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番外編
ラスボスとの対面 <前編>
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『可愛い息子ができました』の逆パターンです(笑)
前後編でサクッと終わる予定です。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side誉>
「あの、誉さん……」
甘い夜を過ごして、ベッドで裸で横たわりながら敦己を抱きしめていると、おずおずとした様子で敦己が声をかけてきた。
「どうした、敦己? もう一度のおねだりか? それなら喜んで」
ギュッと強く抱きしめると真っ赤な顔で顔を横に振る。
「あ、ちが――っ、いえ、嫌じゃないんですけど、そうじゃなくて、その……実は会ってもらいたい人がいるんですけど……」
「敦己が会って欲しいというのなら、喜んで会うが。ああ、もしかしてご両親か? 海外から帰ってこられたのか?」
敦己の父は海外で個展を開くほどの名の知れた画家で、終の住処としてスイスを選び、10年ほど前から夫婦で過ごしているのだと教えてもらったことがある。
あの女との両家顔合わせの時も数時間だけ日本に滞在してすぐにスイスに帰っていったようだ。
敦己の両親は敦己の選んだ相手なら特に気にしないスタンスらしいが、あの女だけはどうにも気になったらしくわざわざ時間を作って帰国して会いにきたらしい。
会ってみてやはり気になるということで敦己の母が伯父である日下部会長に調査を依頼したのだと聞いている。
その結果、まぁ最低な女だったわけだが、母親の勘というものは本当にすごいのだと感心させられる。
敦己と付き合いだして、両親に紹介したいという敦己の意向ですぐにビデオ通話で挨拶でもと思ったのだが、ネット環境があまりよくない場所にいるらしく電話でのみ挨拶をした。
緊張したが、俺のことはどうやら気に入ってくれたらしくてホッとした。
まぁ調査されても困ることは何もないが。
これで両親公認の仲になったわけだが、まだ面と向かってあったことはないから、会えるのなら嬉しい。
そう思ったのだが、どうやら違うようだ。
「違うんです。両親は多分あと数年は帰ってくる気はないかと。あの時もかなり無理を言って帰ってきてもらったので当分は難しいかも知れません。ですから、先にお祖父さまに会って欲しくて……」
敦己のいうお祖父さまは実の祖父の兄にあたる日下部会長のことだ。
早くに実の祖父母を亡くした敦己は、日下部会長を本当の祖父のように慕っていて、日下部会長も実の孫である祥也・透也兄弟より敦己を溺愛している。
その日下部会長に会うということは、ある意味敦己の両親に会うよりもハードルが高い。
「母がお祖父さまに誉さんのことを話したみたいで……すみません」
「なんで謝るんだ? 俺だって両親に紹介したんだ。俺も敦己の大切な人に会いたいよ」
「誉さん……」
「何か心配なことがあるのか?」
「いいえ。そうではないんです。ただお祖父さまは僕をものすごく可愛がってくれていたので、前からずっと僕に大切な人ができたら『敦己を任せていい相手か私がしっかりと吟味してやる!』って言ってたので……」
「ははっ。そうか。敦己ほど可愛い孫ならそう思っても無理はないな。だが、心配しないでいいよ。どんな相手とでもうまく話ができるのが俺の特技なんだ」
そういうと敦己はホッとしたように笑った。
ベルンシュトルフ・ホールディングスの会長といえば、どこの企業よりも先駆けてLGBTQに理解を示し、パートナーシップ制度を導入したのだから、敦己の相手が男であることに反対することはないだろうが、おそらく敦己の相手が誰だろうが心配なのだろう。
なんせ敦己は素直で純粋で真面目で何よりも可愛い。
そんな孫が選んだ相手がどんなやつか気になるのは当然だ。
俺は誠心誠意、敦己への愛を語って会長を安心させることにしよう。
それから数日経って、週末に食事会の都合が付いたと敦己から言われた。
「お祖父さま、誉さんと会えるのが楽しみだって言ってましたよ」
「そうか、何を手土産に持っていこうか? 何かお好きなものを知っているか?」
「ワインが大好きですよ。だからきっと誉さんと一緒に飲みたいというと思います。僕は弱いから全然相手ができないので、誉さんがお祖父さまと飲んでくださったら嬉しいです」
「じゃあ、とっておきのワインでも持っていこう!」
「えっ、いいんですか?」
「ああ、敦己のお祖父さまと飲めるなら最高だよ」
そう言って、当日俺は家にあるものの中で最高級のワインを持って出かけた。
「お祖父さまっ!」
「おおっ、敦己! 少し前までL.Aに行っていたが体調は崩さなかったか?」
「はい。大丈夫です。ずっと誉さんが美味しい料理を食べさせてくれていたので」
「ほお。そうなのか」
会長の目がジロリと俺の方に向く。
敦己を見ている視線とは全く別人のようだ。
「お祖父さま。紹介させてください。この方は僕の大切な恋人の上田誉さんです。弁護士さんをなさっているんですよ」
「はじめてお目にかかります。上田法律事務所を経営しております上田誉と申します」
名刺を差し出すと、会長はそれを丁寧に受け取りじっくりと見てから名刺入れにしまった。
「まぁ、こんなところで立ち話もなんだからあっちでゆっくりと腰を据えて話をするとしよう。聞きたいこともたくさんあるのでな」
そういうと、会長は敦己の手をとってスタスタとソファーに向かい、敦己をピッタリと隣に置いて腰を下ろした。
