年下イケメンに甘やかされすぎて困ってます

波木真帆

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番外編

可愛い孫ができました  <後編>

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「相変わらず外観だけ見ると、和食屋には見えんな」

「ふふ。そうですね。僕も初めて来たときはびっくりしてしまいました」

「ここにはよく来ているのか?」

「そうですね、透也さんのお弁当がないときは透也さんと一緒に食べに来ていますよ」

なるほど。
ここにも透也の独占欲が現れているな。

「さぁ、目立ちますからさっさと中に入りましょう」

そう言いながら、私から杉山くんをサッと奪い取っていく。
その透也の早技に驚きつつも、車の中でよほど我慢していたのだろうということが窺い知れた。

まぁいい、まだ話す時間はたっぷりとある。
それに今日は祥也の相手にも会えるのだからな。

透也が扉を開け、中に進んでいくと

「いらっしゃいませ」

と杉山くんにも負けず劣らずの可愛らしい声で出迎えられた。

「大夢くん、会長をお連れしましたよ」

「日下部会長。あの、お久しぶりです。お目にかかるのは初めてですね」

「ああ、高遠くんか。いやぁ、君も実に可愛らしいな。会えて嬉しいぞ」

祥也が料理人になりたいと言い出して応援していたが、突然L.Aに店を出すと言い出したときは驚いた。
詳しく話を聞けば、恋人がL.Aに赴任が決まったからだと言っていたから、生前贈与としてL.Aに持っていた家を祥也に譲ったんだ。

その時にお礼の電話をもらって祥也の恋人が男だと知って驚いたが、もちろん反対などしなかった。

祥也には日本に帰国して紹介しろと口酸っぱくなるほど伝えてきたが、店が忙しいだの、高遠くんとの時間調整が難しいだのと拒み続けられて、時折電話で話すのみでビデオ通話すらも拒否されていた。

