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番外編
可愛い孫ができました <前編>
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<side透也>
ーいい加減、杉山くんと会わせてくれてもいいだろう?
夜に突然祖父からの電話で嫌な予感がしたと思ったらやはり面倒な話を持ってきた。
ーなんですか? いきなり。
ーいきなりじゃない! お前が問題が片付くまでと言っていたから、ずっと我慢していたんだ。もうとっくに問題も片付いただろう?
大智の双子の妹である千鶴さんと北原の件もようやく解決した。
北原も完璧に心の傷が消えたわけではないだろうが、新天地で生き生きと仕事をしているし、何より小田切さんの存在が心の支えになっているところが大きい。
先日、小田切さんと北原が千鶴さんの元に顔を出してくれて、ひょんなことからいい出会いがあり、恋人ができそうだという話も届いている。
二人とも辛い思いをしただろうが、これからは幸せになってくれることだろう。
大智は、まだ数年続くここでの赴任生活で楽しそうに仕事をしてくれているのは、俺がそばにいるからだと思いたい。
次期社長として月に一度は日本に帰国しなければいけないが、ずっと離れ離れよりは断然マシだ。
その時は兄貴と高遠さんに大智を任せられるから安心なんだ。
ようやく生活リズムも掴んで平穏な日々を過ごしていたというのに、祖父は痺れを切らしたようだ。
ーわかりましたよ。じゃあ、休暇を調整して伺いますからもうしばらく待ってください。
ーいや、お前に任せておいたらいつになるかわからん。週末そっちにいくから空けておきなさい。
ーえっ? 週末? そんな急にっ!
ー急じゃない! いいか、ちゃんと祥也にも伝えて席をとっておくんだ。わかったな。
そういうと、祖父はこっちの返事も聞かずにさっさと電話を切ってしまった。
ああー、もう最悪だ。
がっくりと項垂れていると、
「透也、電話おわったのか? ってどうした?」
俺の様子に気づいたのか、大智が駆け寄ってきてくれた。
「大智ーっ、すみません……っ!!」
「えっ? 何?」
突然謝罪を始めた俺をみて、あたふたとしていた大智に事の次第を説明すると、
「ああー、なるほど。そういうことか。そんな気にしなくていいよ」
と優しい言葉をかけてくれる。
「でも、今週末は久しぶりにスタジアムで野球観戦して、その後食事でもと予定していたのに……」
こっちの取引先から、年間シートをいつでも使っていいと言われて大智と週末に行こうと計画を立てていたのだ。
俺たちが初めて出会った思い出のスタジアムで大智の喜ぶ顔が見たかったのに……くそっ。
「ふふっ。子どもみたいだな。野球はまた来週でもいけるだろう? レストランも予約しないで行けるところだったしタイミングが良かったんだよ。せっかく会長が来てくださるなら、ちゃんとおもてなししないと」
「そんな気を遣わなくていいですよ」
「そりゃあ、全然気疲れしないかと言われたら嘘になるけれど、会長じゃなくて透也のおじいさんだと思えば、楽しみもあるよ」
「えっ? どうして?」
「だって、可愛い子ども時代の透也の話とかも聞けるかも」
そう言って嬉しそうに笑う大智を見ると、こんなにも愛されているのかと嬉しくなる。
「じゃあ、週末の分、今たっぷりと大智を補充しててもいいですか?」
「ふふっ。いいよ、じゃあ一緒にお風呂入ろうか」
「――っ!! ああ、もう! 大智が可愛すぎるっ!!」
にっこりと微笑む女神のような大智に興奮しまくりの俺は大智を抱きかかえて風呂場に行き、そのまま甘い夜が始まった。
そして、あっという間に週末。
「そろそろお迎えに行ったほうがいいんじゃないか?」
「そうですね。じゃあ、行きましょうか」
空港まで祖父を迎えに行きたいという大智と一緒に空港に向かう。
