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番外編
千鶴たちとの対面 9
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10話で終われるか微妙になってきました(汗)
でも楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
その声に奥の部屋に続く扉を見ると、満面の笑みを浮かべた千鶴さんが立っていた。
「あれ? 大智は?」
「ほら、お兄ちゃん。私の後ろに隠れないで! 透也さんが待ってるよ」
「わっ、ちょっ――!」
確かに大智の声が聞こえる。
千鶴さんの後ろに隠れているなんて一体何をしているんだろう?
不思議に思いながら見ていると、千鶴さんの影から押し出されるように飛び出してきた人が見えた。
「えっ? だ、いち?」
顔を真っ赤にしながら現れたのは、ライムイエローのワンピースが肌色によく似合っている、正真正銘大智の姿だった。
「あの、その格好は……?」
「いや、だから、その……」
俺の質問に答えあぐねていた大智の隣から千鶴さんが嬉しそうに口を開いた。
「私がお兄ちゃんよりも年上に見えるのはメイクをしているせいだってわかってもらおうと思って、お兄ちゃんにメイクをしてみたんです。それでせっかくなら服も全部着替えちゃおうかなって。試してみたんですけど、どうですか? お兄ちゃん、すっごく美人でしょう?」
なるほど。そうか。メイクしているから大人っぽく見えていた。
それは確かにある! 千鶴さんがすっぴんなら絶対に大智より若く見えるだろう。
けれど、そこで千鶴さんがすっぴんを見せるのではなく、大智にメイクをするなんてさすがだ。
だって、大智は家族だからともかく、俺が千鶴さんのすっぴんを見るのは長瀬さんもいい気持ちはしないだろう。
それを考えれば大智がメイクをするのが一番いい方法だ。
でも、こんなに可愛いワンピースまで着せるなんて……。千鶴さん、どうやって大智を説得したんだろう?
すごすぎる。さすが双子だな。
大智のこんな可愛い顔も格好も長瀬さんにみられたのは少々勿体無い気もするが、千鶴さんが変身させてくれたんだからそこは寛大にならないとな。
それにしても……大智が可愛すぎる。
もし大智が女性に生まれていても確実に好きになっていたのは間違いない。
結局のところ、俺は男性であろうが女性であろうが、大智しか好きにならないってことなんだろうな。
あまりの可愛さに茫然としながら大智を見つめていると、
「やっぱり、似合わないよな……」
大智の哀しげな声が聞こえた。
「えっ? あっ、ちがっ――!」
「いいよ。無理しなくて」
「本当に違うんです!! 大智があまりにも綺麗すぎて言葉が出なかっただけです。本当です。俺……こんなにドキドキしてますよ」
涙を潤ませる大智の手をとって俺の胸に触れさせると、いつもより早い鼓動に大智が目を丸くする。
「これ……ほん、とう?」
「――っ、ええ。本当です」
いつもよりも大きく見える目に見つめられてさらにドキドキしてしまう。
いつだって俺を興奮させるのは大智だけだ。
「俺、メイクしたら高校生には見えてないよな?」
「ええ。もちろんです。俺と歩いてても犯罪には思われませんよ」
俺の言葉に大智はようやく笑顔を見せてくれた。
「それにしてもメイクをして女性の格好をしていると、千鶴さんに似てますね」
「そうか?」
「ええ。一卵性だと言ってもばれないと思いますよ」
きっと千鶴さんが自分がメイクをするように大智にメイクしたから似ているのかもしれない。
「透也にも見せて俺が年上に見えるってことがわかったし、もう着替えてくるよ」
「えっ? お兄ちゃん、せっかく着替えたのにもうメイク落とすの?」
「だって目的は果たしたし、これ以上女装してても意味ないだろう?」
「せっかくだからこの格好で夜ご飯食べに行こうよ」
「えっ? やだよ。どこでバレるかわかんないんだぞ」
千鶴さんの誘いに大智は何を言っているんだとばかりに即答で断った。
「大丈夫だって。ほら、お兄ちゃんさっき言ってたじゃない。日本でも透也さんとくっついて歩きたいって」
「ちょっ――! 千鶴っ! それはいうなって!」
まさか大智がそんなことを言ってくれるとは思わなかったけれど、大智の慌てた様子を見ると本当のようだ。
「大智、本当なんですか?」
「あ、いや……」
「お兄ちゃん、素直になったほうがいいよ」
「――っ、わかったよ。本当だよ。千鶴と長瀬さんが羨ましいなって思ってた」
「大智……っ、そう言ってくれて嬉しいですよ。でも俺は大智が普段の格好でも気にしませんよ」
「わかってる。でも俺が気にしすぎてるだけなんだ」
大智の気持ちはよくわかる。日本でずっと隠してきたんだから急にアメリカと同じようには過ごせないだろう。
「じゃあせっかくですし、このまま出かけましょうか」
「いいのか? 途中でバレたら俺だけじゃなくて透也も恥をかくぞ」
「大丈夫です。絶対にバレませんよ」
「わかった。じゃあ、そうしようか」
俺たちの話が決まったところで、千鶴さんと長瀬さんも出かける準備を始めるみたいだ。
「あ、そういえばお兄ちゃんの靴がないから途中で靴屋さんに寄らないとね。サンダルとかミュールならある程度サイズがあっていれば履けるよ」
「それならこの前千鶴さんの靴を買ったところに行きましょう。あそこならたくさん種類がありますよ」
というわけで夕食の前に靴屋に寄ることになった。
愛しい大智のために靴を探しに行くなんてまるでシンデレラみたいだな。
でも楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
その声に奥の部屋に続く扉を見ると、満面の笑みを浮かべた千鶴さんが立っていた。
「あれ? 大智は?」
「ほら、お兄ちゃん。私の後ろに隠れないで! 透也さんが待ってるよ」
「わっ、ちょっ――!」
確かに大智の声が聞こえる。
千鶴さんの後ろに隠れているなんて一体何をしているんだろう?
