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番外編
可愛い息子と初デート+おまけ
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「健さん、どっちがいいかしら?」
「なんだ佳純、まだ迷っていたのか?」
「だって、今日は可愛い息子との初デートなのよ。変な格好はできないわ――きゃっ!!」
ハンガーにかけた洋服を自分の胸に当てて、鏡の前で悩んでいると突然ぎゅっと抱きしめられてしまった。
「健さん? どうしたの?」
「私の大事な妻の心をそんなに虜にするなんて、敦己くんに妬いてしまうな」
「――っ、そんなこと……」
「ふふっ。ごめん、ごめん。佳純がそんな気持ちを持っていないことはよくわかっているよ。ただ、私が狭量なだけだ」
「健さん……」
「佳純からキスしてくれたら機嫌も直るんだがな」
「ふふっ」
幾つになっても健さんは私を心から愛してくれている。
それがわかるから、私はいつだって心ときめいて過ごせるんだわ。
チュッと唇を重ねて離れると、
「今はこれだけで我慢しておこう。続きは夜だな」
と欲情を孕んだ目で見つめられる。
ドキドキしながら
「ええ。いっぱい愛してね」
と耳元で囁くと、健さんは嬉しそうにもう一度唇を重ねた。
「ああ、待ち遠しいわ。敦己くんと誉はまだかしら?」
「もうすぐくるだろう。さっきすぐ近くまで来ているようなことを連絡してきていたからな」
「待っている時って時間が経つのが本当に遅いわ。やっぱり家に迎えにきてもらったらよかったわね」
誉が夕食は敦己くんと二人で食べて帰りたいというから、別々の車で現地集合になったのよね。
「誉も新婚だからな。できるだけ二人で過ごしたいんだよ。わかるだろう? 私たちも新婚の時は少しの時間でも一緒にいたいと思っていただろう? まぁ、それは今も変わらないが」
「ふふっ。そうね。そうだわ、新婚さんなのよね。少しくらい遅れても許してあげないとね」
「ああ、その通りだよ」
イリゼホテルのロビーで健さんと話をしながら待っていると、
「父さん! 母さん!」
聞きなれたことが聞こえた。
急足で駆け寄ろうとする敦己くんの手を握ってゆっくりと歩いてくる誉の姿に思わず笑ってしまう。
「すみません、お待たせしてしまって」
「敦己、謝る事はないよ。まだ約束の時間を過ぎてもない。母さんたちが早く着き過ぎただけだ」
「でも……」
「敦己くん、いいのよ。気にしないで。誉のいうとおり、敦己くんと出かけるのが楽しみで早く着いてしまっただけなの。
誉、ここからは私と敦己くんの時間よ。あなたは健さんとついてきてくれたらいいからね。さぁ、敦己くん、行きましょう」
「あ――っ!」
何か言いたげな誉から敦己くんの手をさっと奪って、スイーツビュッフェの会場に向かった。
「メロンビュッフェは期間限定で予約必須だからね。取れてよかったわ」
「さすがですね! 僕も前に一度行ってみたくて予約開始と同時に電話したことがあるんですけど、あっという間に完売で取れなかったんですよ」
「ふふっ。今日はいっぱい食べましょうね」
「はい。あの、お義母さん。今日の洋服、先日のとはまた印象が変わってすごく素敵ですね。お義父さんとお似合いでしたよ」
「あら、気づいてくれるなんて嬉しいわ。敦己くんとデートだからおめかししたの」
「デートだと仰ってくれるなんて……嬉しいです」
ああ、はにかんだ笑顔が可愛いわ。
ふふっ。こんな可愛い子が私の息子だなんて!
