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番外編
運命の相手 <中編>
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前後編で終わらせるつもりが長くなりました(汗)
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
ー大智っ! どうしたんですか?
ーそんな慌ててかけてこなくても。
ー慌てますよ! 俺のこと、千鶴さんに紹介してくれるんですか?
ーああ。千鶴だけじゃなくて、千鶴の相手にも、そしてゆくゆくは父にも祖母にも、透也のことを大事な人だって紹介するつもりだよ。もう家族に隠し事をするのはやめたい。
ー大智……。
ースケジュールを調整して、透也が日本にいる間に俺も日本に行くよ。
ーそれはダメです!
ーえっ? なんで?
ー大智を一人で飛行機に乗せるはずないでしょう。俺が迎えにいきますから一緒に行きましょう。
ーそんなことのためにL.Aを往復するのか?
ーそんなことじゃないですよ。大事なことです。祖父も絶対にそうした方がいいというはずです。来週、都合をつけますから大智を迎えに行きますよ。大智のスケジュールも俺に任せてください。
さすが次期社長。
こうなったらもう止められるはずがない。
ーわかったよ。じゃあ、日本に行く日が決まったら教えてくれ。千鶴に連絡するから。
ーはい。あっ、それで千鶴さんの相手について、大智は聞いたんですか?
ーああ。長瀬さんだって。
ーそうですか、やっぱりうまくいったんだ。良かった。
ー運命の相手だって言ってたから、安心してるよ。それに……
ーそれに?
ー透也や、小田切先生、上田先生、それに顧問弁護士の礒山先生も長瀬さんのコーヒーのファンだって話をしてただろう? そんな人たちがこぞって通うようなコーヒーを淹れる人なら、人間的にも安心だって思えるから。
ー大智……。
ー帰ってきてくれるのを楽しみに待ってる。
ーええ。今回のが終わったら、その後はずっと一緒に暮らせますから。千鶴さんの件で日本に帰って、一緒にL.Aに戻った後はもう当分離れ離れにはなりませんから。
ーやっとだな。楽しみにしてる。
ーええ。俺もですよ。
チュッと電話越しに音が聞こえる。
それが余計に寂しさを増すけれど、何もない方がもっと寂しいから俺もキスを返す。
早く透也と直にキスをしたい。
そう言いたいのを必死に堪えて電話を切った。
そしてその日から数日後……
俺は、透也のいない生活に我慢の限界を迎え始めていた。
夜も熟睡できずにアラームが鳴るよりもずっと早く目が覚めてしまった。
はぁー
大きなため息をつきながら、アラームを解除しておこうとスマホを手に取ると、夜中に送られていたらしい千鶴からのメッセージを見つけた。
<報告したいことがあるので、朝時間があったら連絡ください。もし無理そうなら夜にこちらから連絡します>
報告したいこと?
先に進んだのか、それとも……
いや、そんなことはないだろう。
少し緊張しながらも、電話をかけた。
ーおはよう。千鶴。メッセージ読んだぞ。何かあったか?
いろんな可能性を感じつつも、冷静に問いかけた。
ー前に話していた人……やっぱり、運命の人だったみたい。
ーそれって……
ー長瀬さんと結婚、することになると思う。
結婚?
あまりの展開の速さに正直言って驚きしかないが、もう離れられないと感じたというのなら、ここで反対する意味もない。
父さんにもすでに報告しておめでとうと言ってもらえたのなら、俺がとやかくいうこともない。
ーそれで結婚式とか、ああいや、その前に結納か。いつになる? その時は俺も帰国するよ。
ーそんなのまだわからないよ。今日、お付き合いすることになったばっかりだし。
そう言っているけれど、運命の相手だとお互いに思っていて、結婚を前提に考えているのならすぐにでも決めた方がいい。
女性の場合には妊娠・出産の可能性もあるし、千鶴の年齢なら少しでも早く入籍はしておいた方がいいだろう。
まぁ年齢のことは言わない方が良さそうだ。
ー家族として俺も会っておいたほうがいいだろう。大きな仕事も一段落したし、妹の結婚絡みの用事なら融通も利くからさ。それに……俺も家族に恋人を紹介したいし。
もうすでに透也はスケジュールも調整してくれているだろうし……とは言わないけど。
ーえっ……それって、恋人さんも一緒に来るってこと?
