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その日は日本から戻ってきてすぐだということもあり、それにあの件のことを知ってくれている支社長の配慮で外回りには行かずに済んだ。
メールチェックや書類の確認、それに日本出張中の領収書の清算など溜まっていた内勤業務を終わらせると
「宇佐美くん、あちらでも忙しかったと聞いている。時差ぼけもあるだろうから、今日は早く帰って明日からまた頑張ってくれ」
と言ってもらえて、定時より2時間も早く家に帰ることになった。
行きと同じ社用車で帰る途中、スーパーに寄ってもらって朝食に必要なパンと飲み物を買って早々に家に帰った。
ガチャガチャと鍵を開けて、買った荷物もテーブルの上にそのままに僕はいつもの定位置に吸い寄せられるように向かった。
僕がいない間、定位置を温めてくれているイルカを抱き上げゴロンと横になる。
――もし、君が日本に帰りたくないなら数年ここで駐在してもらってもいいんだよ。
支社長の言葉が頭の中を駆け巡ってく。
ここでの生活は嫌いじゃない。
支社の環境もいいし、取引先相手にもよくしてもらっていて、この社宅での住み心地も抜群にいい。
ここには短期しかいないと思っていたから、がむしゃらにやって少しでも早く結果出して帰れるようにと思っていたけど、その必要もなくなれば、日々の仕事も余裕ができる。
しかも昇給までしてもらえるなんて良いことづくしだ。
日本に帰れば嫌なことを思い出すし、家だってすぐに決めなきゃいけない。
それにまたとてつもなくハードな日々が帰ってくるんだ。
だからどっちが良いかなんて考えたら、こっちに残る以外の選択肢なんて無いはず。
支社長だってそれがわかっていたから、きっと僕が大喜びすると思っていただろうに。
僕は即答できなかった……。
だって、帰国したら誉さんと一緒に暮らすって約束したから……。
それを勝手に反故にするなんてできなかったんだ。
とりあえず、今日誉さんに相談してみよう。
もしかしたら、誉さんもこっちに残った方がいいって言うかも。
そう言われたら、明日支社長に返事をしよう。
そうだな、それが一番いい。
そうと決まれば、まずは買ってきたものを片付けよう。
僕はソファーから立ち上がり、片付けを始めた。
何も考えないようにただひたすらに片付けをして、久しぶりに綺麗な部屋が甦ったなと喜んでいると、玄関のチャイムがなった。
『Mr.ウサミ。食事が届きましたよ』
本当に今日も誉さんからのお弁当が届いたんだ!
嬉しくてさっと扉を開けると、ジャックが笑顔を向けてくれる。
『今日もいい食事をチョイスしましたね。ここのは美味しかったでしょう?』
『ええ、とっても。週で届くことになっているからまた明日も届けてもらうことになって申し訳ないけどよろしく』
『申し訳ないなんて言わないでください。ウサミがちゃんと食事をしていると知ることができて私たちはほっとしているんですから』
『ふふっ。心配してもらえて嬉しいよ』
『ゆっくり召し上がってください』
『ありがとう!』
嬉しそうなジャックを見送り、僕は扉を閉めた。
手渡された袋の中は、昨夜と同じ大きな会席弁当の箱が見える。
お茶を淹れ、誉さんに感謝しながらお弁当を開けると昨日とはまた違った豪華な料理が並んでいる。
けれど、あのだし巻き卵の姿はなかった。
今日は元々入っていないメニューだったのかもしれないけど、なんとなくほっとした自分がいた。
柔らかなステーキと一緒に錦糸卵の乗ったごはんを頬張る。
ああ、美味しい。
優しい出汁あんかけの乗った大根の煮物も、胡瓜と昆布の和え物もどれも美味しくてあっという間に完食してしまった。
アメリカに来てから忙しさにかまけていつも夕食は適当だった。
元々料理は苦手だし、仕事が終わって帰ってきてから作る気になれず、いつもデリバリーでピザかハンバーガーを頼むくらいで、それさえも面倒な時は食べなくてもいいかと思っていた。
そんなんだから、こんな美味しい宅配弁当があるのも知らなかった。
誉さんがしてくれた契約が終わっても自分で契約したいくらい美味しくて悩んでしまう。
いくらくらいするお弁当なんだろうな……。
あまりにも豪華すぎて想像もつかない。
食事を終えて時計を見ると、夜7時。
あっちは11時か……。
誉さんと話したかったけど、もう少し待ってお昼休憩の時間にしたほうがいいかな。
とりあえず、メッセージだけ送っておこう。
<誉さん。今日も夕食ご馳走さまでした。実は少しご相談したいことができました。そちらの時間で16時くらいまでなら起きているので、よかったらお電話でお話しできると嬉しいです>
