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僕にして欲しいこと
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ーすみませんっ! もしかして邪魔してしまいましたか?
ーいや、違うよ。ちょうど休憩しようと思っていたところだったんだ。
ーお疲れだったんじゃないですか?
ーふふっ。宇佐美くんは優しいんだな。でも、大丈夫。それよりも相談というのを聞かせてくれないか?
ーあ、はい。その、実は……。
僕は今日の支店長からの提案を誉さんに話してみた。
ーこっちに数年いられるように本社に話をつけてくれるって言ってくれて……それで、どうするか悩んでて……。
あの、誉さんはどう思いますか?
ー話を聞く限り、すごくいい話みたいじゃないか。それなのに、どうして悩んでるんだ?
ーえっ……だって、あの、誉さんが……。
ああ、そっか。
やっぱりあれは社交辞令だったんだ……。
それなのに僕、どうしようって本気で悩んで……。
ーすみません。悩む必要なかったですよね。明日支社長に――
ーああっ、違うんだ。誤解させてたらごめん。
ーえっ? 誤解って……。
ーそんなにいい話なのに悩んでくれるってことは、私と一緒に住むのが捨てがたいと思ってくれたってことだろう?
ーえっ、あの……そう、ですね。捨てがたいというか……はい。そうです。
ーふふっ。なら、答えは一つだ。支社長の話は断って日本に帰ってきてくれ。私はもう一緒に住むつもりで準備を進めているんだ。帰ってきてもらわないと困る。
ーあの、本当にいいんですか? 僕、迷惑じゃないですか?
ー言ってるだろ? 迷惑なら最初から誘ったりしないって。宇佐美くんに社交辞令なんか言わないよ。だから、出張期間が終わったら私の家に帰ってきてくれ。
耳に直接響いてくる誉さんの優しい声にドキドキしてしまう。
ーいい? 約束だぞ。
ーはい。わかりました。
ーよかった。
ーあ、あの……もうひとつ聞きたいことがあって……。
ーどうした? この際なんでも言ってくれ。
ーあの、誉さん……何か、僕にして欲しいこととかないですか?
ーえ――っ!? それは、どういう意味だ?
ーあの、僕……誉さんに何かお礼がしたくて……。あの、僕にできることだったらなんでもしますから、僕にして欲しいことないですか?
ーくっ――!!
ーあの、誉さん……?
急に黙ってしまったから不安になってしまう。
やっぱりちょっと不躾だったかな……。
ーあ、ああ。悪い。
ーすみません。僕、困らせてますか?
ーいや、そんなことないよ。じゃあ、ちょっと無理なことお願いしてもいいかな?
ーえっ、はい。喜んで。
ー来週早々に、急遽ロサンゼルスに行かないといけなくなったんだが、常駐宿の予約が取れなくて困っていたんだ。もし、よかったらその間、宇佐美くんの家に泊めてもらえないかな?
ー僕の家に?
ーああ、だめかな?
ーいえ、そんなことでよかったら喜んで。何日でもいいですよ。
ーそうかっ!! 助かるよ。じゃあ、細かい日程がわかったら連絡するから。ああ、その時までにはあの案件もほぼ終わってると思うから心配しないでいいよ。
ーはい。ありがとうございます。
ゆっくり休むんだよと言われて電話は切れた。
とりあえず、支社長の話は断るってことと……それから、来週、誉さんが泊まりにくるってことだったよね。
なんか急に色々決まっちゃったけど……。
明日にでも支社長とジャックに話しておかないとな。
それにしてもここに誉さんが泊まりにくる……。
なんだろう……すごく気持ちが高揚してきたな。
ロサンゼルスにきて知り合いが来てくれるなんて初めてだから興奮しちゃってるのかも。
ああ、今日は眠れないかもしれないな。
そう思った僕はまたあのラベンダー入りのお風呂に入った。
そのおかげで朝までぐっすり熟睡することができた。
僕が布団の中で幸せな時間を過ごしている間、由依がとんでもないことになっているとは微塵も思っていなかった。
* * *
次回別視点のお話になります。
ーいや、違うよ。ちょうど休憩しようと思っていたところだったんだ。
ーお疲れだったんじゃないですか?
