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番外編
千鶴たちとの対面 8
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「そういえば、お兄ちゃん……下着ってトランクス? 大きな柄が入ってるとかある?」
クローゼットの影に隠れて着替えを始めていると、突然の千鶴からの質問が来て少し動揺してしまう。いや、普通なら家族の間柄だし恥ずかしがるようなことではない。だけど、今日は、というか今は透也とお揃いのものを身につけているから少し照れくさいのかもしれない。
「えっ? いや、普通にシンプルな黒のボクサーパンツだけど……」
少しドキドキしながら答えてみたら、
「ああ。それならまぁいいか」
という答えが返ってきた。
「何かあるのか?」
「ううん、ワンピースから透けたりするかなってちょっと心配したけど、黒なら大丈夫かなって。ああ、もし下着も女性用にしたかったら新品買ってるけどどうする?」
「えっ? いや、それはさすがに……」
「透也さんが嫉妬するかな。まぁ、必要だったら透也さんに選んで買ってもらおうか」
「な、なんで透也に?」
「だって、今のお兄ちゃんの服装を選んでいるの透也さんでしょう?」
「――っ!」
確かにそうだけど、当然のように言われて驚いてしまう。
「なんでわかるかって顔してるけど、わかるに決まってるじゃない。だってお兄ちゃんによく似合ってるし、透也さんの服ともあってるよ。あれってリンクコーデでしょう?」
やっぱり千鶴は詳しいな。いうこと全部が当たっててもはや何もいえない。
「ねぇ、そろそろ着替えは終わった?」
「あ、ちょっと後ろのファスナーが閉められなくて……」
千鶴と会話をしながらファスナーに悪戦苦闘していたら、
「お兄ちゃん、ちょっといい?」
と千鶴の声が聞こえた。
「背中向けてこっちに立って」
言われた通りに背中を向けるとスーッとファスナーが上がっていくのがわかる。
「うん、サイズは合うみたいだね。よかった」
「そうか?」
サッと振り返ると、
「わぁー、よく似合うよ」
と千鶴の満足そうな声が聞こえた。
「これなら透也さんも喜びそうだね。ねぇ、早く見せに行こう!」
「えっ、ちょっ、待っ――!」
透也の前にこの姿で出る、その覚悟もまだできていないのに俺は千鶴に手を取られて部屋の外に連れて行かれた。
そしてそのまま玄関に連れて行かれると、
「あ、そっか。このワンピースでお兄ちゃんの靴じゃね……。とりあえずこのスリッパ履いてて」
と可愛いスリッパを出されてそれに足を入れた。
「じゃあ、お店に行こう」
もう逃げられない。ドキドキしながら俺は千鶴とともに店に向かう階段を下りて行った。
<side透也>
「透也さん、コーヒーのお代わりどうぞ」
千鶴さんと大智が入っていった店の奥をチラチラとみていると長瀬さんに声をかけられた。
「ありがとうございます」
いつものようにいい香りが漂ってくるけれど、やはり気もそぞろになっているのがわかる。
「きっともうすぐ下りてきますよ」
「ええ。そうなんですけどね。やっぱり落ち着かないですね」
「千鶴さんなりにきっとなんとかしてあげたいと思っているんでしょう。でも本当にあの二人は若く見えますよね」
「やっぱり長瀬さんもそう思いました?」
「ええ。最初に小田切から大智さんの双子の妹さんだと聞いていたので年齢はわかっていたんですけど、実際に顔を見た時には年下としか思えませんでしたよ」
「俺も初めて大智と会った時、大学生と間違えたんですよ」
スタジアムで大智を見つけたとき、本当に日本からの留学生だと思った。
まさか俺がずっと気になっていた相手だとは思わなくて……あの時は本当にびっくりした。
「それで今は高校生、ですか。ふふっ。透也さんのスキンケアのお陰じゃないですか?」
「確かにそれはあるかも。だって、大智は俺と会うまで何も手入れしてなかったんですよ! びっくりでしょう?」
「ええ。千鶴さんも同じですよ。最低限のスキンケアだけであのプルプルでシミひとつない素肌。本当にびっくりですよね」
やっぱり遺伝的なものが強いのか……。
俺はこれからも大智の肌をしっかりと守ってやらないといけないな。
そんな会話をしていると、
