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番外編
千鶴たちとの対面 13
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<side大智>
思いがけず真壁さんカップルに出会い、少し話し込んでしまったけれど、あの久代さんのことは頭から離れなかった。
あの雰囲気からして真壁さんと同業者では絶対になさそうだ。
あの人の雰囲気なら、秘書なんかが似合いそう。
そんなことを考えながら歩いていると、
「あ、あそこに長瀬さんと千鶴さんがいますよ」
透也の声にパッと顔を上げた。
見ると、長瀬さんが千鶴を抱き込むように立っていて、千鶴はその腕の中で俺たちに手を振っている。
その二人の姿がものすごく様になっていて、ちょっと見惚れてしまった。
「千鶴たち、いい意味で目立ってるな」
「ええ。そうですね。長瀬さんも千鶴さんも美男美女ですから。お互いに周りには一切目もくれないところもそっくりですね」
あの事件で引きこもっていた頃の千鶴から考えれば、今の状況は幸せでしかない。
本当に長瀬さんと出会えてよかったな。
「待たせたかな? ごめん」
「ううん。デートを楽しんでいるんだろうと思ったから大丈夫」
「――っ!」
「図星だった?」
ニヤニヤとした笑顔を向けられて恥ずかしくなる。でも確かに楽しかったのは嘘じゃない。
「いや、それもあるけど……ちょっと知り合いに会って立ち話してたから」
「あ、そうなんだ。じゃあ、おに、お姉ちゃんはその格好になってるの、バラしたの?」
「――っ、仕方ないだろ!」
「でも、すごく綺麗だって褒められたんですよ。大智だとも全然気づかれてなかったくらいで」
照れる俺の横で透也が説明をしてくれるけれど、もう恥ずかしくて話題を変えたい。
「ちょっ、もういいよ。その話は。それよりお店ってどこだ? それとも今から探すのか?」
「ううん。前に理人さんに連れて行ってもらったすごく美味しいお店がすぐ近くにあって、連絡したら部屋が空いてるって言われたから予約しておいたよ。ねっ、理人さん」
「ええ。お二人ともL.A暮らしなので和食にしようかと思ったんですけど、祥也さんのお店に行かれているならそこまで飢えていないでしょうし、ステーキなんかも飽きているかと思って、その店にしてみたんです」
「へぇー、和食でも洋食でもないってことかな」
「それならあの店かな? この近くだし」
「多分、そうです。行きましょうか」
透也は料理の種類だけでなく店までもわかったみたいだ。
俺はこの辺であんまり食事をしたことがなかったから全くわからないな
でも千鶴が美味しいって言ってるし、透也も知っているならきっと美味しいはずだ。楽しみだな。
「ここですよ」
案内されたのは、中華料理店。
しかも入り口からしてかなり高級そうな佇まいにちょっと尻込みしてしまう。
「なんか、すごそうだけど……」
「見た目は派手ですけど、結構リーズナブルなんですよ。さぁ、行きましょうか」
長瀬さんに言われてみんなで一緒に中に入ると、すぐに黒服のスタッフがやってきて個室に案内してくれる。
四人で円卓を囲んで座るとなんだか楽しくなってきた。
テーブルや室内の様子に気を取られている間に、透也と長瀬さんがさっと料理を注文してくれていた。
「透也、あんまり辛くないのにしてくれた?」
「大丈夫ですよ。ここは広東料理ですから全体的にそこまで辛いものはありませんから」
そう言われてホッとする。
まぁ、そうか。俺より辛いのが苦手な千鶴が食べられるくらいだ。
料理が来るのが楽しみだな。
そう思っている間に次々と料理が運ばれて、円卓が料理でいっぱいになる。
シャンパンもやってきて、みんなで乾杯をすることにした。
音頭をとるのはもちろん透也。
「長瀬さん、千鶴さん。結婚おめでとう。これからも末長くお幸せに。乾杯!」
千鶴と長瀬さんはその言葉に嬉しそうに顔を見合わせて笑っていた。
妹のこんな幸せそうな顔を見られて俺は幸せだ。
「んー! この海老美味しい!」
「お兄ちゃん、こっちの鮑も美味しいよ」
「うわ! すごいな。これ!」
テーブルにある料理の全てが美味しくて箸が止まらない。
考えてみたら、ここ数ヶ月。中華なんて口にしてなかった気がする。
