年下イケメンに甘やかされすぎて困ってます

波木真帆

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三連休の過ごし方

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とりあえず、早く祥也さんと電話を代わろうと、サクサクとフォークを口に運んでいると、

ーふふっ。大智、せっかくのケーキだからゆっくり食べていいですよ。

と透也の声が聞こえる。

「えっ、なんで?」

びっくりして、祥也さんを見ると楽しそうな表情で俺にスマホを向けているのが見える。

「ふふっ。気づいた?」

「もしかして、ずっと?」

「ああ。俺だけが二人の可愛いところ見ていたら、透也に文句言われるからな」

「可愛いって……ケーキ食べてただけですよ」

ー大智っ。そんな可愛い顔を兄貴に向けないでください。

「ははっ。大智さん、透也の嫉妬がすごいから、先に電話してきなよ。部屋に案内するから」

ーあっ、部屋に行くならケーキも持って行って!

「大智さん、透也がそう言ってるから持って行って。ケーキは俺が持つから、こっち持って」

スマホを渡され、兄弟二人でせっつかれるように、まだ残っていたモンブランの入った皿を持った祥也さんに部屋に案内される。

「今日はここが大智さんの部屋だよ。部屋の説明は後でゆっくり大夢がすると思うから、じゃあごゆっくり」

祥也さんはそういうと、ケーキを二人がけソファーの前にあるテーブルに置いて部屋を出て行った。

豪華なのに、すごく落ち着く空間になんだかホッとする。

ー大智さん。顔を見せてください。

ーあっ、透也。ごめん。

ーいえ、ここ兄貴たちの家の客間ですか?

ーあ、ああ。そうみたい。透也はこの家にきた事あるのか?

ーリビングとかキッチンとかには入ったことありますけど、泊まったことはないのでこの部屋を見るのは初めてですね。

ーそうなのか? お兄さんの家なのに?

ーいや、やっぱり幸せな新婚家庭みたいな家に独り身で行くのは辛いですよ。しかも兄貴が高遠さんとデレデレしているのを見たくないですし。

俺は二人がイチャイチャと楽しそうにしているのを見るのは楽しかったけど、やっぱり兄弟だと違うんだろうか。
考えてみれば、千鶴の新婚家庭に遊びに行くようなものか……。
うーん、千鶴が旦那さんと楽しそうにしているのを見るのはそこまで嫌じゃないけどな。

ーそれはそうと、大智のその家の印象はどうでしたか?

ーえっ? すごくいいよ。庭も広くて隣とも離れているから気楽で良さそうだし。ガレージがリビングから見えるのもいいな。それにインテリアのセンスも良くて……ああ、キッチンも広くて良さそうだった。

ーなるほど。じゃあ、結構良さそうかも。

ーどういう意味だ?

ーふふっ。実は、俺もその近くに狙っている家があるんです。

ーえっ? 本当に?

ーあっ、俺は生前贈与で東京のマンション貰ったんで、日本に帰国してからの家は心配しなくていいですよ。で、そっちで狙っている家なんですけど、賃貸でも買ってもどっちでもいいと言われているので今悩んでたとこなんですよね。どちらにしても中は好きにリノベーションしていいと許可はもらってるので、大智と一緒に一度家を見に行こうと思ってたんです。今度俺がそっちに帰った時に行ってみますか?

ーえっ……それは……。

ー大智は、まだ家はあんまり欲しくない感じですか?

ーいや。欲しいよ! 欲しいけど……たった三日しかいられないなら、できるだけ二人で家で過ごしたいなと思ってたから……。

ー――っ!!!! 大智っ!

ーあっ、ごめん。せっかく透也が――
ー何言ってるんですか!! ああっ、もうっ! どうして今、俺日本にいるんだろうな。

ーえっ? 何? どうした?

ー大智がそんな可愛いことを言うからですよ。俺と二人でいたいんですよね。それって……大智が誘ってくれてるってことでいいですか?

ーえっ……誘っ、ってなんて…………ある、かも。

ーくっ――! ああっもう、そんな可愛い顔で兄貴たちのところに戻らないでくださいよ。ちょっとその色気ダダ漏れの顔が戻るまで、少し話をしましょう。

ー色気って……そんなの透也しか言わないと思うけど……まぁいいや。それで話って?

ーあっ、ケーキ食べながら聞いてください。

なんだかやけにケーキを勧めてくるけど、俺がケーキを食べてるところを見て何が楽しいんだろうな?
不思議だ……。

とりあえず、フォークに一口モンブランを掬って口に運ぶと、画面の中の透也はそれを嬉しそうに見つめながら口を開いた。

ーあの、今回勇気を出してくれた同期の話なんですけど、彼は一足早くベルンシュトルフの本社に配属することにしたんですよ。

ーああ、優秀だって言ってたもんな。うちに来てくれたら助かるよ。話を聞いただけでうちに欲しいなと思っていたから。

ー大智がそう言ってくれると助かります。あの、それで彼……北原っていうんですけど、北原を大智たちに先に紹介したくて、三連休で俺が帰る時に一緒にそっちに連れて行こうと思っているんです。

ーえっ? こっちに? 

ーはい。一応予定では金曜日に着くようにこっちを出発して、大智たちと会わせてから週明けから一週間ほど、そっちで働いてもらおうと思ってるんです。本社で働くいい練習になるかなと思って。

ー透也はいつ帰る予定なんだ?

ー週明け月曜日の早朝便で帰ろうと思っています。

ーそうか……あ、でもこっちに来ている間、彼の家はどうするつもりなんだ? 社宅に空きが出たのか?

ー俺の社宅に泊まってもらうつもりです。俺は大智の部屋に移りますから。

ーああ、なるほど。それならいいな。でも彼一人にするわけにはいかないから。三連休はあまり一緒にいられないか?

ーふふっ。せっかくの大智の誘いを断るわけないでしょう? 大丈夫です、北原と一緒に恋人さんもついてくるから二人にさせておいた方がいいんですよ。

ー恋人さんが? なんで?

ーふふっ。詳しい話はまた後でゆっくりとしますけど。そういうことなので気にしないでください。とりあえず、北原と恋人さんを連れて週末帰りますから。

なんだか情報が多すぎてよくわからないけど、とにかく週末透也が帰ってくることは間違いない。

ーわかったよ。楽しみにしてる。

ー大智……愛してますよ。

ーああ、俺も愛してる。

今回もちょっとイタズラしようかと思ったけど、流石に人の家でやるのは気が引ける。
それがわかっているからか、透也もおとなしく電話を切った。

それにしてもわざわざこっちの支社にまで連れてくるなんて……。
そういえば、大夢くんとは一緒に働いていたんだったな。
彼のことを聞いてみよう。

俺はすっかり空になってしまった皿を持ってリビングに戻った。
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