そして、そのまま兄貴の店に連れていく予定になっている。
高遠さんも一緒だから、大智の緊張も少しは緩和されるはずだ。
到着ゲートで待っている間もあちらこちらからチラチラと大智に視線が向くのを感じるが、当の大智は全くそれに気づいていない。
本当によく今まで無事に過ごしてきたものだ。
絶対に空港に一人で来させてはいけないなと改めて感じさせられた。
「ああー、ちょっと緊張してくるな」
祖父に会うのに緊張しているのか、ほんのりと頬を染めながら到着ゲートを見つめる大智の表情に、周りがどんどん落ちていっているのがわかる。
ああ、もうどれだけ人を魅了するんだろう、この人は。
俺は牽制と威嚇の意味を込めて、到着ゲートを見つめる大智を後ろから覆い隠すように抱きしめた。
「どうした?」
「いえ、そろそろ出てくるかなと思って」
「ああ、そうか」
何事もないように装えば、俺たちの周りでガッカリと項垂れている奴らの存在は大智には全く気づいていないようだ。
こういう時、鈍感なのは助かるのかもしれないな。
「あ、成田便の乗客が出てきたよ!」
最初に出てくるのはファーストクラスの乗客から。
だから間違いなく祖父は最初に出てくるはずだ。
見ていると、三人目に祖父の姿が見えた。
「あっ、会長!!」
大智の嬉しそうな声に祖父も
「杉山くん!!」
と駆け寄ってくる。
「会長、お久しぶりです。長旅でお疲れになったでしょう?」
「いや、杉山くんに会えると思ったら、楽しみであっという間の空の旅だったよ」
「そうですか? ふふっ。それなら良かったです」
「先日までうちの敦己が世話になったな」
「いえ、宇佐美くんに無理に来てもらったのはこちらの方ですよ。おかげで契約もまとまって助かりました。今は本社に戻られて、こっちが大変になっていますよ」
「いやぁ、杉山くんの下でなら私も働きたいものだな」
「ふふっ。そんなこと言ったら本当に働いてもらいますよ」
優しい大智の言葉に祖父も驚くほど笑顔になっている。
祖父のこんな表情、孫の俺でも見たことがないんだが……。
さすが、大智。
こんな短時間にもう、祖父の心を掴んだみたいだ。
「じいさん、ここで立ち話もなんだから車に戻ろう」
「ああ、お前もいたのか。気づかなかったな」
そんなわけないだろうと思いながら、三人で駐車場に向かった。
祖父の持ってきたキャリーケースは俺が運びながら、大智と祖父は会話を楽しんでいる。
くそっ、こんなふうになるか祖父に会わせたくなかったんだ。
なんていったって、俺たち孫の中でも敦己を特に溺愛していた祖父が大智を気に入らないわけがないんだ。
元々、大智がいるからってことで敦己を同じ会社に入れたんだし。
あまり接点はなくても、大智の人柄の良さと営業成績の良さは常に話題になって祖父も気に入っていたし、そんな大智が俺の恋人になったと聞いて、そりゃあ反対もするはずないよな。
祖父は高遠さんも気に入っていた。
さっさと兄貴の店に連れていって、祖父のことは高遠さんに任せよう。
車に荷物を乗せ、大智を助手席に座らせようとすると、もうすでに祖父が大智と後部座席に座っていた。
「あっ、ちょっとじいさん。大智は俺の隣なんだけど……」
「せっかく会えたんだ。少しくらい譲ってくれてもいいだろう。お前は運転に専念しておけ」
そう言って、大智とまた楽しそうに会話を始める。
大智は俺を気にしてくれているけれど、会長だと思っているからかあまり強くは出られないみたいだ。
ここで文句を言っても言い出したら聞かない性格だから余計に意固地になるだろう。
俺ははぁーっと大きなため息をつきながら、車を走らせた。
* * *
タイトル的に会長(おじいさん)視点にしようと思ったのですが、話の都合上透也視点で話が進みます。
後編は会長(おじいさん)視点にできるかな。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
ーいい加減、杉山くんと会わせてくれてもいいだろう?
