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番外編
志摩さんからのメッセージ
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これは『ウブで真面目な理学療法士の初恋のお相手はセレブなイケメン敏腕秘書でした』の
17話目<厄介な奴ら> 18話目<楽しいランチ>の対になるお話です。
未読の方はそちらを読んでいただいた方がわかりやすいかもしれません。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side透也>
「透也、スマホが鳴ってるぞ。メッセージが何件か届いてた」
夕食の後片付けを終えて、食後のコーヒーを落としていると大智がキッチンにスマホを持ってきてくれた。
「画面が見えて、仕事関係みたいだったから急ぎかと思って持ってきたんだ」
「ありがとうございます。誰でした?」
「貴船コンツェルン会長秘書の志摩さん」
「えっ? 志摩さんが? どうしてだろう?」
日本は今日は休日のはず。
しかもこちらが夜だとわかっていて連絡をしてくる方じゃないのに、何か緊急事態だろうか。
「すぐに対応した方がいい。俺は待ってるから」
「ありがとうございます」
二人の時間を過ごしている時に、お互いにスマホは触らないようにしているけれど大智も相手が相手なだけに気になっているのかもしれない。
とりあえずその場でメッセージを開いて読んでみると、その内容に愕然とした。
「どうした? 何か取引上のことか?」
「いいえ、そうではないんですが……うちの社員がとんでもないことをしでかしたみたいです」
「とんでもないこと?」
「はい。少し待ってください。今、志摩さんにメッセージを送ります」
とりあえずすぐに情報を精査してまた連絡する旨を志摩さんに送った。
「証拠の音声が添付されているので一緒に聞いてください」
俺は急いで大智の手を取ってソファーに戻り、メッセージと一緒に添付されていた音声を再生した。
そこからは嫌悪感たっぷりに人を見下した女性の声が聞こえてきた。
ーもしかしてあんたたちってゲイなの? 二人の時間楽しんでるって言ってたわよね?
ーそれが何かあなた方に関係がありますか?
ーぷっ。やっぱりねぇ。私たちが声かけて靡かないなんてそんな人種だと思ったわ。ゲイのくせに堂々と歩いているんじゃないわよ! あんたたちの方がよっぽど邪魔よ!
ーあなた方、ベルンシュトルフホールディングスの社員ですよね?
ーえっ? なんでそれを……
ーあなた方がバッグにつけているそのチャーム、ベルンシュトルフホールディングスの入社記念に配られる非売品でしょう?
ーだからなんだっていうのよ! そうよ! 私たちはあの大企業に勤めているの! だから金持ちなあんたたちなら釣り合うと思ってわざわざ声かけてあげたのよ!
「これ……本当に、うちの社員が? 貴船コンツェルンの志摩さんに?」
「ええ、残念ながらそのようです。これがこの発言をした女性二人の顔写真です」
「あっ、この人たち。確か本社受付の……」
「そうです。ですが、今は備品管理室で消耗品の管理と補充の担当になっています」
「えっ? どうして?」
「遅刻・無断欠勤の常習犯で再三の注意にも改善が見られず、その上、うちにやってくる他社の営業に声をかけてデートに誘うということを繰り返したのでこの時点で解雇にという話になったんですが、反省すると泣いて謝罪をしたのでとりあえず部署異動ということになったんです。但し次に問題行動を起こすようであれば、有無を言わさず懲戒解雇ということで顧問弁護士の礒山先生にもしっかりと書類を作っていただいています」
「そうか……確かに、勤務態度は良くはなかったな。その上、こんな暴言を貴船コンツェルンの方に浴びせるなんて……」
「相手が誰であれ、LGBTQの保護を率先して取り組んでいる弊社の社員がそのような言動を社外で発言していることも問題です。ベルンシュトルフホールディングスの名前を出していますからね。これはうちのイメージを悪くしていますし」
「そうだな。まさか、こんな考えの社員がまだいたとはな……。しかも本社に」
「ええ。私の力不足です」
「透也のせいじゃない。お前はここでよくやっているよ」
「ありがとうございます。とにかくこの女性社員二人はすぐに懲戒解雇の処分を与えるように祖父と父に連絡を入れます」
俺はすぐに祖父に電話をかけた。
ーあっ、じいさん。今いいかな? 実は――
さっきのことを告げると、怒りの表情が電話口からも感じられた。
ーわかった。すぐに雅也と対処する。貴船コンツェルンの志摩さんには処分が決まり次第、私から謝罪の連絡を入れると伝えておいてくれ。
ーわかりました。お願いします。
あまりの怒りの強さに俺は手を出さないほうがいいと思った。
大智や敦己、高遠さんや北原を可愛がっているじいさんからしたら、みんなを傷つけられたも同然だからな。
きっと血の雨が降りそうだ。
おそらくもうあの女性たちが働ける場所はないだろう。
貴船コンツェルンとうちを敵に回してはな。
それにしてもあの志摩さんが、男性の恋人ができたとは……。
驚いたが、少し近寄りやすい存在になったような気はする。
いつか、大智を連れて挨拶に行こうか。
もしかしたら、恋人を紹介してくれるかもしれないな。
「大智、すぐに解決しそうですよ」