不思議に思いながら見ていると、千鶴さんの影から押し出されるように飛び出してきた人が見えた。
「えっ? だ、いち?」
顔を真っ赤にしながら現れたのは、ライムイエローのワンピースが肌色によく似合っている、正真正銘大智の姿だった。
「あの、その格好は……?」
「いや、だから、その……」
俺の質問に答えあぐねていた大智の隣から千鶴さんが嬉しそうに口を開いた。
「私がお兄ちゃんよりも年上に見えるのはメイクをしているせいだってわかってもらおうと思って、お兄ちゃんにメイクをしてみたんです。それでせっかくなら服も全部着替えちゃおうかなって。試してみたんですけど、どうですか? お兄ちゃん、すっごく美人でしょう?」
なるほど。そうか。メイクしているから大人っぽく見えていた。
それは確かにある! 千鶴さんがすっぴんなら絶対に大智より若く見えるだろう。
けれど、そこで千鶴さんがすっぴんを見せるのではなく、大智にメイクをするなんてさすがだ。
だって、大智は家族だからともかく、俺が千鶴さんのすっぴんを見るのは長瀬さんもいい気持ちはしないだろう。
それを考えれば大智がメイクをするのが一番いい方法だ。
でも、こんなに可愛いワンピースまで着せるなんて……。千鶴さん、どうやって大智を説得したんだろう?
すごすぎる。さすが双子だな。
大智のこんな可愛い顔も格好も長瀬さんにみられたのは少々勿体無い気もするが、千鶴さんが変身させてくれたんだからそこは寛大にならないとな。
それにしても……大智が可愛すぎる。
もし大智が女性に生まれていても確実に好きになっていたのは間違いない。
結局のところ、俺は男性であろうが女性であろうが、大智しか好きにならないってことなんだろうな。
あまりの可愛さに茫然としながら大智を見つめていると、
「やっぱり、似合わないよな……」
大智の哀しげな声が聞こえた。
「えっ? あっ、ちがっ――!」
「いいよ。無理しなくて」
「本当に違うんです!! 大智があまりにも綺麗すぎて言葉が出なかっただけです。本当です。俺……こんなにドキドキしてますよ」
涙を潤ませる大智の手をとって俺の胸に触れさせると、いつもより早い鼓動に大智が目を丸くする。
「これ……ほん、とう?」
「――っ、ええ。本当です」
いつもよりも大きく見える目に見つめられてさらにドキドキしてしまう。
いつだって俺を興奮させるのは大智だけだ。
「俺、メイクしたら高校生には見えてないよな?」
「ええ。もちろんです。俺と歩いてても犯罪には思われませんよ」
俺の言葉に大智はようやく笑顔を見せてくれた。
「それにしてもメイクをして女性の格好をしていると、千鶴さんに似てますね」
「そうか?」
「ええ。一卵性だと言ってもばれないと思いますよ」
きっと千鶴さんが自分がメイクをするように大智にメイクしたから似ているのかもしれない。
「透也にも見せて俺が年上に見えるってことがわかったし、もう着替えてくるよ」
「えっ? お兄ちゃん、せっかく着替えたのにもうメイク落とすの?」
「だって目的は果たしたし、これ以上女装してても意味ないだろう?」
「せっかくだからこの格好で夜ご飯食べに行こうよ」
「えっ? やだよ。どこでバレるかわかんないんだぞ」
千鶴さんの誘いに大智は何を言っているんだとばかりに即答で断った。
「大丈夫だって。ほら、お兄ちゃんさっき言ってたじゃない。日本でも透也さんとくっついて歩きたいって」
「ちょっ――! 千鶴っ! それはいうなって!」
まさか大智がそんなことを言ってくれるとは思わなかったけれど、大智の慌てた様子を見ると本当のようだ。
「大智、本当なんですか?」
「あ、いや……」
「お兄ちゃん、素直になったほうがいいよ」
「――っ、わかったよ。本当だよ。千鶴と長瀬さんが羨ましいなって思ってた」
「大智……っ、そう言ってくれて嬉しいですよ。でも俺は大智が普段の格好でも気にしませんよ」
「わかってる。でも俺が気にしすぎてるだけなんだ」
大智の気持ちはよくわかる。日本でずっと隠してきたんだから急にアメリカと同じようには過ごせないだろう。
「じゃあせっかくですし、このまま出かけましょうか」
「いいのか? 途中でバレたら俺だけじゃなくて透也も恥をかくぞ」
「大丈夫です。絶対にバレませんよ」
「わかった。じゃあ、そうしようか」
俺たちの話が決まったところで、千鶴さんと長瀬さんも出かける準備を始めるみたいだ。
「あ、そういえばお兄ちゃんの靴がないから途中で靴屋さんに寄らないとね。サンダルとかミュールならある程度サイズがあっていれば履けるよ」
「それならこの前千鶴さんの靴を買ったところに行きましょう。あそこならたくさん種類がありますよ」
というわけで夕食の前に靴屋に寄ることになった。
愛しい大智のために靴を探しに行くなんてまるでシンデレラみたいだな。
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