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甘いひととき
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「宇佐美くん、ここにきてどこかに出かけたことはあるのか?」
炊き立てのご飯をパクッと口に運び、幸せを感じているとそんな言葉をかけられた。
「いえ。毎日忙しくて仕事場と家の往復ばかりで後はたまにスーパーに行くくらいで……考えてみたらせっかくこっちに来てるのにほとんどロサンゼルスを堪能してないですね」
「そうなのか、よっぽど忙しかったんだな」
「はい。だから、せっかく来ていただいたのに、この辺のことすら何も知らないので案内もできないんですが……」
「なら、食事が終わったら散歩にでも行かないか? せっかく有給も取ったんだし遊ばないともったいないだろう?」
「はい。行きたいです! あ、あのもし車が必要ならジャックに言えば借りられますよ。会社から社宅に来た人用の車が用意されてるんで」
「そうなのか、じゃあ車は明日にしよう。それまでにどこに行くか計画を立てようか。今日はこの辺を散策してみるのもいいだろう」
そう提案され、僕たちはどんなところがいいかお互いに意見を出し合いながら食事を終えた。
「誉さん、その格好ですぐに出られますよね? 僕も急いで着替えてきます」
「近所を散歩するだけだから気楽な格好でいいよ」
「わかりました」
と言いつつ、こっちにきて服を買う暇もなかったから日本から持ってきた服しかないんだけど……。
うーん、どれがいいか……。
誉さんは白のカットソーとネイビーのスラックスだっけ。
確か、似たような感じの服があったような……。
センスにそこまで自信はないけれど、誉さんの格好に似ているなら問題はないだろう。
クローゼットから服を取り出し、急いで着替えを済ませてリビングに向かった。
「誉さん、お待たせし――ああっ、すみませんっ」
声をかけながらリビングに入ると、どうやら誰かと電話中だったようで慌てて謝ったけれど、声は聞こえちゃっていたみたいだ。
「――っ、ごほっ、ごほっ」
「大丈夫ですか? すみません」
突然姿を見せて驚かせてしまったからか、咳き込む誉さんに急いで水の入ったグラスを手渡し謝るとそれをゴクリと飲んで、電話の相手に断りを入れそのまま電話を切った。
「すみません、電話切らせちゃって……僕、部屋に行ってるので、かけ直してもらって大丈夫ですよ」
「あ、ああ。いや、いいんだ。事務所の者からの業務連絡を受けていただけだから。ちょうど終わったところだったし問題ない」
「あ、そうなんですね。事務員さんですか?」
「いや、もう一人の弁護士だよ。小田切といって紘の友人なんだ。大学時代からかなり優秀でね、私が事務所を稼業するときにちょうど司法修習を終えてたから来てもらったんだ。今ではかなり戦力になっているよ」
「上田自身もかなり優秀ですからね、友人たちもすごいんですね」
「ははっ。宇佐美くんには及ばないだろうが、紘が優秀だと言われて兄として悪い気はしないな」
「いえ、本当に優秀ですよ。今回はたまたま僕が上田を助けるような形になりましたけど、いつもはかなり助けられてますから」
「そう言われると安心するよ。紘の会社での様子は私にはわからないからな」
やっぱり兄弟仲がいいんだな。
誉さん、上田のことなんやかと気になっているみたいだし。
ほんと、いいな。
「それはそうと、宇佐美くん……その格好……」
「あれ? おかしかったですか? 誉さんの格好に似てるのを選んだんですけど」
「私のに似ているのを?」
「はい。そうしたらカッコよく見えるかなって」
「――っ!!! そ、そうか。嬉しいよ。じゃあ、出かけるとするか」
そういうと、誉さんはすごく上機嫌で玄関へ向かった。
僕はとりあえず、スマホと財布をポケットに入れて誉さんの後を追った。
『Mr.ウサミ。Mr.ウエダ。お出かけですか?』
マンション入り口にいたジャックが笑顔で声をかけてくれた。
