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どんどん想像を超えていく
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あっという間に今日の仕事も終わり。
いつものように片付けを済ませていると、
「ねぇねぇ、平松くん。八尋さんのお店、今日から開けるって言ってた?」
と隣の席の名嘉村さんから声をかけられた。
「はい。そうみたいでしたよ。昨日、準備してましたから」
「そうなんだ。じゃあ、今日は僕も行こうかな。久しぶりに平松くんとゆっくり喋りたいし。あっ、砂川さん!」
「はい。どうかしましたか?」
「砂川さんも八尋さんのお店に行きませんか? 石垣に行く話ももう少ししたいし」
「ええ。私は構いませんが、平松くんは大丈夫ですか?」
「えっ、はい。砂川さんと名嘉村さんが一緒なら楽しいです」
「じゃあ、行きましょうか」
思いがけず、一緒に八尋さんのお店に行くことになってしまった。
俺にとっても久しぶりのお店だ。
なんだかちょっとドキドキする。
「八尋さんが西表にいない間は、仲間さんたちも寂しかっただろうね」
「ああ、確かにそうですよね。いっつも楽しそうに呑んでましたから」
「八尋さんのお店が開いている事はもう島中に知れ渡ってると思うので、今日はもうたくさんいらっしゃっているかもしれませんね」
そんなことを話しながら、あっという間に店に到着し、名嘉村さんが扉を開けて入っていく後ろからついていくと、
「おお、今日は三人揃って来たのかい? いやぁ、今日はラッキーだな」
と笑顔の仲間さんから声をかけられた。
「ラッキー?」
どういう意味だろう?
たくさん人が来て賑やかでいいってことかな?
頭の中がハテナでいっぱいになっていると、すぐに奥から八尋さんが来てくれた。
「平松くん。お疲れ。それに砂川さんと名嘉村くんも来てくれたんだね。ありがとう」
「久しぶりに八尋さんのクーブイリチーが食べたくなって。ねぇ、砂川さん」
「ええ。私もゆっくり泡盛をいただきたいです」
「オッケー、ゆっくりしていって。あっちの個室使って。あ、平松くん。今日も黒糖ゼリー用意しているからね」
「――っ、は、はい。ありがとうございます」
パチンとウインクされてドキドキしてしまう。
「平松くん、こっちだよ」
「あ、はい」
このお店に来たときは、いつもカウンターで八尋さんの近くにいたからちょっと寂しい気もするけれど、ここの個室は名嘉村さんと初めて来た時に入った場所だから、なんだか嬉しい。
「平松くんは奥に座ってくださいね」
「えっ、でも砂川さんは上司だから奥の上座に……」
「ふふっ。仕事を離れたら上司とか部下とか関係ないですよ。私は入り口近くの方が好きなのでこちらに座らせていただきますね」
名嘉村さんは砂川さんの隣に座り、俺は一人で広々と席を使うことになってしまった。
注文は前のように名嘉村さんが次々に頼んでくれる。
泡盛と料理がすぐに運ばれてきて、一気にテーブルの上が華やかになった。
「じゃあ、乾杯しましょうか」
「はい。久しぶりの三人の夜に、かんぱーい!」
楽しそうな名嘉村さんの声かけに俺も砂川さんも笑顔いっぱいで乾杯する。
ああ、仕事終わりにこうして上司と楽しいお酒なんて!
本当に最高だ。
「そういえば、平松くん。海はどうでした?」
「あ、はい。すっごく綺麗でびっくりしました」
「えっ、海行ったの?」
「はい。昨日、迎えに来てもらってから一度着替えて海に行って来たんですけど、もう本当に言葉にできないくらい綺麗ってこういうこというんだって驚きました。やっぱり西表ってすごいですね」
「ふふっ、そうなんだ。それで、海で何かあった?」
「えっ? 何か、ってなんですか?」
何かあったっけ?
真っ暗で転けそうだったとか?
「ああ。そっかぁ。まだなんだ……。てっきりイリゼにお泊まりとか話してたから、そこは済ませたのかと思った」
「済ませた?」
「ああ、いいんだ。ちょっと勘違いしたみたい。ほら、泡盛呑んで」
「あ、はい。いただきます」
三人で泡盛を頼んだからか、いつものグラスではなく、泡盛のボトルごと運ばれて名嘉村さんと砂川さんが水を入れたり氷を入れたりして作ってくれる。
申し訳ないなと思いつつも、その手際があまりにも良くて自分でとは言い出しにくい雰囲気だ。
「<綺>の試食会だけど、蓮見さんのお相手さんも一緒に来るはずだから楽しみだね」
「蓮見さんのお相手さんって……」
「あれ? 平松くん知らない?」
「平松くんはあまりテレビは見てなかったのでそれは仕方ないかもしれませんね」
「ああ。そうか、ごめんね」
「いえ。それは大丈夫ですけど、テレビってもしかして有名人ですか?」
「うん。南條朝陽っていうイケメン俳優知ってる?」
「えっ? はい。名前は知ってます。あまり見た事はないですけど、有名なのは知ってます。確か同性婚したって……えっ? 蓮見さんのお相手ってもしかして……」
驚く俺を前に二人はにこやかな笑顔を見せて教えてくれた。
「そのまさかだよ。実は、うちの社長と、<綺>のオーナーの蓮見さんと、イリゼホテルのオーナーの浅香さんの三人で東京で芸能事務所をやっていてね、その事務所に入ってる南條さんは蓮見さんの結婚相手でもあるんだよ」
「ええーっ!!」
芸能事務所をやってるとかなんとかって話は聞いたことあるけど、そんなに有名人がいる本格的な芸能事務所だとは思ってなかった……。
しかも蓮見さんの結婚相手だなんて……。
えっ、もしかして……俺、その南條さんに会えるの?