ーふふっ。宇佐美くんは優しいんだな。でも、大丈夫。それよりも相談というのを聞かせてくれないか?
ーあ、はい。その、実は……。
僕は今日の支店長からの提案を誉さんに話してみた。
ーこっちに数年いられるように本社に話をつけてくれるって言ってくれて……それで、どうするか悩んでて……。
あの、誉さんはどう思いますか?
ー話を聞く限り、すごくいい話みたいじゃないか。それなのに、どうして悩んでるんだ?
ーえっ……だって、あの、誉さんが……。
ああ、そっか。
やっぱりあれは社交辞令だったんだ……。
それなのに僕、どうしようって本気で悩んで……。
ーすみません。悩む必要なかったですよね。明日支社長に――
ーああっ、違うんだ。誤解させてたらごめん。
ーえっ? 誤解って……。
ーそんなにいい話なのに悩んでくれるってことは、私と一緒に住むのが捨てがたいと思ってくれたってことだろう?
ーえっ、あの……そう、ですね。捨てがたいというか……はい。そうです。
ーふふっ。なら、答えは一つだ。支社長の話は断って日本に帰ってきてくれ。私はもう一緒に住むつもりで準備を進めているんだ。帰ってきてもらわないと困る。
ーあの、本当にいいんですか? 僕、迷惑じゃないですか?
ー言ってるだろ? 迷惑なら最初から誘ったりしないって。宇佐美くんに社交辞令なんか言わないよ。だから、出張期間が終わったら私の家に帰ってきてくれ。
耳に直接響いてくる誉さんの優しい声にドキドキしてしまう。
ーいい? 約束だぞ。
ーはい。わかりました。
ーよかった。
ーあ、あの……もうひとつ聞きたいことがあって……。
ーどうした? この際なんでも言ってくれ。
ーあの、誉さん……何か、僕にして欲しいこととかないですか?
ーえ――っ!? それは、どういう意味だ?
ーあの、僕……誉さんに何かお礼がしたくて……。あの、僕にできることだったらなんでもしますから、僕にして欲しいことないですか?
ーくっ――!!
ーあの、誉さん……?
急に黙ってしまったから不安になってしまう。
やっぱりちょっと不躾だったかな……。
ーあ、ああ。悪い。
ーすみません。僕、困らせてますか?
ーいや、そんなことないよ。じゃあ、ちょっと無理なことお願いしてもいいかな?
ーえっ、はい。喜んで。
ー来週早々に、急遽ロサンゼルスに行かないといけなくなったんだが、常駐宿の予約が取れなくて困っていたんだ。もし、よかったらその間、宇佐美くんの家に泊めてもらえないかな?
ー僕の家に?
ーああ、だめかな?
ーいえ、そんなことでよかったら喜んで。何日でもいいですよ。
ーそうかっ!! 助かるよ。じゃあ、細かい日程がわかったら連絡するから。ああ、その時までにはあの案件もほぼ終わってると思うから心配しないでいいよ。
ーはい。ありがとうございます。
ゆっくり休むんだよと言われて電話は切れた。
とりあえず、支社長の話は断るってことと……それから、来週、誉さんが泊まりにくるってことだったよね。
なんか急に色々決まっちゃったけど……。
明日にでも支社長とジャックに話しておかないとな。
それにしてもここに誉さんが泊まりにくる……。
なんだろう……すごく気持ちが高揚してきたな。
ロサンゼルスにきて知り合いが来てくれるなんて初めてだから興奮しちゃってるのかも。
ああ、今日は眠れないかもしれないな。
そう思った僕はまたあのラベンダー入りのお風呂に入った。
そのおかげで朝までぐっすり熟睡することができた。
僕が布団の中で幸せな時間を過ごしている間、由依がとんでもないことになっているとは微塵も思っていなかった。
* * *
次回別視点のお話になります。
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