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番外編
可愛い孫ができました <中編>
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<side日下部崇也(祥也・透也の祖父)>
ーじいさん、大切な人ができた。
ーお前から電話して来るなんて珍しいこともあるもんだと思ったが、私に話すと言うことは一生を共にする相手ということか?
ーそう思ってもらって構わないよ。
透也のその真剣な声に彼が本気なのだと言うのがひしひしと伝わってきた。
ーそうか。それで誰なんだ?
ーじいさんもよく知っている、杉山大智さんだよ。
ーえっ? 杉山、大智って、敦己の上司のか?
ーああ。そうだよ。
杉山大智……彼は確か透也よりも年上の、しかも男だったはず。
いや、別に性別だけで結婚を反対する気など毛頭ないが、透也が結婚相手に男性を選ぶとは思っていなかった。
だが、透也が就職の際に敦己と同じ職場を希望していたことを思い出した。
あの頃から杉山くんのことを気にかけている様子だったが、あの頃は本人にも会っていなかったはず。
知らず知らずのうちに惹かれていたということだろうか。
それなら、私が反対しても無駄だろう。
いや、それどころか、反対するなら次期社長の座を降りると言い出しかねない。
それだけならまだしも、杉山くんまで連れて出て行くとも言いそうだ。
いや、透也のことだ。
確実にそうするに決まっている。
そして、私は一生敵認定されて、二人に会うことも叶わないだろうな。
そんな未来がありありと見える。
二人を失ってまで反対する意味があるか?
答えはNOだ。
元々孫たちが決めた相手を性別だけで反対することなんてしないのだ。
一生を共にしたい相手に性別なんて関係ないからな。
それよりも我が家にとって悪い人間でないかの方がよほど重要だ。
その点、杉山くんは敦己の指導を任せているだけあって何の心配もない好青年。
今更調査する必要もないほど素晴らしい人間だ。
透也には勿体無いくらいだな。
いや、そんなことをいうと透也が怒るか。
そんなことを一瞬で考えた。
ー彼ならお前の相手には申し分ないな。
ーははっ。じいさんならそう言ってくれると思ったよ。
ーそれでいつ会わせてくれるんだ?
ーそれが、今ちょっと問題が起こっていて……
ー問題? それはなんだ?
ー詳しいことは解決したら話をするよ。磯山さんにも協力を頼むことになるかもしれないんだけど、じいさんは許可してくれるか?
ーそんなことに私の許可はいらないさ。好きにしたらいい。
ーありがとう。問題が解決したらすぐにじいさんにも会わせるから。
ーああ、わかった。楽しみにしているよ。
そんな話をしてから数ヶ月。
透也からの連絡をじっと待ち続けていたが、何の音沙汰もない。
磯山くんにそれとなく尋ねてみたが、問題は疾うに解決したようだ。
彼の後輩たちが透也の力になってくれたようだな。
それなら、連絡が来てもいいだろうに。
まさか忘れているのではあるまいな?
L.A支社の様子をそれとなく調べれば、透也はほとんど杉山くんと行動を共にして楽しい時間を過ごしているらしい。
だが、二人がL.A支社に行ってから業績が鰻登りなのだから何もいえないが。
私へ紹介することも忘れて楽しんでいると思うと面白くはない。
痺れを切らして、直接会いに行くことにした。
透也に電話をかけ、週末にL.Aに行くことを伝えてさっさと電話を切ってやった。
どう返してくるかと思ったが、当日空港まで杉山くんを連れて迎えに来てくれるという。
よし!
最初からこうしていればよかった。
今度の週末はL.Aで私の一緒に楽しい時間を過ごすとするか。
長い飛行時間も楽しみがあると思えばどうってこともない。
寝ている間に到着したようなものだ。
年甲斐もなくウキウキしながら到着ゲートに向かえば、
「あっ、会長!!」
と可愛らしい声が飛んでくる。
ああ、こんな出迎えをされたのはいつぶりだろうか。
飛び上がりそうなほど嬉しくなりながら、杉山くんの元に駆け寄ると、私を労ってくれる言葉をかけてくれる。
ああ、本当に可愛い。
透也、よくぞ彼を射止めてくれたと褒めてやりたいくらいだ。
私と杉山くんが仲良く話しているのを遮るように透也が声をかけてくる。
もう少しゆっくりと話していたいが、周りの視線も気になる。
周りからの邪な視線が杉山くんに注がれているのは面白くない。
私と透也で守るように杉山くんを連れて駐車場に向かった。
透也が荷物を積んでいる間にさっさと杉山くんと後部座席に座る。
案の定文句を言ってきたが、ここまで待たされたんだ。
少しくらいわがままを言ってもいいだろう。
杉山くんとの会話を楽しみながら、車は走り出した。
ルームミラーから透也の視線を感じるが、それは放っておくとしよう。
ーじいさん、大切な人ができた。
ーお前から電話して来るなんて珍しいこともあるもんだと思ったが、私に話すと言うことは一生を共にする相手ということか?