『はい。少しこの辺を散歩してきますね。そうだ! どこかおすすめはありますか?』
『そうですね、ここから東に1マイルくらいの場所に湖のある公園がありますよ。貸しボートもあるのでもしよければ』
「わっ、誉さん! 貸しボート乗りに行きませんか?」
「いい天気だし、楽しそうだな」『ジャック、いい情報をありがとう』
『My pleasure』
ジャックに見送られながら、僕たちはその公園を目指し歩き始めた。
誉さんはものすごく自然に車道側を歩いてくれて僕は守られている感じがする。
前から人が来ると、さっと腰に手を回されて人とぶつかる心配も何もない。
しかも僕と話をしたまま自然に動いているのだから驚くばかりだ。
すごいな、誉さんってエスコート慣れてるんだな。
「宇佐美くん、ジェラート売ってるぞ。食べるか?」
「わぁっ! 美味しそうですね」
日差しが暑くなってきて、ちょうど甘いものが食べたいと思っていたところだ。
こじんまりした店舗だけど、ジェラートの種類はたくさんありそう。
僕たちはカランと可愛らしい音を立てる扉を開き、中に入った。
「わぁっ! どれも美味しそうっ!!」
「ふふっ。どれにする?」
「うーん、バニラとストロベリー。どっちにするか悩みます」
「じゃあ、その二つにして分けて食べようか」
「えっ、でもいいんですか?」
「ああ、私もその二つが気になっていたんだ」
そういうと、誉さんは店員さんに頼んでくれた。
『Here you are』
「えっ?」
店員さんが渡してくれたカップには二種類のジェラートが盛られスプーンが2個ついている。
もしかして店員さんがダブルと間違えちゃったのかな?
「誉さん、どうします?」
「ああ、いいよ。どうせ一緒に食べるんだし」
まぁそれもそうか。
『Have a sweet weekend!』
楽しげな店員さんの声に見送られながら店を出た。
あれ?
そういえばさっきの英語って……。
甘いひとときみたいな意味が入ってなかったっけ?
聞き間違いかな?
ああ、そっか。
ジェラート屋さんならではの挨拶なのかもな。
炊き立てのご飯をパクッと口に運び、幸せを感じているとそんな言葉をかけられた。
「いえ。毎日忙しくて仕事場と家の往復ばかりで後はたまにスーパーに行くくらいで……考えてみたらせっかくこっちに来てるのにほとんどロサンゼルスを堪能してないですね」
「そうなのか、よっぽど忙しかったんだな」
「はい。だから、せっかく来ていただいたのに、この辺のことすら何も知らないので案内もできないんですが……」
「なら、食事が終わったら散歩にでも行かないか? せっかく有給も取ったんだし遊ばないともったいないだろう?」
「はい。行きたいです! あ、あのもし車が必要ならジャックに言えば借りられますよ。会社から社宅に来た人用の車が用意されてるんで」
「そうなのか、じゃあ車は明日にしよう。それまでにどこに行くか計画を立てようか。今日はこの辺を散策してみるのもいいだろう」
そう提案され、僕たちはどんなところがいいかお互いに意見を出し合いながら食事を終えた。
「誉さん、その格好ですぐに出られますよね? 僕も急いで着替えてきます」
「近所を散歩するだけだから気楽な格好でいいよ」
「わかりました」
と言いつつ、こっちにきて服を買う暇もなかったから日本から持ってきた服しかないんだけど……。
うーん、どれがいいか……。
誉さんは白のカットソーとネイビーのスラックスだっけ。
確か、似たような感じの服があったような……。
センスにそこまで自信はないけれど、誉さんの格好に似ているなら問題はないだろう。
クローゼットから服を取り出し、急いで着替えを済ませてリビングに向かった。
「誉さん、お待たせし――ああっ、すみませんっ」
声をかけながらリビングに入ると、どうやら誰かと電話中だったようで慌てて謝ったけれど、声は聞こえちゃっていたみたいだ。
「――っ、ごほっ、ごほっ」
「大丈夫ですか? すみません」