夜に突然祖父からの電話で嫌な予感がしたと思ったらやはり面倒な話を持ってきた。
ーなんですか? いきなり。
ーいきなりじゃない! お前が問題が片付くまでと言っていたから、ずっと我慢していたんだ。もうとっくに問題も片付いただろう?
大智の双子の妹である千鶴さんと北原の件もようやく解決した。
北原も完璧に心の傷が消えたわけではないだろうが、新天地で生き生きと仕事をしているし、何より小田切さんの存在が心の支えになっているところが大きい。
先日、小田切さんと北原が千鶴さんの元に顔を出してくれて、ひょんなことからいい出会いがあり、恋人ができそうだという話も届いている。
二人とも辛い思いをしただろうが、これからは幸せになってくれることだろう。
大智は、まだ数年続くここでの赴任生活で楽しそうに仕事をしてくれているのは、俺がそばにいるからだと思いたい。
次期社長として月に一度は日本に帰国しなければいけないが、ずっと離れ離れよりは断然マシだ。
その時は兄貴と高遠さんに大智を任せられるから安心なんだ。
ようやく生活リズムも掴んで平穏な日々を過ごしていたというのに、祖父は痺れを切らしたようだ。
ーわかりましたよ。じゃあ、休暇を調整して伺いますからもうしばらく待ってください。
ーいや、お前に任せておいたらいつになるかわからん。週末そっちにいくから空けておきなさい。
ーえっ? 週末? そんな急にっ!
ー急じゃない! いいか、ちゃんと祥也にも伝えて席をとっておくんだ。わかったな。
そういうと、祖父はこっちの返事も聞かずにさっさと電話を切ってしまった。
ああー、もう最悪だ。
がっくりと項垂れていると、
「透也、電話おわったのか? ってどうした?」
俺の様子に気づいたのか、大智が駆け寄ってきてくれた。
「大智ーっ、すみません……っ!!」
「えっ? 何?」
突然謝罪を始めた俺をみて、あたふたとしていた大智に事の次第を説明すると、
「ああー、なるほど。そういうことか。そんな気にしなくていいよ」
と優しい言葉をかけてくれる。
「でも、今週末は久しぶりにスタジアムで野球観戦して、その後食事でもと予定していたのに……」
こっちの取引先から、年間シートをいつでも使っていいと言われて大智と週末に行こうと計画を立てていたのだ。
俺たちが初めて出会った思い出のスタジアムで大智の喜ぶ顔が見たかったのに……くそっ。
「ふふっ。子どもみたいだな。野球はまた来週でもいけるだろう? レストランも予約しないで行けるところだったしタイミングが良かったんだよ。せっかく会長が来てくださるなら、ちゃんとおもてなししないと」
「そんな気を遣わなくていいですよ」
「そりゃあ、全然気疲れしないかと言われたら嘘になるけれど、会長じゃなくて透也のおじいさんだと思えば、楽しみもあるよ」
「えっ? どうして?」
「だって、可愛い子ども時代の透也の話とかも聞けるかも」
そう言って嬉しそうに笑う大智を見ると、こんなにも愛されているのかと嬉しくなる。
「じゃあ、週末の分、今たっぷりと大智を補充しててもいいですか?」
「ふふっ。いいよ、じゃあ一緒にお風呂入ろうか」
「――っ!! ああ、もう! 大智が可愛すぎるっ!!」
にっこりと微笑む女神のような大智に興奮しまくりの俺は大智を抱きかかえて風呂場に行き、そのまま甘い夜が始まった。
そして、あっという間に週末。
「そろそろお迎えに行ったほうがいいんじゃないか?」
「そうですね。じゃあ、行きましょうか」
空港まで祖父を迎えに行きたいという大智と一緒に空港に向かう。
そして、そのまま兄貴の店に連れていく予定になっている。
高遠さんも一緒だから、大智の緊張も少しは緩和されるはずだ。
到着ゲートで待っている間もあちらこちらからチラチラと大智に視線が向くのを感じるが、当の大智は全くそれに気づいていない。