ーそう思ってもらって構わないよ。
透也のその真剣な声に彼が本気なのだと言うのがひしひしと伝わってきた。
ーそうか。それで誰なんだ?
ーじいさんもよく知っている、杉山大智さんだよ。
ーえっ? 杉山、大智って、敦己の上司のか?
ーああ。そうだよ。
杉山大智……彼は確か透也よりも年上の、しかも男だったはず。
いや、別に性別だけで結婚を反対する気など毛頭ないが、透也が結婚相手に男性を選ぶとは思っていなかった。
だが、透也が就職の際に敦己と同じ職場を希望していたことを思い出した。
あの頃から杉山くんのことを気にかけている様子だったが、あの頃は本人にも会っていなかったはず。
知らず知らずのうちに惹かれていたということだろうか。
それなら、私が反対しても無駄だろう。
いや、それどころか、反対するなら次期社長の座を降りると言い出しかねない。
それだけならまだしも、杉山くんまで連れて出て行くとも言いそうだ。
いや、透也のことだ。
確実にそうするに決まっている。
そして、私は一生敵認定されて、二人に会うことも叶わないだろうな。
そんな未来がありありと見える。
二人を失ってまで反対する意味があるか?
答えはNOだ。
元々孫たちが決めた相手を性別だけで反対することなんてしないのだ。
一生を共にしたい相手に性別なんて関係ないからな。
それよりも我が家にとって悪い人間でないかの方がよほど重要だ。
その点、杉山くんは敦己の指導を任せているだけあって何の心配もない好青年。
今更調査する必要もないほど素晴らしい人間だ。
透也には勿体無いくらいだな。
いや、そんなことをいうと透也が怒るか。
そんなことを一瞬で考えた。
ー彼ならお前の相手には申し分ないな。
ーははっ。じいさんならそう言ってくれると思ったよ。
ーそれでいつ会わせてくれるんだ?
ーそれが、今ちょっと問題が起こっていて……
ー問題? それはなんだ?
ー詳しいことは解決したら話をするよ。磯山さんにも協力を頼むことになるかもしれないんだけど、じいさんは許可してくれるか?
ーそんなことに私の許可はいらないさ。好きにしたらいい。
ーありがとう。問題が解決したらすぐにじいさんにも会わせるから。
ーああ、わかった。楽しみにしているよ。
そんな話をしてから数ヶ月。
透也からの連絡をじっと待ち続けていたが、何の音沙汰もない。
磯山くんにそれとなく尋ねてみたが、問題は疾うに解決したようだ。
彼の後輩たちが透也の力になってくれたようだな。
それなら、連絡が来てもいいだろうに。
まさか忘れているのではあるまいな?
L.A支社の様子をそれとなく調べれば、透也はほとんど杉山くんと行動を共にして楽しい時間を過ごしているらしい。
だが、二人がL.A支社に行ってから業績が鰻登りなのだから何もいえないが。
私へ紹介することも忘れて楽しんでいると思うと面白くはない。
痺れを切らして、直接会いに行くことにした。
透也に電話をかけ、週末にL.Aに行くことを伝えてさっさと電話を切ってやった。
どう返してくるかと思ったが、当日空港まで杉山くんを連れて迎えに来てくれるという。
よし!
最初からこうしていればよかった。
今度の週末はL.Aで私の一緒に楽しい時間を過ごすとするか。
長い飛行時間も楽しみがあると思えばどうってこともない。
寝ている間に到着したようなものだ。
年甲斐もなくウキウキしながら到着ゲートに向かえば、
「あっ、会長!!」
と可愛らしい声が飛んでくる。
ああ、こんな出迎えをされたのはいつぶりだろうか。
飛び上がりそうなほど嬉しくなりながら、杉山くんの元に駆け寄ると、私を労ってくれる言葉をかけてくれる。
ああ、本当に可愛い。
透也、よくぞ彼を射止めてくれたと褒めてやりたいくらいだ。
私と杉山くんが仲良く話しているのを遮るように透也が声をかけてくる。
もう少しゆっくりと話していたいが、周りの視線も気になる。
周りからの邪な視線が杉山くんに注がれているのは面白くない。
私と透也で守るように杉山くんを連れて駐車場に向かった。
透也が荷物を積んでいる間にさっさと杉山くんと後部座席に座る。
案の定文句を言ってきたが、ここまで待たされたんだ。
少しくらいわがままを言ってもいいだろう。
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ルームミラーから透也の視線を感じるが、それは放っておくとしよう。
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