送信して、スマホをテーブルに置いた途端、急にピリリリと電話が鳴り出した。
メールチェックや書類の確認、それに日本出張中の領収書の清算など溜まっていた内勤業務を終わらせると
「宇佐美くん、あちらでも忙しかったと聞いている。時差ぼけもあるだろうから、今日は早く帰って明日からまた頑張ってくれ」
と言ってもらえて、定時より2時間も早く家に帰ることになった。
行きと同じ社用車で帰る途中、スーパーに寄ってもらって朝食に必要なパンと飲み物を買って早々に家に帰った。
ガチャガチャと鍵を開けて、買った荷物もテーブルの上にそのままに僕はいつもの定位置に吸い寄せられるように向かった。
僕がいない間、定位置を温めてくれているイルカを抱き上げゴロンと横になる。
――もし、君が日本に帰りたくないなら数年ここで駐在してもらってもいいんだよ。
支社長の言葉が頭の中を駆け巡ってく。
ここでの生活は嫌いじゃない。
支社の環境もいいし、取引先相手にもよくしてもらっていて、この社宅での住み心地も抜群にいい。
ここには短期しかいないと思っていたから、がむしゃらにやって少しでも早く結果出して帰れるようにと思っていたけど、その必要もなくなれば、日々の仕事も余裕ができる。
しかも昇給までしてもらえるなんて良いことづくしだ。
日本に帰れば嫌なことを思い出すし、家だってすぐに決めなきゃいけない。
それにまたとてつもなくハードな日々が帰ってくるんだ。
だからどっちが良いかなんて考えたら、こっちに残る以外の選択肢なんて無いはず。
支社長だってそれがわかっていたから、きっと僕が大喜びすると思っていただろうに。
僕は即答できなかった……。
だって、帰国したら誉さんと一緒に暮らすって約束したから……。
それを勝手に反故にするなんてできなかったんだ。
とりあえず、今日誉さんに相談してみよう。
もしかしたら、誉さんもこっちに残った方がいいって言うかも。
そう言われたら、明日支社長に返事をしよう。
そうだな、それが一番いい。
そうと決まれば、まずは買ってきたものを片付けよう。
僕はソファーから立ち上がり、片付けを始めた。
何も考えないようにただひたすらに片付けをして、久しぶりに綺麗な部屋が甦ったなと喜んでいると、玄関のチャイムがなった。
『Mr.ウサミ。食事が届きましたよ』
本当に今日も誉さんからのお弁当が届いたんだ!
嬉しくてさっと扉を開けると、ジャックが笑顔を向けてくれる。
『今日もいい食事をチョイスしましたね。ここのは美味しかったでしょう?』
『ええ、とっても。週で届くことになっているからまた明日も届けてもらうことになって申し訳ないけどよろしく』
『申し訳ないなんて言わないでください。ウサミがちゃんと食事をしていると知ることができて私たちはほっとしているんですから』
『ふふっ。心配してもらえて嬉しいよ』
『ゆっくり召し上がってください』
『ありがとう!』
嬉しそうなジャックを見送り、僕は扉を閉めた。
手渡された袋の中は、昨夜と同じ大きな会席弁当の箱が見える。
お茶を淹れ、誉さんに感謝しながらお弁当を開けると昨日とはまた違った豪華な料理が並んでいる。
けれど、あのだし巻き卵の姿はなかった。
今日は元々入っていないメニューだったのかもしれないけど、なんとなくほっとした自分がいた。
柔らかなステーキと一緒に錦糸卵の乗ったごはんを頬張る。
ああ、美味しい。
優しい出汁あんかけの乗った大根の煮物も、胡瓜と昆布の和え物もどれも美味しくてあっという間に完食してしまった。
アメリカに来てから忙しさにかまけていつも夕食は適当だった。
元々料理は苦手だし、仕事が終わって帰ってきてから作る気になれず、いつもデリバリーでピザかハンバーガーを頼むくらいで、それさえも面倒な時は食べなくてもいいかと思っていた。
そんなんだから、こんな美味しい宅配弁当があるのも知らなかった。
誉さんがしてくれた契約が終わっても自分で契約したいくらい美味しくて悩んでしまう。
いくらくらいするお弁当なんだろうな……。
あまりにも豪華すぎて想像もつかない。
食事を終えて時計を見ると、夜7時。
あっちは11時か……。
誉さんと話したかったけど、もう少し待ってお昼休憩の時間にしたほうがいいかな。
とりあえず、メッセージだけ送っておこう。
<誉さん。今日も夕食ご馳走さまでした。実は少しご相談したいことができました。そちらの時間で16時くらいまでなら起きているので、よかったらお電話でお話しできると嬉しいです>
送信して、スマホをテーブルに置いた途端、急にピリリリと電話が鳴り出した。
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