突然姿を見せて驚かせてしまったからか、咳き込む誉さんに急いで水の入ったグラスを手渡し謝るとそれをゴクリと飲んで、電話の相手に断りを入れそのまま電話を切った。
「すみません、電話切らせちゃって……僕、部屋に行ってるので、かけ直してもらって大丈夫ですよ」
「あ、ああ。いや、いいんだ。事務所の者からの業務連絡を受けていただけだから。ちょうど終わったところだったし問題ない」
「あ、そうなんですね。事務員さんですか?」
「いや、もう一人の弁護士だよ。小田切といって紘の友人なんだ。大学時代からかなり優秀でね、私が事務所を稼業するときにちょうど司法修習を終えてたから来てもらったんだ。今ではかなり戦力になっているよ」
「上田自身もかなり優秀ですからね、友人たちもすごいんですね」
「ははっ。宇佐美くんには及ばないだろうが、紘が優秀だと言われて兄として悪い気はしないな」
「いえ、本当に優秀ですよ。今回はたまたま僕が上田を助けるような形になりましたけど、いつもはかなり助けられてますから」
「そう言われると安心するよ。紘の会社での様子は私にはわからないからな」
やっぱり兄弟仲がいいんだな。
誉さん、上田のことなんやかと気になっているみたいだし。
ほんと、いいな。
「それはそうと、宇佐美くん……その格好……」
「あれ? おかしかったですか? 誉さんの格好に似てるのを選んだんですけど」
「私のに似ているのを?」
「はい。そうしたらカッコよく見えるかなって」
「――っ!!! そ、そうか。嬉しいよ。じゃあ、出かけるとするか」
そういうと、誉さんはすごく上機嫌で玄関へ向かった。
僕はとりあえず、スマホと財布をポケットに入れて誉さんの後を追った。
『Mr.ウサミ。Mr.ウエダ。お出かけですか?』
マンション入り口にいたジャックが笑顔で声をかけてくれた。
『はい。少しこの辺を散歩してきますね。そうだ! どこかおすすめはありますか?』
『そうですね、ここから東に1マイルくらいの場所に湖のある公園がありますよ。貸しボートもあるのでもしよければ』
「わっ、誉さん! 貸しボート乗りに行きませんか?」
「いい天気だし、楽しそうだな」『ジャック、いい情報をありがとう』
『My pleasure』
ジャックに見送られながら、僕たちはその公園を目指し歩き始めた。
誉さんはものすごく自然に車道側を歩いてくれて僕は守られている感じがする。
前から人が来ると、さっと腰に手を回されて人とぶつかる心配も何もない。
しかも僕と話をしたまま自然に動いているのだから驚くばかりだ。
すごいな、誉さんってエスコート慣れてるんだな。
「宇佐美くん、ジェラート売ってるぞ。食べるか?」
「わぁっ! 美味しそうですね」
日差しが暑くなってきて、ちょうど甘いものが食べたいと思っていたところだ。
こじんまりした店舗だけど、ジェラートの種類はたくさんありそう。
僕たちはカランと可愛らしい音を立てる扉を開き、中に入った。
「わぁっ! どれも美味しそうっ!!」
「ふふっ。どれにする?」
「うーん、バニラとストロベリー。どっちにするか悩みます」
「じゃあ、その二つにして分けて食べようか」
「えっ、でもいいんですか?」
「ああ、私もその二つが気になっていたんだ」
そういうと、誉さんは店員さんに頼んでくれた。
『Here you are』
「えっ?」
店員さんが渡してくれたカップには二種類のジェラートが盛られスプーンが2個ついている。
もしかして店員さんがダブルと間違えちゃったのかな?
「誉さん、どうします?」
「ああ、いいよ。どうせ一緒に食べるんだし」
まぁそれもそうか。
『Have a sweet weekend!』
楽しげな店員さんの声に見送られながら店を出た。
あれ?
そういえばさっきの英語って……。
甘いひとときみたいな意味が入ってなかったっけ?
聞き間違いかな?
ああ、そっか。
ジェラート屋さんならではの挨拶なのかもな。
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