ほら、みんな敦己くんの可愛さに見惚れてる。
そんな彼を連れている私を羨ましそうにみているわ。
ああ、なんて幸せなのかしら。
スイーツビュッフェをやっているカフェダイニングに到着し、名前を告げると席へと案内してくれる、
私たちの後ろにピッタリとつくように健さんと誉がいるからか、席に向かう途中もずっと夥しいほどの視線を感じる。
女性だらけのこの場所に三人のかっこいい男たちを従えて来ているんだもの。
当然よね。
飲み物の注文を健さんにお願いして、敦己くんと二人でスイーツをとりに行く。
スイーツ以外にも、ローストビーフサンドやボリュームたっぷりのハンバーガー、ピザにパスタも食べ放題に入っているから健さんや誉も十分楽しめるはず。
スイーツ以外はオーダーで持ってきてくれるから、今頃飲み物と一緒に注文しているはずね。
「敦己くん、どれにする?」
「ああーっ、どれも美味しそうで悩みますね。でも、やっぱりスベシャルメロンタルトは外せないですよね」
「ふふっ。さすがね! 私もそれにするわ。あとは……クレープとメロンの生チョコ、シュークリームと、あ、あとスムージーは欠かせないわね、メロンがすっごく濃厚で美味しいの!」
「わぁー、いいですね! あ、このスペシャルショートケーキ予約制なんですね……」
「ふふっ。大丈夫、もちろん予約してるわ!」
「ええ、本当ですか! わぁー、僕これが楽しみだったんですよ」
「ふふっ。よかったわ」
敦己くんと一緒に選びながらスイーツをとるのが楽しすぎて、ついついたくさんとってしまったけれど大丈夫よね。
甘いものが苦手な健さんだけど外だと結構食べてくれるのよね。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい!」
素直で本当に可愛い。
可愛いわんこみたいについて来てくれるから楽しいわ。
「これはまた随分取ってきたな」
「ええ、健さんも食べるでしょう?」
「ああ、佳純が食べさせてくれるならな」
「ふふっ。もちろんよ」
私たちが食べさせ合う向かいで、敦己くんも誉に食べさせている。
本当に嬉しそうな笑顔を見せて……。
ああ、誉のこんな姿を一生見られないと思っていたから、本当に嬉しいわ。
「ねぇ、あなた。息子たちの幸せな姿見られるって、私たち本当に幸せね」
「ああ、そうだな。佳純のおかげだよ。君と結婚して本当に良かった」
「ふふっ。健さんったら」
甘いスイーツを食べながら、今日も甘く幸せな時間が過ぎていく。
<おまけ>
「母さんはすぐに敦己を独占しようとする」
「まぁ、今日くらいは許してやってくれ。ずっと楽しみにしていたからな。それよりも誉……今日は頼むぞ」
「ああ、わかってるって。無防備な二人が揃ったら本当に危険だってわかってるから」
「ならいいが、あ、ほら二人がスイーツをとりにいくぞ」
敦己と母さんが楽しそうにスイーツを選んでいる横で、声をかけようと近づいてきている輩がいる。
俺は二人に気づかれないようにそっとそいつらに威嚇を放つ。
俺の突き刺すような視線に気付いたのか、敦己と母さんからスーッと距離を取っていくのがわかる。
それからも命知らずな奴らが敦己と母さんに近づこうとしたのを睨みつけて追い払いながら、ようやく二人は席に戻ってきた。
食べている可愛い顔も見られないようにしながら、わざと見せつけるように食べさせあったり、唇の端についたクリームをなめとってみせたり……幼い頃からずっと父さんが母さんにしてきたことを実践する。
父さんはこんなことをもう数十年やってきたのか……。
本当に頭がさがる。
俺はこれからもずっと無防備で危なっかしい伴侶を全力で牽制しながら守り続けるんだ。
まぁ、父さんという協力者がいるのは心強いものだな。
「なんだ佳純、まだ迷っていたのか?」
「だって、今日は可愛い息子との初デートなのよ。変な格好はできないわ――きゃっ!!」
ハンガーにかけた洋服を自分の胸に当てて、鏡の前で悩んでいると突然ぎゅっと抱きしめられてしまった。
「健さん? どうしたの?」
「私の大事な妻の心をそんなに虜にするなんて、敦己くんに妬いてしまうな」
「――っ、そんなこと……」
「ふふっ。ごめん、ごめん。佳純がそんな気持ちを持っていないことはよくわかっているよ。ただ、私が狭量なだけだ」
「健さん……」
「佳純からキスしてくれたら機嫌も直るんだがな」
「ふふっ」
幾つになっても健さんは私を心から愛してくれている。
それがわかるから、私はいつだって心ときめいて過ごせるんだわ。
チュッと唇を重ねて離れると、
「今はこれだけで我慢しておこう。続きは夜だな」
と欲情を孕んだ目で見つめられる。
ドキドキしながら
「ええ。いっぱい愛してね」
と耳元で囁くと、健さんは嬉しそうにもう一度唇を重ねた。
「ああ、待ち遠しいわ。敦己くんと誉はまだかしら?」
「もうすぐくるだろう。さっきすぐ近くまで来ているようなことを連絡してきていたからな」
「待っている時って時間が経つのが本当に遅いわ。やっぱり家に迎えにきてもらったらよかったわね」
誉が夕食は敦己くんと二人で食べて帰りたいというから、別々の車で現地集合になったのよね。
「誉も新婚だからな。できるだけ二人で過ごしたいんだよ。わかるだろう? 私たちも新婚の時は少しの時間でも一緒にいたいと思っていただろう? まぁ、それは今も変わらないが」
「ふふっ。そうね。そうだわ、新婚さんなのよね。少しくらい遅れても許してあげないとね」
「ああ、その通りだよ」
イリゼホテルのロビーで健さんと話をしながら待っていると、
「父さん! 母さん!」
聞きなれたことが聞こえた。
急足で駆け寄ろうとする敦己くんの手を握ってゆっくりと歩いてくる誉の姿に思わず笑ってしまう。
「すみません、お待たせしてしまって」
「敦己、謝る事はないよ。まだ約束の時間を過ぎてもない。母さんたちが早く着き過ぎただけだ」
「でも……」
「敦己くん、いいのよ。気にしないで。誉のいうとおり、敦己くんと出かけるのが楽しみで早く着いてしまっただけなの。
誉、ここからは私と敦己くんの時間よ。あなたは健さんとついてきてくれたらいいからね。さぁ、敦己くん、行きましょう」
「あ――っ!」
何か言いたげな誉から敦己くんの手をさっと奪って、スイーツビュッフェの会場に向かった。
「メロンビュッフェは期間限定で予約必須だからね。取れてよかったわ」
「さすがですね! 僕も前に一度行ってみたくて予約開始と同時に電話したことがあるんですけど、あっという間に完売で取れなかったんですよ」
「ふふっ。今日はいっぱい食べましょうね」
「はい。あの、お義母さん。今日の洋服、先日のとはまた印象が変わってすごく素敵ですね。お義父さんとお似合いでしたよ」
「あら、気づいてくれるなんて嬉しいわ。敦己くんとデートだからおめかししたの」
「デートだと仰ってくれるなんて……嬉しいです」
ああ、はにかんだ笑顔が可愛いわ。
ふふっ。こんな可愛い子が私の息子だなんて!
