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俺専属の……
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「心配しないで今はゆっくり寝てください。後で気になることはなんでも話しますから」
まだまだ聞きたいことは山のようにあるけれど、思った以上に身体が疲れているみたいだ。
透也の美味しいご飯も食べさせてもらった後だし、眠くなってきた。
「あの……寝るまで、その……一緒に、いてくれないか?」
「――っ、ええ。喜んで。ゆっくり寝てください」
そう言って俺の隣に身を横たえ、腕の中に入れてくれる。
もう指定席のようにすり寄ると、しっくりくる場所がある。
そこに頭を置くと居心地がいい。
「ああ、ここがいいな」
「苦しくないですか?」
「大丈夫。ぐっすり、寝れ……そう」
そういうが早いか、透也の匂いと温もりに包まれてあっという間に夢の世界に落ちてしまっていた。
お腹が空いて目を覚ますともうお昼はあっという間に過ぎ、15時を回っていた。
「大智、体調はどうですか?」
「たくさん寝たから身体の痛みは大丈夫そう。でもお腹が空いて……」
「ぐっすり眠ってましたからね。ちょうど仕込んでいたビーフシチューができたところですから、食べましょうか」
「えっ、ビーフシチュー?」
その名前を聞いただけで、お腹の音がグゥグゥとなってしまう。
「ふふっ。大智の身体は正直ですね」
音を聞かれて少し恥ずかしくて
「透也の料理が美味しすぎるからいけないんだ」
というと、透也は嬉しそうに笑って俺を抱き上げた。
「たっぷり食べさせてあげますよ」
寝室を出ると、もうすでに美味しそうな匂いがする。
「これ、いつの間に作ったんだ?」
「大智が寝ている間に、少し離れていたんですけど気づかなかったでしょう?」
「全然気づかなかった」
「俺の服を嬉しそうに抱きしめてましたよ」
「――っ!!」
俺……どれだけ透也の匂いが好きなんだよ。
恥ずかしいな。
「恥ずかしがることないですよ。恋人の匂いが好きって当たり前でしょう? 俺だって、大智の匂いにすぐ反応しますから」
心の声が漏れてしまっていることも、もはや透也の中では普通になっているらしい。
当然のように返事を返されて驚いてしまう。
でも、俺の匂いにも反応すると言われたら嫌な気はしない。
「じゃあ、透也も俺の匂いがあったらよく眠れるのか?」
それなら、一時帰国する時には俺の服を渡そうかなと思っていたけれど、
「眠れるというよりは、興奮します」
そんな言葉が耳に飛び込んできて、思わず聞き返してしまった。
「えっ? こう、ふん?」
「はい。大智の匂いに包まれたりしたら興奮するしかないでしょう? さっき抱きしめている時も、大智の匂いが良過ぎて襲ってしまいそうでしたよ」
「――っ、襲って、って……っ」
「当たり前ですよ。初めて愛した人と密着してるんですから」
「我慢しなくてよかったのに……」
「ダメですよ、そんなこと言ったら。明日も明後日も休むことになりますよ」
「あっ、そっか……ごめん」
「ふふっ。大智がそう思ってくれてるだけで嬉しいですよ。今度は週末、たっぷり愛し合いますから大丈夫です」
そう言って、チュッと唇に重ねられる。
週末にまた、あんなに気持ち良くなるんだ……。
知ってしまった分、俺も我慢できないかもしれないな。
今日動けなくてよかったかも。
動けてたら、透也にねだってたかもな。
俺をソファーに座らせると、透也はキッチンでビーフシチューを温め始めた。
本当にマメなんだな。
お兄さん同様に透也も料理人になっても大成しそう。
でもそうしたら会うことは多分なかったはずだし、料理人にならなくてよかったんだと思う。
それに……
「ずっと俺のためだけに作って欲しいしな……」
ポツリと溢れた声に
「いいですよ、一生大智のためだけに作ります」
と声が降ってくる。
慌てて顔を上げると、キッチンにいたはずの透也が目の前に立っていた。
「えっ? いま、の……聞こえ、て……」
「はい。バッチリ聞きましたから、もう訂正できませんよ。俺は大智だけの専属料理人です」
そう自信満々に言い切られると、もう嬉しいしか出てこない。
「じゃあ、俺も透也の料理は全部食べる」
「ふふっ。はい。そうしてください」
そのまま抱き上げられて、膝に乗せられたまま美味しく煮込まれたビーフシチューを食べる。
びっくりするほどお肉もとろとろでこれが家で食べられるなんて信じられないくらいだ。
こんな美味しい料理を俺は一生食べられるのか……。
最高すぎるけど、俺だけの専属料理人って……俺得しかないんじゃないか?