ふぅ……。
なかなかに手強そうだ。
だが、負けるわけにはいかないな。
前後編でサクッと終わる予定です。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side誉>
「あの、誉さん……」
甘い夜を過ごして、ベッドで裸で横たわりながら敦己を抱きしめていると、おずおずとした様子で敦己が声をかけてきた。
「どうした、敦己? もう一度のおねだりか? それなら喜んで」
ギュッと強く抱きしめると真っ赤な顔で顔を横に振る。
「あ、ちが――っ、いえ、嫌じゃないんですけど、そうじゃなくて、その……実は会ってもらいたい人がいるんですけど……」
「敦己が会って欲しいというのなら、喜んで会うが。ああ、もしかしてご両親か? 海外から帰ってこられたのか?」
敦己の父は海外で個展を開くほどの名の知れた画家で、終の住処としてスイスを選び、10年ほど前から夫婦で過ごしているのだと教えてもらったことがある。
あの女との両家顔合わせの時も数時間だけ日本に滞在してすぐにスイスに帰っていったようだ。
敦己の両親は敦己の選んだ相手なら特に気にしないスタンスらしいが、あの女だけはどうにも気になったらしくわざわざ時間を作って帰国して会いにきたらしい。
会ってみてやはり気になるということで敦己の母が伯父である日下部会長に調査を依頼したのだと聞いている。
その結果、まぁ最低な女だったわけだが、母親の勘というものは本当にすごいのだと感心させられる。
敦己と付き合いだして、両親に紹介したいという敦己の意向ですぐにビデオ通話で挨拶でもと思ったのだが、ネット環境があまりよくない場所にいるらしく電話でのみ挨拶をした。
緊張したが、俺のことはどうやら気に入ってくれたらしくてホッとした。
まぁ調査されても困ることは何もないが。
これで両親公認の仲になったわけだが、まだ面と向かってあったことはないから、会えるのなら嬉しい。
そう思ったのだが、どうやら違うようだ。
「違うんです。両親は多分あと数年は帰ってくる気はないかと。あの時もかなり無理を言って帰ってきてもらったので当分は難しいかも知れません。ですから、先にお祖父さまに会って欲しくて……」
敦己のいうお祖父さまは実の祖父の兄にあたる日下部会長のことだ。
早くに実の祖父母を亡くした敦己は、日下部会長を本当の祖父のように慕っていて、日下部会長も実の孫である祥也・透也兄弟より敦己を溺愛している。
その日下部会長に会うということは、ある意味敦己の両親に会うよりもハードルが高い。
「母がお祖父さまに誉さんのことを話したみたいで……すみません」
「なんで謝るんだ? 俺だって両親に紹介したんだ。俺も敦己の大切な人に会いたいよ」
「誉さん……」
「何か心配なことがあるのか?」
「いいえ。そうではないんです。ただお祖父さまは僕をものすごく可愛がってくれていたので、前からずっと僕に大切な人ができたら『敦己を任せていい相手か私がしっかりと吟味してやる!』って言ってたので……」
「ははっ。そうか。敦己ほど可愛い孫ならそう思っても無理はないな。だが、心配しないでいいよ。どんな相手とでもうまく話ができるのが俺の特技なんだ」
そういうと敦己はホッとしたように笑った。
ベルンシュトルフ・ホールディングスの会長といえば、どこの企業よりも先駆けてLGBTQに理解を示し、パートナーシップ制度を導入したのだから、敦己の相手が男であることに反対することはないだろうが、おそらく敦己の相手が誰だろうが心配なのだろう。
なんせ敦己は素直で純粋で真面目で何よりも可愛い。
そんな孫が選んだ相手がどんなやつか気になるのは当然だ。
俺は誠心誠意、敦己への愛を語って会長を安心させることにしよう。
それから数日経って、週末に食事会の都合が付いたと敦己から言われた。
「お祖父さま、誉さんと会えるのが楽しみだって言ってましたよ」
「そうか、何を手土産に持っていこうか? 何かお好きなものを知っているか?」
「ワインが大好きですよ。だからきっと誉さんと一緒に飲みたいというと思います。僕は弱いから全然相手ができないので、誉さんがお祖父さまと飲んでくださったら嬉しいです」
「じゃあ、とっておきのワインでも持っていこう!」
「えっ、いいんですか?」
「ああ、敦己のお祖父さまと飲めるなら最高だよ」
そう言って、当日俺は家にあるものの中で最高級のワインを持って出かけた。
「お祖父さまっ!」
「おおっ、敦己! 少し前までL.Aに行っていたが体調は崩さなかったか?」
「はい。大丈夫です。ずっと誉さんが美味しい料理を食べさせてくれていたので」
「ほお。そうなのか」
会長の目がジロリと俺の方に向く。
敦己を見ている視線とは全く別人のようだ。
「お祖父さま。紹介させてください。この方は僕の大切な恋人の上田誉さんです。弁護士さんをなさっているんですよ」
「はじめてお目にかかります。上田法律事務所を経営しております上田誉と申します」
名刺を差し出すと、会長はそれを丁寧に受け取りじっくりと見てから名刺入れにしまった。
「まぁ、こんなところで立ち話もなんだからあっちでゆっくりと腰を据えて話をするとしよう。聞きたいこともたくさんあるのでな」
そういうと、会長は敦己の手をとってスタスタとソファーに向かい、敦己をピッタリと隣に置いて腰を下ろした。
ふぅ……。
なかなかに手強そうだ。
だが、負けるわけにはいかないな。
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