年下イケメンに甘やかされすぎて困ってます

波木真帆

文字の大きさ
上 下
10 / 125

初めてかも……

しおりを挟む
「とりあえず10万くらいでいいのかな?」

「えっ?」

「食費だよ、ちょこちょこ渡すのも面倒だから20万くらい渡しておこうか?」

「ちょ――っ、そんなに要りませんよ。5万でも多いくらいです」

「えっ? でも二人分だぞ?」

5万円なんて……昼、夜と外食すれば、半月くらいしか持たないはず。

「自炊ならそんなにかかりませんから」

「そういうものなのか? ほとんど外食ばかりだからあまりわからないんだ」

「あの……大智さん、スーパーには行かれないんですか?」

「それは行くが、パンとか飲み物とかカットフルーツくらいしか買わないからな」

「そうなんですね。じゃあ。今から行ってみませんか? どんなものが食べたいとか、あと苦手な食材なんかも知っておきたいですし」

今日は特に予定もないし、食事を作ってもらう立場だ。
アメリカに来てからスーパーを隅々まで見たことはなかったし、興味がないわけじゃない。
今までは見てもどうしようもないと思っていたからだし。

「じゃあ、連れて行ってもらおうかな。どういうものに使うのかとか教えてくれるとありがたい」

「ふふっ。はい。じゃあ、用意しますね」

「あっ、私も着替えてくるから。財布も持ってきたいし」

「じゃあ、着替えたら部屋にお迎えに行きますから、待っていてください」

「えっ、わざわざ迎えにきてもらうのも……」

「いえ、できたら、キッチンを見せてもらってもいいですか? そっちで料理をすることもあるでしょうし。何が揃っているか見たいので」

そう言われたら断るわけにはいかない。
なんと言っても作ってもらうんだから。

「わかった。じゃあ、部屋で待ってるから」

そう言って、透也くんの部屋を出た。

部屋に入って変なものを置いていないか確かめてみる。

まだこっちに来たてだから、おかしなものは置いていないはずだけど……。

寝室には流石に入らないよな。
って、別におかしなものは置いてないけど。

なんで俺、こんなに焦ってるんだろう……。
なんだか初めて恋人を部屋に招き入れるみたいにドキドキしちゃってるけど……。

考えてみたら、部屋に誰かを入れるなんて初めてかも。

宏樹とはいつもあっちの家で会ってたし、最初の頃、家に行きたいと言われても掃除してないからって何度か断ったら、行きたいって言い出さなくなったしな。

そういえば、今まで家に人を入れたことはないかもしれない。
昔から自分のテリトリーに誰かを入れるのが嫌だったし。

でも……なんで透也くんは嫌だと思わなかったんだろう?

やっぱり料理を作ってもらうからかな。
うん、きっとそうだ。

自分でそう納得したところで、クローゼットを開けた。
今日は外には出ないと思っていたからな……。

とはいえ、スーパーだし。
そこまで畏まるのもおかしい、よな?

スーパーってみんなどんな格好で行くものなんだろう?

ああ、他の人の格好を見ておけばよかった。

部屋着は流石におかしいだろう?
うーん、ジャケットまでは着ないよな?

悩みまくってとりあえず目についた白Tシャツと黒のパンツ、そして、紺の半袖シャツを羽織った。

これでいいんだろうか?
もっと違う服……と思っている間に、ピンポンとチャイムが鳴り響いた。

まずい、もう透也くんが来てしまった。
急いでクローゼットに服をしまい、バタバタと玄関を開けると、少し大きめの、しっかりとした生地のTシャツにベージュのチノパンを穿いている透也くんが立っていた。

「大智さん、その格好似合いますね」

「そ、そうか? スーパーに行く時の格好がわからなくて、目についたものを着てみたんだがおかしいと言われなくてよかったよ」

「ふふっ。いつもはどんな格好で行ってたんですか?」

「いつもは仕事帰りに寄っていたからスーツだったんだ。だから、こういう状況に慣れていなくて……。あっ、悪い。玄関先で立たせたままで……。どうぞ、入って」

「じゃあ、今度は仕事帰りに待ち合わせて一緒にスーパーに行きましょうか。その方がその時食べたいものを作れますしね。お邪魔します」

嬉しそうに笑う透也くんを中へと案内しながらも、俺の心はドキドキが止まらなかった。
だって、仕事帰りに待ち合わせて一緒にスーパー?
今までの生活じゃ考えられないことだ。


「うわぁっ、やっぱり大智さんが仰ってたように広いですね」

ドキドキしている俺をよそに透也くんはスタスタと中に入っていく。

「だろう? 一人だと本当に持て余しているんだ」

「これからは私がいますから、大丈夫ですよ」

「――っ!!」

パチンとウィンクをする顔がとてつもなくかっこいい。
こんなに普通にウィンクってできるものなんだなと感心してしまう。

「キッチン、うちより広くて使いやすそうです。ここだといろんなものが作れそうだな」

ドキドキしている俺の横で、透也くんはすっかり我が家のキッチンに心を奪われているようだ。

「あの、冷蔵庫を開けてもいいですか?」

「あ、ああ。なんでもみてくれて構わないけど、みたら驚くと思うぞ。何も入ってないから」

一応驚く前に声はかけたけれど、水とバター、チーズくらいしか入っていない冷蔵庫の中を見て、透也くんが唖然としているのが見なくてもわかる。

「大智さん……これで、よく生活してましたね」

「だからこっちに来てほとんど外食だったから」

「すごくよくわかりました。じゃあ、スーパーに行きましょうか」

にっこりと笑いながら当然のように手を取られ、俺たちは外に出た。
しおりを挟む
感想 114

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

処理中です...