そっと透也を見ると、
「おかわり入れましょうか?」
と嬉しそうに手を差し出した。
「あ、うん。頼む」
「いっぱい作ったので、満足するまで食べてください」
嬉しそうにビーフシチューを皿に盛る透也を見ていると、透也も幸せだと思ってくれているのかなと安心する。
俺が美味しく食べることで幸せだと思ってくれるなら、それでいいか。
たっぷりと二杯も平らげ、ようやくお腹の虫も落ち着いたようだ。
「ふぅ……お腹いっぱい。身体もずいぶん楽になったし、明日は仕事に行けそうだな」
「仕事を待ち望んでいるのは嫌ですけど、まぁ敦己が来るなら準備も必要でしょうしね。でも無理はしないでくださいね」
「わかってる。それより、宇佐美くんには……その、俺たちのことは……?」
「そうですね。大智はどっちがいいですか?」
「今回は短期間で無理してきてもらっているし、話をして気を遣わせるのもどうかと思ってたんだけど……でも……」
「でも?」
「透也が行き帰りに送迎してくれるなら、いずれバレるんじゃないかって……。それに高遠くんはもちろん、金沢さんたちにももう知れ渡ってそうだし、隠してても噂話で知られるならちゃんと説明しておいた方が誤解はなくなるかもと思うんだけど……」
「ふふっ。いろいろと考えていてくれたんですね。嬉しいです。でも金沢さんは気にしなくていいですよ」
「えっ? なんで?」
「高遠さんに大智が休みを取るって連絡を入れた時に話してたんです。金沢さん、旦那さんが急遽日本支社に転勤が決まったそうで、その準備のために辞めると連絡があったそうなんです」
「それは、また急だな……」
金沢さんはアメリカ暮らしに憧れて外資系のサラリーマンと結婚したんだって女性社員たちと話しているのを聞いたことがある。
ようやく海外赴任になったからついてきたって話していたから、今頃残念がってるだろうな。
俺としてはあの嫌悪感の混じった声にショックを受けていたから、もう会わずに済んで少しホッとしているけど……。
そんなこと思っちゃいけないな。
まだまだ聞きたいことは山のようにあるけれど、思った以上に身体が疲れているみたいだ。
透也の美味しいご飯も食べさせてもらった後だし、眠くなってきた。
「あの……寝るまで、その……一緒に、いてくれないか?」
「――っ、ええ。喜んで。ゆっくり寝てください」
そう言って俺の隣に身を横たえ、腕の中に入れてくれる。
もう指定席のようにすり寄ると、しっくりくる場所がある。
そこに頭を置くと居心地がいい。
「ああ、ここがいいな」
「苦しくないですか?」
「大丈夫。ぐっすり、寝れ……そう」
そういうが早いか、透也の匂いと温もりに包まれてあっという間に夢の世界に落ちてしまっていた。
お腹が空いて目を覚ますともうお昼はあっという間に過ぎ、15時を回っていた。
「大智、体調はどうですか?」
「たくさん寝たから身体の痛みは大丈夫そう。でもお腹が空いて……」
「ぐっすり眠ってましたからね。ちょうど仕込んでいたビーフシチューができたところですから、食べましょうか」
「えっ、ビーフシチュー?」
その名前を聞いただけで、お腹の音がグゥグゥとなってしまう。
「ふふっ。大智の身体は正直ですね」
音を聞かれて少し恥ずかしくて
「透也の料理が美味しすぎるからいけないんだ」
というと、透也は嬉しそうに笑って俺を抱き上げた。
「たっぷり食べさせてあげますよ」
寝室を出ると、もうすでに美味しそうな匂いがする。
「これ、いつの間に作ったんだ?」
「大智が寝ている間に、少し離れていたんですけど気づかなかったでしょう?」
「全然気づかなかった」
「俺の服を嬉しそうに抱きしめてましたよ」
「――っ!!」
俺……どれだけ透也の匂いが好きなんだよ。
恥ずかしいな。
「恥ずかしがることないですよ。恋人の匂いが好きって当たり前でしょう? 俺だって、大智の匂いにすぐ反応しますから」
心の声が漏れてしまっていることも、もはや透也の中では普通になっているらしい。
当然のように返事を返されて驚いてしまう。
でも、俺の匂いにも反応すると言われたら嫌な気はしない。
「じゃあ、透也も俺の匂いがあったらよく眠れるのか?」
それなら、一時帰国する時には俺の服を渡そうかなと思っていたけれど、
「眠れるというよりは、興奮します」
