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想像もつかない

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「じゃあ、乾杯しましょうか」

「えっ? 何に乾杯する?」

ワイングラスを持ち上げながらそう尋ねると、

「それはもちろん、大智さんとの出会いに……」

「――っ」

パチンとウィンクされて、ドキッとしてしまう。
本当に透也くんにはドキドキさせられてばかりだ。

俺ばっかりドキドキするのもな……。
たまには透也くんの慌てる顔が見てみたい。

そんな考えがふと頭をよぎる。

「じゃあ、私も……透也くんとの出会いに……」

同じようにパチンとウィンクしようとしたんだけど

「あ、あれ?」

どうしても両目を瞑ってしまう。

「――っ!!!」

「透也くんが簡単そうにやってたからできると思ったけど、意外と難しいんだな。えい、えいっ!」

と何度繰り返してもパチパチと両目を瞑ってしまうだけだ。

「これってどうやったら――」
「ああっ、もうっ! 大智さん、私の理性を試してるんですか?」

「えっ? 何?」

「はぁーっ。本当に無自覚で煽ってくるんですからタチが悪いですよ」

「あ、あの……透也くん?」

なんだかいつもの透也くんと違う気がする。
もしかして、怒らせてしまったんだろうか?

「えっと、ごめん……っ! 何か気に障った?」

ちょっと透也くんを焦らせてみようと思っただけだったのに……。

自分の考えの足りなさにちょっと落ち込んでしまう。
ガックリと肩を落とすと、

「違いますよっ!」

と俺の持っていたワイングラスをそっと下ろすと、さっと大きな身体に包み込まれた。

「えっ――!」

ギュッと強く抱きしめられて、透也くんの胸に顔を押し当てられる。
透也くんの爽やかな香りに包まれて、ドキドキが止まらない。

「あの、透也くん……?

「大智さんが……可愛すぎるから、困ってしまっただけです」

「と、うやくん……? それって、どういう――」
「もっとちゃんと自覚してもらえるまで待っていようと思ったのに……可愛いすぎてもう止められそうにありません」

透也くんの苦しげな声と共に、ギュッと抱きしめられていた身体がゆっくり離されていく。

「あ――っ!」

透也くんに抱きしめられていた身体が離れただけで、急に寂しくなった心の声が漏れてしまった。

「ほら、そんなに私のこと意識してくれているのに、あんなにも無邪気な顔見せられたら私だって我慢できなくなるのは当然でしょう?」

「我慢できないって、それ……なんだか透也くんが俺のこと、好きだって言っているように聞こえるんだけど……いやいや、まさか……5つも年上でしかも同性の俺を、透也くんが好きだなんて……そんなわけないっ!」

「ふふっ。大丈夫ですか? 大智さん、心の声が漏れてますよ」

「えっ?」

うそっ! さっき考えてたこと、透也くんに聞こえてた?
自意識過剰だって思われるかも……。

「もうわかりました。大智さんには遠回しに言っても違う意味に捉えられそうなんで、単刀直入にいいます! 私は、大智さんが好きですっ! 友人としてとか、社会人の先輩としてとかじゃないです。恋愛感情として、本気で大智さんのことが好きなんです。だから、これからは恋人として私と一緒に過ごしてくださいっ!!」

「えっ……恋人、として……恋愛、感情……とう、やくんが……? そんなこと……っ、うそうそっ、あるわけないっ! これは夢だっ、夢に決まってるっ! ――わっ!!」

透也くんの言葉がどうしても脳内で処理できなくてパニックになっていると、再び大きな身体に包まれた。

「落ち着いてください! これは夢なんかじゃありません。本当に私は大智さんが好きなんです」

「本当……?」

「はい。そうですよ。まだ信じられませんか?」

ギュッと抱きしめられながら、いつも以上に蕩けるような優しい声が耳元で囁かれる。

「いや、でも、もう恋はしないって、決めてて……」

「大智さん、過去に何か傷ついたんですね……。でも、大丈夫です。私が全部忘れさせてあげますから……」

「でも……」

「大智さん、私のこと嫌いですか?」

「えっ?」

「嫌いかどうかだけ答えてください。私のこと、嫌いですか?」

「……嫌い、な訳ない……」

「ふふっ。でしょう? それでいいです。これからたっぷり好きにならせてみせますから。覚悟しておいてくださいね」

「んっ!!」

突然透也くんの唇が俺の頬に触れる。
柔らかな唇の感触に驚いている間に、さっと離れていく。
それだけでもうときめいてしまっているのに、これからたっぷり好きにならせるって……俺、一体どうなるんだろう……?
もう、想像もつかない。
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