ーああ。もう家族に隠し事をするのはやめようと思ってるんだ。それで認めてもらえなくても俺はもう大人だから。
ーそっか……。
千鶴の反応にやはりという思いが込み上げる。
今までずっと言えなかったこと。
透也に愛されている今なら言える。
ーその反応……やっぱり、千鶴は知ってたんだな? 俺が、その……ゲイだってこと。
ーうん。確証はなかったけど、もしかしたらそうかなって……。多分、おばあちゃんもそうだと思う。
ーやっぱりか。
二人はいつも温かい目で見てくれていた気がしていたもんな。
だけど、
ー多分だけどお父さんも気づいてるんじゃ無いかな? 確証はないだろうけど、同じようにもしかしたらとは思ってたかも。
という言葉には驚いた。
父さんは絶対に気づいていないだろうと思っていたから。
千鶴はすごく楽しそうに俺に相手のことを聞いてきた。
アメリカ人なのかと聞かれたから、同じ社宅で……とは言ったけど、さらに突っ込んで聞いてくる。
直接会った時に話そうと思っていたけど、もういいか。
ーベルンシュトルフホールディングスの、次期社長なんだ。俺の恋人。
そういうと受話器の向こうで息を呑むのを感じた。
さすがに驚いただろう。
だけど透也が運命の相手だったんだというと、
ーお兄ちゃん、おめでとう。よかったね。
と少し涙ぐんだ声で言ってくれた。
千鶴と双子でよかったと心から思える。
電話を切ってすぐに透也に電話をかけた。
ーもしもし、どうしたんですか?
ー千鶴が結婚するって。
ーええ? とんとん拍子ですね。
ーああ、父さんにも報告したっていうから、すぐに顔合わせがありそうだよ。それにはさすがに間に合わないだろうけど、二人に会いに行くのは確定だな。
ーそうですね。俺も今日、大智に連絡しようと思ってたんですけど、今週末そっちに帰って翌日、日本に向かいます。一週間休みを取ったので、その間に千鶴さんたちと会いましょう。
ーすごいな。そんなに休みが取れたのか?
ーええ。だから会えるまであともう少し待っててくださいね。
もうとっくに限界を迎えていた俺のことがわかっているみたいだ。
ーああ。会ったらすぐに抱いてくれ。
ー大智……っ!! その日は寝かせませんから。
その言葉だけを楽しみに俺は週末を待ち続けた。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
ー大智っ! どうしたんですか?
ーそんな慌ててかけてこなくても。
ー慌てますよ! 俺のこと、千鶴さんに紹介してくれるんですか?
ーああ。千鶴だけじゃなくて、千鶴の相手にも、そしてゆくゆくは父にも祖母にも、透也のことを大事な人だって紹介するつもりだよ。もう家族に隠し事をするのはやめたい。
ー大智……。
ースケジュールを調整して、透也が日本にいる間に俺も日本に行くよ。
ーそれはダメです!
ーえっ? なんで?
ー大智を一人で飛行機に乗せるはずないでしょう。俺が迎えにいきますから一緒に行きましょう。
ーそんなことのためにL.Aを往復するのか?
ーそんなことじゃないですよ。大事なことです。祖父も絶対にそうした方がいいというはずです。来週、都合をつけますから大智を迎えに行きますよ。大智のスケジュールも俺に任せてください。
さすが次期社長。
こうなったらもう止められるはずがない。
ーわかったよ。じゃあ、日本に行く日が決まったら教えてくれ。千鶴に連絡するから。
ーはい。あっ、それで千鶴さんの相手について、大智は聞いたんですか?
ーああ。長瀬さんだって。
ーそうですか、やっぱりうまくいったんだ。良かった。
ー運命の相手だって言ってたから、安心してるよ。それに……
ーそれに?
ー透也や、小田切先生、上田先生、それに顧問弁護士の礒山先生も長瀬さんのコーヒーのファンだって話をしてただろう? そんな人たちがこぞって通うようなコーヒーを淹れる人なら、人間的にも安心だって思えるから。
ー大智……。
ー帰ってきてくれるのを楽しみに待ってる。
ーええ。今回のが終わったら、その後はずっと一緒に暮らせますから。千鶴さんの件で日本に帰って、一緒にL.Aに戻った後はもう当分離れ離れにはなりませんから。
ーやっとだな。楽しみにしてる。
ーええ。俺もですよ。
チュッと電話越しに音が聞こえる。
それが余計に寂しさを増すけれど、何もない方がもっと寂しいから俺もキスを返す。
早く透也と直にキスをしたい。
そう言いたいのを必死に堪えて電話を切った。
そしてその日から数日後……
俺は、透也のいない生活に我慢の限界を迎え始めていた。
夜も熟睡できずにアラームが鳴るよりもずっと早く目が覚めてしまった。
はぁー
大きなため息をつきながら、アラームを解除しておこうとスマホを手に取ると、夜中に送られていたらしい千鶴からのメッセージを見つけた。
<報告したいことがあるので、朝時間があったら連絡ください。もし無理そうなら夜にこちらから連絡します>
報告したいこと?