本当によく今まで無事に過ごしてきたものだ。
絶対に空港に一人で来させてはいけないなと改めて感じさせられた。
「ああー、ちょっと緊張してくるな」
祖父に会うのに緊張しているのか、ほんのりと頬を染めながら到着ゲートを見つめる大智の表情に、周りがどんどん落ちていっているのがわかる。
ああ、もうどれだけ人を魅了するんだろう、この人は。
俺は牽制と威嚇の意味を込めて、到着ゲートを見つめる大智を後ろから覆い隠すように抱きしめた。
「どうした?」
「いえ、そろそろ出てくるかなと思って」
「ああ、そうか」
何事もないように装えば、俺たちの周りでガッカリと項垂れている奴らの存在は大智には全く気づいていないようだ。
こういう時、鈍感なのは助かるのかもしれないな。
「あ、成田便の乗客が出てきたよ!」
最初に出てくるのはファーストクラスの乗客から。
だから間違いなく祖父は最初に出てくるはずだ。
見ていると、三人目に祖父の姿が見えた。
「あっ、会長!!」
大智の嬉しそうな声に祖父も
「杉山くん!!」
と駆け寄ってくる。
「会長、お久しぶりです。長旅でお疲れになったでしょう?」
「いや、杉山くんに会えると思ったら、楽しみであっという間の空の旅だったよ」
「そうですか? ふふっ。それなら良かったです」
「先日までうちの敦己が世話になったな」
「いえ、宇佐美くんに無理に来てもらったのはこちらの方ですよ。おかげで契約もまとまって助かりました。今は本社に戻られて、こっちが大変になっていますよ」
「いやぁ、杉山くんの下でなら私も働きたいものだな」
「ふふっ。そんなこと言ったら本当に働いてもらいますよ」
優しい大智の言葉に祖父も驚くほど笑顔になっている。
祖父のこんな表情、孫の俺でも見たことがないんだが……。
さすが、大智。
こんな短時間にもう、祖父の心を掴んだみたいだ。
「じいさん、ここで立ち話もなんだから車に戻ろう」
「ああ、お前もいたのか。気づかなかったな」
そんなわけないだろうと思いながら、三人で駐車場に向かった。
祖父の持ってきたキャリーケースは俺が運びながら、大智と祖父は会話を楽しんでいる。
くそっ、こんなふうになるか祖父に会わせたくなかったんだ。
なんていったって、俺たち孫の中でも敦己を特に溺愛していた祖父が大智を気に入らないわけがないんだ。
元々、大智がいるからってことで敦己を同じ会社に入れたんだし。
あまり接点はなくても、大智の人柄の良さと営業成績の良さは常に話題になって祖父も気に入っていたし、そんな大智が俺の恋人になったと聞いて、そりゃあ反対もするはずないよな。
祖父は高遠さんも気に入っていた。
さっさと兄貴の店に連れていって、祖父のことは高遠さんに任せよう。
車に荷物を乗せ、大智を助手席に座らせようとすると、もうすでに祖父が大智と後部座席に座っていた。
「あっ、ちょっとじいさん。大智は俺の隣なんだけど……」
「せっかく会えたんだ。少しくらい譲ってくれてもいいだろう。お前は運転に専念しておけ」
そう言って、大智とまた楽しそうに会話を始める。
大智は俺を気にしてくれているけれど、会長だと思っているからかあまり強くは出られないみたいだ。
ここで文句を言っても言い出したら聞かない性格だから余計に意固地になるだろう。
俺ははぁーっと大きなため息をつきながら、車を走らせた。
* * *
タイトル的に会長(おじいさん)視点にしようと思ったのですが、話の都合上透也視点で話が進みます。
後編は会長(おじいさん)視点にできるかな。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
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