年下イケメンに甘やかされすぎて困ってます

波木真帆

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家族だから

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「お待たせ――わっ! ごめんっ!」

「わぁっ!!」

何も考えずにリビングに戻ったら、大夢くんと祥也さんがキスしているところを目撃してしまった。
俺の驚きの声にびっくりさせてしまったのか、大夢くんの声も聞こえた。

咄嗟に後ろを向いたけれど、あまりの驚きにドキドキが止まらない。

考えてみたら、他の人がキスしているところ見るの初めてかも……。
一瞬だけだったけど、なんかすごく幸せそうだったな。

俺もあんなふうに透也とキス、してるんだろうか。


「大智さん、もう電話終わったの?」

「えっ、あ、はい」

俺がみてしまったのに全然気にしていない様子で祥也さんが声をかけてくる。

「ふふっ。顔赤いよ」

「それは……」

「ごめん、ごめん。二人っきりになったら我慢できなくて……でも、透也もそうだろう?」

そう言われたら、会社から帰って二人っきりになった途端、すぐにキスをしてくる透也を思い出す。

「ふふっ。図星みたいだな。恋人なんてみんな一緒だし、それに俺たち家族だから、恥ずかしがったりなんかしなくてもいいだろう?」

「家族だから……?」

「ああ。これからも透也も入れて4人で会うことだって増えるだろうし、それこそ旅行なんかにも行くこともあるかも。その間、キスはともかく、手を繋いだりイチャイチャもしないつもり? 俺は別に大夢と愛し合っているのを隠すつもりもないし、別に大智さんと透也がスキンシップ取ってても別に気にしないけど」

「そう言われれば……そうかも……」

「ふふっ。なら、恥ずかしがることもないよ。大体、仲がいいって良い事だろう?」

祥也さんに次々に言われると、それが正しいのかもという気になってくる。
確かにキスシーンはびっくりしちゃったけど、見慣れないだけかもしれないし。
他にイチャイチャしているのは気にならないしな。
見慣れてくるとキスしてても気にならなくなってくるのかもしれないな。

「ほら、中に入って」

持っていた空のお皿を俺の手から受け取ると、俺をリビングに行かせてくれた。

まだ少し顔の赤い大夢くんが座っているソファーの隣に腰を下ろすと、

「すみません、大智さん……」

と謝られてしまった。

「いや、気にしないでいいよ。見慣れなくてびっくりしちゃったけど、ここは大夢くんたちのお家だし、それに俺たち家族だから、ね」

「家族……はい、そうですね。大智さんと家族になれて嬉しいです!」

「ふふっ。俺もだよ。俺はずっとゲイなのを隠して生きてきたから、両親の前でもいつかバレるんじゃないかって緊張してたし」

「そう、だったんですか。じゃあ、ずっと一人で?」

「うーん、双子の妹と母方の祖母は多分薄々勘付いていたかも。口に出されたことはないけど、あの二人がいる時はちょっと楽に息ができてたかもな」

「そうなんですね。そういう人がいるだけで少しは違いますよね。僕は自分がゲイだって結構早くわかってて、中学生の時に母親にバレたんですけど……それからは結構大変でした。母親はそういうのを認めたくないタイプだったみたいで、そこからは家の中では空気みたいに扱われてて……それで大学に入ると同時に家を出たんですよ。もうそこからずっと実家には帰ってません」

「そうだったのか……苦しかったな」

大夢くんにそんな過去があったなんて……俺と違って順風満帆だとばかり思っていた。
だからこっちで働きたいという気持ちも強かったのかもしれないな。
俺が宏樹から離れたくてこっちに来たみたいに、大夢くんもここで家族から離れて第二の人生を歩みたかったのかも。

「そうですね、でも……祥也さんと出会って、今はこうやって幸せですから。大智さんみたいな家族もできましたし」

そう言って俺に優しい笑顔を向けてくれた瞬間、大夢くんの後ろから祥也さんがぎゅっと抱きしめた。

「わっ! 祥也さんっ、びっくりした」

「大夢が可愛い顔を大智さんに見せてるから嫉妬したんだ」

「嫉妬って……」

困った表情をしながらも、祥也さんから離れようとしない。
きっと嫉妬されて嬉しいんだな。

もし、これが俺なら……うん、離れないな。

「祥也さん……」

「ああ、いいよ。俺のことは気にしないで。それよりもちょっと大夢くんに聞きたいことがあったんだ」

「僕に聞きたいこと、ですか?」

「ああ。笹川コーポレーションにいた北原暁くんって知ってるかな?」

「えっ、はい。もちろんです。ものすごく優秀な事務員ですよ。彼がいるから、僕は安心してベルンシュトルフへの転職を決めたんです。でもどうして大智さんが彼のことを?」

「実は、彼が近々ベルンシュトルフの本社で働くことに決まったらしいんだ」

「えっ? 本社で? どうしてですか?」

そこが、気になるのは当然だよな。
とりあえず彼が被害者だということは伏せて話をしておくとしよう。

「実は――――」

俺は、笹川コーポレーションで不祥事が相次ぎ、ベルンシュトルフが吸収合併したこと、それに伴い透也が彼の実力を買って本社に配属するのを決めたと話をした。

「そうだったんですか。あまりにも突然のことで驚きましたけど、北原くんが本社に行くなら納得です。本当に彼の作る資料は素晴らしいですから」

「そうなんだ、大夢くんがそこまでいうなら本当にすごいんだろうな。それで、透也が本社に配属されるまで、彼をL.A支社に来させて働かせたいって話をしてて今度の三連休に北原くんを連れてくるみたいなんだよ。大夢くん、彼を頼んでもいいかな? 大夢くんなら一緒に働いていた仲だし、北原くんも安心すると思うんだ」

「それは全然構いませんよ。むしろ、北原くんと少しの間でも働けるなら楽しみです。あ、でも一人で来るんですか?」

「いや、それが恋人と一緒に来るらしいよ」

「えっ? 短期間なのに恋人同行ですか? それに北原くんに恋人なんて、いつの間に……」

大夢くんは北原くんが本社にやってくるということよりも、恋人がいるということに一番の驚きの表情を見せていた。
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