そんな言葉が耳に飛び込んできて、思わず聞き返してしまった。
「えっ? こう、ふん?」
「はい。大智の匂いに包まれたりしたら興奮するしかないでしょう? さっき抱きしめている時も、大智の匂いが良過ぎて襲ってしまいそうでしたよ」
「――っ、襲って、って……っ」
「当たり前ですよ。初めて愛した人と密着してるんですから」
「我慢しなくてよかったのに……」
「ダメですよ、そんなこと言ったら。明日も明後日も休むことになりますよ」
「あっ、そっか……ごめん」
「ふふっ。大智がそう思ってくれてるだけで嬉しいですよ。今度は週末、たっぷり愛し合いますから大丈夫です」
そう言って、チュッと唇に重ねられる。
週末にまた、あんなに気持ち良くなるんだ……。
知ってしまった分、俺も我慢できないかもしれないな。
今日動けなくてよかったかも。
動けてたら、透也にねだってたかもな。
俺をソファーに座らせると、透也はキッチンでビーフシチューを温め始めた。
本当にマメなんだな。
お兄さん同様に透也も料理人になっても大成しそう。
でもそうしたら会うことは多分なかったはずだし、料理人にならなくてよかったんだと思う。
それに……
「ずっと俺のためだけに作って欲しいしな……」
ポツリと溢れた声に
「いいですよ、一生大智のためだけに作ります」
と声が降ってくる。
慌てて顔を上げると、キッチンにいたはずの透也が目の前に立っていた。
「えっ? いま、の……聞こえ、て……」
「はい。バッチリ聞きましたから、もう訂正できませんよ。俺は大智だけの専属料理人です」
そう自信満々に言い切られると、もう嬉しいしか出てこない。
「じゃあ、俺も透也の料理は全部食べる」
「ふふっ。はい。そうしてください」
そのまま抱き上げられて、膝に乗せられたまま美味しく煮込まれたビーフシチューを食べる。
びっくりするほどお肉もとろとろでこれが家で食べられるなんて信じられないくらいだ。
こんな美味しい料理を俺は一生食べられるのか……。
最高すぎるけど、俺だけの専属料理人って……俺得しかないんじゃないか?
そっと透也を見ると、
「おかわり入れましょうか?」
と嬉しそうに手を差し出した。
「あ、うん。頼む」
「いっぱい作ったので、満足するまで食べてください」
嬉しそうにビーフシチューを皿に盛る透也を見ていると、透也も幸せだと思ってくれているのかなと安心する。
俺が美味しく食べることで幸せだと思ってくれるなら、それでいいか。
たっぷりと二杯も平らげ、ようやくお腹の虫も落ち着いたようだ。
「ふぅ……お腹いっぱい。身体もずいぶん楽になったし、明日は仕事に行けそうだな」
「仕事を待ち望んでいるのは嫌ですけど、まぁ敦己が来るなら準備も必要でしょうしね。でも無理はしないでくださいね」
「わかってる。それより、宇佐美くんには……その、俺たちのことは……?」
「そうですね。大智はどっちがいいですか?」
「今回は短期間で無理してきてもらっているし、話をして気を遣わせるのもどうかと思ってたんだけど……でも……」
「でも?」
「透也が行き帰りに送迎してくれるなら、いずれバレるんじゃないかって……。それに高遠くんはもちろん、金沢さんたちにももう知れ渡ってそうだし、隠してても噂話で知られるならちゃんと説明しておいた方が誤解はなくなるかもと思うんだけど……」
「ふふっ。いろいろと考えていてくれたんですね。嬉しいです。でも金沢さんは気にしなくていいですよ」
「えっ? なんで?」
「高遠さんに大智が休みを取るって連絡を入れた時に話してたんです。金沢さん、旦那さんが急遽日本支社に転勤が決まったそうで、その準備のために辞めると連絡があったそうなんです」
「それは、また急だな……」
金沢さんはアメリカ暮らしに憧れて外資系のサラリーマンと結婚したんだって女性社員たちと話しているのを聞いたことがある。
ようやく海外赴任になったからついてきたって話していたから、今頃残念がってるだろうな。
俺としてはあの嫌悪感の混じった声にショックを受けていたから、もう会わずに済んで少しホッとしているけど……。
そんなこと思っちゃいけないな。
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