49 / 58
番外編
会いに行こう! <後編>
しおりを挟む
「ははっ。敦己。よくわかったな」
「えっ? なに? どういうこと? どうして父さんがここに?」
思いがけない状況に表情を青褪めさせパニックを起こす敦己を落ち着かせようと抱きしめていると、さっきの女が近づいてくる。アラビアンマスクの上からでも笑顔を浮かべているのがわかるが、先ほどの表情とはまるで別人だ。
「ごめんなさい、ちょっとからかったの」
さっとマスクとフード付きのマントを脱ぎ捨てると、そこには一度画面越しに会ったことのある敦己のお母さんが現れた。その姿を見て、敦己は今度は一気に顔を真っ赤にして怒り始めた。
「母さん! からかったってなに? こんなところまで連れてきて冗談にしてはひどすぎるよ! 誉さんにだってあんな失礼なことをして!」
「あ、敦己、落ち着け。俺は大丈夫だから」
今まで見たことがないくらい感情を露わにしている敦己の姿に驚きつつ、俺は必死に宥めた。
「本当にごめんなさい。でも、普段遠く離れている分、二人の思いの強さをしっかりと知っておきたかったの。敦己は特に辛い思いをしたからもう二度と同じような思いはさせたくなかったのよ。誉さん、ごめんなさいね。あなたのことは信用していたんだけど、どうしても一度この目ではっきりと確かめておきたかったの」
「母さんを怒らないでやってくれ。私も心配で賛成したんだ。だが、そのおかげで彼の敦己への思いもしっかりと聞けたし、敦己の気持ちもよくわかった」
「それにしたって、人を騙すようなこと――」
「いいよ。敦己。俺は怒ってない」
「誉さんは優しすぎますよ! こんなひどいことをする両親とは絶縁したって――」
「敦己、そんなことを言っちゃいけない。それに、最初から俺は何かあるって思っていたからな」
「えっ? どういうことですか?」
俺の言葉に一気に怒りを霧散させ、キョトンとした表情を向ける敦己が可愛い。
「この占いの店だよ。透也くんが行ったって聞いた時からおかしいなって思ってたよ」
「そう、なんですか?」
「ああ。彼は占いなんて信じるような人じゃないからな。だから、絶対何かあるって思っていたよ。もちろん、お二人が関わっているとは思ってなかったけどな。でも、さっき言ったことに嘘偽りはないよ。あれは全て俺の本心だ。敦己を一生大切にするし、絶対に裏切ったりしない。ご両親の前で改めて誓うよ。約束する、俺は敦己と一生をともに幸せに暮らす」
「誉さん……」
敦己の綺麗な瞳から涙が溢れてくる。
「俺のために怒ったり泣いたり感情豊かな敦己を俺は愛しているよ」
「うっ、ほ、まれ、さん……っ」
俺は涙でいっぱいの敦己を抱きしめながら、ご両親に視線を向けた。
すると、二人は驚きの表情を敦己に向けていた。
「どうかされましたか?」
「敦己が、人前で泣くなんて……本当に、誉さんは特別みたいね。ねぇ、あなた」
「ああ。こんな試すようなことをして本当に申し訳なかった」
「私も謝るわ。本当にごめんなさい」
心からの謝罪を受け、俺にはもうわだかまりはなかった。
「敦己、ご両親も謝ってくださっているから。な」
ハンカチで敦己の涙を拭いながら優しく声をかけると、敦己は小さく頷いた。
「わ、わかりました……でも、お父さんも、お母さんも、これで最後だからね!」
「ええ。本当にわかったわ」
「敦己、誉くん。許してくれてありがとう」
敦己もようやく納得したのか、最後には二人の言葉に笑顔を見せていた。
「それにしても、このお店……一体なんなの?」
「ここは、利樹さんのアトリエのために借りた部屋なの。個展をやっている間も作業したいっていうから、せっかくだから香港っぽい場所の方がアイディアが浮かぶと思って」
なるほど。だから不思議な感じがしたんだ。営業をしてそうには見えなかったからな。
「じゃあ、透也が行ったっていうのは?」
「透也くんにはちょっと協力してもらったのよ。でも、透也くんの言った通りだったけどね」
「透也が何を言っていたの?」
「誉さんは逆に怪しがりそうだって」
ふっ。さすがだな。やっぱり俺たちは同類なんだろう。
「二人ともお腹空いたでしょう? 地元の人に聞いておいた美味しい店があるから、一緒に行きましょう」
その言葉に敦己のお腹から可愛い音が聞こえた。相変わらず正直なお腹だ。
着替えを済ませたご両親と少し離れた場所にあるレストランにタクシーで向かい、ようやく楽しい顔合わせとなった。
画面越しでは芸術家気質で少し話しにくそうだと思っていた父上も、実際には愉快な人で笑いが絶えない食事の時間だった。
「誉くん。君のような頼り甲斐のある男が敦己の伴侶になってくれて嬉しいよ」
「ありがとうございます」
「敦己のことをよろしく頼むよ」
「はい。お任せください」
最後まで笑顔のまま食事会は終わり、俺たちは二人でホテルへ向かった。
「誉さん……今日は本当にごめんなさい」
「気にしないでいいと言ったろう? それよりもこの美しい香港の夜景を見ながら敦己と愛し合いたい……いいか?」
「はい……。いっぱい愛して……」
甘いキスを合図に、俺たちはそれからたっぷりと愛し合った。
俺たちが離れることは一生ない。それを実感できた旅になったな。
「えっ? なに? どういうこと? どうして父さんがここに?」
思いがけない状況に表情を青褪めさせパニックを起こす敦己を落ち着かせようと抱きしめていると、さっきの女が近づいてくる。アラビアンマスクの上からでも笑顔を浮かべているのがわかるが、先ほどの表情とはまるで別人だ。
「ごめんなさい、ちょっとからかったの」
さっとマスクとフード付きのマントを脱ぎ捨てると、そこには一度画面越しに会ったことのある敦己のお母さんが現れた。その姿を見て、敦己は今度は一気に顔を真っ赤にして怒り始めた。
「母さん! からかったってなに? こんなところまで連れてきて冗談にしてはひどすぎるよ! 誉さんにだってあんな失礼なことをして!」
「あ、敦己、落ち着け。俺は大丈夫だから」