先に進んだのか、それとも……
いや、そんなことはないだろう。
少し緊張しながらも、電話をかけた。
ーおはよう。千鶴。メッセージ読んだぞ。何かあったか?
いろんな可能性を感じつつも、冷静に問いかけた。
ー前に話していた人……やっぱり、運命の人だったみたい。
ーそれって……
ー長瀬さんと結婚、することになると思う。
結婚?
あまりの展開の速さに正直言って驚きしかないが、もう離れられないと感じたというのなら、ここで反対する意味もない。
父さんにもすでに報告しておめでとうと言ってもらえたのなら、俺がとやかくいうこともない。
ーそれで結婚式とか、ああいや、その前に結納か。いつになる? その時は俺も帰国するよ。
ーそんなのまだわからないよ。今日、お付き合いすることになったばっかりだし。
そう言っているけれど、運命の相手だとお互いに思っていて、結婚を前提に考えているのならすぐにでも決めた方がいい。
女性の場合には妊娠・出産の可能性もあるし、千鶴の年齢なら少しでも早く入籍はしておいた方がいいだろう。
まぁ年齢のことは言わない方が良さそうだ。
ー家族として俺も会っておいたほうがいいだろう。大きな仕事も一段落したし、妹の結婚絡みの用事なら融通も利くからさ。それに……俺も家族に恋人を紹介したいし。
もうすでに透也はスケジュールも調整してくれているだろうし……とは言わないけど。
ーえっ……それって、恋人さんも一緒に来るってこと?
ーああ。もう家族に隠し事をするのはやめようと思ってるんだ。それで認めてもらえなくても俺はもう大人だから。
ーそっか……。
千鶴の反応にやはりという思いが込み上げる。
今までずっと言えなかったこと。
透也に愛されている今なら言える。
ーその反応……やっぱり、千鶴は知ってたんだな? 俺が、その……ゲイだってこと。
ーうん。確証はなかったけど、もしかしたらそうかなって……。多分、おばあちゃんもそうだと思う。
ーやっぱりか。
二人はいつも温かい目で見てくれていた気がしていたもんな。
だけど、
ー多分だけどお父さんも気づいてるんじゃ無いかな? 確証はないだろうけど、同じようにもしかしたらとは思ってたかも。
という言葉には驚いた。
父さんは絶対に気づいていないだろうと思っていたから。
千鶴はすごく楽しそうに俺に相手のことを聞いてきた。
アメリカ人なのかと聞かれたから、同じ社宅で……とは言ったけど、さらに突っ込んで聞いてくる。
直接会った時に話そうと思っていたけど、もういいか。
ーベルンシュトルフホールディングスの、次期社長なんだ。俺の恋人。
そういうと受話器の向こうで息を呑むのを感じた。
さすがに驚いただろう。
だけど透也が運命の相手だったんだというと、
ーお兄ちゃん、おめでとう。よかったね。
と少し涙ぐんだ声で言ってくれた。
千鶴と双子でよかったと心から思える。
電話を切ってすぐに透也に電話をかけた。
ーもしもし、どうしたんですか?
ー千鶴が結婚するって。
ーええ? とんとん拍子ですね。
ーああ、父さんにも報告したっていうから、すぐに顔合わせがありそうだよ。それにはさすがに間に合わないだろうけど、二人に会いに行くのは確定だな。
ーそうですね。俺も今日、大智に連絡しようと思ってたんですけど、今週末そっちに帰って翌日、日本に向かいます。一週間休みを取ったので、その間に千鶴さんたちと会いましょう。
ーすごいな。そんなに休みが取れたのか?
ーええ。だから会えるまであともう少し待っててくださいね。
もうとっくに限界を迎えていた俺のことがわかっているみたいだ。
ーああ。会ったらすぐに抱いてくれ。
ー大智……っ!! その日は寝かせませんから。
その言葉だけを楽しみに俺は週末を待ち続けた。
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