日本に来て中華を堪能して喜んでいるのもなんとなく変な感じはするけれど、でも美味しいからいいか。
思いがけず真壁さんカップルに出会い、少し話し込んでしまったけれど、あの久代さんのことは頭から離れなかった。
あの雰囲気からして真壁さんと同業者では絶対になさそうだ。
あの人の雰囲気なら、秘書なんかが似合いそう。
そんなことを考えながら歩いていると、
「あ、あそこに長瀬さんと千鶴さんがいますよ」
透也の声にパッと顔を上げた。
見ると、長瀬さんが千鶴を抱き込むように立っていて、千鶴はその腕の中で俺たちに手を振っている。
その二人の姿がものすごく様になっていて、ちょっと見惚れてしまった。
「千鶴たち、いい意味で目立ってるな」
「ええ。そうですね。長瀬さんも千鶴さんも美男美女ですから。お互いに周りには一切目もくれないところもそっくりですね」
あの事件で引きこもっていた頃の千鶴から考えれば、今の状況は幸せでしかない。
本当に長瀬さんと出会えてよかったな。
「待たせたかな? ごめん」
「ううん。デートを楽しんでいるんだろうと思ったから大丈夫」
「――っ!」
「図星だった?」
ニヤニヤとした笑顔を向けられて恥ずかしくなる。でも確かに楽しかったのは嘘じゃない。
「いや、それもあるけど……ちょっと知り合いに会って立ち話してたから」
「あ、そうなんだ。じゃあ、おに、お姉ちゃんはその格好になってるの、バラしたの?」
「――っ、仕方ないだろ!」
「でも、すごく綺麗だって褒められたんですよ。大智だとも全然気づかれてなかったくらいで」
照れる俺の横で透也が説明をしてくれるけれど、もう恥ずかしくて話題を変えたい。
「ちょっ、もういいよ。その話は。それよりお店ってどこだ? それとも今から探すのか?」
「ううん。前に理人さんに連れて行ってもらったすごく美味しいお店がすぐ近くにあって、連絡したら部屋が空いてるって言われたから予約しておいたよ。ねっ、理人さん」
「ええ。お二人ともL.A暮らしなので和食にしようかと思ったんですけど、祥也さんのお店に行かれているならそこまで飢えていないでしょうし、ステーキなんかも飽きているかと思って、その店にしてみたんです」
「へぇー、和食でも洋食でもないってことかな」
「それならあの店かな? この近くだし」
「多分、そうです。行きましょうか」
透也は料理の種類だけでなく店までもわかったみたいだ。
俺はこの辺であんまり食事をしたことがなかったから全くわからないな
でも千鶴が美味しいって言ってるし、透也も知っているならきっと美味しいはずだ。楽しみだな。
「ここですよ」
案内されたのは、中華料理店。
しかも入り口からしてかなり高級そうな佇まいにちょっと尻込みしてしまう。
「なんか、すごそうだけど……」
「見た目は派手ですけど、結構リーズナブルなんですよ。さぁ、行きましょうか」
長瀬さんに言われてみんなで一緒に中に入ると、すぐに黒服のスタッフがやってきて個室に案内してくれる。
四人で円卓を囲んで座るとなんだか楽しくなってきた。
テーブルや室内の様子に気を取られている間に、透也と長瀬さんがさっと料理を注文してくれていた。
「透也、あんまり辛くないのにしてくれた?」
「大丈夫ですよ。ここは広東料理ですから全体的にそこまで辛いものはありませんから」
そう言われてホッとする。
まぁ、そうか。俺より辛いのが苦手な千鶴が食べられるくらいだ。
料理が来るのが楽しみだな。
そう思っている間に次々と料理が運ばれて、円卓が料理でいっぱいになる。
シャンパンもやってきて、みんなで乾杯をすることにした。
音頭をとるのはもちろん透也。
「長瀬さん、千鶴さん。結婚おめでとう。これからも末長くお幸せに。乾杯!」
千鶴と長瀬さんはその言葉に嬉しそうに顔を見合わせて笑っていた。
妹のこんな幸せそうな顔を見られて俺は幸せだ。
「んー! この海老美味しい!」
「お兄ちゃん、こっちの鮑も美味しいよ」
「うわ! すごいな。これ!」
テーブルにある料理の全てが美味しくて箸が止まらない。
考えてみたら、ここ数ヶ月。中華なんて口にしてなかった気がする。
日本に来て中華を堪能して喜んでいるのもなんとなく変な感じはするけれど、でも美味しいからいいか。
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