今まで見たことがないくらい感情を露わにしている敦己の姿に驚きつつ、俺は必死に宥めた。
「本当にごめんなさい。でも、普段遠く離れている分、二人の思いの強さをしっかりと知っておきたかったの。敦己は特に辛い思いをしたからもう二度と同じような思いはさせたくなかったのよ。誉さん、ごめんなさいね。あなたのことは信用していたんだけど、どうしても一度この目ではっきりと確かめておきたかったの」
「母さんを怒らないでやってくれ。私も心配で賛成したんだ。だが、そのおかげで彼の敦己への思いもしっかりと聞けたし、敦己の気持ちもよくわかった」
「それにしたって、人を騙すようなこと――」
「いいよ。敦己。俺は怒ってない」
「誉さんは優しすぎますよ! こんなひどいことをする両親とは絶縁したって――」
「敦己、そんなことを言っちゃいけない。それに、最初から俺は何かあるって思っていたからな」
「えっ? どういうことですか?」
俺の言葉に一気に怒りを霧散させ、キョトンとした表情を向ける敦己が可愛い。
「この占いの店だよ。透也くんが行ったって聞いた時からおかしいなって思ってたよ」
「そう、なんですか?」
「ああ。彼は占いなんて信じるような人じゃないからな。だから、絶対何かあるって思っていたよ。もちろん、お二人が関わっているとは思ってなかったけどな。でも、さっき言ったことに嘘偽りはないよ。あれは全て俺の本心だ。敦己を一生大切にするし、絶対に裏切ったりしない。ご両親の前で改めて誓うよ。約束する、俺は敦己と一生をともに幸せに暮らす」
「誉さん……」
敦己の綺麗な瞳から涙が溢れてくる。
「俺のために怒ったり泣いたり感情豊かな敦己を俺は愛しているよ」
「うっ、ほ、まれ、さん……っ」
俺は涙でいっぱいの敦己を抱きしめながら、ご両親に視線を向けた。
すると、二人は驚きの表情を敦己に向けていた。
「どうかされましたか?」
「敦己が、人前で泣くなんて……本当に、誉さんは特別みたいね。ねぇ、あなた」
「ああ。こんな試すようなことをして本当に申し訳なかった」
「私も謝るわ。本当にごめんなさい」
心からの謝罪を受け、俺にはもうわだかまりはなかった。
「敦己、ご両親も謝ってくださっているから。な」
ハンカチで敦己の涙を拭いながら優しく声をかけると、敦己は小さく頷いた。
「わ、わかりました……でも、お父さんも、お母さんも、これで最後だからね!」
「ええ。本当にわかったわ」
「敦己、誉くん。許してくれてありがとう」
敦己もようやく納得したのか、最後には二人の言葉に笑顔を見せていた。
「それにしても、このお店……一体なんなの?」
「ここは、利樹さんのアトリエのために借りた部屋なの。個展をやっている間も作業したいっていうから、せっかくだから香港っぽい場所の方がアイディアが浮かぶと思って」
なるほど。だから不思議な感じがしたんだ。営業をしてそうには見えなかったからな。
「じゃあ、透也が行ったっていうのは?」
「透也くんにはちょっと協力してもらったのよ。でも、透也くんの言った通りだったけどね」
「透也が何を言っていたの?」
「誉さんは逆に怪しがりそうだって」
ふっ。さすがだな。やっぱり俺たちは同類なんだろう。
「二人ともお腹空いたでしょう? 地元の人に聞いておいた美味しい店があるから、一緒に行きましょう」
その言葉に敦己のお腹から可愛い音が聞こえた。相変わらず正直なお腹だ。
着替えを済ませたご両親と少し離れた場所にあるレストランにタクシーで向かい、ようやく楽しい顔合わせとなった。
画面越しでは芸術家気質で少し話しにくそうだと思っていた父上も、実際には愉快な人で笑いが絶えない食事の時間だった。
「誉くん。君のような頼り甲斐のある男が敦己の伴侶になってくれて嬉しいよ」
「ありがとうございます」
「敦己のことをよろしく頼むよ」
「はい。お任せください」
最後まで笑顔のまま食事会は終わり、俺たちは二人でホテルへ向かった。
「誉さん……今日は本当にごめんなさい」
「気にしないでいいと言ったろう? それよりもこの美しい香港の夜景を見ながら敦己と愛し合いたい……いいか?」
「はい……。いっぱい愛して……」
甘いキスを合図に、俺たちはそれからたっぷりと愛し合った。
俺たちが離れることは一生ない。それを実感できた旅になったな。
1,117
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
長年の恋に終止符を
mahiro
BL
あの人が大の女好きであることは有名です。
そんな人に恋をしてしまった私は何と哀れなことでしょうか。
男性など眼中になく、女性がいればすぐにでも口説く。
それがあの人のモットーというやつでしょう。
どれだけあの人を思っても、無駄だと分かっていながらなかなか終止符を打てない私についにチャンスがやってきました。
これで終らせることが出来る、そう思っていました。
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—
水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。
幼い日、高校、そして大学。
高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。
運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。
運命よりも先に、愛してしまった
AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。
しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、
2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。
その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる