンエピーのハーフを選ぶと、宇佐美くんは同じシナモンロールとソーセージロールを選んだ。大した金額じゃないからと言って二人分のパン代を支払い、店をでた。
会社に到着し、休憩室の前に置かれた自販機でパンの代わりだと言って、宇佐美くんがコーヒーを買ってくれた。
休憩室に置かれたトースターでパンを温めて二人で食べる。
「んー! これ美味しいですね! このシナモンロール、ピーナッツが入ってて食感が面白いです!」
想像以上に喜んでくれて嬉しい。
あっという間にパン二つを平らげて、コーヒーを飲み干した。
「う、宇佐美くんは兄弟は?」
一人っ子だとわかっていながらそんな質問をしてみた。
もしかしたら透也の話題になるかも……そんな期待をしたからだ。
「僕、一人っ子なんです。でも両親が忙しくて年の近い従兄弟の家で一緒に過ごしていたんで、兄弟みたいなものですね」
「そ、そうなのか。それなら寂しくはなかっただろう」
「そうですね。でも、三つ下の従兄弟は中学生に上がったらすぐに身長抜かれてどんどん体型も逞しくなるし、羨ましかったですよ。まぁ二つ上のお兄ちゃんの方も体格良かったんで、遺伝ですかね」
「三つ下か。じゃあ今は大学生、かな?」
「はい。あの、もし良かったらその大学生の従兄弟にあってもらえませんか?」
「えっ? な、なんで?」
「ずっと僕が仕事ができるすごい人がいるって主任のことを話していたんで会ってみたいって言われてたんです。でも今は業務以外のことを話したらダメかなと思って諦めてたんです。でも今日こうして主任とゆっくり話ができるチャンスができたので……あの、主任……ダメですか?」
「――っ!!!」
ここで透也に会っていいのか?
大学生の透也が俺を好きになるはずがない。
そうしたら俺たちの未来はどうなる?
ここはどうしたらいいんだろう?
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
「あ、ああ。宇佐美くん。おはよう」
やっぱり宇佐美くんか。入社二年目ってところかな。
営業部のエースもまだ初々しいな。
「? どうかなさったんですか?」
「えっ? いや、なんでもないよ」
懐かしさに思わずじっくり見てしまった。
慌てて誤魔化したけれど、変に思われたかもしれないな。
「それより今日は早いな。まだ始業時間にはかなりあるぞ」
「えっ……あの、もしかして社交辞令、でしたか?」
「えっ? 社交辞令?」
なんだ? もしかして宇佐美くんと何か約束していた?
五年前……なんか約束してたっけ?
流石に覚えてないな。
必死に記憶を辿っていると宇佐美くんが残念そうな表情でゆっくりと口を開いた。
「あの、杉山主任が最近お気に入りのパン屋さんでパンを買って仕事前に休憩室で食べたら一日頑張って仕事ができるって……それで、僕もパンが好きだって話をしたら、じゃあ一緒に明日買いに行こうって昨日帰る時に誘ってくださったんですけど……」
「お気に入りのパン屋……ああっ!!」
そうだ! 千鶴に教えてもらったシナモンロールが美味しくてハマって通ってたんだ。
今は仕事が忙しくて朝に時間取れなくなって週に一度くらいしか通えなくなっていたけど、この時はほぼ毎日のように通っていたんだ。
「ごめん、ごめん。うっかりしていた。今から買いに行くところだから一緒に行こう!」
声をかけると、さっきまでの寂しげな表情が一気に明るくなった。
「杉山主任がいつも美味しそうに食べているのをこっそり見ていたんで、誘っていただけて嬉しかったんです」
「そうか、今朝はちょっとぼーっとしていて忘れていてごめん」
「いえ、今から連れて行っていただけるなら嬉しいです」
人懐っこいわんこのように笑顔でついてきてくれる宇佐美くんを見ていると、透也の顔が浮かぶ。
やっぱり従兄弟だけあって笑顔が似ているんだよな。
「ここだよ」
「わぁー、こんな場所にパン屋さんがあったなんて知りませんでした」
「私も妹に教えてもらったんだよ」
「へぇ、主任妹さんがいらっしゃるんですね。おいくつですか?」
「双子なんだ。だから同じ二十五歳だよ」
「へぇ、男女の双子なんて珍しいですね。主任が綺麗だから、きっと妹さんも綺麗なんだろうな」
サラッと俺のことを綺麗だなんて言ってくれるけれど、宇佐美くんの方がよっぽど綺麗だ。
華奢で守ってあげたくなるタイプというんだろうか。
この頃の宇佐美くんは女性が恋愛対象だったんだろうけど、この時から逞しい男性に守られる側のような気がするな。
俺はいつものシナモンロールとベーコンエピーのハーフを選ぶと、宇佐美くんは同じシナモンロールとソーセージロールを選んだ。大した金額じゃないからと言って二人分のパン代を支払い、店をでた。
会社に到着し、休憩室の前に置かれた自販機でパンの代わりだと言って、宇佐美くんがコーヒーを買ってくれた。
休憩室に置かれたトースターでパンを温めて二人で食べる。
「んー! これ美味しいですね! このシナモンロール、ピーナッツが入ってて食感が面白いです!」
想像以上に喜んでくれて嬉しい。
あっという間にパン二つを平らげて、コーヒーを飲み干した。
「う、宇佐美くんは兄弟は?」
一人っ子だとわかっていながらそんな質問をしてみた。
もしかしたら透也の話題になるかも……そんな期待をしたからだ。
「僕、一人っ子なんです。でも両親が忙しくて年の近い従兄弟の家で一緒に過ごしていたんで、兄弟みたいなものですね」
「そ、そうなのか。それなら寂しくはなかっただろう」
「そうですね。でも、三つ下の従兄弟は中学生に上がったらすぐに身長抜かれてどんどん体型も逞しくなるし、羨ましかったですよ。まぁ二つ上のお兄ちゃんの方も体格良かったんで、遺伝ですかね」
「三つ下か。じゃあ今は大学生、かな?」
「はい。あの、もし良かったらその大学生の従兄弟にあってもらえませんか?」
「えっ? な、なんで?」
「ずっと僕が仕事ができるすごい人がいるって主任のことを話していたんで会ってみたいって言われてたんです。でも今は業務以外のことを話したらダメかなと思って諦めてたんです。でも今日こうして主任とゆっくり話ができるチャンスができたので……あの、主任……ダメですか?」
「――っ!!!」
ここで透也に会っていいのか?
大学生の透也が俺を好きになるはずがない。
そうしたら俺たちの未来はどうなる?
ここはどうしたらいいんだろう?
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