透也にそれを愚痴れば、かなり溺愛しているから会わせたくないんじゃないかという話だったが、正直にいうとそれが信じられなかったんだ。

だが、透也も同じように男の恋人を見つけ、同じように溺愛しているのを見るとあながちそれも嘘ではないなと思った。
だからこそ、今回こちらに来ることを強行したのだ。

二人にいっぺんに会いに行けば、断りもしないだろうと。

その作戦が功を奏し、今日ようやく二人同時に紹介してもらえることになったのだ。

ああ、これだ。
これが私が孫にと望んでいた子達だ。

いや、祥也も透也ももちろん大事な孫に変わりはないが、可愛い孫への憧れがあることも理解してほしい。

ここに敦己が加われば、もう天国だな。


「じいさん、来て早々何やってるんだ?」

「ああ、祥也。でかしたぞ。まさかこんなに可愛い子を捕まえていたとはな」

「捕まえてって、人聞き悪い。嬉しいのはわかるが、少し離れてくれ」

「せっかく会えたんだから少しくらいゆっくり話しても構わんだろう。なぁ、杉山くん。高遠くん。それともこんなじじのお守りは嫌か?」

「そんなことないです。ゆっくりお話しできたら嬉しいです」

「僕も会長とお話しできるのを楽しみにしていたんですよ」

「おお、そうか。そうか。なら、ゆっくり話すとしよう。おい、祥也。食事と酒を持ってきてくれ。透也も手伝ってこい」

今日は私たちだけの貸切にしてくれているそうだから、従業員も休みのようだ。
ならば、二人に任せて私は二人と楽しく過ごすことにしよう。

「高遠くん、部屋はどこかな? 連れて行ってくれんか?」

「あ、はい。こちらです。どうぞ」

可愛い孫二人に案内されて、部屋に入る。

「さぁ、二人ともこっちに座りなさい」

両隣に二人を座らせると、本当にここが天国じゃないかと思ってしまうほどだ。

「会長はどんなお酒がお好みですか?」

「そうだな、日本酒も好きだがワインもイケるぞ。とそれよりも会長はやめてくれ。おじいさんでも名前でも好きなように呼んでくれ」

二人にならなんと呼ばれてもいいと思っていたが、杉山くんと高遠くんは二人で顔を見合わせて、

「じゃあ、お祖父さまと呼ばせていただきますね。私たちのことも名前で呼んでください」

と言ってくれた。

ああ、お祖父さま……なんと幸せな響きだろう。

「じゃあ、そう呼ばせてもらおう。大智くん、大夢くん。これでいいかな?」

「はい。お祖父さまにそう呼んでいただけると嬉しいです」

ああ、なんて可愛い笑顔なんだ。
本当に二人ともいい相手を捕まえてくれたものだ。

「料理とお酒、持ってきましたよって、じいさん。二人を侍らせて何やってるんだ」

「ゆっくり話をしていただけだ。それよりも聞いてくれ。大智くんと大夢くんが私のことをお祖父さまと呼んでくれるんだぞ」

「えっ? 大智、そうなんですか?」

「ええ。お祖父さまがそう呼ぶことを許してくださったので。ねぇ、大夢くん」

「はい。僕、もう祖父母がいないので、お祖父さまができて嬉しいです」

「おお、そうか。そうか。好きなだけ甘えてくれていいのだぞ。二人とももう私の可愛い孫だからな」

「わぁ、嬉しいです」

この二人に会いに来るだけでもL.Aにくる楽しみができたな。

「このじじに願い事はないか? 可愛い孫になんでも好きなものを買ってやるぞ」

気が大きくなってそう言ったが、冗談などではない。

本当の孫としてなんでもしてやりたいんだ。
彼らが望むなら車でも家でもなんでも買ってやろう。

「あの、じゃあお祖父さま……ひとつお願いがあるんですけど」

「ああ、大智くん。なんでも好きなものを言いなさい」

「今、本社で敦己くんと一緒に働いている北原暁くんという社員がいるんですけど、彼ものすごくいい子なんです。ものすごく頑張っている子なので、日本に帰ったら一緒に食事でもしてあげてもらえませんか? お祖父さまにねぎらっていただければ、彼もさらに頑張れると思うので。それに……暁くんを見たら、お祖父さま。きっと一目で気にいると思いますよ。ねぇ、大夢くん」

「ふふ。そうですね。暁くんは本当に可愛いんですよ。ポメラニアンみたいで一緒にいるだけで癒されます」

「そうか、そんなに可愛らしい子がいるのか。帰国したら早速敦己に声をかけて出かけるとしよう」

「あ、じいさん。暁くんは安慶名さんの後輩弁護士さんの恋人だから、無理やり連れ回さないようにしないと」

「なんだ、そうなのか? なら問題はない。安慶名くんの後輩なら磯山くんの後輩でもあるからな。断るなら磯山くんの名前を出すよ」

少し脅し文句みたいなことを言ったが、もちろん冗談だ。
だが、仮にも会長の誘いなら断らんだろう。

「敦己くんが一緒なら断らないと思いますよ」

「そうか、それなら楽しみだな」

それからも二人を両脇に置いて、楽しい時間を過ごす。
やっぱりここが天国だったな。

隣のテーブルで不貞腐れた顔をしながら兄弟で食事をしているようだが、私をずっと待たせた罰だ。
今日くらいは楽しませてくれていもいいだろう。

「お祖父さま。甘いものは好きですか?」

「ああ、たくさんは食べないが好きだぞ」

「ここの抹茶パフェがとっても美味しいんです。一緒に食べませんか?」

「大夢くんの誘いなら断る理由がないな。よし、みんなで食べよう。祥也、抹茶パフェを持ってきてくれ」

そういうと、渋々といった表情をしながらも作りに行ってくれた。

それからすぐに持ってきた抹茶パフェ。
なるほど、見た目も華やかながら美味しそうだ。

「はい。お祖父さま。あーんしてください」

「ちょ――っ、大智!」

焦る透也をよそに大智くんは私の口に抹茶アイスを運んでくれる。

「ああ、美味しいな。大智くんが食べさせてくれたから格別だな」

「お祖父さま。こっちも食べてください」

「ちょ――っ、大夢までっ!」

焦る祥也を見るのは初めてかもしれないな。
そんな二人を横目に大智くんと大夢くんから何度も食べさせてもらって、大満足だ。

口の中は甘ったるいが、それ以上に幸せで腹一杯だ。
ああ、本当に可愛い孫ができたものだ。

結局その日はホテルをキャンセルして、祥也と大夢くんの家に泊まることになったのだが、翌朝見た大智くんと大夢くんの色気ダダ漏れの姿に、祥也と透也を嫉妬させすぎたことを後悔した。

ああ、敦己と暁くんに会う時はもう少し自制するとしよう。

だが、可愛い孫たちが増えてどこまで我慢できるか、私にも見当がつかないな。
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