そう言って、すっかり冷えてしまったコーヒーをもう一度落とし直し、冷蔵庫からfascinateのケーキを取り出した。
さぁ、夜はまだこれから。
甘い夜の仕切り直しだ。
17話目<厄介な奴ら> 18話目<楽しいランチ>の対になるお話です。
未読の方はそちらを読んでいただいた方がわかりやすいかもしれません。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side透也>
「透也、スマホが鳴ってるぞ。メッセージが何件か届いてた」
夕食の後片付けを終えて、食後のコーヒーを落としていると大智がキッチンにスマホを持ってきてくれた。
「画面が見えて、仕事関係みたいだったから急ぎかと思って持ってきたんだ」
「ありがとうございます。誰でした?」
「貴船コンツェルン会長秘書の志摩さん」
「えっ? 志摩さんが? どうしてだろう?」
日本は今日は休日のはず。
しかもこちらが夜だとわかっていて連絡をしてくる方じゃないのに、何か緊急事態だろうか。
「すぐに対応した方がいい。俺は待ってるから」
「ありがとうございます」
二人の時間を過ごしている時に、お互いにスマホは触らないようにしているけれど大智も相手が相手なだけに気になっているのかもしれない。
とりあえずその場でメッセージを開いて読んでみると、その内容に愕然とした。
「どうした? 何か取引上のことか?」
「いいえ、そうではないんですが……うちの社員がとんでもないことをしでかしたみたいです」
「とんでもないこと?」
「はい。少し待ってください。今、志摩さんにメッセージを送ります」
とりあえずすぐに情報を精査してまた連絡する旨を志摩さんに送った。
「証拠の音声が添付されているので一緒に聞いてください」
俺は急いで大智の手を取ってソファーに戻り、メッセージと一緒に添付されていた音声を再生した。
そこからは嫌悪感たっぷりに人を見下した女性の声が聞こえてきた。
ーもしかしてあんたたちってゲイなの? 二人の時間楽しんでるって言ってたわよね?
ーそれが何かあなた方に関係がありますか?
ーぷっ。やっぱりねぇ。私たちが声かけて靡かないなんてそんな人種だと思ったわ。ゲイのくせに堂々と歩いているんじゃないわよ! あんたたちの方がよっぽど邪魔よ!
ーあなた方、ベルンシュトルフホールディングスの社員ですよね?
ーえっ? なんでそれを……
ーあなた方がバッグにつけているそのチャーム、ベルンシュトルフホールディングスの入社記念に配られる非売品でしょう?
ーだからなんだっていうのよ! そうよ! 私たちはあの大企業に勤めているの! だから金持ちなあんたたちなら釣り合うと思ってわざわざ声かけてあげたのよ!
「これ……本当に、うちの社員が? 貴船コンツェルンの志摩さんに?」
「ええ、残念ながらそのようです。これがこの発言をした女性二人の顔写真です」
「あっ、この人たち。確か本社受付の……」
「そうです。ですが、今は備品管理室で消耗品の管理と補充の担当になっています」
「えっ? どうして?」
「遅刻・無断欠勤の常習犯で再三の注意にも改善が見られず、その上、うちにやってくる他社の営業に声をかけてデートに誘うということを繰り返したのでこの時点で解雇にという話になったんですが、反省すると泣いて謝罪をしたのでとりあえず部署異動ということになったんです。但し次に問題行動を起こすようであれば、有無を言わさず懲戒解雇ということで顧問弁護士の礒山先生にもしっかりと書類を作っていただいています」
「そうか……確かに、勤務態度は良くはなかったな。その上、こんな暴言を貴船コンツェルンの方に浴びせるなんて……」
「相手が誰であれ、LGBTQの保護を率先して取り組んでいる弊社の社員がそのような言動を社外で発言していることも問題です。ベルンシュトルフホールディングスの名前を出していますからね。これはうちのイメージを悪くしていますし」
「そうだな。まさか、こんな考えの社員がまだいたとはな……。しかも本社に」
「ええ。私の力不足です」
「透也のせいじゃない。お前はここでよくやっているよ」
「ありがとうございます。とにかくこの女性社員二人はすぐに懲戒解雇の処分を与えるように祖父と父に連絡を入れます」
俺はすぐに祖父に電話をかけた。
ーあっ、じいさん。今いいかな? 実は――
さっきのことを告げると、怒りの表情が電話口からも感じられた。
ーわかった。すぐに雅也と対処する。貴船コンツェルンの志摩さんには処分が決まり次第、私から謝罪の連絡を入れると伝えておいてくれ。
ーわかりました。お願いします。
あまりの怒りの強さに俺は手を出さないほうがいいと思った。
大智や敦己、高遠さんや北原を可愛がっているじいさんからしたら、みんなを傷つけられたも同然だからな。
きっと血の雨が降りそうだ。
おそらくもうあの女性たちが働ける場所はないだろう。
貴船コンツェルンとうちを敵に回してはな。
それにしてもあの志摩さんが、男性の恋人ができたとは……。
驚いたが、少し近寄りやすい存在になったような気はする。
いつか、大智を連れて挨拶に行こうか。
もしかしたら、恋人を紹介してくれるかもしれないな。
「大智、すぐに解決しそうですよ」
そう言って、すっかり冷えてしまったコーヒーをもう一度落とし直し、冷蔵庫からfascinateのケーキを取り出した。
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