いつものように片付けを済ませていると、
「ねぇねぇ、平松くん。八尋さんのお店、今日から開けるって言ってた?」
と隣の席の名嘉村さんから声をかけられた。
「はい。そうみたいでしたよ。昨日、準備してましたから」
「そうなんだ。じゃあ、今日は僕も行こうかな。久しぶりに平松くんとゆっくり喋りたいし。あっ、砂川さん!」
「はい。どうかしましたか?」
「砂川さんも八尋さんのお店に行きませんか? 石垣に行く話ももう少ししたいし」
「ええ。私は構いませんが、平松くんは大丈夫ですか?」
「えっ、はい。砂川さんと名嘉村さんが一緒なら楽しいです」
「じゃあ、行きましょうか」
思いがけず、一緒に八尋さんのお店に行くことになってしまった。
俺にとっても久しぶりのお店だ。
なんだかちょっとドキドキする。
「八尋さんが西表にいない間は、仲間さんたちも寂しかっただろうね」
「ああ、確かにそうですよね。いっつも楽しそうに呑んでましたから」
「八尋さんのお店が開いている事はもう島中に知れ渡ってると思うので、今日はもうたくさんいらっしゃっているかもしれませんね」
そんなことを話しながら、あっという間に店に到着し、名嘉村さんが扉を開けて入っていく後ろからついていくと、
「おお、今日は三人揃って来たのかい? いやぁ、今日はラッキーだな」
と笑顔の仲間さんから声をかけられた。
「ラッキー?」
どういう意味だろう?
たくさん人が来て賑やかでいいってことかな?
頭の中がハテナでいっぱいになっていると、すぐに奥から八尋さんが来てくれた。
「平松くん。お疲れ。それに砂川さんと名嘉村くんも来てくれたんだね。ありがとう」
「久しぶりに八尋さんのクーブイリチーが食べたくなって。ねぇ、砂川さん」
「ええ。私もゆっくり泡盛をいただきたいです」
「オッケー、ゆっくりしていって。あっちの個室使って。あ、平松くん。今日も黒糖ゼリー用意しているからね」
「――っ、は、はい。ありがとうございます」
パチンとウインクされてドキドキしてしまう。
「平松くん、こっちだよ」
「あ、はい」
このお店に来たときは、いつもカウンターで八尋さんの近くにいたからちょっと寂しい気もするけれど、ここの個室は名嘉村さんと初めて来た時に入った場所だから、なんだか嬉しい。
「平松くんは奥に座ってくださいね」
「えっ、でも砂川さんは上司だから奥の上座に……」
「ふふっ。仕事を離れたら上司とか部下とか関係ないですよ。私は入り口近くの方が好きなのでこちらに座らせていただきますね」
名嘉村さんは砂川さんの隣に座り、俺は一人で広々と席を使うことになってしまった。
注文は前のように名嘉村さんが次々に頼んでくれる。
泡盛と料理がすぐに運ばれてきて、一気にテーブルの上が華やかになった。
「じゃあ、乾杯しましょうか」
「はい。久しぶりの三人の夜に、かんぱーい!」
楽しそうな名嘉村さんの声かけに俺も砂川さんも笑顔いっぱいで乾杯する。
ああ、仕事終わりにこうして上司と楽しいお酒なんて!
本当に最高だ。
「そういえば、平松くん。海はどうでした?」
「あ、はい。すっごく綺麗でびっくりしました」
「えっ、海行ったの?」
「はい。昨日、迎えに来てもらってから一度着替えて海に行って来たんですけど、もう本当に言葉にできないくらい綺麗ってこういうこというんだって驚きました。やっぱり西表ってすごいですね」
「ふふっ、そうなんだ。それで、海で何かあった?」
「えっ? 何か、ってなんですか?」
何かあったっけ?
真っ暗で転けそうだったとか?
「ああ。そっかぁ。まだなんだ……。てっきりイリゼにお泊まりとか話してたから、そこは済ませたのかと思った」
「済ませた?」
「ああ、いいんだ。ちょっと勘違いしたみたい。ほら、泡盛呑んで」
「あ、はい。いただきます」
三人で泡盛を頼んだからか、いつものグラスではなく、泡盛のボトルごと運ばれて名嘉村さんと砂川さんが水を入れたり氷を入れたりして作ってくれる。
申し訳ないなと思いつつも、その手際があまりにも良くて自分でとは言い出しにくい雰囲気だ。
「<綺>の試食会だけど、蓮見さんのお相手さんも一緒に来るはずだから楽しみだね」
「蓮見さんのお相手さんって……」
「あれ? 平松くん知らない?」
「平松くんはあまりテレビは見てなかったのでそれは仕方ないかもしれませんね」
「ああ。そうか、ごめんね」
「いえ。それは大丈夫ですけど、テレビってもしかして有名人ですか?」
「うん。南條朝陽っていうイケメン俳優知ってる?」
「えっ? はい。名前は知ってます。あまり見た事はないですけど、有名なのは知ってます。確か同性婚したって……えっ? 蓮見さんのお相手ってもしかして……」
驚く俺を前に二人はにこやかな笑顔を見せて教えてくれた。
「そのまさかだよ。実は、うちの社長と、<綺>のオーナーの蓮見さんと、イリゼホテルのオーナーの浅香さんの三人で東京で芸能事務所をやっていてね、その事務所に入ってる南條さんは蓮見さんの結婚相手でもあるんだよ」
「ええーっ!!」
芸能事務所をやってるとかなんとかって話は聞いたことあるけど、そんなに有名人がいる本格的な芸能事務所だとは思ってなかった……。
しかも蓮見さんの結婚相手だなんて……。
えっ、もしかして……俺、その南條さんに会えるの?
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