「お待たせー」
と千鶴さんの嬉しそうな声が部屋の奥から聞こえてきた。
クローゼットの影に隠れて着替えを始めていると、突然の千鶴からの質問が来て少し動揺してしまう。いや、普通なら家族の間柄だし恥ずかしがるようなことではない。だけど、今日は、というか今は透也とお揃いのものを身につけているから少し照れくさいのかもしれない。
「えっ? いや、普通にシンプルな黒のボクサーパンツだけど……」
少しドキドキしながら答えてみたら、
「ああ。それならまぁいいか」
という答えが返ってきた。
「何かあるのか?」
「ううん、ワンピースから透けたりするかなってちょっと心配したけど、黒なら大丈夫かなって。ああ、もし下着も女性用にしたかったら新品買ってるけどどうする?」
「えっ? いや、それはさすがに……」
「透也さんが嫉妬するかな。まぁ、必要だったら透也さんに選んで買ってもらおうか」
「な、なんで透也に?」
「だって、今のお兄ちゃんの服装を選んでいるの透也さんでしょう?」
「――っ!」
確かにそうだけど、当然のように言われて驚いてしまう。
「なんでわかるかって顔してるけど、わかるに決まってるじゃない。だってお兄ちゃんによく似合ってるし、透也さんの服ともあってるよ。あれってリンクコーデでしょう?」
やっぱり千鶴は詳しいな。いうこと全部が当たっててもはや何もいえない。
「ねぇ、そろそろ着替えは終わった?」
「あ、ちょっと後ろのファスナーが閉められなくて……」
千鶴と会話をしながらファスナーに悪戦苦闘していたら、
「お兄ちゃん、ちょっといい?」
と千鶴の声が聞こえた。
「背中向けてこっちに立って」
言われた通りに背中を向けるとスーッとファスナーが上がっていくのがわかる。
「うん、サイズは合うみたいだね。よかった」
「そうか?」
サッと振り返ると、
「わぁー、よく似合うよ」
と千鶴の満足そうな声が聞こえた。
「これなら透也さんも喜びそうだね。ねぇ、早く見せに行こう!」
「えっ、ちょっ、待っ――!」
透也の前にこの姿で出る、その覚悟もまだできていないのに俺は千鶴に手を取られて部屋の外に連れて行かれた。
そしてそのまま玄関に連れて行かれると、
「あ、そっか。このワンピースでお兄ちゃんの靴じゃね……。とりあえずこのスリッパ履いてて」
と可愛いスリッパを出されてそれに足を入れた。
「じゃあ、お店に行こう」
もう逃げられない。ドキドキしながら俺は千鶴とともに店に向かう階段を下りて行った。
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「透也さん、コーヒーのお代わりどうぞ」
千鶴さんと大智が入っていった店の奥をチラチラとみていると長瀬さんに声をかけられた。
「ありがとうございます」
いつものようにいい香りが漂ってくるけれど、やはり気もそぞろになっているのがわかる。
「きっともうすぐ下りてきますよ」
「ええ。そうなんですけどね。やっぱり落ち着かないですね」
「千鶴さんなりにきっとなんとかしてあげたいと思っているんでしょう。でも本当にあの二人は若く見えますよね」
「やっぱり長瀬さんもそう思いました?」
「ええ。最初に小田切から大智さんの双子の妹さんだと聞いていたので年齢はわかっていたんですけど、実際に顔を見た時には年下としか思えませんでしたよ」
「俺も初めて大智と会った時、大学生と間違えたんですよ」
スタジアムで大智を見つけたとき、本当に日本からの留学生だと思った。
まさか俺がずっと気になっていた相手だとは思わなくて……あの時は本当にびっくりした。
「それで今は高校生、ですか。ふふっ。透也さんのスキンケアのお陰じゃないですか?」
「確かにそれはあるかも。だって、大智は俺と会うまで何も手入れしてなかったんですよ! びっくりでしょう?」
「ええ。千鶴さんも同じですよ。最低限のスキンケアだけであのプルプルでシミひとつない素肌。本当にびっくりですよね」
やっぱり遺伝的なものが強いのか……。
俺はこれからも大智の肌をしっかりと守ってやらないといけないな。
そんな会話をしていると、
「お待たせー」
と千鶴さんの嬉しそうな声が部屋の奥から聞こえてきた。
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