ほら、みんな敦己くんの可愛さに見惚れてる。
そんな彼を連れている私を羨ましそうにみているわ。
ああ、なんて幸せなのかしら。
スイーツビュッフェをやっているカフェダイニングに到着し、名前を告げると席へと案内してくれる、
私たちの後ろにピッタリとつくように健さんと誉がいるからか、席に向かう途中もずっと夥しいほどの視線を感じる。
女性だらけのこの場所に三人のかっこいい男たちを従えて来ているんだもの。
当然よね。
飲み物の注文を健さんにお願いして、敦己くんと二人でスイーツをとりに行く。
スイーツ以外にも、ローストビーフサンドやボリュームたっぷりのハンバーガー、ピザにパスタも食べ放題に入っているから健さんや誉も十分楽しめるはず。
スイーツ以外はオーダーで持ってきてくれるから、今頃飲み物と一緒に注文しているはずね。
「敦己くん、どれにする?」
「ああーっ、どれも美味しそうで悩みますね。でも、やっぱりスベシャルメロンタルトは外せないですよね」
「ふふっ。さすがね! 私もそれにするわ。あとは……クレープとメロンの生チョコ、シュークリームと、あ、あとスムージーは欠かせないわね、メロンがすっごく濃厚で美味しいの!」
「わぁー、いいですね! あ、このスペシャルショートケーキ予約制なんですね……」
「ふふっ。大丈夫、もちろん予約してるわ!」
「ええ、本当ですか! わぁー、僕これが楽しみだったんですよ」
「ふふっ。よかったわ」
敦己くんと一緒に選びながらスイーツをとるのが楽しすぎて、ついついたくさんとってしまったけれど大丈夫よね。
甘いものが苦手な健さんだけど外だと結構食べてくれるのよね。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい!」
素直で本当に可愛い。
可愛いわんこみたいについて来てくれるから楽しいわ。
「これはまた随分取ってきたな」
「ええ、健さんも食べるでしょう?」
「ああ、佳純が食べさせてくれるならな」
「ふふっ。もちろんよ」
私たちが食べさせ合う向かいで、敦己くんも誉に食べさせている。
本当に嬉しそうな笑顔を見せて……。
ああ、誉のこんな姿を一生見られないと思っていたから、本当に嬉しいわ。
「ねぇ、あなた。息子たちの幸せな姿見られるって、私たち本当に幸せね」
「ああ、そうだな。佳純のおかげだよ。君と結婚して本当に良かった」
「ふふっ。健さんったら」
甘いスイーツを食べながら、今日も甘く幸せな時間が過ぎていく。
<おまけ>
「母さんはすぐに敦己を独占しようとする」
「まぁ、今日くらいは許してやってくれ。ずっと楽しみにしていたからな。それよりも誉……今日は頼むぞ」
「ああ、わかってるって。無防備な二人が揃ったら本当に危険だってわかってるから」
「ならいいが、あ、ほら二人がスイーツをとりにいくぞ」
敦己と母さんが楽しそうにスイーツを選んでいる横で、声をかけようと近づいてきている輩がいる。
俺は二人に気づかれないようにそっとそいつらに威嚇を放つ。
俺の突き刺すような視線に気付いたのか、敦己と母さんからスーッと距離を取っていくのがわかる。
それからも命知らずな奴らが敦己と母さんに近づこうとしたのを睨みつけて追い払いながら、ようやく二人は席に戻ってきた。
食べている可愛い顔も見られないようにしながら、わざと見せつけるように食べさせあったり、唇の端についたクリームをなめとってみせたり……幼い頃からずっと父さんが母さんにしてきたことを実践する。
父さんはこんなことをもう数十年やってきたのか……。
本当に頭がさがる。
俺はこれからもずっと無防備で危なっかしい伴侶を全力で牽制しながら守り続けるんだ。
まぁ、父さんという協力者がいるのは心強いものだな。
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